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 世間のしきたりにしたがうべきかどうかについては,「従うほうがよい」と いう意見が増え,「おし通すべきだ」という意見が減っている(表8−44)。前 園も今回も「従うほうがよい」という意見は女に多く,「おし通すべきだ」と いう意見は男に多くなっている。

 総理大臣:の伊勢神宮参拝の是非については,「本人の自1旬とする意見の増 加傾向がはっきりとあらわれている(表8−45)。

 以上の栓会意識に関する項Nでは伝統的意見の減少傾向がみられるが,「世 間のしきたり」に関しては,逆に伝統的意見の増加傾向があらわれている点が 注目されよう。

5。敬語の段階づけとその結果

5.1.段階づけの意義

 われわれは,何らかの発話を聞いたとき,その発話はどの程度の丁寧さであ るかを瞬間的に判断し,それに対して自分の発話の丁寧さを決める。その決め るときの基準は何であろうか。まず,このことを考えることから出発する。

 その判定の基準には,まずは書語形式を手がかりとして使うであろう。もち ろん,それが語られる揚面や話題が大いに関係していて,この場面としては丁 寧すぎるとか,この相手に呪うことばとしては乱暴すぎる,といった判断もあ る。しかし,その判断の基礎としては言語形式による丁寧さということが存在 するであろう。逆に言えば,敬語は,敬意を言語形式の形であらわしたもので

ある。

 この敬意は,プラスだけでなく,マイナスの方向にもあるとすると,これは 一つの線状をなして,ほとんどi無限のプラスから,ほとんど無限のマイナスま で,無限の段階が考えられる。

 このように,段階は無限にあるけれども,言語形式はその性質上有限である から,適当にこの段階からこの殺階まではこの言語形式,というようにまとめ なければならない。つまり,敬意の段階上の微細な差は,これをあらわすべき 言語形式上の制約から示せない。こうして,書語形式の方が,ある段階とその 上または下の段階との差が,敬意の段階よりも大きく,したがって,判別がし ゃすいと考えられる。

 この考え方から,実際に作られた書語形式を丁寧さの段階によって並べるこ とを試みた結果の報告が,野元菊雄「敬語の段階」(『日本語教育』35号,昭和 53年)である。これは「傘忘れ」の場面について,「継続調査」「パネル調査」

の両者を合わせた583の言語形式を,後に示す手続きによってまず丁寧さの点

60 5.敬語の段階づけとその結果

から3段階に分けた。このうち,真ん中の丁寧さの段階は入数が多いのでさら に三つの段階に分けた。結果は,段階1(最も丁寧な段階)は102人,段階2 は418人,段階3(最も乱暴な段階)は63入となった。段階2をさらに上中下 三っに分けると,上は34人,中は182人,下は202人となった。ただし,これは その後多少の調整をしているので,最終段階の数字ではないことを断わってお かなければならない。

 多くの場面において中間の段階2が非常に多い。これではやや荒いという考 え方もあるので,この中問をさらに三つに分けるということを試みることにし た。ただし理論的には,前回調査との関係もあるので,3段隠の基準はそのま まとして,最初から5段階に分けるという考え方を取らず,3段階のうちの段 階2だけをさらに三つに分けることとしたのである。

 以上の段階1の102人の発話の丁寧さを順位に並べることができるかどうか を次に試みた。この102入の発した言語形式はすべて異なるというわけではな い。「モシモシ傘ヲオ忘レ=ナリマシタヨ」が5入,「傘ヲオ忘レニナリマシタ ヨ」カミ2人あったので,言語形式の異なり数としては,すべてで97通りあった

ことになる。

 この97通りは一つの丁寧さという点で順に並べることはできた。しかし,こ の順は,もしもう一度繰り返したら決して同じにはならないであろう。ある三 二形式と,ある言語形式と,どちらが丁寧であるか迷う場合がかなりあったか

らである。

 このように考えると,例えば段階1と段階2の上との間には,その境界域に ある言語形式の場合に確かに迷う場合もあろうが,大まかに三つまたは五つに 分けたとき,そのそれぞれの境界の上下に位置する少数を除いては,判定に大 きな狂いはないと予想される。すなわちこのような段階をまず手はじめとして 設定し,丁寧さの指標として使うことは差し支えないのではないかと考える。

 さて,この丁寧さの三階別の基準は,本来は,その地域社会において立てら れるべきものであるという考え方があろう。.あるいは,調査場面で,話し相手

とされているような人によって段階を定めるべきである,とも考えられる。例 えば,「先生」の場面については退職した元校長に判定を求めるべきか,とい

      5.1.段階づけの意義  61

うことである。

 今回はこれらのことはしなかった。一つは場颪ごとにこの比較をするという 目的のためには,同じ基準での判定が必要であるためである。また一つには,

費用の関係で,長時間を要する岡崎市での調査が不可能なためでもある。この 第二の点では,前の調査の報告書162ページ以下に述べてあるように,東京の 一人の調査者の判定で大体代用できると考えた。また,今回の揚合は,判定者

は前回の判定者と同一人であり,前回の判定結果を参照し,思い返しながら判 定した。もちろん20年以上の間隔があるので,同じ考えであるという保証はな

いのであるが,別人がするよPはずっといいであろう。

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5.2。段階づけの方法

 前回と同様,得られた反応文の文身化とカード化から出発する。これらの調 査面面はすべて話しことばの場面であるので,文字化されたカードを判定者は 別の人に読み上げてもらって判定した。

 この判定の基準としては,前回の報告書,170ページ以下にあげてある。今 回もそれにしたがったので,まずこれをそのままここに挙げる。

段陶1:(……デ)ゴザイマス,(……シテ)イタダキマス,(……シテ)クダ  サイマセ,イラシテクダサイ,イラッシャイマセ,のように,大体:二つの高  い敬語形式の結合から成るもの。およびそれより丁寧な形。

段階2:……デス,……マス,(……シテ)クダサイ,イラッシャイ,のよう  lC,「です・ます調」や一つの高い敬語形式から成るもの。

段階3:……ダ,……ヨ,……シテ(依頼),……シロ,言い捨て(例えば

 「電報用紙!」),のように,高い敬語形式がないとみられるもの。およびそ  れらよ!さらに乱暴な形。……シテクレ,……シテモラオウ,のように簡単  な頼む言い方や,オクレ,オイデ,……(シ)ナサイ,のように目下などに  しか使わない言語形式。

 以上の基準で,文末部に注疑し,その他の部分をも参考にしながら段階づけ

を行った。

 「3段階」方式による段階のつけ方は以上のようであるが,「5段階」のっけ 方について次に述べる。

 最初は,先にも述べたように,多くの揚馬で最も人数の多い「3段階」の方 式の段階2を上・中・下の三つに分けるという方針をとったが,後にそれを改 めて,新しい基準を作って金部を五つの段購に分けることにした。その新しい 基準は次のとおりである。

殺階1:「(〜デ)ゴザイマス」のあるもの。ただし,「ゴザイマス」があって  も,「アリガトウゴザイマス」のように習慣化したものはとらない。また

       5,2.段階づけの方法  63  「ゴザイマス」があっても他に「デス」「マス」がなくて乱暴と思われるもの  は段階2以下とする。

  「デス」と「マス」とが重なってあるもの。

  「オソレイリマスガ」「スミマセンガ」につづけて「イタダク÷マス」など

 があるもの。

  ドオ〜ニナル」に「デス」「マス」「イタダク」「イラッシャル」などが続く

 もの。

  「オ〜デハナイデスカ」「オ〜クダサイマセンカ」など。

段階2:「オソレイリマスガ」「スミマセンガjなどなくて「イタダク十マス」

 などがあるもの。ただし,25モーラ以下のものは段階3とする。なお,段階  1およびここでいう「オソレイリマスガ」は「オ〜シマスガ」を含む。

  「オソレイリマスガ」に「クダサル」「ネガウ」「モラウ」「ヨロシイ」など  が続き,さらにギデス」「マス」がっくもの。また「スミマセン」に上のも  のがついて「デス」「マス」がっくもの。ただし,この場合は30モーラ以下  は段階3。

  「〜テオ〜ニナル」「〜テオラレル」「〜テイラッシャル」「〜テイカレル」

 などに「デス」「マス」のつくもの。

  「オ〜ニナッテクダサイ」。ただし,他の点で丁寧なら段階1にする。

  「〜ナサッタ」「〜レル・ラレル」に「デス」「マス」がついたもの。

  「〜テクダサイマセンカ」「マイリマス」「オ〜イタス」など。

  「モウシアゲマスjは他に丁寧なところがなければ段階3。

  「ワタクシ」を使ったもの。

段階3:「スミマセン」に「クレル」「ホシイ」「モラウ」が続き,「デス」「マ  ス」がっくもの。

  「スミマセン」の次に「クダサイ」がっくもの。ただし,30モーラ以下は  段階4。

  「オ〜シタ」「デス」「マス」が前にあって,「クダサイj「イタダキマス」

 「オネガイシマス」「タノミマス」などがっくもの。

  「オ〜デス」「オ〜マス」「オ〜クダサイ」「オ〜デキマスカ」「オ〜ネガイ