● まとめ
● 復習問題
調 査プロセスの実施または支援 5 章
イントロダクション
世界中の銀行やその他の事業者は、犯罪収益の洗浄防止のために、コンプライアンス・プログラム へ何百万ドルもの投資を行います。しかしこれらの取り組みは、企業やその役員による犯罪行為への加 担や、他の人物の起訴に必要な証拠を有するという疑いから生じる政府の犯罪捜査の対象から、当該 企業やその役員が外れるということを保証してくれるものではありません。
AMLコンプライアンス・プログラムの章で述べたように、従業者がマネー・ローンダリングに加担して いる場合があります。もし、“内部不正”が疑われる場合、その疑いを確認し、必要な措置を講じるため の内部調査が必要です。
内部調査は様々な理由で行われますが、通常、企業内部調査は企業の違法行為に関する政府の捜 査から発生します。例えば次に挙げるような事項を通じて、そのような違法行為が発覚します。
■政府監査人の報告書や声明
■顧客等第三者からの情報
■従業者や社内ホットラインからの情報
■政府の召喚令状の受領
■捜査令状を持った捜査官の訪問
■政府の捜査官が、従業者、取引先、顧客、さらに競合会社に対して情報収集をしていると いう事実の発覚
■会社に対する民事訴訟
内部調査のタイミング
内部調査は、2つの状況において行われます。1つは、政府による捜査の前に、会社が内部の不正 行為を疑う場合であり、場合によっては、従業者による別の従業者に対する苦情、監査、またはその 他の発見から疑いが発生します。もう1つは、政府による捜査が開始された場合です。独立した内部調 査によって、法律や内部ポリシーの違反の事実を究明することができます。
内部調査の実施は、取締役会によって決定 されるべきです。取締役会には、会社が違法 行為に関与していないと確認し、また、潜在 的な民事もしくは刑事責任から会社を守るとい う信任義務が課せられています。
一方で、会社は、内部調査に係るリスクを 知る必要があります。最も重大なリスクは、法 律顧問(Counsel)によって自社のために作
成された内部調査の詳細報告書を、政府や第三者である民事訴訟当事者に開示しなければならないこ とです。また、内部調査によって、従業者が会社に反発したり、従業者が自らの責任への懸念から政
内
部調査の実施を決定する 際、最終的な影響について 考慮する必要があります。府と協力して会社に不利な証人となったりする場合があります。つまり、内部調査は必要なものではあり ますが、実施理由および方法に気を配る必要があります。
内部調査の実施を決定する際、最終的な影響について考慮する必要があります。刑事および/もしく は民事責任が問われる行為が発生したと考えられる場合には、経営幹部は、内部調査を通じてその経 緯を調べる指示を出すべきです。
問題の性質や範囲を理解する必要性、解決策の模索、風評リスクの回避、そして規制の遵守義務 等によって、内部調査の実施が必要になります。調査の目的は、会社の責任を最小限に抑えるため に、不正の性質や範囲について知り、マネー・ローンダリングを阻止し、事実に基づいた法的助言を 弁護士から得ることです。
会社に対する訴訟の回避は非常に重要であり、内部調査は刑事手続きを避けるのに役立ちます。し かし、刑事手続きが完全に避けられない場合でも、内部調査が実施されたという事実は、会社のリス クを大きく減らします。例えば、企業による違反の自己申告は、何百万ドルという罰金の軽減につなが ります。また、従前から企業がコンプライアンス・プログラムを実施していた場合も、軽減が検討されま す。また、自主的な開示により、政府による起訴の回避や、少なくとも判決に好影響を与える場合もあ ります。さらに、あらゆる民事訴訟の処理においても、内部調査は役に立ちます。
調査の種類
調査の理由によって、どのような種類の調査を行うかが決定されます。政府の措置に対応して調査が 行われる場合、その調査は、通常は事後対応的な性格のものであり、第三者が興味を示す、特定の 問題に限られます。
しかし、会社のポリシー、手続きおよび政府の規制に対する違反に関する調査であれば、より広範な 調査が行われます。
政府による捜査という状況において、政府が何の行為に関して捜査をしているのかは、すぐには明確 になりません。
捜査に関してできる限りのことをすべて速やかに把握します。最初の通知が、捜査機関以外から発生 したものであれば、捜査機関に連絡する前に、その情報元が知っていることをすべて把握しましょう。
捜査機関に連絡を取る際、できる限りの詳細を求めます。協力的な姿勢を見せ、問題の調査にすぐに 取り組む印象を与えます。
法律顧問は、検察官や政府機関に会い、早期の捜査段階における話し合いへの意向次第ですが、
捜査内容について個別の理解を得ることができます。外部の弁護士と捜査機関を最初に接触させるの は、できるだけ避けます。大抵の場合、代表者が捜査機関に最初に接触することが重要で、捜査機関 から会社の“ボディーガード”と見られそうな人物が最初に接触するのは好ましくありません。
経営幹部への捜査に関する報告は、あなたが業務遂行し、事態を掌握する上で大変重要です。経 営幹部に対して、事態に対処できる自信を示すように話しましょう。捜査の最中に怯える経営幹部ほど 悪影響を及ぼすものは他にありません。
その後の事実収集から得た内部情報の伝達方法を含め、置かれている状況から発生するあらゆる事 柄を処理するために、社内弁護士(In-house LawerもしくはIn-house Counsel)が率いる小規模で 高いレベルのマネージャー・チームを作る指示を、経営幹部に求めます。
内部および外部監査人に対して、本件に関する今後の活動は法律顧問(Counsel)の指揮の下で 行われ、また法律顧問によってのみ利用される、という指示を書面上で速やかに提出します。これによ り、事実収集に関する法的特権を最大限に活用することになります。
政府から取り調べを受けた従業者から報告を求めます。もちろん、取り調べの前に話し合いを行うの がより好ましいと言えます。事後的な従業者による報告は役立ちますが、事前の面談ほど重要ではあり ません。
調査における法律顧問(Counsel)の選択
大手銀行や証券業者等の多くの金融機関には、法律顧問(Legal Counsel)がいます。しかし、小 規模なマネー・サービス業者のような、他の多くの金融機関には法律顧問がいません。どちらにしても、
政府の捜査に直面する際は、経験豊富な外部の法律顧問を雇う、もしくは相談するのがよいでしょう。
内部調査が、社内弁護士(In-house Counsel)か顧問弁護士(Retained Counsel)のどちらの 指導下で行われるかは、会社の規模、予算、調査の性質、調査対象の問題に関する社内弁護士の役 割、調査実施の経験、起訴の可能性等、様々な要因によります。それぞれの選択肢には利点がありま すが、政府の捜査を受ける場合には、顧問弁護士に実施させる傾向にあります。
社内弁護士を使う場合、出費を抑えられ、会社の人員、ポリシー、手続きについてより深い知識を 持っているという利点があります。しかし、もし捜査対象になっている行為が、刑事捜査、起訴および 民事裁判につながる場合、いずれにしても社内弁護士が携わることになります。外部の弁護士が最初か ら同じ機能を果たせる限りにおいては、その方がコストを最小限に抑えられる可能性があります。
アラート・グローバル・メディア (Alert Global Media Inc.)と米国弁護士メディア(American Lawyer Media LLP)によって、フロリダ州マイアミ・ビーチで開催された第4回国際マネー・ローンダ リング協議で、クリストファー・H・シーモア氏(Christopher H. Seymour, Esq)が発表した文書で は、“先行的な対策”が提示されています。
何よりもまず、あなたやあなたの職員が状況に対して冷静かつ効率的に処理する能力を、事前に把握 します。日々の要求される仕事量、問題処理の経験、個人の性格を考慮します。できるだけ正直に鋭 い目で評価します。適切な外部の弁護士を選び、また、社内弁護士が法執行機関や規制当局からの 接触があった場合にどのような役割を果たすべきかを把握するのに、これらの評価が正確に行われるこ とが重要です。
評価の後、マネー・ローンダリング関連事項に対処した経験を持つ外部の弁護士の名簿を事前に用 意します。名簿の準備は、次のように行います。
■あなたや監督機関に知られている弁護士や、弁護士名簿等の一般的な方法から、資料を集 めます。面接をする場合、1つの場所に限らない方がいいかもしれません。役立つ有効な 人材は様々な場所に存在し、政府の捜査はどこでも発生し得るので、1つの場所に限定し