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8 ターミナル患者

ドキュメント内 口腔ケアマニュアル 済/とびら (ページ 108-115)

COLUMN

ターミナルケアの言葉の定義

ターミナルケアとは末期がん患 者に対する看護のこと。Terminal は終着駅の意味から人の終末期医 療を言うようになった。

主として延命に目的が置かれる のではなく、身体的苦痛や精神的 苦痛を軽減することによって人生 の質(QOL)を 向 上 さ せ る こ と に主眼が置かれ医療的処置(緩和 医療)に加え精神的側面を重視し た総合的な措置がとられる。

ターミナルケアを行う施設はホ スピス(Hospice)とも呼ばれ、

聖地への巡礼者や旅行者を小さな 礼拝堂をもつような教会が泊めた 巡礼教会(hospice)が転用され たものである。

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腫瘍では腫瘍部位の壊死組織が独特の異臭を発することがある。

③ 味覚異常

摂食障害による慢性的な低栄養に加え、カヘキシー(cachexia〔がん性悪液質〕:

がん患者末期に生ずる全身的な体重減少とがんによるるい痩)によるビタミンや微量 元素の欠乏、過去の抗がん剤や放射線治療による持続的有害事象、担がん状態の免疫 不全状態からカンジダ症が原因となり、味覚鈍麻、味覚消失、味覚錯誤、味覚過敏な どがみられる。

④ 口内炎・粘膜の脆弱化

口腔乾燥に加えてカンジダ症やアフタ、ヘルペスなどにより、糜爛や潰瘍を形成す ることがある。微量元素欠乏症で粘膜は薄く、もろくなるため、指で触れるだけで表 面がズルッと捲くれて出血することもある。また、口唇粘膜同士が貼りつき、開口す るだけで出血することもある。

⑤ 口腔内の疼痛

会話や摂食、唾液の嚥下時にも疼痛がみられる。さらにがんの神経浸潤による疼痛 や腫瘍による絞縛感も疼痛の原因として考えられる。

⑥ 口腔カンジダ症

担がん状態における免疫不全のため、口腔・咽頭・食道にカンジダ症を生ずること が多い。典型的には、擦過により除去可能な白斑が口腔粘膜全体(軟口蓋、頬粘膜、

咽頭後壁など)に出現する。義歯性口内炎や口角炎も、カンジダが原因の場合が多 い。

⑦ 舌 苔

舌背に白・黄・黒・褐色など苔状の付着物が見られ、味覚異常や口臭などを伴うこ とがある。

⑧ 義歯の不適合

短期間に体重が減少すると義歯の不適合につながり、歯肉の発赤や腫脹・潰瘍を形 成しやすい状況となる。全身倦怠感や悪心・嘔吐は、義歯の衛生状態の悪化や放置の 原因となり、更なる義歯の不適合につながる。

ピットフォール

経腸/経静脈栄養だから口腔ケアが不要であると誤解されていることがある。

家族に喜ばれること

ケア時に患者の表情が穏やかになり、笑顔がみられるようになるとき。

2章−8ターミナル患者

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カルテ・看護師・主治医から予め確認しておくべき情報

1)全身状態の安定度:余命(推定)

① 体位の変化による血圧の変動:意識障害が出現する可能性がある。

② 急変時の対応:延命処置(CPR)の実施など(患者・家族の同意や希望も含めて)。

2)意識レベル/鎮静状態:せん妄の有無、JCS あるいは GCS、ADL の評価

〔☞2章− 43ページ参照〕

3)呼吸管理:酸素療法の有無

① 体位の変化による SpOの変動。

② 気管切開後の患者は気管チューブがどのようなタイプかを確認する(カフ付きのタ イプでは、動くだけでも粘膜への刺激によって咳が誘発されやすい)。

4)栄養状態および管理

① 経口摂取が可能か?

②「お楽しみ」程度の食事か?

③ その回数は?

5)感染防御能

① がん性悪液質の進行度(血清アルブ ミン、リンパ球数、貧血、倦怠感、嘔 気・嘔吐、電解質異常など)。

② 肺炎の有無。

6)現状に至るまでの経過(患者の疾患の一般的な治療方針は知っておくべき)

① 手術による臓器欠損や機能障害の状況。

② がん化学療法・放射線治療の既往と有害事象の残存。

③ 麻薬製剤の種類と投与方法。

7)家族(特にキーパーソン)の希望や同意

看護や医療スタッフによる事故に注意

近年の疼痛コントロール技術の進歩により、

神経ブロックのみならず、神経破壊術や硬膜外 カテーテルの挿入を行われていることが多い。

最近、看護や医療スタッフによる硬膜外カテー テルの誤抜・誤切断の事故が多く報告されてい る。口腔ケアに介入するスタッフがこのような 事故を引き起こさないように注意する。

ワンポイント

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口腔ケアのポイント

1)安楽であること(患者の負担を最小限に)

① 体位交換は最小限にする。患者単独での体位交換が可能であるのかも確認する。

② 術者がケアしやすい体位は、ケアの質を高くし、実施時間を短縮するため結果的に は患者への負担を軽減させる、という視点も大切である。

③ 口腔ケア以外の処置やケアとのスケジュールを考慮して、口腔ケアの計画を考え る。

④ 情報確認、口腔アセスメント、ケア内容の決定項目を迅速かつ正確に実行する。

⑤ 在室している家族の参加も効果がある(声かけ、ペンライトで照らす、ガーグル ベースンを持つなど、小さなことでよい)。

2)身体的接触(ボディータッチ)

挨拶をしながら意図的に手を握る、肩を軽くたたく、頬をなでるなど身体的に接触する ことで、患者との距離感を縮める。

3)コミュニケーション

① 患者・家族から口腔に関する訴えや希望を真摯に受け止め、そのための時間を確保 する。

② ベッドサイドで立ったまま聞くのではなく、患者の目の高さに合わせた姿勢をと る。

③ 意識レベルにかかわらず常に患者に話しかける(在室中の家族も聞いていることを 意識する)。

④ ケア内容の説明

口腔症状を緩和するためのお手伝いをすることを説明する。

痛くないようにすること、嫌だったら途中でやめることなどを約束する。

使用するケアグッズや薬剤などを説明し、薬剤などは必ず舌尖や口唇で味見をして もらう(味やかおりも大切)。

口腔ケア時の注意点

① できるだけ SpOモニターを使用すること。

2章−8ターミナル患者

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② 酸素マスクを使用している場合は、SpOモニターの値だけでなく、肩の動きなど も観察しながら頻繁に休憩を取るようにする。主治医・看護師と相談し、ケア時のみ 鼻カヌラへ変更するのも一法。

③ 顔をしかめるなどの小さな反応を見落とさないように気をつける。

④ その日の目標に達していない場合でも、悪心や倦怠感、SpOの低下による体調の 変化および時間延長による体力消耗時はケアを中断し、日を改めることも重要であ る。

口腔ケアの実際

大まかな目標を設定する

(例)

① 余命が月単位から週単位で、意識が清明である場合

口腔環境の改善による生理的欲求(「食べたい」など)の回復:QOL の改善、生 活のリズムを整える。

② 鎮静を要する状態の場合

視覚的な口腔環境の改善:口臭、乾燥、痂皮など患者家族が「かわいそう」

「痛々しい」と思わないような口腔環境を整える。

死へ向かう患者に対しては、口腔ケア技術だけでなく、コミュニケーション能力や、

家族にも満足してもらえるようなケアを提供できるかも大切である。

さらに最期までケアに関わる根気強さも必要である。

1)情報の確認、口腔内アセスメント、ケア内容の決定

基本的に他の場面と変わりないが、よりスピーディで正確性を要求される。

2)必要物品の準備

白色ワセリン、スポンジブラシ、歯ブラシ(軟毛〜超軟毛でコンパクトな歯ブラシ)、

ワンタフトブラシ、洗浄用シリンジ(10ml シリンジに水銃針を接続)、吸引(排唾管)、

保湿ジェル(バイオエクストラアクアマウスジェル、オーラルバランス、ビバジェルエッ ト、マウスピュアなど)、コップ、歯科用ミラー、ペンライト

★口腔内状態に応じて用意するもの

口唇が乾燥している場合や易出血性な場合は、白色ワセリンやアズノール軟膏を塗 布。

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処方されていればハチアズレやネオステグリーンなどの含嗽剤(ハチアズレ:消毒 効果はないが、刺激が少なく爽快感が得られる。ネオステリングリーン:若干の刺 激があるがミント味で爽快感があり、消毒効果もある)。

生理食塩水:水道水でも刺激痛を訴える場合に有効な時もある。

2%重曹水(アズレンと2%重曹水の合剤であるハチアズレでも可):粘液溶解作 用があるので、口腔内が粘稠な場合に有効。

綿球と保持用コッヘルまたは綿棒:スポンジブラシでも刺激痛がある場合に有効。

3)体位の調整と術者の位置

① ベッドの高さは術者がケアしやすい位置に調整する。

② 頸部を少し前屈してもらう。

③ モニターを術者に見える位置に合わせる。

体位変換が困難な場合(病態的に可能であっても骨転移や腹水、全身倦怠感などが あり体位交換が患者に大きな負担)は、患者や家族、看護師と相談し、訪床時の体 位のままでケアを提供する。ただし、十分な支持が得られるように枕などで安定さ せる。

4)口腔内の湿潤と粘膜清拭

スポンジブラシに水を浸して軽く絞り、口腔内を湿潤させていく。

口唇が乾燥して歯の面に貼り付いている場合は、無理にはがすのではなく、十分に 口唇を湿潤させ、スポンジブラシを回転させながら挿入すると疼痛を伴うことなく 剥離していく。

5)ブラッシング

歯面はブラッシングする。

口唇や頬粘膜が脆弱化している場合は、歯ブラシやミラーなどの物品を十分に湿潤 した状態で口腔内に挿入する。

6)洗 浄

① ブラッシング時に回収できず浮き上がった汚染物を洗浄で吸引する。

② 呼吸リズムの乱れや湿性嗄声などの有無を確認し、水量は最小限にする。

家族の希望や患者の嚥下機能の低下、設備の問題(吸引器、排唾管、洗浄針がない など)で洗浄が困難な場合は、スポンジブラシや綿球で拭い取る。

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ドキュメント内 口腔ケアマニュアル 済/とびら (ページ 108-115)