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entiendes

ドキュメント内 著者 野村 明衣 (ページ 158-162)

6. sabe(s) 、 entiendes 、 ves

6.3. entiendes

6.3.1. 先行研究

では、「理解する」の意味をもつentiendesの場合はどうだろうか。Ortega(1986:

284)は、entiendesは発話を強調したい時に用いられ、「今述べたことは聞き手にと

って受け入れがたいことかもしれないが、理由があって述べているから理解して欲し い」という態度を表すと説明し、さらに文頭では現れないと指摘している。これは動 詞の語彙的意味が「(何かを)理解する」であり、その対象を先に示す必要があるの で、対象が示されていない文頭で注意喚起としては機能しにくいと考えられる。一方 Chodorowska(1997: 369)は、meを伴う¿me entiendes?のポライトネスとしての機 能に注目し、「主張などの発話を和らげる機能を持つ」と述べている。さらに「文中 と比べて、文末ではより発話の力を和らげる(Chodorowska 1997: 367)」と説明す

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る。この指摘は、これまでに述べてきた「文末に現れる要素は、先行発話に向かうも のであり、話し手の発話態度を効果的に表す」という本論文の主張と一致している。

またFuentes(1990: 192)は、entiendesは「難しい考えを明らかにしようとする」

機能を持つという。これは動詞 entender が持つ「理解する」という意味によるもの だろう。

6.3.2. 実例における考察

本論文のデータでも、Ortega(1986)の指摘通りentiendesの文頭での使用は見ら れず、文間、文末、単独で観察された。単独では¿Me entiendes?、¿Entiendes?とい う例も見られたが、これは先に述べたentiendesの性質上、先行発話の文末が表記上 単独の形式で表されていると考えられる。また文間の例は、entiendes の後に呼びか け語を伴う例であった。この場合の entiendes は文末の場合と同様の機能を果たし、

さらに後に呼びかけ語を伴うことによって聞き手への親密さなどを表すと推測され るので、ここでは省略する。文末では、疑問形だけでなくloやya me entiendesとい った形式も観察された。

6.3.2.1. 文末の用例 6.3.2.1.1. 疑問形

では、文末の疑問形式から見ていこう。

(176) Rosa: ¿Entonces vas a hacerlo?

Ramón: No es tan fácil. Pero, si de verdad lo estuviera planeando, ten por seguro que tú serías la última en enterarte. Ya comprendí que la gente que más dice quererme es la que menos ayuda me va a prestar.

Rosa: ¡Es que justamente pensé mucho sobre eso!... Sobre lo que me dijiste en Coruña... Ramón..., es que me di cuenta. Me di cuenta,

¿entiendes? Yo estoy bien segura de lo que siento, Ramón. Yo te amo...

(Mar adentro: 147)

(176)は、話し手Rosaが聞き手Ramónに自殺の手伝いをしようと申し出る場面で

ある。以前にもRosaはRamónを愛していると伝えるが、Ramónに「本当に自分の ことを愛しているなら自殺をする手助けをして欲しい」と告げられていた。Ramón を「愛する」ということについて考え直したRosaは、me di cuentaと2回繰り返し

た後¿entiendes?を用いる。これは「私はRamónの望みを叶えてあげたいと思うほど

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に、Ramón を愛していることに気づいた」という、この映画においては非常に意味

深い発話であり、¿entiendes?は重要な発話に対する理解を聞き手に求めていると考え られる。Rosaのそのような気持ちは、Ramónにとっては受け入れがたいかもしれな いが、理解してほしい、という態度を示しているのだろう。母語話者のアンケートに おいても、この場面では¿sabes?よりも¿entiendes?を用いた方が「本当の意味で発話 内容を理解してほしい」という話し手の態度が感じられるという回答が得られている。

しかし、「受け入れがたいかもしれないが、理解してほしい」という態度は、時に

「とにかく理解しろ」というような威圧的なニュアンスを含むことがある。次の例を 見てみよう。

(177) Daniel: Tú misma no dejas que te crea. Dicen que no ha pasado nada y sí ha pasado.

Ana: ¿El qué? ¿Qué ha pasado?

Daniel: Pasara lo que pasara entre tú y Robert, pasó algo muy importante, muy importante... ¡No tuviste en cuenta, para nada, mis sentimientos! Te dio igual cómo iba a sentirme yo. Por primera vez, te ha dado igual dar una explicación. ¡Te ha dado igual cuándo y cómo decías las cosas! Te has callado. ¿Entiendes? ¡Te has callado como hija de puta! Por primera vez, ¿entiendes?

(Nubes de verano: 147)

(177)は、恋人の浮気を疑う話し手Danielが聞き手Anaを非難する場面である。最

初の¿Entiendes?は本論文の分類上単独であるが、動詞entenderは理解する対象を示

さなくては不自然と考えられるので、先行発話Te has callado.の文末とみなす。Te has

callado.に¿Entiendes?を用い、更にすぐ後の発話では感嘆符を伴ってもう1度同じ発

話内容を繰りかえしている。また、2度目の¿entiendes?も同様に先行するPor primera vezを強調している。母語話者はこの例について、¿Entiendes?を用いて先行発話への 理解を聞き手に求めることによって、「発話内容をより強調し、強い怒りを表してい る」と回答している。(176)の¿entiendes?が話し手自身の気持ちへの理解を求めるの に対して、(177)の場合は聞き手に関する言及への理解を求めている。聞き手自身への 理解を聞き手に求めることによって、聞き手が気づいていないことを非難する。さら に、受け入れがたくても理解するよう求める¿entiendes?を伴うことで、より厳しい発 話になると推測される。次の例は、loを伴う例である。

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(178) Ana: Me voy.

Khaled: Yo también voy.

Ana: No, digo que me voy para siempre... que dejo el bar.

Khaled: ¿Dejas bar para siempre?

Ana: Santos me ha pedido que me case con él. Y yo le he dicho que sí.

Khaled: No sabía nada.

Ana: ¡Claro que no sabías, cómo coño vas a saberlo!

Khaled: ¿Entonces tú te vas...?

Ana: Sí, Santos quiere que deje de trabajar aquí. Me voy a casar con él, ¿lo entiendes? Tenemos planes...

(El penalti más largo del mundo: 145)

(178)は、話し手 Ana がいつまでも結婚に関して具体的な話をしてこない聞き手

Khaledに嫌気がさし、他の男性と結婚すると告げる場面である。Anaは期待してい

た回答をしなかった聞き手に腹を立て、再び「他の男性と結婚する」という発話に¿lo

entiendes?を用いている。loは「他の男性と結婚する」ことを指しており、質問の形

をとってはいるが、聞き手が発話を理解しているのかを確認することによって、聞き 手を非難していると解釈できるだろう。loを伴うことによって、より発話への理解を 強く求める話し手の態度が表れ、結果的に発話内容がより強調されると考えられる。

また、entiendesにはsabe(s)のような音調による機能の差はあまり観察されなかった

が、この例は一旦下降して再び上昇する音調であった。小山(1997: 106)は、日本語 の終助詞が降昇調の場合、「話し手の強い疑念を表す」と述べている。この規定は、

この場面に当てはめることができるだろう。lo entiendesは「理解しているのか?」

という聞き手への非難であるが、音調によってさらなる含意を付加していることがわ かる。

6.3.2.1.2. 肯定形

では、me entiendesが発話を和らげる(Chodorowska 1997)のは、どのような理

由によるのだろうか。次の例から考察してみよう。

(179) [Román le agarra y le pone una mano sobre la mesa.

Fernando se resiste como puede.]

Fernando: ¡Un momento! Primero: mis manos son muy importantes para mí, y no hablo sólo del fútbol, hablo de todos los aspectos de mi vida, ya me

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entiendes...

(El penalti más largo del mundo: 81)

(179)は、me entiendes に ya を伴っている。聞き手 Román が怒って話し手

Fernando の腕をテーブルに押さえつけ、指の骨を折ろうとしている場面である。

Fernando は、数日後にサッカーチームのゴールキーパーとして、再試合でのペナル

ティキックを控えているので、「サッカーのためだけではなく色々な場面で手が重要 だから」と説明してRománをなだめようとする。日常生活で手の指が重要であるこ とは、聞き手にとっても容易に想像がつくことであり、話し手は「言わなくても常識 でわかるだろう」という気持ちと、「自分の立場を理解して指を折るのをやめてくれ」

という気持ちを込めて、ya me entiendesと述べていると考えられる。母語話者も「こ の例では、聞き手の同情を引こうとしている」と回答しており、聞き手は発話内容を 受け入れがたくても理解してくれると断定して情報を提示することによって、聞き手 の好意を得て、聞き手を説得しようとしていると考えられる。またこの場合、me の 存在が重要なのである。基本的にentiendesは聞き手に発話内容の理解を求める機能 を果たすが、me を伴うことによって発話内容ではなく、発話内容を伝達する話し手 への理解を求めることになり、話し手と聞き手との間に一体感を作り出そうとする。

それによって、結果的に発話が和らぐのだろう。

このように、entiendes は疑問形では聞き手にとって受け入れがたいかもしれない 発話内容の理解を求め、肯定形でya やme を伴うと聞き手が理解してくれる、ある いはしてくれていると断定したり、話し手自身への理解を求めることによって、聞き 手との間に一体感を作り出そうとする機能を果たす。聞き手に発話内容への理解を求 め、話し手自身の発話を正当化するのである。また、理解を求める内容がなければ

entiendes を用いるのは不自然と考えられ、情報伝達前に聞き手の注意を喚起する文

頭では現れない。一方、文末は先行発話への理解を求める話し手の発話態度の表現手 段として用いられるのである。

ドキュメント内 著者 野村 明衣 (ページ 158-162)