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金融機関や企業は、多大な犠牲を払って、顧客と同様に内部の人間もマネー・ローンダリングの 脅威をもたらし得ることを学んできました。AMLの分野では、顧客確認(Know Your Customer:

KYC)プログラムおよび従業者確認(Know Your Employee:KYE)プログラムの両方を同等に行う ことは、必要不可欠であることが明らかになってきました。

時間、費用および評判を犠牲にする前に、問題を識別および予想する取り組みの一環として、企業 は組織内の者を厳しくモニタリングするプログラムを開発しています。

従業者確認 (Know Your Employee:KYE)プログラムとは、企業が従業者の身元、利益相反、

マネー・ローンダリングの共犯者になる危険度を理解するために用いるプログラムで、企業が整備しま す。ポリシーと手続き、内部統制、職務記述書、指針および倫理規程、権限のレベル、就業規則およ び法規制の遵守、責任の所在の明確化、二重統制、その他の抑止手段が、厳格に実施されているべ きです。

採用候補者や現職の従業者の、とりわけ犯罪歴に関する身元調査は、望ましくない従業者を締め出 し、排除すべき従業者を識別するために極めて重要です。雇用者による強制的な身元調査が、法律上 義務付けられている業界もありますが、ほとんどの業界では依然として雇用者の判断に委ねられていま す。

米 国 の 銀 行 監 督 機 関 の1つ で あ る 連 邦 預 金 保 険 公 社(Federal Deposit Insurance Corporation:FDIC)は、「採用前の身元調査:採用前の効果的な身元調査プロセスの開発に 関するガイダンス」(Pre-Employment Background Screening: Guidance on Developing an Effective Pre-Employment Background Screening Process)という文書で、従業者の身元調査 に関するガイダンスを提供しています。

身元調査は、応募者から提供された情報は事実であり、犯罪記録はないという保証を経営陣に提供 することにより、効果的なリスク管理のツールとなる可能性があります。採用前の身元調査を効果的に 利用すれば、候補者がそのポジションに必要なスキル、資格、免許もしくは学位を持っていることを実 証でき、離職率を減らし、盗難や横領を予防し、そして従業者の採用に関する訴訟を防止することがで きるかもしれません。企業は、自社の従業者に対する身元調査手続きと同様の手続きを、請負業者も 実施していることを確認すべきです。

効果的な審査プロセスの開発と導入に費 用はつきものです。しかし、そのようなプロセ スを経ずに採用すると、銀行は、従業者を 募集し、採用し、トレーニングを実施し、さ らには、不適任な個人を解雇するのに、多 大な費用を負担しなければならないかもしれ ません。

詐欺やマネー・ローンダリングが関係する

犯罪で有罪判決を受けた人物が自社の関係者になったり、関係者であり続けたりすることは、規制で 禁止されている場合もあります。また、直接または間接的に、被保険企業を所有または支配すること、

あるいは、被保険企業の業務に、監督機関の事前の書面による合意なしに、直接または間接に関与す ることが、規制で禁止されている場合があります。金融機関の業務に関与するコンサルタントも、この 規制の対象になる可能性があります。

したがって、すべての金融機関は、採用前の身元調査を確立すべきです。調査によって、少なくと も候補者の犯罪歴に関する情報は、明らかにしなければなりません。時には、調査のレベルを上げ

間、費用および評判を犠牲にす る前に、問題を識別し、予期す る取り組みの一環として、企業は組織 内の者を厳しくモニタリングするプロ グラムを開発しています。

る必要がある場合もあります。そのポジションの危険度や従業者個人のアクセス・レベルによっては、

追加的な身元調査は当然のことかもしれません。連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporation:FDIC)によると、追加的な身元調査には、紹介状、職務経験、教育、職業資格の検 証が含まれます。

さらに、経営陣が顧客の身元を検証するのと同様に、採用候補者の身元も検証すべきです。雇用 後、状況の変化に応じながら特定のポジションに関して、または、一定の期間ごとに各部署の従業者 に関する包括的な再検証を行うために、継続的な身元調査のアプローチを検討すべきです。FDICによ ると、経営陣は、候補者や従業者が提供した情報が、調査で明らかになった情報と異なる場合の対応 法を示すポリシーも整備すべきだとしています。

金融機関は、犯罪に関与する恐れのあるポジションにいる従業者へ指紋審査を定期的に行う場合が あります。また、従業者の昇進を考慮している時に、業者と契約して広範囲に及ぶ身元調査を行うかも しれません。そのような調査手続きを整備しなければ、金融機関は、法的に不適切な人物の雇用禁止 に反するリスクがあります。調査の程度は、合理性を基準に、状況によって決められます。

実例

  ニューヨーク銀行 (Bank of New York:BONY)の事例は、金融機関自身の従業者が引 き起こし得る犯罪に対する金融機関の脆弱性について、多くを語っています。BONYの東欧 州支部のヴァイス・プレジデントであるルーシー・エドワーズ(Lucy Edwards)は、ピー ター・ベルリン (Peter Berlin)を銀行に紹介しました。彼は、ニューヨーク銀行に口座を 複数開設し、それらの口座を経由して3年間に70億ドル以上の資金を移動しました(報道に よると、エドワーズは銀行に対し、ベルリンが彼女の夫である旨の通知を怠りました。ま た、確認も行われませんでした)。1996年の7カ月間で、ベルリンはBONYに、ベネックス・

インターナショナル(Benex International Co. Inc.)とBECSインターナショナル(BECS International L.L.C.)用に2つの口座を開設しました。この2社は、ベルリン氏の支配下に あり、また、この2社とエドワーズとの間に利害関係がありましたが、このことは隠されて いました。1998年に、ベルリンはBONYに、ローランド (Lowland Inc.) 名義でもう1つの 口座を開設しましたが、この会社も彼の支配下にありました。42カ月の間に、3つの会社 を合わせて70億ドルを超える金額がBONYに預けられました。そして、ロシアの税金や関 税、その他の公的義務を逃れようとしたロシアの銀行や他の顧客の要求により、預け入れ後 間もなくほとんどすべての資金はオフショアに移動されました。

  ベルリンが支配する3つの会社に商業的な目的等はありませんでした。それらの唯一の機 能は、ロシアの銀行や他の顧客から電信送金を受け取り、BONYの口座に預金し、それをオ フショア口座、あるいはロシアの顧客の取引先へ送金することでした。ベネックスとBECS のニューヨークでの住所は、ロシアで告発を受けているロシアの銀行によって支配されて いた、無許可の送金サービス業者であるトルフィネックス(Torfinex)の事務所と同じもの でした。BONYの主要なサービス区域に事務所があるベネックス、BECS、ローランドは、

ニューヨークの法律下では、送金サービス業者として登録されていませんでした。州の免許

なしに送金ビジネスを営むことは、米国では1992年より連邦法違反となっています(合衆 国法典第18編第1960条) 。エドワーズはベネックスの役員、BECSの取締役、BECSの口座 の署名者を務めていました。ロシアの銀行は、数十億ドルをベネックス、BECS、ローラン ドの口座に、BONYのコルレス銀行口座を使って送金しました。そのうちのいくつかは、エ ドワーズによって開設されていました。

  マネー・ローンダリング・ヘブンとしてよく知られるナウルの南太平洋の島々で登録され ているシェル・バンクの名前を使い、 ロシアの2つの銀行が保有していたBONYのコルレス 口座を通じて、30億ドル以上が電信送金でベネックスとBECSの口座に流れました。ベルリ ンとエドワーズがサービスを提供していたロシアの顧客は、BONYに、ナウルのシェル・バ ンクの事務所がオーストラリアとニュージャージーにあるという嘘の情報を伝えました。

1998年6月に、FBIは、“ロシアで誘拐されたロシア実業家の身代金の支払い”との名目で30 万ドルの振り込み先であるBECSの口座の取引を捜査しました。41カ月の間に、ベルリンと エドワーズは、BONYにあるベネックス、BECSとローランドの口座に資金を預け入れた手 数料として、ロシアの顧客からおよそ180万ドルを受け取りました。この金は、べネック ス、ロシアの会社、およびBONYのロシアのコルレス銀行の名義で、BONYにおける口座を 通じて支払われました。ベルリンとエドワーズは、受け取った手数料を、マン島にあるバー クレイズ銀行(Barclays Bank) とロンドンにあるミッドランド銀行(Midland Bank)で 管理されているオフショア会社の口座に送るように指示しました。