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文末での用例

ドキュメント内 著者 野村 明衣 (ページ 149-156)

6. sabe(s) 、 entiendes 、 ves

6.2. sabe(s)

6.2.2. 実例による考察

6.2.2.2. 文末での用例

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Ya sabes, eres mi bailarina.

母語話者によると、(162)は「注意喚起の機能を持つ¿Sabes?を用いることによって、

後続発話を重要な情報として提示している」と回答している。一方、(162)‟のように

Ya sabesに変えると、既知情報として提示することになり、¿Sabes?の時とは異なっ

て、先行する「(喧嘩別れした自分たちの関係を)こんな風に終わったままではいけ ない」という発話に続けて「聞き手を説得しようとしている」という。これは、まさ

にya sabe(s)の聞き手との共有情報を表す機能によるものであり、先行発話の話題を

維持していることを表明するので、先行発話に続けて説得しているように感じられる のだろう。このことからもya sabe(s)が注意喚起の機能を持たないことがわかる。

このように、疑問形の¿Sabes?は、知っているかを聞くことによって注意喚起や後 続発話への引き込みの機能を果たすが、肯定形の場合は後続発話が共有情報であるこ とを強く表し、話題維持を表明するものである。

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quieren? ¿Que nos traslademos a Galicia y volvamos a empezar? ¡Ni que la justicia fuera tan rápida en este país! Y ahora soy yo la que va a ayudar a Ramón, ¿sabes?↑

[Gené resopla con rabia y esconde su cara entre las manos.]

(Mar adentro: 85)

Genéは、今後の行動について悩むMarcに「Ramónを救うのは私なのよ」という 発話に上昇音調の¿sabes?↑を用いている。森山(1989b: 176)によると、上昇音調は 疑問文の性質を持つ。疑問文は「文形式としてのレベルにおいて、すでに聞き手を強 く要求する文のタイプになっていると言える。つまり、文形式から特徴づけられる意 味として聞き手への反忚伺いという意味を本来的に担うものである」という(森山

1989b: 186)。この記述を¿sabes?に当てはめると、(166)の場合はRamónを助けたい

というGenéの気持ちをMarcが受け入れて理解できるかを聞いていることになる。

母語話者によるアンケートでも、この場面の¿sabes?↑は「聞き手に理解を求める¿eh?

や¿entiendes?との置きかえが可能」であり、「¿sabes?↑がないと発話を強調する含意

がなくなる」という回答が得られた。理解したかを聞くことによって、結果的に理解 を求めることになり、強調しているように感じられるのだろう。

また、次の例では¿sabes?↑が文末に置かれているが、その後も話し手の発話が続い ている。

(167) Dieguito: Papá, ¿qué es mejor diesel o gasolina?

Bilbao: Cada una sirve para una cosa distinta, ¿sabes? Como Casillas y Ronaldo.

(El penalti más largo del mundo: 37)

子供の「ディーゼルエンジンとガソリンがどう違うか」という問いに対して、父親 が「それぞれが違うものに役立つんだよ」と答える発話に上昇音調の¿sabes?↑を伴っ ている。ここでも上昇音調で発話することにより、父親の発話内容への理解を求める と考えられる。本論文のデータにおける上昇音調の¿sabe(s)?↑のうち半数が、この例 のように文末に用いられていてもその後に話し手の発話が続いている、発話途中の文 末の例であった。上昇音調というのは聞き手に強く理解を要求するが、このように話 し手が発話を続ける中の発話途中の文末で用いると、聞き手に発話内容の受けを求め るような機能を果たすのではないだろうか。実際に母語話者も、「この場面では

¿sabe(s)?がなくてもあまり意味が変わらない」が、「その使用によって、話し手が聞

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き手に教えてあげているというニュアンスが現れる」と回答している。これは、

¿sabe(s)?が聞き手の反忚を伺う上昇音調であるので、結果的に聞き手に受けを求める ことによると考えられる。さらに、この場面での¿sabe(s)?を¿entiendes?に置きかえる と「聞き手に対して失礼な感じがする」とも回答している。後にくわしく考察するが、

¿entiendes?は発話内容が受け入れがたいものであっても理解するよう求めるもので

ある。(167)のように話し手が発話を続けようとする発話途中の文末で用いると、とに

かく理解するよう聞き手に求め、さらに次の発話を続けることによって、一方的な印 象を与えるのではないだろうか。これに対して、¿sabe(s)?は聞き手が受け入れると期 待していることを表明するので、¿entiendes?を用いる場合のような失礼さは表さない のだろう。このような発話途中で¿sabe(s)?は、先の(166)のように聞き手に理解したか どうかを直接的に問うものではなく、発話内容を聞き手に受け取るように促している と考えられる。

では次の例ではどうだろうか。

(168) Cardona: Sé algunas cosas de tí, ¿sabes?↑ Tus paseos con los libros, lo que sueñas. No te ofrendas. Sé que te gustaría entrar en La Estrella Pontificia, aprender a bailar de verdad. Yo no pido nada. Pero necesito que sepas que si tú quieres no tendrías ningún problema en ir a esa academia de baile, a la universidad, a donde quieras. Sin hacer ni decir nada a cambio. Nada habrá variado. No verás dinero, nadie sabrá nada.

(El camino de los ingleses: 80-81)

聞き手Luliに好意をよせるCardonaは、Luliの帰りを待ち伏せてバレエ学校への 資金援助をすると申し出る。「Luli の状況を知っている」と伝える発話の文末に上昇 音調の¿sabes?↑を用いている。Cardona の姿を見た Luli は足早に去ろうとし、

Cardona がLuli を追いかけながら発話をする。母語話者に対するアンケートでも、

この場面の¿sabes?は「話し手が聞き手のことを知っていると強調している」という。

これも、発話途中の文末で¿sabe(s)?を用いて受けを確認することによると考えられる。

また、¿eh? を用いると「聞き手を脅している」、¿entiendes?に置きかえると「聞き手

を侮辱している印象を受ける」という回答も見られた。sabe(s)が聞き手に発話内容を 受け入れるよう求め、さらに発話途中の文末という位置では聞き手が理解したかを直 接的に問うのではなく、発話内容の受けを求める。これに対して、eh や¿entiendes?

は発話内容の確認を求めたり、聞き手が理解しがたくても理解するよう求めるという

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異なる機能を果たすことがわかる。

このように、上昇音調の¿sabe(s)?↑は発話末と発話途中の文末とで観察された。上 昇音調は聞き手の反忚を伺うものなので、発話末では聞き手に理解したかどうかを直 接的に尋ねるが、話し手の発話が続いている場面の発話途中の文末では、先行発話の 受けを求めると考えられる。

6.2.2.2.1.2. 下降音調

一方、下降音調は上昇音調と比べると断定的な含意を持つと考えられる。森山

(1989b: 193)は、下降音調について「これらの形式は、聞き手に対して反忚を要求

するというのではなく、むしろ聞き手に情報を提供するという通常のいわゆる情報伝 達の意味である」と述べている。また、松岡(2008: 1)も下降調は「当該発話を断定 的に示す(聞き手に対して『閉じて』しまう)」と説明している80。これらの指摘もま た、スペイン語に当てはめることができるのではないだろうか。実例を通して考察し てみよう。

(169) [Ramón es conducido en su silla por Rosa. Avanzan lentamente por una avenida rodeada de árboles. Ramón hace un gesto de incredulidad ante lo que supuestamente

acaba de oír, y no puede evitar una sonrisa. Rosa lo percibe.]

Rosa: Ya sabía que te reirías. Eso es lo que hacen todos los hombres. Reírse de mí.

Tú no ibas a ser menos.

Ramón: Rosa, Rosa... Perdóname... Es sólo que ... en este último año me están pasando cosas... Me siento un poco abrumado, ¿sabes?↓

(Mar adentro: 124)

(169)は、尊厳死を求める話し手Ramónが裁判を終えた後、付き添っていた聞き手

Rosaと散歩をしている場面である。Ramónは尊厳死を認めないという判決にあきれ て笑うのだが、Rosaは自分のことを笑ったと勘違いする。そのようなRosaに対して、

Ramónは¿sabes?↓を用いて「最近いろんなことがあって参っているんだ」と述べる。

母語話者へのアンケートでは、ここでは¿sabes?↓の使用によって「聞き手の同情を引 こうとする印象を受ける」という回答が得られた。話し手はRamónが疲れきってい るという情報が聞き手に受け入れられる、または聞き手にとって発話内容が既知情報 であると断定して、笑ってしまったことへの理解を求める機能を果たすのではないだ

80 松岡(2008: 1)は、疑問文における終助詞「よ」のイントネーションについて考察している。

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ろうか。下降音調で「聞き手は受け入れてくれている、受け入れてくれるはずだ」と いう話し手の期待をこめた態度を表すので、結果的に聞き手の同情を引こうとするよ うに感じられるのだろう。

次の(170)は、本来2、3日かかる重要な調書を今すぐ見たいと申し出る話し手の発 話に下降音調の¿sabe?↓が用いられている。

(170) Funcionaria: Dígame.

Modesto: Buenos días. Quiero consultar el dossier de una parcela.

Funcionaria: Tiene que solicitarlo por escrito.

[Funcionaria saca la solicitud.]

Funcionaria: Ponga el número del dossier y sus datos aquí... ¿Sabe el número del dossier?

Modesto: No, nnno.

Funcionaria: ¿Y el nombre de la parcela?

Modesto: Las Zarzuelas. Es una finca... Oiga, cuánto tardan en autorizar...

[Funcionaria se retira un par de pasos para teclear algo en su ordenador.]

Funcionaria: Normalmente, un día o dos.

Modesto: Ya, bueno, yo es que necesito, necesitaría verlo ahora, hoy mismo.

Es un imprevisto, muy urgente, ¿sabe?↓

Funcionaria: (Mirando la pantalla.) Ya, pero el procedimiento incluye la solicitud.

(La caja 507: 82)

先の(169)の場合と同様に、この発話も¿sabe?↓を伴うことにより、緊急の用件であ るということを、聞き手に知ってもらい、理解してもらおうとする話し手の態度が窺 える。母語話者によると、下降音調の¿sabe?↓によって「聞き手に対して自分の立場 になって考えて欲しい」という話し手の気持ちと、「『聞き手が発話内容を受け入れて くれるはずだ』という期待を表す」という。先に見た上昇音調の¿sabe(s)?↑は、話し 手の発話が続く場合の発話途中の文末にも用いられたが、下降音調の¿sabe(s)?↓は発 話権が聞き手に移る前の発話末の使用が圧倒的に多かった。この現象は、まさに聞き 手に対して閉じており、断定的に伝達していると言えるだろう。

この下降音調が持つ含意によって、時に聞き手に対する皮肉や非難を表す場合もあ る。次の例は、Ramónに菓子を作って持ってきたRosaにManuelaが余計なことを しないよう告げる場面である。

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(171) [Rosa está sacando un paquete de una bolsa.

Manuela, desde la puerta de calle, la mira muy contrariada.]

Rosa: Pero si es que le traigo unas filloas, ¿ves?, que sé que le gustan. Las hice yo misma...

Manuela: Mira, ya te dije que no hace falta que le cocines nada, ni que lo afeites, ni que lo laves, ya cuido yo de Ramón, ¿me entiendes?

Pausa.

Rosa: Bueno, pues entonces que me lo diga él.

Manuela: Ya me lo dijo él a mí.

[Rosa la mira con incredulidad.]

Y ahora mismo está ocupado, ¿sabes?↓

(Mar adentro: 108)

Ramónの世話はManuelaの役割だが、聞き手RosaはManuelaに何の断りもな

く世話をしてしまい、Manuelaは平素からRosaに対して腹を立てていた。この場面 でも、本の執筆作業に忙しいRamónに会うための口実として菓子を作ってきたRosa

に、Manuelaは余計なことをしないようもう1度忠告する。しかしRosaはさらに食

い下がって、「(余計なことをするなと)Ramón 自身の口から聞きたい」と述べる。

Manuelaは「Ramónもそう言っている」と説明するが、不信そうな表情をするRosa

に対して、Y ahora mismo está ocupado, ¿sabes?↓と述べる。この例における下降音

調の¿sabes?↓は「Ramónが忙しくて今は会えない」ということがRosaに受け入れ

られるはずだという態度を含んでいると考えられる。さらに母語話者に対するアンケ ートでは、「『会えないとわかっているのに、わざわざ理由をつけて来るな』という皮 肉の含意を持つ」という回答が得られた。これは下降音調の¿sabe(s)?↓が、Ramón が忙しいことを知っているはずのRosaに対してあえて断定的に伝達し、Rosaに反論 の余地を与えないためだろう。

このように、下降音調の¿sabe(s)?↓は、聞き手に反忚を要求せず、断定的に伝達し て理解を求めるものである。「わかっているはずだ」という態度を示すことによって、

同情を引いたり、非難を表すことがある。

6.2.2.2.2. 肯定形

では、次にloやyaを伴う肯定形のsabe(s)について見てみよう。肯定形は当然下降 音調であり、機能も下降音調の¿sabe(s)?↓と同様と考えられる。

ドキュメント内 著者 野村 明衣 (ページ 149-156)