2. スペイン語の間投詞
2.2. 間投詞の用例数
2.2.1. 間投詞の各位置の例数
次に、間投詞が現れた位置について見てみよう。位置による分類は、脚本の文字表
16 Martín Zorraquino y Portolés(1999: 4187)は、“sabes (y sus variantes)”と記述しており、疑問形 の¿sabes?だけでなく、sabesやustedに対するsabeも同様の機能を果たすと指摘している。本論文で 用いたデータでは、sabesのみ3人称単数形sabeが現れたので、sabe(s)と表記する。
17 escuchaの使用例はわずか 3 例であり、動詞の語彙的意味を強く残していると考えられるので、本論
文では対象から除く。
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記18を基準とした。使用例が最も多かった呼びかけ語の例を用いて、この基準を説明 すると、文が呼びかけ語で始まり、後にコンマが付いている用例を「文頭」、呼びか け語が文中にあり、前後にコンマが付いている用例の中で、主節と従属節、あるいは 条件節と帰結節の間の例を「文中」、等位接続や並列的接続の間の例を「文間」、呼び かけ語の前にコンマがあり、かつ後ろにピリオドなどの終止記号がついている用例を
「文末」の用例とみなした。また単独で用いられ、ピリオドか感嘆符または疑問符が ついている用例は「単独」の用例に分類した。各位置の例は次の通りである。
文頭
(40) Julia: Manuela, me va a llevar un buen rato leer esto.
(Mar adentro: 66) 文中
(41) Ramón: La persona que de verdad me ame, Rosa..., será precisamente la que me ayude a morir.
(Mar adentro: 126) 文間19
(42) Raimunda: No me ha olvidado, Emilio, pero desde que hablé contigo, mi vida ha sido como una película de Indiana Jones, ¡pero sin Harrison Ford!
(Volver: 167) 文末
(43) Matilde: Muchas gracias, Benigno.
(Hable con ella: 25) 単独
(44) Raimunda: (Grita). ¡Tía Paula!
(Volver: 24) この基準に従って他の間投詞も位置ごとに分類した。その結果は次の通りである。
18 RAE(1973: 146)による。
19 先行研究では、文中と文間を区別せず、文中(intermedio)としているものが多い。しかし、全てを 文中に分類すると、話し手が意識的に文中に用いている例とそうでない例が見られる。主節と従属節、
あるいは条件節と帰結節の間の例は、話し手が明らかに文中であることを意識しているのに対して、等 位接続、あるいは並列的接続の間の例は、話し手が文中であると意識しているか定かではない。従って、
本論文では文中、文間を区別して分類する。
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表3 間投詞の現れた位置
表現 文頭 文中 文間 文末 単独 合計
vocativo 528 12 546 1128 371 2585
¿no? 0 1 9 170 0 180
eh 16 1 10 86 29 142
mira 122 0 9 2 4 137
oye 101 0 5 4 10 120
sabe(s) 10 1 16 57 14 98
¿verdad? 120 0 8 75 0 84
entiendes 0 0 4 23 5 32
vamos 11 1 13 5 0 30
ves 4 0 3 2 12 21
verás 9 0 0 5 5 19
fíjate 2 1 5 2 0 10
合計 804 17 628 1559 450 3458
この結果を見ると、用例数の多い呼びかけ語はすべての位置に現れているが、文末 での使用例が最も多いことがわかる。次に多く見られた¿no?は、文頭では見られず、
文末での使用が多い。これは同じ付加疑問形式である¿verdad?も同様である。一方、
ehは文末でも用例が多いが、文頭や単独での使用も見られた。miraやoyeは、文頭 での用例数が圧倒的に多く、他の位置での用例は尐ない。また、sabe(s)は文末で多く 見られたが、文頭や文間、単独21での例も見られた。これに対して entiendesは、文 頭では現れず、文末での使用が圧倒的に多かった。vesは単独で、vamosは文頭、文 間での使用が多かった。また、verásは文頭が多く、fíjateは様々な位置に現れていた。
20 シナリオでは¿Verdad, Alicia?のように大文字で書かれており、本論文の分類基準では文頭になるが、
明らかに先行発話の文末であり、表記上の誤りであると考えられる。
21 本論文の分類の基準上単独に分類されるが、実際には後続発話の文頭である例がほとんどなので、今 回は扱わない。
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2.2.2. 間投詞を含む文22の種類
では、それぞれの間投詞はどのような文と共起するのだろうか。次の表4は、間投 詞を伴う文を意味ごとに分類した結果と、位置ごとの用例数を示したものである。
22 本論文では、亀井 他(1995: 1068, 1169)の規定に従って、音声言語表出行動(発話行動)とその結 果生じた音声を「発話」、いくつかの語から成り立ち、主語と述語を持つものを「文」と呼ぶ。発話は、
話し手が発話行動を打ち切り、発話以外の行動あるいは沈黙に移ったときに、その発話は終わったと認 められるという。
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表4 間投詞を伴う文の種類23
文の種類 位置
文頭 文中 文間 文末 合計
言明
vocativo 238 mira 108
oye 39 sabes 10
ves 3 eh 3 verás 8 vamos 10
fíjate 2
vocativo 8 sabes 1
¿no? 1 eh 1 vamos 1
fíjate 1
vocativo 257 mira 8
oye 4 sabes 16 entiendes 4
ves 3
¿verdad? 7
¿no? 8 eh 6 vamos 12
fíjate 4
vocativo 384 mira 2
oye 3 sabes 57 entiendes 23
ves 2
¿verdad? 64
¿no? 148 eh 40 verás 4 vamos 5
fíjate 2
vocativo 887 mira 118
oye 46 sabes 83 entiendes 27
ves 8
¿verdad? 71
¿no? 157 eh 50 verás 12 vamos 28
fíjate 9
行為指示
vocativo 159 mira 12
oye 21 eh 7 vamos 1
vocativo 3
vocativo 180 mira 1
eh 3 fíjate 1
vocativo 241
¿no? 7 eh 22 verás 1
vocativo 583 mira 13
oye 21
¿no? 7 eh 32 verás 1 vamos 1 行為拘束 vocativomira 1 6 φ vocativo 3 vocativo 2 vocativo 11
mira 1
宣言 φ φ φ φ φ
感情表現24 vocativooye 1 12 φ vocativo 19 vamos 1
vocativo 167 oye 1
¿no? 1 eh 7
vocativo 198 oye 2
¿no? 1 eh 7 vamos 1
質問
vocativo 94 mira 1 oye 40 ves 1
¿verdad? 1 eh 6
vocativo 1
vocativo 42 oye 1
¿verdad? 1
¿no? 1 eh 1
vocativo 230
¿verdad? 8
¿no? 13 eh 15
vocativo 367 mira 1 oye 41 ves 1
¿verdad? 10
¿no? 14 eh 22
感嘆 vocativoverás 1 19 φ vocativo 27
vocativo 49
¿verdad? 3
¿no? 1 eh 2
vocativo 95
¿verdad? 3
¿no? 1 eh 2 verás 1
返答25 φ φ vocativo 18 vocativo 55 vocativo 73
合計 804 17 628 1559 3008
23 Searle(1969)による5つの言語行為、言明(assertive)、行為指示(directive)、行為拘
束(commissive)、宣言(performative)、感情表現(expressive)と、用例から観察された 質問、感嘆、返答を加えて分類した。なお、それぞれの行為の和訳は久保(1997)による。
24 Searle(1969)は、挨拶を感情表現の行為に含めていないが、Haverkate(1993: 152)は挨 拶も含まれると規定している。
25 聞き手の質問に対するsíやnoといった返答と、承諾を「返答」の用例とみなした。聞き手 の質問に対する文中の「返答」の例で、その後に何かを主張したりする例は「主張」に含めてい る。
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本論文のデータでは、発話行為の一種である宣言に伴う例は見られなかった。映画 中に、結婚式など宣言をする場面はあったが、そのような発話は間投詞を伴っていな かった。表4を見ると、宣言の文を除く全ての種類の発話と呼びかけ語が共起してい ることがわかる。特に説明や主張を含む言明、命令や勧誘などの行為指示の発話に多 く伴っている。また、sabe(s)、entiendesは言明にのみ現れており、理解に関わるこ れらの表現は、比較的情報量の多い発話内容を伝達する際に用いられるのではないだ ろうか。一方、¿no?、¿verdad?が用いられているのは言明と質問26及び感嘆であり、
命令や勧誘などを表す行為指示や、挨拶や感謝または謝罪などを含む感情表現に伴う
のは、¿no?のみであった。このことから、¿verdad?と¿no?には何らかの機能の差があ
ると考えられる。また、¿no?とehは共起する文の種類は同じだが、ehは行為指示に 多く見られるのに対して、¿no?の場合は尐なく、この2つは異なる機能を持っている と推測される。文頭での使用が多いmira、oyeは、言明、行為指示、質問などに現れ ている。しかし、言明ではoyeと比べるとmiraの使用例が圧倒的に多く、質問では oyeの方が多い結果となっている。そのため、miraとoyeは本質が異なるものである と考えられる。
次章からはそれぞれの表現を具体的に見ていく。まずは先行研究を挙げ、本論文の データから得られた実例を、スペイン語母語話者27を対象に行ったアンケートの結果 を交えて考察していく。
26 ¿verdad?及び¿no?が疑問符がつく文に伴う場合、「質問」に分類した。
27 本論文のアンケートは、スペイン語母語話者 5 名(スペイン人男性 3 名、女性 2 名)を対象に実施し た。