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真の受益者を隠すためデザインされた仕組みと マネー・ローンダリングのリスク

シェル会社

マネー・ローンダリングを促進するためのシェル会社やシェルフ・カンパニー(Shelf Company)の 利用は、これまでもよく取り上げられている犯罪類型です。

FATFによる定義は以下のとおりです。

シェルフ・カンパニー(Shelf…Company):活動がない会社。設立され、商品のように“棚”の上 に置かれた状態となっている。この会社は、通常、新規に会社を設立するよりも既存の会社を購入した いと考える者に売却される。

シェル会社:法人として設立されるが、その時点で、資産を持たない、もしくは運営がなされていな い会社。

2006年10月に、FATFは、「信託や企業関連のサービス・プロバイダー(TCSP)を含めた企業事

業体の不正使用」(the Misuse of Corporate Vehicles, Including Trust and Company Service Providers)と題した報告書を公表しました。FATFによると、特に懸念されるのは、一部の法域(司 法権の異なる国や地域)で企業事業体の設立および解散が容易にでき、合法的な目的(事業のファイ ナンス、企業の吸収や合併、不動産や税金の管理等)だけでなく、金融犯罪に関わる者による資金源 や企業事業体所有者構造を隠すための不正使用でした。シェル会社は、オンショア、オフショアのどち らにも設立することができ、その所有者の構造には、複数の形式があります。株式は、自然人、法人の どちらに対しても発行することができ、また、記名式、無記名式のどちらでも発行することができます。

さらに、単一の目的のため、または単一の資産の保有のために設立される会社もあれば、多目的事業 体として設立される会社もあります。

FATFが、非協力的な国および地域に対する取り組みの一環として、マネー・ローンダリングの防止 および検知システムを損なう規制および慣例についてレビューを実施した際、特に以下について確認し ました。

シェル会社とその名義人(被指名者)

は、犯罪収益、特に、贈収賄の洗浄に広 く利用されます(例えば、不正資金の蓄 積)。したがって、その会社の身元を証明す る情報および真の受益者についての情報を 入手し共有することは、マネー・ローンダリ ングの防止および処罰の責を負う関係当局 にとって、極めて重要です。

2001年の「カナダにおけるマネー・ローンダリング:王室カナダ騎馬警察 (RCMP)事例の分析」

(Money Laundering in Canada: An Analysis of RCMP Cases)と題された報告書には、マ ネー・ローンダリング目的で会社の設立または管理を行う理由が4つ述べられています。

1. 犯罪で得た現金収益を、会社を利用することで別の資産に換えることができます。これ は、ハード・アセット(金や絵画等の有形資産)を扱う事業に投資をする場合に特に顕著 です。

2. シェル会社を利用することによって、マネー・ローンダラーは、違法な資金が、合法な資 金源から生み出されたものであるかのように見せかけることができます。一度会社を設立 してしまえば、商業用の口座を銀行やその他の金融機関に開設することができます。通 例、大量の現金取引を扱う事業(例えば小売店、レストラン、バー、ゲーム・センター、

ガソリンスタンド、食料品店、等)は、マネー・ローンダラーにとって特に都合がよいも のです。違法な資金は、合法的な収益として銀行口座に預け入れが可能です。違法な資 金のみを預ける場合もあれば、事業から合法的に得られた収益と混ぜて預け入れする場合 もあります。さらに会社はコミュニティにおける合法的な求人先を犯罪者に提供すること で、社会的に立派なイメージを醸成します。

記名式債券および無記名式株 券、もしくは “ 無記名株式 ” は、

表面上、その所有権は “ 持参人 ” にあ るため、マネー・ローンダリングの主 要な手段となっています。

  ある小さなピザ店の顧客は1日あたりわずか10人でした。その店の帳簿によると、突然 に、顧客が1日あたり数百人になりました。実は、依然として1日あたり10人しか入って おらず、実体的には何も変わっていません。あるホテルは、帳簿によると驚異的な売り上 げを記録しているものの、実際にはほとんど宿泊客が入っていません。しかしながら稼働 率は、ほぼ100%になっています。

典型的な犯罪者は無駄に資金を使うことを好まないので、このようなタイプのフロント企業の場合、

費用がこれまでと変わらないにもかかわらず、収益が急増します。上記のピザ店の場合、1日あたりの顧 客が突然数百人に増えたにもかかわらず、帳簿には、依然として10人分の費用(食材や人件費等)し か記録していません。

このような偽装手口で、違法に得た資金が事業に投入され、不正資金による偽装収益が作り出され ます。違法に得た資金は、フロント企業から得られた収益であるように見せかけることによって洗浄され ます。犯罪者は、その収益にかかる税金を納めます。

一般的に、フロント企業 の収益に合法的な収益が含まれていることもありますが、収益全体が犯罪 で得た資金の場合もあります。そうなると、本物の事業は、もはや存在しないことになります。このよう な場合は、犯罪者が、製造から卸売り、小売までといった、縦の事業の流れ全体を支配している可能 性があります。

3. 一度フロント企業を設立すると、マネー・ローンダリングを推進するために、合法的な取 引および/または偽装取引を、幅広く行うことが可能になります。例えば、犯罪者の管理 下にある会社間で貸し付けを行う、見せかけの費用または給与を支払う、商品またはサー ビスの代金を装って違法な資金を移動する、会社の株を一般に売り出す、シェル会社が抵 当権付き住宅ローンを組んだように見せかけて、犯罪から得た資金で不動産を購入する、

等の取引です。フロント企業は、犯罪組織やその他のマネー・ローンダリングを行う組織 の媒体として、柔軟にマネー・ローンダラーの特定の目的に応じます。例えば、不動産を 通してマネー・ローンダリングを行う犯罪組織は、不動産にアクセスしやすくするため に、不動産代理店や住宅ローン業者、開発会社、建設会社等を設立します。

4. フロント企業を利用すると、犯罪者が所有者であることを隠蔽することができます。表向 きの名義人を、所有者、取締役、役員、株主等にすることができます。カナダで会社を設 立する場合、タックス・ヘイブンに本拠地を置く会社の子会社として設立することが可能 です。タックス・ヘイブンの国々では、情報の機密性や開示に関する厳格な法律があり、

そのため、会社の所有者に関する調査が大幅に阻害されています。会社は、不動産等の資 産を会社名義で登録することにより、その資産を犯罪者が所有していることを隠すために も利用されます。

一般的に、シェル会社は、犯罪組織によって合法的に設立および登記されますが、マネー・ローン ダリング以外に実質的な事業を行っていないケースが多くみられます。会社は、弁護士、会計士、業 務代行会社によって“棚(シェルフ:Shelf)から”買い取られて利用されることが多く、マネー・ローン

ダリングのための便利な媒体になっています。会社を利用すれば、資金の真の受益者が誰であるかを 隠すことができます。会社がオフショアにあるため、あるいは情報の機密を主張する職業専門家によって 管理されているため、法執行機関が会社の記録にアクセスすることが、一層困難になることが多々あり ます。そして、これらの専門家は、離れた場所から匿名で出される指示に基づいて会社を運営していま す。シェル会社は、わずかな開業資金で、かつ合法的な事業の実体がなくとも、容易に設立可能です。

犯罪に関与する企業は、違法な資金を洗浄するために、実体のある事業者を利用することもありま す。これらの事業者は、シェル会社とは異なり、産業、卸売、小売、サービス等を消費者に提供し、

合法的に運営されています。

シェル会社や合法的な会社が設立されると、その会社の主たる目的は、犯罪収益を合法的なものと して主張することや、犯罪収益を合法的な利益と混ぜることになります(多くの場合、商業用の銀行口 座に預けられます)。

カナダの報告書は、犯罪者が支配する会社に関連したマネー・ローンダリングの手口について述べて います。

■会社の所有者または取締役に名義人を利用—会社と犯罪者とのつながりを分かりにくくす るために、表向きには名義人を会社の所有者、役員、取締役等にしておきます。名義人に は、前科のない人間を選ぶことが多いのですが、前科がある場合もあります。弁護士が会 社設立の手続きをした場合、その弁護士の名前で登記されることがよくあります。

■レイヤリング —場合によっては、設立された多数の会社が、様々な階層の所有者でつな がっていることがあります。この場合、書類上の記録を曖昧にしながら、犯罪者である所 有者を隠蔽し、会社間で違法な資金移動を進めることができます。

■ローン —犯罪収益を犯罪者の支配する会社へ融資することで、資金洗浄が可能です。前 述のカナダの報告書によると、次のような事例がありました。トロントの麻薬密売人が、

シェル会社名義の銀行口座に50万ドルを保有していました。この資金は、犯罪組織が運 営するレストランに再投資されましたが、レストランには100万ドルのコストを要しま した。まず、頭金の5万ドルは、合法的な資金で払い込まれ、適正に申告されました。次 に、銀行との交渉で、45万ドルのモーゲージローンを組みました。残りの50万ドルは、

犯罪組織のシェル会社の銀行口座から“借りた”ことにしました。この50万ドルは、疑い がかからないようにするために、再投資されたのです。

■架空の事業費…/…偽の請求書 —犯罪者の企業が、様々な法域(司法権の異なる国や地域)

における事業体を支配するようになると、“二重請求”と呼ばれるマネー・ローンダリング の手口を使えるようになると、前述のカナダの報告書が述べています。まず、オフショ ア会社が、カナダにある自分の子会社に商品を注文し、代金はカナダの子会社の銀行口座 に全額送金します。会社は両方とも犯罪組織が所有しているので、商品に対する“支払い”

は、実はカナダから秘かに持ち出した違法な資金を、カナダに戻しているのです。さら に、カナダの会社が、高額の商品代金を請求されていれば、会社の帳簿上、利益が減り、

納税の支払額はより低くなります。このことは、また逆の場合にも利用できます。オフ ショア会社がカナダの会社から、高すぎる価格で商品を購入します。そして、真の価格と