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      L3.被調査者の構成  31  嵐生地を性別に見ると表1−11のようになる。岡崎市で生まれた者は男性の 方が多くなっている反面,女盤は三河生まれが多くなっている。金体では岡崎 市で生まれた者が57.8%であり,三河・尾張まで含めると実に90。8%にのぼっ ている。継続調査の数値と比べると,地元との結びつきがより強いことがわか

る。

 個人ごとに前回調査と日賦調査の出生地をつき合わせてみると,異なったコ ードをとったものが若干卜いた。ここには示さなかったが,父の出身地,母の 出軍地になると,さらに不一致の数が増加している。出生地などは本来変わら ないはずのものである。前に示した学歴と同様,これらはパネル調査の問題点 として今後肴えていかねばならない事柄であろう。これらについては,とりあ えずは今回調査の結果を優先させた。

 なお最後に,今回のパネル調査と同一年齢範囲(30代後半以上)にある継続 調査の被調査者(197名)について,年齢・学歴の性別構成を表1−12に掲げて おく。パネル調査と継続調査の結果を比較するときには,特に性および年齢構 成の違いに注意する必要があろう。

裏1−12 パネル・継続両調査の性×年齢・学歴踊構成

ノぐネ ノレ調査

継 統 調 叢

男 女

全体

金体

30代後半

S0代

2。 前回調査の概要

2.1. 目 的

 B本語の著しい特徴といわれる敬語は,封建時代の遺習であるから,民主主 義の世の中では当然溝算すべきであるという考え方がある。しかし一方,民主 主義の基本は個人が互いに他を尊敬することにかかっており,その敬意をあら わす有効な手段は敬語であるから,これからの世の中ではある程度の敬語は必 要だともいえる。その敬語とはできるだけ簡素な敬語であろう。

 前回調査の報告書では,その昌的の章を大体以上のように述べて起こしてい る。戦後まだ5〜6年しかたたないころのこの調査の企画段階での一般的な社 会情勢をよく反映した文章である。今さらここで後ろ向きの敬語の調査を,と

いう考えは当時確かに有力に存在したのである。

 さて,この前回調査の報告書では,翼的についてさらに次のように言う。

 戦前・戦後を問わず「敬語の混乱」ということが言われる。これは,敬語意 識や敬語についての考え方が,主として老人と若者との問に食い違っているこ とを指すと思われるが,これはときには伝達を妨げ,さらに地域社会の共同の 感情に影響を与える。そこで,地域社会における敬語の実態をつかみ,それに

よって敬語を複雑にしている原因を追究して,これによって敬語を簡素化する 方策の手がかりが得られよう。

 今実際に老入と若者との間にどのくらいの食い違いが敬語についてあるのか について,われわれは確実な知識を持っていない。食:い違いは,さらに,男女 間,階層間,学歴別集団問などについてもある。これらを全部ひっくるめたも のが「敬語の混乱」と考えている人もあろう。こういう「敬語の混乱」が地域 社会で実際どのようであるかを明らかにして,このr混乱」の原因を追究する のがわれわれの調査の貝的である。これがっきとめられることによって,敬語

34 2.前回調査の概要

を簡素化する方策の手カミかりを得ようと思う。

 以上が報告書に述べられている前回調査の目的である。「敬語の簡素化」は,

保守的な意見と,その対極をなす敬語全廃論とを止揚するものとして適切な旗 じるしであったと思われる。論拠として「民主主義」が掲げられているのも時 代をよく反映している。

 現在は必ずしも「簡素化」は求められていないと思う。今の指導原理は「能 率化」「効率化」ということであろう。これは必ずしも「簡素化」とは平行し ない。複雑なものであるならば,複雑に表現すべきだという考え方もある。た とえば,漢字を含んだ日本語の表記法が複雑であることは否めないが,これを 処理して黛本語ワードプロセッサーなどを作り出し,能率的な文書作成および 管理システムを仕上げるのは科学技術である。したがって「簡素化」というこ とには現在はあまり重点があるとは考えられない。われわれの今回の調査はす でに1.1,「聲的と意義」で述べたように,このことは前面には押し出しては

いない。

2.2. 調査の構成・実施

2.2コ.構成

 前贋調査の報告書に盛られているのは四つの調査から得た結果であった。

 最初の二つは,三重県上野市および愛知県岡崎市における,社会調査・世論 調査・心理テストの方法を取った市罠対象の科学研究費による調査で,前者は 昭矛027年度に,後者は昭和28年度に,それぞれ行われた。報告書で主として扱 ったのは後者である。

 あとの二つは,この両年度に国立国語研究所の地方調査員(当時。現地方研 究員)にお願いした調査である。前2者で行った調査と関係あるものを全国的

に調べようとしたものである。昭和27年度は各県7地点で計300地点について 調査し,昭和28年度は,大都市5地点,小都市32地点,農村10地点の計47地点

について調査iした。

 以上のうち,最初の二つのものが今回の調査と関係があるので,主としてこ れについて述べておくことにする。

 1)調査の主な柱は「面接調査」である。しかし,これは今回の調査と同じ であるから,詳しくは今回の実施について述べた1.2.「調i査の構成・実施」

を見られたい。なお,被調査者は上野市2δ0人,岡崎市450人であった。

 2) 次は「社会生活調査」である。敬語行動・敬語意識は,ある個人がどん な経歴をもち,どんな社会環境のうちで,どんな社会的接触のもとで黛常生活 を送っているかなどということと深い関係があろう。そこで,各個人に性・年 齢・職業・居住経歴・学歴・マスコミとの接触度などについての調査票を配っ て記入してもらい回収することにした。被調査者は全市民からのサンプリング によって,上野市1,000人,岡崎市800人を選んだ。そして回収された調査票 を参考にしながら,先の「面接調査」の被調査者を選んだ。したがって,調査

36  2.前回調査の概要

順序からいうと,この「社会生活調査」の方が先である。なお,今回調査で は,晦接調査」の被調査者をいきなりサンプリングしている。

 3)1)の「面接調査」は話し手としての敬語行動を調べるものであったが,

これに対して,被調査者が聞き手として,敬語行動をどう感じ,どう判断する かを調査しなければならない。このためには被調査者を一定の会揚に集め,ス ライドでいくつかの揚面を見せて,それぞれの場面における会話を録音で聞か せて判断してもらった。一定の会場に集まってもらったので「集合調査」とも いうが,またスライドを使うので「スライド調査」とも称する。

 前嚥調査ではそれぞれ「面接調査」の被調査者から被調査者を選んだが,今 回は主として費用の点でこれができなかったので,中学校・高等学校で生徒に ついて実施した。

 4)「藏接調査」で調べた場颪はあくまでも仮定した場面である。その仮定 した場藤と同じ揚面で自然のままのところで録音して,「薗接調査」での反応 が妥当なものであるかどうかをみようとした。この調査を「揚面録音調査」と いう。詳しくは前回の報告書を見られたい。今回は省略した。

 5) われわれは言語形式の丁寧さを何らかの手段で数量化をしなければなら ない。そのための基礎的な,丁寧さの段階を決定するために一般市民に実施し たので「敬語形式の段階調査」と称する。

 実際の各反応に対する殺階づけは前回も今回も同じ一人の調査者が行った。

これについては,この報告書の5.「敬語の段踏づけとその結果」に詳しく述べ

る予定である。

 6)敬語行動を規定する条件として,社会階層は重要なものの一つであろ

う。そこで,被調査者がどのような階層に属しているかを客観的に数量化する ための調査を実施した結果によって各人の所属階層を判定した。

 7)以上のほか,前回の調査では「対話の実験的調査」を計画・実施した。

上野市では年齢(老・壮),階層(上・下),親疎の三つの条件を組み合わせ て,尉話する人を組み合わせて11組を,岡崎市ではこの三つにさらに男女を加 えて,合計20組の対話を観察・記録:した。

 この調査は整理・分析に時間がかかることもあって前回の報告書では取り上

       2.2.調査の構成・実施  37 げていない。また,今回も調査は実施したが,同様の理由からこの報告書では 取り上げなかった。

 以上のような調査のうち「颪接調査」を軸とし「集合調査」「場面録音調査」

について図示したものが,前回報告書の付表1として折り込みでlllている。

 全国で調査したのは,第1年度を「金国調査1」とする。この調査は,一一XE の場面において,閉じ話し手の敬語行動が相手によってどのように変わるか,

ということを重点としたものである。なお,その他同じ敬語形式でも,地域に よって,丁寧さの段階に違いがあるか,話し手の年齢によって敬語行動に違い があるか,共通語の敬語形式がどの程度行われているか,個々の敬語形式の地 理的分布を知る,などを爵的とした。

 以上のうち主となるものについては,10の項目について,あまり親しくない 目上の者(被調査者の屠住地の小学校の校長),近所の顔見知9の年上の者,

隅じく同じ年ごろの者,同じく年下の者,岡じ年ごろで金く知らない者の5種 類の聞き手に対して敬語行動がどう違うかを調べた。

 第2年度の「全国調査R」では,前年度の上野帯での調査項目のうち「面接 調査」の全部とギ集合調査」で調べたものの一部,およびその他として入称代 名詞の使用状態を取り上げた。

2.2.2.実施

 昭和27年度は,上野市で実施する前に,山梨県北都留郡上肇原町,東京都青 梅市でそれぞれ準備調査を実施したのち,上野市で本調査を4回にわたり行っ

た。調査に従事したのは延べ247人である。

 昭和28年度の岡崎市での調査は,9月1霞から11目までの第1回から,翌年 3月6Hから16目までの5回にわたり,延べ201人日の調査であった。

 「全国調査1,丑」は,各道府県の地方調査員47入に委嘱して調査した。北 海道および兵庫県はそれぞれ2入ずつで,あと東京都は委嘱せず,また沖縄県 は復帰前であった。

 r全国調査1」は329地点で調査されたが,うち完備した報告のあった300地