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(Basel Committee on Banking Supervision:BCBS)

バーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision:BCBS)は、健全な監 督基準を世界的に推進する目的で、1974年にG10中央銀行総裁によって設立されました。委員会の事 務局員は、スイスのバーゼルに拠点を置く国際決済銀行(Bank of Internatioal Settlement:BIS)

によって任命されます。BISは、金融および財政の安定の追求にあたり、中央銀行やその他機関の間の 協力を促進する国際組織です。BISによるサービスの提供は中央銀行と国際組織に限られます。

通常、銀行監督当局には、各国のマネー・ローンダリングに関する刑事訴追や、AMLの取組みへ の責任はありません。しかし、麻薬取引業者やその他の犯罪者との関係を避け、また、金融セクター において高い倫理的およびプロフェショナルとしてのスタンダードを推進するために、厳しい顧客確認

(Know Your Customer:KYC)のポリシー等を含む措置の実施を推進する役割があります。1990 年代初めに起きたBCCIのスキャンダル、1992年のバンカ・ナツィオナーレ・デル・ラヴォーロ(Banca Nazionale del Lavoro)のアトランタ支店の元役員に対する起訴と有罪答弁や、その他の国際的な銀 行のスキャンダルをきっかけに、世界で最も豊かな国々の銀行規制当局間において、多国籍銀行の監 督および運営に対する基本的な規則が合意されました。

委員会の加盟国は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オラン ダ、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国等の国から構成されます。各国は、それぞれの中央 銀行や中央銀行以外の監督当局によって代表されます。委員会は正式な権限を持たず、広範な監督ガ イドラインを策定し、ベスト・プラクティスを推奨しています。委員会が発行する文書に法的強制力はあ りません。

1988年、バーゼル委員会は、金融セクターが犯罪者によって悪用されやすいという認識から、「マ ネー・ローンダリングの目的による銀行システムの犯罪的悪用の防止」(Prevention of Criminal Use of the Banking System for the Purpose of Money Laundering)と題された原則を発表しました。

マネー・ローンダリングを目的とする銀行業界の悪用防止への取組みとして以下の原則が提示されまし た。

■顧客の本人確認

■法律の遵守

■高い倫理基準と現地の法律および規制への準拠

■顧客情報の守秘義務に違反しない範囲内での国家レベルの法執行への全面協力

■職員のトレーニング

■記録の保管および監査

これらの原則は、法執行当局への顧客情報の開示と、顧客情報の守秘義務の違反に対する民事訴 訟からの保護を示したマネー・ローンダリングの法案に先行したため、守秘義務の範囲内での協力が 強調されました。

1997年にバーゼル委員会は、世界中の当局にとって基本的な指針となる「実効的な銀行監督のた

めのコアとなる諸原則」(Core Principles for Effective Banking Supervision)を発表しました。ガ イドラインには、“銀行監督者は、銀行が、金融セクターにおける高い倫理的およびプロフェショナルと してのスタンダードを推進し、犯罪による銀行の悪用を、意図的なものであるか否かにかかわらず防止 するために、厳格な‘顧客確認(Know Your Customer:KYC)’の規程を含む適切なポリシー、手 法および手続きを実施していることを示さなければならない”と述べられています。また、各国に対して、

FATFの40の勧告(この章の前セクションを参照)を採用するように呼びかけました。コアとなる諸原則 は、ブラジル、チリ、香港、メキシコ、ロシア、シンガポール、タイ等、先進10カ国(実際は11カ国)

に入っていない15カ国の協力の下で作成されました。

コアとなる諸原則の実施と評価を促進するため、1999年10月に「コアとなる諸原則のメソドロジー」

(Core Principles Methodology)が発表されました。

しかし、1997年以降、銀行規制は著しい変化を遂げ、各国においてコアとなる諸原則の実施の経験 が蓄積され、新しい規制の洞察が明らかになりました。こうした展開により、2006年にコアとなる諸原 則およびそれに関連する評価メソドロジーの更新が求められました。

バーゼル委員会は、コアとなる諸原則とそのメソドロジーの見直しの開始を行うと発表しました。

1999年に行われたクロスボーダー・バンキングの内部調査の結果から、多くの国の顧客確認

(Know Your Customer:KYC)のポリシーにおいて、不備が指摘されました。委員会は、2001 年10月の「銀行の顧客管理(Customer Due Diligence: CDD)」(Customer Due Diligence for Banks)の中で、“一部の国のKYCのポリシーには相当なギャップがあるか、もしくは、KYCのポリシー が事実上ないに等しい。金融市場が発達した国でさえも、KYCの頑健性にはばらつきがある。”と述べ ています。このガイダンスに先立ち、2001年1月に諮問文書が発表されました。

委員会のKYCへの関心は、悪質な顧客によるリスクを軽減するデュー・デリジェンスの要件を中心に 寄せられています。顧客管理(CDD)が不十分な銀行は、さまざまなリスク(風評リスク、オペレー ショナル・リスク、法務リスク、および集中リスク)に直面し、多大な財務上のコストを被る場合があり ます。健全なKYCのポリシーと手続きは、銀行の安全性と健全性や銀行システムの信頼性の確保にお いて、大変重要な役割を果たします。例えば、麻薬資金洗浄の疑いで、1988年にBCCIの役員9人が 米国フロリダ州で逮捕されたのをきっかけに、BCCIのスキャンダルが明るみに出ました。その後事件は 急展開し、1991年にBCCIは規制当局により閉鎖され、預金者は90億ポンドの損失を被りました。

21ページに及ぶこのガイダンスに関する文書は、KYCの基準の必須要素とその実施に関して、さらに 明確なガイダンスを示すことによって、それ以前に出された委員会による文書で提示された原則を強調し ています。このガイダンスの作成にあたり、作業部会は加盟国の手法を参考にして、監督体制の変化に ついて考慮しました。この文書で提示される必須要素は、世界中の銀行によって実施されるべき最低限 の基準ともいえるガイダンスです。従って、これらの基準はある特定の金融機関や各国の銀行システム のリスクに応じた対策と併せて、補足もしくは強化する必要があるかもしれません。例えば、強化された 顧客管理は、高リスクの口座もしくは富裕層顧客を対象とする銀行に求められます。この文書の多くの セクションで述べられていることですが、銀行の中でも特にリスクの高い分野に対するデュー・デリジェ ンスに関しては、一層厳しい基準の推奨を呼びかけています。

この文書は以下の5つのセクションで構成されています。

1. イントロダクション

2. 監督当局および銀行におけるKYC基準の重要性 3. KYC基準の必須要素

4. 監督当局の役割

5. 国境を越えた場合におけるKYC基準の履行

文書では以下の問題点が取り上げられています。

■銀行は、顧客の身元を確立するだけではなく、その顧客自身や口座の種類から通常予測され る取引と一致しない取引を特定するために、口座の動きをモニタリングする必要がありま す。“記録の関連性が保たれていることを確認するために、銀行は既存の記録を定期的に見 直さなければならない。特に、重大な取引が行われる場合、顧客書類の基準が著しく変更さ れた場合、口座管理の方法が大きく変わった場合には、必須である。”

■番号口座は禁止されないものの、他の顧客口座と同じKYCの手続きの対象になります。

KYCの検査が特定の従業者によって行われる場合でも、十分な数の従業者に対して顧客の 身元が知らされない限り、入念であるとは見なされません。委員会は、“いかなる状況にお いても、銀行のコンプライアンス部門や監督当局から顧客の身元を隠蔽する目的で、番号口 座を使うことは許されない”と呼びかけました。

■この文書では、顧客の本人確認における7つの問題点が提示されています。

□信託口座、名義人口座、信認口座(フィデューシャリー・アカウント:Fiduciary Account)

□企業事業体、特に名義人株主がいる会社や無記名株式を発行している会社

□紹介された企業

□顧客口座で、プロの仲介者によって開設されたもの。例えば、投資信託(ミューチュア ル・ファンド:Mutual Fund)、年金基金、マネー・ファンド等の企業の代理として、プ ロの仲介者が管理する“プール”口座等。

□重要な公的地位を有する者(Politically Exposed Person:PEP)

□非対面式の顧客、つまり、個人的な面談に本人が現れない顧客

□コルレス・バンキング

■銀行は、顧客の素性、国籍、事業活動、その他リスクの兆候となる事柄に関する情報を把握 できる顧客受け入れのポリシーと手続きを確立し、どのような顧客が受け入れ可能か明確で 簡潔な記述を提示することが必要とされます。

■プライベート・バンキング口座は、“いかなる状況においても”KYCポリシーを避けることが できません。

■銀行は、口座を運営する法人の身元について把握し、プロの仲介者が関与している場合に は、法律が許す範囲で、経営者と仲介者の正確な関係性を把握する必要があります。

■銀行は、“非対面”で顧客を取り扱う際、標準の本人確認の手続きを行い、匿名を強く希望す る顧客に対しては決して口座開設に同意してはなりません。