マネー・ローンダリングは進化する活動であるため、対策を適時かつ効果的なものとするために、継続 的に、様々な形式で、モニタリングすべきです。不正な資金は、オフショアの事業者や、電信送金、
信託、ハワラ、証券ディーラー、自動車販売業者、コルレス口座等を介して移動します。不正な金は、
まるで水のように、最も抵抗が少ないルートを探し出します。世界中の各国政府が、銀行セクター(部 門)に対するマネー・ローンダリング対策を義務化してきたため、マネー・ローンダリング活動が従来 の銀行セクター(部門)から、銀行以外の金融セクター(部門)や金融以外の事業や職業へと著しく 移行してきています。銀行に限らず、銀行以外の金融機関や金融以外の事業や職業も、不正利益を通 常の金融チャネルに還流させるための魅力的な手段となっています。
FATFは、“マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与の根本的な構造の理解を深めそして変化を観察 する”ために、年次の犯罪類型分析を実施しています。目的は“各分野における主要な手口と傾向”につい て報告し、また、FATFの40の勧告およびテロ資金供与に関する特別勧告が、引き続き有効かつ適切で あるかについて確認することです。この犯罪類型は、マネー・ローンダリングが異なる状況でどのように行 われるかに関する良い事例となりますので、この章では、しばしばこの犯罪類型について触れていきます。
銀行とその他の預金機関
歴史的に、銀行には犯罪収益の処理に利用される重要な機能が存在しています。ここでは、銀行や 他の預金機関を介したマネー・ローンダリングにおいて、特に警戒すべき範囲を挙げます。
資金の電子的移動
資金の電子的移動とは、電子端末、電話、コンピューター、ATM、もしくは磁気テープ等の、電子
的な方法による資金移動を指します。通常、ある銀行口座から他の銀行口座へ資金を移動する場合に は、電信振替あるいは電信送金で送られます。国内外を問わず、毎日、何兆ドルもの資金が、世界の 電信を通して送られています。
電子資金決済システムは、マネー・ローンダラーに、国や口座をまたいで、迅速に資金を移動させる 手段を提供します。不正資金の送金は、毎日行われる何百万件という合法的な送金の中に、容易に隠 されてしまいます。Fedwire、SWIFT、およびCHIPSのようなシステムは、多くの電信やメッセージを送っ ています。マネー・ローンダラーは、資金の電子的移動を、ローンダリングのプロセスの第2段階である レイヤリングで用いています。彼らのゴールは、資金を口座から口座へ、銀行から銀行へ、法域(司法 権の異なる国や地域)から法域へ移動させることで、取締機関や捜査当局による資金源の追跡を一層 困難にすることです。
マネー・ローンダラーは検知されないよう、送金額の変更や、可能な限り小口での送金、できれば 一流の金融機関を使う等、基本的な予防策をとります。それぞれ異なる法域(司法権の異なる国や地 域)にある口座間での素早い資金移動は、特に身元不明の一見顧客が、同様に、身元不明の第三者 へ送金する場合に、より捜査や資金源の追跡を複雑にします。
資金の電子的移動に対する検査は強化されています。多くのソフトウェア・プロバイダーは、資金の 電子的移動を利用したマネー・ローンダリングを検知するための高度なアルゴリズムを有しています。
資金の電子的移動を利用したマネー・ローンダリングの兆候には以下が挙げられます。
■ 資金移動が金融機関の機密保持が強い地域(Financial Secrecy Havens)もしくは高リス ク地域を介して行われ、ビジネス上の明白な理由がない、あるいは取引が顧客の事業や履歴 と一致しない場合
■ 海外顧客の代理として多額の資金移動を受領した際に、明確な理由がない、もしくは理由 が十分でない場合
■ 多数の少額送金の受領や、小切手やマネー・オーダー(Money Order)による入金がある 場合。ほぼ同時に、顧客の事業や履歴と矛盾する方法で、全額あるいはほぼ全額の送金もし くは預金が、他の都市や国へ電信で送られる場合
■ 資金の動きに説明がつかない場合や何度も繰り返す場合、もしくは不自然なパターンを示 す場合
■ 合法的な契約や商品、もしくはサービスの受領等と、明確なつながりのない資金の支払い や受領があった場合
■ 資金移動が、同じ人物の名義の異なる口座間で行われる場合 コルレス・バンキング
コルレス口座に関わるマネー・ローンダリングの初期の例は、1999年8月にニューヨーク銀行で発覚 した、ロシアのコルレス・バンキングを悪用した事件でした。305ページにも及ぶ報告書は、「コルレ ス・バンキング:マネー・ローンダリングへのゲートウェイ」( Correspondent Banking: A Gateway to Money Laundering)と題され、一部の米国や海外の大手銀行の不注意で手ぬるい手続きを通し て、米国へ様々な犯罪収益が容易に流入していたことが明らかになりました。
FATFはマネー・ローンダリングの犯罪類型報告書 2001−2002年で次のように述べています。
コルレス・バンキングは、ある銀行(‘コルレス銀行’)からある別の銀行(‘コルレス先銀行’)への 銀行業務の提供です。世界中に多数のコルレス関係を築くことで、銀行は物理的な拠点を持たない法 域(司法権の異なる国や地域)において、銀行自身のためにそして顧客のために国際金融取引を引き 受けることができます。大手の国際的な銀行は、典型的に、世界中にある何千という他の銀行に対し てコルレス銀行の役割を果たしています。コルレス先銀行は、コルレス関係を通して、キャッシュ・マネ ジメント(例えば、様々な通貨での利子付口座等)や、国際電信送金、小切手交換決済(クリアリン グ)、ペイヤブル・スルー口座(Payable-Through Account:PTA)、および外国為替サービス等の 幅広いサービスを受けることができます。コルレス銀行が、比較的小規模で知名度が低い銀行へサービ ス提供する場合は、与信が発生しないキャッシュ・マネジメント・サービスに限定することがあります。
しかし、コルレス先銀行の信用リスクが健全であると判断した場合は、与信取引に関する商品を多数提 供することがあります(例えば、信用状取引や、クレジット・カード取引に使われる業務用口座等)。
主に以下の2点の理由から、コルレス・バンキングはマネー・ローンダリングに対して脆弱であると言 えます。
1. コルレス・バンキングは、その性質上、ある金融機関が、別の金融機関の顧客の代理とし て、金融取引を行う状況をつくります。この間接的な関係は、コルレス銀行が、コルレス先 銀行の顧客の本人確認もせず、顧客から直接情報を尋ねることもできない状況の下で、サー ビスを提供することを意味します。
2. コルレス口座を介したマネー・ローンダリングは、犯罪収益を洗浄する顧客よりも、金融機 関に大きな脅威を及ぼします。それは、コルレス関係では、桁外れに巨額な資金が様々な方 向から流れ込んでくるためです。
コルレス銀行に生じるその他のリスクには以下が挙げられます。
■ コルレス銀行はコルレス先銀行へ適用される法律について調べることはできますが、コ ルレス先銀行の監督体制のレベルや有効性を見極めることは非常に困難です。
■ コルレス業務を提供する銀行の一部は、コルレス先に対して、どの程度のコルレス業務 を他の金融機関に対して行うか(“ネスティング”)について尋ねない場合があります。こ れは一層のリスクをもたらし、コルレス銀行がこれらのサブのコルレス先の身元や、事業 活動、あるいは金融サービスの種類についてさえ、知らないままでいることを意味しま す。
米国にコルレス口座を持つ約9,000の外国金融機関の蜜月時代は終わりました。十数年に及び事 実上検査を受けることもなく高収益をもたらした関係でしたが、2001年10月の米国愛国者法(USA Patriot Act)が、コルレス銀行が外国機関に提供しているマネー・ローンダリングの“出入り口
(Gateway)”に対していくつかの条項を出しました。例えば、第312条では、特定の外国銀行が保 有するコルレス口座に対するマネー・ローンダリング管理基準の重要性を示しています。これは、オフ ショアバンキングのライセンスを受けた外国銀行のコルレス口座、もしくはマネー・ローンダリングの懸念 対象とされる法域(司法権の異なる国や地域)で認可を受けた外国銀行のコルレス口座に対して、そ の外国銀行の所有者の確認、マネー・ローンダリングを防ぐためのコルレス口座に対するさらに厳格な