• 検索結果がありません。

文末での用例

ドキュメント内 著者 野村 明衣 (ページ 190-193)

7. oye、mira、fíjate、verás

7.2. oye

7.2.2. 実例における考察

7.2.2.2. 文末での用例

181

う順序は成り立たないためである。一方、スペイン語母語話者によるアンケートでは

「mira, oyeという順は非文ではないが、oye, miraの順がより一般的だ」という回答

が得られた。oye, miraが文頭で現れるのに対し、「よね」は文末のみという差はある が、これらも聞き手への近づき方において共通性が窺える。この点に関しては、稿を 改めて詳しく考察してみたい。

7.2.2.2. 文末での用例

182

は¿me oyes?を文末に用いて、もう1度「自殺する」と主張する。この場面で¿me oyes?

を oye に置きかえるとどのような印象を受けるか母語話者に訊ねたところ、「¿me

oyes?の方が oye よりも厳しい印象である」という回答が得られた。これは、直説法

現在の2人称単数形oyesで現れた場合には、非難を表すこと(Briz 1998: 228)、そ して聞き手の反忚を求める疑問形式であることによると考えられる。

今回のデータでは、Fuentes(1990: 180)やMartín Zorraquino y Portolés(1999:

4183)が主張する発話態度に関わる文末のoyeの有益なデータが得られなかった。し

かし、文末に置かれることによってtoma notaやdate cuentaのような含意が現れる のであれば、文末の特異性を主張する1つの証拠となるだろう。そこで、文末にoye を用いる例を作り、その例文を通して機能を特定していこうと考える。

7.2.2.2.2. 発話態度を表す文末の oye

文末oyeの例は、第1に感嘆を表す(201)、(202)のような場合、第2に行為指示に

伴う(203)、(204)、(205)のような場合、第3に主張や説明を含む(206)、(207)、(208)

の言明の場合、そして第4に質問に伴う(209)の場合に分類される。これらの例を母語 話者に提示し、oye を伴わない場合と比べてどのように発話の意味が変化するかを調 査した。その結果を文の機能ごとに考察する。

まずは感嘆の例である。

(201) ¡Cómo ha cambiado Madrid, oye!

(202) ¡Qué pena de ver esto así, oye!

これらの例ではoyeを伴うことによって、(201)ではMadridが変わったことに対す る話し手の驚きが、(202)では残念であるという気持ちが強く現れるという。さらに、

(201)の例に関して、oyeを文頭に置きかえると、後続する「Madridが変わった」と

いう発話内容は聞き手にとって新情報であるのに対して、文末に位置すると「話し手 と聞き手がどちらも同じように感じている、共有情報のように感じられる」という回 答も得られた。これまでも他の表現について考察してきたように、文頭では聞き手の 注意を喚起するが、発話内容そのものには関わらない。一方、文末では先行する発話 内容に関わって、その情報をどのように伝達しようとしているかを表す。oye にもこ の規定を当てはめることができ、これらの例は話し手の発話内容への驚きや遺憾さを 表していると考えることができるだろう。

次に行為指示の例を見てみよう。

183

(203) Deja de molestar, oye.

(204) No te metas en mis cosas, oye.

(205) ¡Déjame en paz, oye!

これらの例においても、oye を伴うことによって「1 度命令したにも関わらずなか なか聞き入れようとしない聞き手への命令のように感じられ、話し手の苛立ちや怒り の感情を含む」という。

また、次の(206)は言明の例であるが、行為指示の例と同じ回答が得られた。

(206) A: ¡Lánzate a la piscina!

B: No quiero.

A: ¡Vamos, que te lances ya!

B: ¡Que está muy fría, oye!

この例では、話し手Bはプールに飛び込むように促す命令を1度拒否しているにも 関わらず、執拗に要求する聞き手Aに対して、文末のoyeを用いて飛び込みたくない 理由を述べており、話し手の苛立ちが窺える。

一方、次のような言明の例もあった。

(207) A: Yo creo que tal persona va a venir mañana.

B: Pues yo creo que no va a venir, oye.

(208) Anda, pues no sé, oye.

(207)は、聞き手Aの発話内容に対する反論の例であるが、このような場合、「話し

手Bは問題の人物が翌日に来ないことをあらかじめ聞いておりoyeを伴うことで聞き 手に発話を強調する」という。また(208)は、話し手が知らなかった話題に対する驚き を表す発話である。

最後に、(209)は質問の例である。

(209) ¿Me estás escuchando?, oye.

この発話は、話を聞いていない聞き手に対するものである。形式上は疑問文である が、文意は話を聞いていない聞き手に対する非難を含んで「『ちゃんと話を聞け』い う命令の意味を持つ」という。つまり、修辞疑問になるということである。

184

このように、文末のoyeは話し手の驚きや苛立ち、遺憾さなどの発話態度を表すこ とが確認できた。文頭の位置で考察したように、oye はそれが持つ語彙的意味から聞 き手に発話への注意喚起を求めることを中心的機能として持つ。しかし、先行する発 話内容に対する話し手の態度を表す文末の位置に現れると、Fuentes(1990: 180)や Martín Zorraquino y Portolés(1999: 4183)の指摘や、母語話者の回答からもわか るように、話し手の発話態度を表すのである。

ドキュメント内 著者 野村 明衣 (ページ 190-193)