政府の調査や捜査に応じて開始される内部調査の実施にあたり、会社の法律顧問は、ほぼすべての ケースで、(a) 従業者との面談、(b)書類のレビュー、(c) クライアントへの事実の報告と法的な助言 の提供、(d)検察官への対応、を行う必要があります。
従業者との面談
従業者との面談の準備
内部調査で最も重要な点は従業者との 面談です。一般的に、法律顧問にとって は、決定的に重要な意味を持つ従業者と 面談する前に、比較的重要度の低い従業 者との面談や書類のレビューを通じて事実 をよく理解しておくことが、有益です。関連 書類を参照することは、従業者に出来事を 思い出させる上で役立つと同時に法律顧問
政
府の問い合わせや捜査に応じて開 始される内部調査の実施にあたっ て、その会社の顧問弁護士は、ほぼすべ てのケースで、…(a)…従業者との面談、(b)…書類のレビュー、(c)…クライアントへの 事実の報告と法的な助言の提供、(d)…検 察官への対応、を行う必要があります。
にとって、従業者が事実を話しているかどうか判断するのに役立ちます。
政府捜査の圧力を受けずに、会社が内部調査を行っている場合、会社は、調査をどのように行うべ きかについて、自分自身で基本方針を決めることができます。法律顧問は、通常、ほとんど関係のない 従業者の面談から開始します。これらの従業者は、背景情報を提供してくれる可能性があり、より直接 的に犯罪に関わったかもしれない従業者の立件に役立つ可能性があります。
一方、政府の捜査による圧力がある場合、通常、法律顧問には前述のような選択がありません。多 くの場合、従業者の面談順序は、捜査の性質によって、また、政府の捜査官の行動によって決められ ます。政府の捜査官は、特定の従業者に対する面談の実施や、特定の従業者に対して大陪審で審議 を実施する可能性があります。
政府が捜査を行っている場合、法律顧問は、事実に最も詳しい従業者に直接、かつ直ちに事実確 認を行う必要があるかもしれません。また、より関わりの少ない従業者、または二次的な情報しか持ち 合わせていない従業者と話すより前に、犯罪への関与を疑われている従業者の面談を実施しなければ ならない場合があります。核心にいる従業者は、通常、関連する事実を提供する可能性が最も高いの で、そのような状況においては、できるだけ多くのことを、できるだけ速く理解することが、法律顧問に とって非常に重要になります。法律顧問は、また、召喚令状を受けた、もしくは命令を受けそうなすべ ての従業者に対して迅速に面談を行う必要があります。法律顧問は、すでに政府の面談を受けた従業 者に直ちに面談を行い、政府捜査の方向性について情報を得るよう努める必要があります。この面談で は、政府の面談を受けた他の従業者を知っているか、また、政府の面談を受けた際、政府がどの書類 に特に興味を示したかを確認します。
捜査に政府が関与するかしないかにかかわらず、ほとんどの従業者は、面談を受けることを快く感じ ません。また、多くの従業者は不安を表します。彼ら自身や同僚が関与を疑われている場合はなおのこ とです。協力的な従業者でさえ、自分が協力しているという事実を広く知られたくありません。したがっ て、法律顧問は、面談を手配する前に、面談の実施場所および連絡方法を考慮することが大切です。
法律顧問は、この状況ですでに生じているプレッシャーを考慮に入れ、面談について同僚に知られる心 配はないということを保証することが必要でしょう。
企業および個人に適用される弁護士/依頼者間の秘匿特権
内部調査において、組織のために働く弁護士は、会社の代理人であり、必ずしも従業者の代理をす るものではないことを、すべての関係者が認識していなければなりません。法律顧問は、この問題を理 解し、それを考慮に入れて内部調査を適宜行うべきです。多くの場合、取締役会が、弁護士/依頼者 間の秘匿特権の範囲を拡大し、すべての従業者まで対象とするのが得策です。そうすることで、従業者 の信頼を得て、調査中に起こりうる悪影響を最小限にすることが可能になります。
企業と従業者の利害が異なる、または対立する場合、もしくは従業者が雇用主の犯罪への関与を示 す場合、またその反対に雇用主が従業者の犯罪への関与を示す場合、重大な結果を招く可能性があり ます。このような場合には、別々の法律顧問が必要かもしれません。それでも、弁護士/依頼者間の秘 匿特権や、共同防衛合意のもとで情報を共有することは、有益かつ適切である例が多く見受けられます。
調査は迅速かつ内密に行われるべきであり、経営幹部の全面的な協力が不可欠です。かつて雇われ
ていた従業者、特に不満を持っている者については、適切な扱いが必要です。内部の弁護士は面談の 結果に利害関係がある可能性があるため、このような場合には、外部の弁護士が最も適切に面談を行 うことができるのかもしれません。内部監査人の代わりに、外部の弁護士は客観的に事実を明らかにす ることができます。
面談の実施
面談は、できるかぎり議論にならないように行う方がよいでしょう。面談の冒頭では、背景に関する 質問や、自由に回答させる質問をし、書類についても、対立的にならない質問をします。議論になる可 能性がより高い質問や反対尋問が必要な場合には、後に回すべきです。法律顧問は、自身の個人的な 意見を面談の中で述べたり、従業者に対して仮説や一連の事実を示唆したりすることは、絶対にすべき ではありません。従業者が、出来事を思い出すのを助けるためであろうと、また他のどのような理由であ ろうと、そのような言動は避けるべきです。政府が捜査に関与している可能性がある場合には、(以下に 述べるような)司法妨害で罰せられる可能性を別にしても、従業者の意識にある示唆を植えつけること により、法律顧問は、実際に起きたことを突きとめる手腕を損なう可能性があります。
書類
書類の収集および作成の重要性
金融捜査官の主な目的は、銀行、証券会社、マネー・サービス業者、カジノ等を通じた資金の 動きを追跡することにあります。「金融捜査:犯罪の検知と解決のための金融面からのアプローチ」
(Financial Investigations: A Financial Approach to Detecting and Resolving Crime)と題 された本の中で、米国財務省と内国歳入庁(Internal Revenue Service:IRS)は、金融犯罪の捜 査において、調査に値する数多くの領域についてまとめています。この本は米国の金融機関を扱ったも のではありますが、基本的な原則と理論の多くは、世界中の金融機関に適用することができます。
金融機関は、業務上、資金の動きを取り込み、計算し、支払い、記録しているため、膨大な情報を 手元に持っています。これは、金融業界で働く者にとっては、誰の目にも明らかなことです。
銀行は、口座開設時に回収する署名カード、口座明細、預金伝票、小切手、引落し、入出金帳票
(Credit And Debit Memorandum)を保管しています。銀行はまた、貸付、銀行小切手、銀行 保証小切手、トラベラーズ・チェック、マネー・オーダー(Money Order)等の記録も保管していま す。銀行は、多くのマネー・サービス業者と同様に、通貨の両替を行い、第三者小切手を換金し、電 信送金を行います。銀行はまた、貸金庫の提供も行い、クレジット・カードの発行も行います。
通常、銀行は顧客の口座の記録を5年間保管するよう求められています。この規制は国によって異な ることもありますが、金融機関のコンプライアンス担当者が、これらの法的要件を認識していることが重 要です。口座の記録と、口座以外の他の取引の記録は、その一部が捜査中に要求または押収されるこ ともあります。これらは、マネー・ローンダリングの疑いを追跡するための鍵となります。
あらゆるマネー・ローンダリングの捜査において、疑わしい取引のあった時期とその前後数カ月のもの
を対象に、これらの書類は徹底的に調査する必要があります。
米国の財務省とIRSの前述の本によると、マネー・ローンダリングの疑いを捜査するにあたって、金 融機関は次のようなパターンを考慮する必要があります。
■既知の収入源と比べて、毎月の残高が不自然に高い。
■合法的な収入源に起因しない、不自然に高額な預金、端数のない金額の預金、同じ金額で 繰返される預金。
■報告基準未満の、複数回の預け入れ。
■預け入れのタイミング。違法な支払の日付が判明している場合は特に重要となる。
■不自然に大きな額で振り出された小切手(容疑者の既知の取引に関して)。
■口座に動きがないこと。これは、現金で取引をしている、または、明らかになっていない 別の銀行口座があることを示している可能性がある。
(レッド・フラッグの完全なリストについては、AMLプログラムのセクションも参照)
書類のレビュー中に、犯罪行為の解明に役立つ情報を発見するケースはよくあります。重要な情報 は、社内のメモ、取引の書類、カレンダー、電子メール、財務記録、旅行の記録、電話の通話記 録、署名カード、預金伝票、小切手、引落し、入出金帳票(Credit And Debit Memorandum)、
貸付の記録等、さまざまな種類の書類において発見される可能性があります。
捜査対象になっている活動に関する最良の記録が書類から得られることがよくあります。書類によっ て、動機と意図が立証されることも多く、また、ホワイトカラー犯罪の立件においては、容疑者の意 図を判断する上で書類が大きな役割を果たすことがあります(意図とは、あることを行う決定または決 意、もしくは、何かを行う際の精神状態を言います)。
検察官らは、“意図”を判断することに非常に関心を持っています。また、その会社の意図についての 検察官らの決定は、会社が刑事責任を負うか否かの決定の決め手となる場合があります。政府はこのこ とを十分に認識しており、その結果、書類の召喚令状は、しばしば、広範で包括的なものになります。
関連書類の収集と整理が十分に準備されていないと、あらゆるトラブルの元となる可能性があります。
単に法律顧問が事実を十分に理解できないという問題から、秘匿特権の対象となる書類の作成に不注 意があったことに起因する、弁護士/依頼者間の秘匿特権の放棄という様々な問題が発生する可能性 があります。さらに、仮に政府が、書類が隠された、破棄された、または改ざんされたと結論づけたと すると、司法妨害の重い責任を負わされることになります。
以上のような理由から、書類レビューの開始前であっても、法律顧問は、潜在的で取り返しのつか ないダメージを会社が負わずに済むように行動するべきです。第一に、法律顧問は、関連書類が改ざ ん、紛失、破損していないことを確実にすべきです。さらに、社内でそれを知るべきすべての人に、書 類が移動、改ざん、破棄されてはならないということを周知すべきです。法律顧問からすべての関係従 業者へメモを送ることで、これを行うことができます。もしも、このようなメモを送ったために、特定の従 業者が書類を改ざんしたり破棄したりする恐れがあるのであれば、このような状況では後述のように、ま た別の処置が必要です。
また、会社の書類破棄のポリシーがある場合、法律顧問は直ちに書類破棄のポリシーに重点的に取 り組み、書類が検査中に破棄されることがないようにすべきです。政府の捜査に関連のある書類が、検