③保険ブローカーの手数料口座から 150,000ドルの電信送金が保険契約
(A)に送られる
⑤保険契約(A)から500,000 ドルが一部解約され、小切手で 麻薬密売人のシェル・カンパ ニーへ送られる
④第三者の取引からメキシコの両替 所(Casa de Cambio)を通して、
麻薬収益が保険契約(A)に3回に わたって電信送金される。
01//01/02 100,000ドル 02/01/02 100,000ドル 03/01/02 100,000ドル コロンビアコロンビア メキシコ
メキシコ フロリダ フロリダ
ニューヨーク ニューヨーク
マン島 マン島
ロンドン
1
ロンドン1
2 2
3 3
4 4
5 5
米国国土安全保障省
保険契約を使ったマネー・ローンダリングの例
出典:米国国土安全保障省(U.S.Department of Homeland Security)
■ プライベート・バンキングの様に、顧客の資金源を無視する動機が十分にある競争の激 しい手数料第一の環境
■ 受取人名義もしくは受託者で登録され、真の受益者の身元が明らかにされ難い証券会社 口座
不正な資金が証券業界を通して洗浄される場合、犯罪の要因は証券業界の内部および外部どちらに も存在する可能性があります。証券業界の外部に犯罪の資金源がある場合、資金源の隠蔽もしくは曖 昧にすることを目的として、証券取引あるいは合法的な会社の設立が利用される可能性があります(レ イヤリング)。犯罪活動が証券市場そのものに存在する場合、例えば、着服や、インサイダー取引、証 券詐欺、相場操縦等の不正資金を生みだす取引や操作は、その後洗浄されることになります。どちらの 場合にも、証券業界を通じて資金が洗浄されると、マネー・ローンダラーに、不正な資金の洗浄に加 えて、関連証券詐欺からの追加的な利益を得るという、二重の恩恵を提供する余地があります。
証券業界の顧客口座のうち、取引を目的とせず、資金保管の目的だけで使用されている口座に、マ ネー・ローンダリングが生じる恐れがあります。この口座により、ローンダラーは、より厳しい管理を受 ける銀行ルートを避けられます。その他のマネー・ローンダリングの兆候としては、“仮装取引(Wash Trading)”や相殺取引があります。これらの取引は、ある特定の証券の売りと買いの同時取引を含んで おり、一見取引を行っているように見せかけます。その複数の口座を通じてポジションの損益を相殺する 仮装取引や、共通の管理下にあるとは見えない口座間での資金移動も、マネー・ローンダリングの兆候 とされます。
例
ジョッシュは、麻薬密売の収益を元手に、証券会社2社にそれぞれ口座を開設しま す。1つの口座には、ユーロダラーの先物契約の買い持ちポジション(Long Position)
を取り、もう1つの口座には、ユーロダラーの先物契約の売り持ちポジション(Short Position)を取ります。市場の動きに関係なく互いの損益は相殺されます、そして利益を 生んだ場合は、評判のよい証券会社からの小切手を受け取ります。
リテール証券会社は、業界におけるマネー・ローンダリング対策の防御の最前線であり、最も脆弱 なアクセス・ポイントとなります。彼らは、顧客基盤や管理資産の拡大目標に対する経営上のプレッ シャーに常時直面しています。1口座あたりの資産の増加により手数料の源泉が潤うことが、証券会社 の報酬となります。この業界は積極果敢な野心家たちを引き寄せます。経験豊富なローンダラーは、理 想的には、経験の浅い証券外務員を引き込んで、手数料収入を期待させながら、一連の取引を画策し ます。
しかし、証券会社の経営やコンプライアンス担当者は、経験の浅い証券外務員を慎重に監視します。
一方で、経験が豊富な証券外務員は経済的に余裕があるため、疑わしい顧客を受け入れる可能性 が低くなります。それでも、ローンダラーは、利益を生むならどんな手段でも利用します。2003年のマ ネー・ローンダリング・アラート(Money Laundering Alert)で掲載されたウォルター・マックキャロ ン氏(Walter MacCarron)の記事から引用した、最近の事例を考えてみましょう。それは、カリフォ
ルニアのスターリング・フィナンシャル・インベストメント・グループ(Sterling Financial Investment Group)の証券外務員による、北カリフォルニア事務所での地域向け仲介業務に関連した事件でした。
実例
自己資金のみならず、知人の資金をも含む多額のポートフォリオを管理していたある個人 資産家が、証券会社の紹介を受けました。この資産家は自分が持つ高度な知識を誇示し、
熟練した担当者を要求しました。米国外国資産管理局(U.S. Treasury’s Office of Foreign Assets Control:OFAC)やその他の外部の情報から、この資産家はテロや薬物への関連性 がない顧客であると確認できたことから、25年の経験を持つ担当者がこの資産家の担当と なり、テクノロジー関連の低位株を取引するための口座を開設しました。しかし、経営陣は 様々なレッド・フラッグを無視していました。この資産家は、ブリティッシュ・コロンビア 州のバンクーバーに居住していたにもかかわらず、ケイマン諸島の銀行を通じた決済を希望 しました。このような場合、通常、取引の決済時に万が一問題が浮上した場合に備え、顧客 には口座に十分な残高を残してもらう必要があります。取引の決済は、通常、取引の3営業 日後に行われ、購入した株式の支払いや、売り払った株式の受渡しが行われるからです。一 部の投資家においては、銀行への株式引渡し時に、銀行が購入代金を支払うDVP決済によ る取引処理を求めます。この担当者は、DVP決済を受け入れました。担当者のこの判断は、
ケイマン諸島が銀行口座の資金源を隠蔽する目的で多く利用される事実を考慮すると、必ず しも適切な判断であったとはいえませんでした。
一連の口座が開設され、マネー・ローンダラーの計画の第2工程が完了しました。証券会 社の経営陣の関心は、新規顧客および新規ビジネスの開拓に移っていました。ローンダラー が犯罪を開始する時が来ました。最初の取引は、テクノロジー関連の店頭株400,000株の購 入で、1株あたり0.5ドルが支払われました。その後、これらの株はケイマン諸島の銀行へ 引き渡され、支払われました。すべてうまくいきました。また、手数料は通常より高めに支 払われました。偽装の種は蒔かれました。1週間後、担当者に勧誘してもいない別の注文が 届きました。それは、前回と同じ銘柄の株式をさらに800,000株購入したいというものでし た。価格は、依然として、1株あたり0.5ドルでした。この株式の浮動株は少数しかなく、つ まり、取引できる株式数が少ないため、今回のような大口取引は、株価に影響を与えること が予想されました。事実、取引の結果、株価が上昇し、その日の終値は1株あたり0.92ドル になりました。担当者は興奮し、顧客も大満足でした。しかし、決済日当日、顧客である資 産家は株式への支払を行わず、下手な弁解で担当者を説得し、支払を後日行うとの約束をし ました。そんな中、株価が低下し始めました。支払延長期間の上限である合計7日間が使い 果たされたとき、株価は1株あたり0.5ドルまで低下していました。コンプライアンス担当者 は、1週間前に購入された400,000株は、おそらく証券会社が800,000株を購入したと同時 に売り払われたものと推測しました。その結果、これらの大口取引により株価が上昇したた め、マネー・ローンダラーは、160,000ドルもの利益をこの取引から生み出したことになり、
これだけでも不法行為です。一方、証券会社は、連邦準備銀行(FRB)のマージン規制は、
支払延長の期限が切れた際、株式を清算して市場に戻すことを義務付けています。今回の ように、取引できる株式が少ない場合、800,000株もの大口の売却は株価の暴落を引き起こ すため、証券会社は、それによる損失が350,000ドルにのぼると見積もりました。こうした 場合、証券会社にはほとんど選択肢がありません。つまり、取引を担当した従業者に対して 損害賠償を求めることができる等の選択肢しかありません。通常、経営陣は、対外的に面目 を失うことを恐れ、当局検査の対象になることを避けるため、問題をひた隠す傾向がありま す。しかし、今回の事件の場合、証券会社は、何を回収できるかを見極めるために、FBIの 援助を要請しました。このような“株価操作”(ローンダラーの間では、ポジションに入って すぐ出ることから、“冷水シャワー(コールド・シャワー:Cold Shower)”と呼ばれる)の 仕組みは、証券業界でよく使われる手口であり、余分なコストや資金の無駄を生みだす等の 被害を与えています。
非金融業者および職業専門家
カジノやその他の賭博関連ビジネス
カジノは、最も現金収入が見込めるビジネスの1つです。ハイ・ローラー(多額の金を賭けるプレイ ヤー)、巨額の賭け金、信用供与、“コンプ”(特別優遇サービス)等の様々な要素が混ぜ合わさり、
多額の現金がカジノからプレイヤーに、そして、プレイヤーからカジノに流れています。その額は、賭博 が法律上認められている場所で、数十億ドルに及びます。
カジノおよびノミ屋、宝くじや競馬等のその他の賭博関連ビジネスは、マネー・ローンダリングと強い 関連性を持ち続けていますが、それは、賭博関係ビジネスが、非合法的に築き上げた富に便利な口実 を与えてくれるからです。カジノが提供するサービスは、そのカジノが存在する法域(司法権の異なる国 や地域)によって、また、その法域におけるマネー・ローンダリング対策によって異なります。
一般に、カジノを通したマネー・ローンダリングは、例えば、洗浄する資金を現金から小切手に交換 すること等、プレイスメントの段階で行われます。マネー・ローンダラーは、犯罪で稼いだ現金でチッ プを買い、カジノ宛てに振り出された小切手による払い戻しを要求します。より好まれる手法として、同 じ系列のカジノがある外国に行くので、そこで自分の賭け金を使えるようにしてほしいと頼み、他の法域
(司法権の異なる国や地域)の小切手で賭け金を持ち出す手口があります。
FATFが発表した1997年-1998年の犯罪類型報告書では、マネー・ローンダラーによる賭博関連ビ ジネスや宝くじの利用も、ますます増加していることが示されています。ロト、競馬、カジノ等の賭博場 が発行する小切手を使用し、同一人物により複数の金融取引が行われた例が挙げられています。この 分野では、合法的な所有者から勝ち券をシステマティックに買い戻すことができる仕組みが確立していま す。競馬や賭博に関連したマネー・ローンダリングの手段として、洗浄する資金を実際に賭ける際、賭 博場から発行された、証明性の高い勝ち券に相当する小切手を用いることにより、最終的に賭け金のほ ぼ全額を回収できるような方法があります。この手口は、確かに一度賭けが行われ、また、確かにその 人物がその賭けに勝ったという証明を捜査当局に突きつけることになるため、捜査当局は、それ以上捜