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国際取引に対する米国の立法および規制上の主なイニシアチブ

本ガイドでは、国際取引や米国外の法域(司法権の異なる国や地域)に影響を及ぼすマネー・ロー ンダリングおよびテロ資金供与に関する、米国法律の主な要素の概要について説明します。

米国愛国者法・USA Patriot Act

2001年の9・11テロ攻撃に動機付けられ、また、テロ資金供与のメカニズムを解明し、機能させな いようにするという必要に迫られ、米国議会は、マネー・ローンダリング関連の各種法律および銀行秘 密法(Bank Secrecy Act:BSA)を強化しました。それは、1970年の銀行秘密法および1986年の 世界初のマネー・ローンダリング法の制定以来、かつて無いレベルでの強化でした。

2001年10月の米国愛国者法(米国公法第107-56号)は、過去70年間の米国の法律の中で、最 も広範囲に影響を及ぼすものとなりました。本法第3編は、「国際的なマネー・ローンダリング阻止お よびテロ資金供与防止法」 ( International Money Laundering Abatement and Anti-Terrorist Financing Act of 2001)と呼ばれ、マネー・ローンダリング関連条項のほとんどを含んでいます。

米国愛国者法によって、米国政府は世界中すべての金融機関および企業の財産に手を伸ばすこと、

および米国内での機能を停止することが可能になりました。

米国愛国者法は、米国企業はもとより米国内で活動を行う国際的な企業に影響があります。中でも 重要なのが、米国財務省が公布した、金融機関が遵守しなければならない条項の詳細を明記した米 国愛国者法の規則です。本規則は、連邦規則集第103部第31条銀行秘密法の規則に含まれています。

米国愛国者法の重要な条項の前提には、米国金融機関自身が、自らを通じた米国の金融システムに 対する国際的なアクセスを管理しなければならない、という規制があります。米国愛国者法は、外国の 事業に影響を与えるマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与に関する問題等、広い範囲を規定して おり、例えば以下のような事項も含まれています。

311条:マネー・ローンダリングの主要懸念対象に対する特別措置(米国連邦法典第31編第5318 条A)(Special Measures for Primary Money Laundering Concerns:31 U.S.C. 5318A)によ り、米国財務省は、財務長官が“マネー・ローンダリングの主要懸念対象”であるとした、外国の法域

(司法権の異なる国や地域)、外国の金融機関、特定の種類もしくは国際取引や口座に対し、段階 的かつ規模に見合った措置を適用するよう定めています。“マネー・ローンダリングの主要懸念対象”で ある国や金融機関を指定することで、政府は米国銀行に、指定対象との金融取引停止させることができ る。指定がなされると、財務省は、国内の金融機関に対し、下記の5つの特別措置のいずれか(1ま たは複数)を適用することができます。

1. 取引に関わった者の身元や、資金の真の受益者等、特定の取引に関する記録の保持および報 告書の提出

2. 外国人やその代理人によって、米国内で開設もしくは維持されている口座の真の受益者の情 報の取得

3. 外国の銀行に開設されたペイヤブル・スルー口座(Payable-Through Account:PTA)の 利用もしくは口座を通じた取引の実施を認められている顧客の情報の特定と取得

4. 外国銀行の“コルレス”口座の利用を認められている顧客、もしくは、外国銀行の“コルレス”

口座を通じた取引が行われている顧客の情報の特定と取得

5. 特定のペイヤブル・スルー口座(PTA)もしくはコルレス口座の閉鎖

すべての関連要素が考慮されることを確実にするため、財務長官はマネー・ローンダリングの 主要懸念対象と法域(司法権の異なる国や地域)、機関、特定の種類の取引や口座を指定す る前に、国務長官および司法長官と協議しなければなりません。米国政府は、311条を使っ て、ウクライナやナウル共和国等の国との資金関係を断ち、ラトビア、マカオ、ミャンマー の銀行等、特定の法人を指摘しました。

312条:コルレス口座やプライベート・バンキング口座について(米国連邦法典第31編第5318条

(i))。外国のコルレス口座(金融機関が外国の金融機関との間に持つほぼすべての口座関係を含 む)やプライベート・バンキング口座に対し、“強化された顧客管理”を行うことを要求しています。

2005年12月に、米国財務省金融犯罪執行機関連絡室(U.S. Financial Crimes Enforcement Network:FinCEN)は、312条を公布しました。312条は、2006年1月初旬に公示され、同年発効 されました。新規開設口座に対しては、公示の90日後、既存の口座に対しては公示の270日後に発効 しました。また、FinCENは、外国の銀行と提携する特定のオフショア銀行におけるコルレス口座に対す る顧客管理手続きを確立する、新たな規制も提案しました。

そのうちコルレス・バンキングに関する規定は、銀行、証券会社、先物取次業者、 商品取次業者、

投資信託(ミューチュアル・ファンド:Mutual Fund)に適用されます。ミューチュアル・ファンドは、

現在コルレス口座を扱っていませんが、外国の金融機関に口座を保持していて、外国の金融機関が当 口座に顧客用のミューチュアル・ファンド関連投資を保有し、その外国の金融機関が、支払いを行っ たり、その他の金融取引を処理することもあります。このような口座は、コルレス口座に類似しているた め、本規定の対象となります。

FinCENは、規定の対象である外国の金融機関の定義を、マネー・ローンダリングの重大なリスクを 有する金融機関に限定しました。中には、外国の銀行、米国の銀行の海外支店、外国の証券会社や 先物取次業者、商品ブローカーもしくは米国内で営業するミューチュアル・ファンド、外国で設立され た送金サービス業者や通貨両替業者等が挙げられます。

コルレス口座の定義が広すぎるという金融業界からの意見があったものの、FinCENは、提案した規 定に用いられた定義を変更しませんでした。しかし、FinCENは、顧客管理要件を事実上さらにリスク ベースとするよう変更し、金融機関に対して柔軟な対応を示しました。

顧客管理プログラムは、米国で保持されているコルレス口座について、マネー・ローンダリングの疑い のある取引を報告するための、“適切かつ具体的で、リスクベースの”追加的なポリシー、手続き、統制 を含んでいる必要があります。また、同プログラムは、金融機関のAMLプログラムにも含まれていなけ ればなりません。

プライベート・バンキングに関する規程も、コルレス・バンキングの規程と同様の範囲の金融機関に 適用されます。対象金融機関は、重要な公的地位を有する者およびその親族と側近のプライベート・バ ンキング口座の追加的な精査等、プライベート・バンキング口座に対する顧客管理を実施する必要があ ります。

本規程の対象は、1人以上の非米国人によって、100万ドル以上の預金が維持され、かつ、その非 米国人との連絡係に銀行の従業者が割り当てられているプライベート・バンキング口座です。口座の残 高が100万ドル未満の場合、本規程の対象にはなりませんが、金融機関内部のマネー・ローンダリン グ統制の対象でなければなりません。

プライベート・バンキングの顧客管理プログラムには、米国の口座内でマネー・ローンダリングの疑い もしくは疑わしい活動を検知するための、ポリシーと手続きが必要です。

対象のプライベート・バンキング口座に関して、米国の金融機関は、口座の名目上の所有者と真の 受益者を見分け、どちらかが“外国の政治的に影響力のある人物”に該当するかを確認する必要があり ます。もし該当する場合、金融機関は“追加的な精査”を実施し、口座の資金源、目的、想定される用 途を調べる必要があります。また、金融機関は口座をモニタリングし、資金源、目的、想定される用途 の情報が実態と一致しているか確認する必要があります。

おそらく、この規定に最も期待されていたことの1つは、“外国の政治的に影響力のある人物”もしくは PEP(重要な公的地位を有する者)を定義づけることでした。しかし、最終的な規定における定義は、

提案されていたものとほぼ同じであり、意外なものではありませんでした。FinCENは、これらの顧客 を、選挙で選ばれたかどうかにかかわらず“外国政府の立法府、行政府、軍部、司法府等に属する、

現職またはかつての政府高官”と定義しました。外国の政党の幹部や、国有企業の役員も含まれます。

また、定義には、親族や、側近であると“広く一般に知られている”人物も含まれます。

これら個人口座を管理する金融機関は、その外国の資金が“外国での汚職による収益に関係している 可能性があるか”を調べるために、“追加的な精査”を行わなければなりません。これには、“公的資金 の横領、窃盗、および着服によって得られた”あらゆる財産、“外国政府の財産の転換、賄賂もしくは ゆすり、あるいは、このような資産の転換もしくは転換後の財産”が含まれます。

本規程が“外国の政治的に影響力のある人物”に焦点を当てているのは、米国愛国者法の規定を受 けてのものであり、2001年1月にクリントン政権が米国の金融機関に対して発表した“ガイダンス”を継 続するものです。クリントン政権によるガイダンスは、外国の汚職による収益を検知、拒絶、報告するた めの、個人の資金口座の扱いに関するものでした。

313条:米国の銀行と証券業者による物理的に存在しない無規制の“シェル”バンクにおけるコルレ ス口座の保持禁止について(米国連邦法典第31編第5318条(i))、さらに金融機関に対し、コルレ ス口座を保有する相手方外国銀行が、外国のシェル・バンクからの口座へのアクセスを容認しない等 の、適切な対策を講じるよう求めています。本禁止条項は2001年12月26日に発効しました。財務省は 2002年9月18日に最後の規定を公表し、銀行と証券業者に対して、規定を遵守するため、特定の証明 書の書式を使用することを許可しました。米国銀行や証券業者によって、コルレス口座の相手方である 外国の銀行に、本証明書の書式が送られ、外国銀行は自らがシェル・バンクでないこと、および、ネ スティングされたコルレス関係を通じ、米国のコルレス口座に対するシェル・バンクによるアクセスを容認