5. 呼びかけ語
5.4. 呼びかけ語の位置と語彙
5.4.1. 情を表す呼びかけ語の語彙
5.4.1.3. 情を表す呼びかけ語の再分類
ここまで見てきたように、確かに典型的に好感や嫌悪を表す語彙は見られるので、
Beinhauer(1929)による分類にも納得できる。しかし、呼びかけ語は時に語彙的意
味の通りの態度を表さないことがある。呼びかけ語がどのような意味を表すのかは、
発話状況や話者間の人間関係によって異なるので、呼びかけ語の語彙を好感、嫌悪、
皮肉といった種類を厳密に分類することはできない。
では、これらの情を表す呼びかけ語の語彙はどのように分類することができるだろ うか。これらの語彙はまず名詞、形容詞といった品詞別に分類することができる。さ らにそれぞれの語彙を観察したところ、名詞は人を表すもの(hijo等)と、本来人以 外の事柄を表すもの(tesoro等)に、形容詞は見た目を表すもの(bonita等)と、性 格や性質など目には見えないものを表す語彙(listo等)とに下位分類が可能である。
情を表す呼びかけ語の語彙を再分類した結果は次の通りである。
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表9 情を表す呼びかけ語の分類
名詞
人を表す名詞 性別 mujer, hombre64, macho 年齢 chico/a, niño/a, nene/a, chaval, chiquitín
職業 doctor, maestro 敬称 señor/a, señoría
親族名称 hijo/a, tío, hermano 話者との関係 amigo, compañero 等
人以外を表す名詞
動物 bestia, foca, garrapata, gorrión 物 tesoro, prenda,
抽象名詞 cariño (mío), (mi) amor, (mi) vida 等
形容詞 外見を表す形容詞 bonita, guapo, gordita, rubia
性格・性質を表す形容詞
vieja,listo, pobre, tonto/a, ruso, imbécil, cobarde, preciosa, mona
人を表す名詞では、聞き手の性別、年齢、職業、また話し手との社会的関係を表す ような語彙が分類される。本来、人以外の事柄を表す名詞としては、動物名称や抽象 名詞が挙げられる。形容詞の使用例数は全589例中わずか33例のみであった。
次に情を表す呼びかけ語の頻度をまとめた。1 度しか現れなかった語彙については 省略する。
64 Cuenca y Torres(2011)やGaviño Rodríguez(2011)が考察しているように、hombreは日常会話 において独立した間投詞として頻繁に用いられている。しかし、Beinhauer(1929: 30)は、「全ての生 物に対して用いることのできる呼びかけ語で、自分に対して用いられた時には間投詞としての機能を果 たす」と説明しているので、本論文では呼びかけ語に含めている。しかし、今後呼びかけ語として分類 するかについては検討する必要がある。
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表10 情を表す呼びかけ語の頻出
hijo/a (mío/a) 70 hombre 64
tío 61 señor/a 45
mujer 38 cariño (mío) 34
chaval 31 capitán 17
(mi) amor 15 tronco 15
doctor 11 tonto 11
niño 10 señoría 10
colega 8 guapa 8
cabrón 7 corazón 6
jefe 6 bonito(a) 5
nene(a) 5 amigo (mío) 4
gorrión 4 mi vida 4
macho 4 delincuente 3
gordita 3 guarra 3
imbécil 3 majestad 3
preciosa 3 tesoro 3
bestia 2 chiquitín 2
cielo 2 compañero 2
gilipollas 2 listo 2
patrona 2 prenda 2
señorita 2 socia 2
最も頻繁に現れたのは、親子間や擬似的に用いられるhijo/a であり、次にhombre が続く。またtíoも多く現れている。使用頻度が多いのは人を表す名詞であるが、guapo
やtonto/aなどの形容詞も頻繁に用いられている。これらの語彙は、本論文の資料で
ある映画20 作品から得られたものであるが、日常会話においても比較的よく用いら れる語彙であると考えられる。
では、この分類と使用頻度にはどのような関係があるのだろうか。これは、次節で 考察する呼びかけ語の位置と深く結びついているのである。