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❸ カルテ・看護師・主治医から予め確認しておくべき情報
1)現病歴
発症からの経過、現状(特に障害の部位、嚥下機能など)、予後の見通し。
2)意識レベル
① JCS(Japan Coma Scale)あ る い は GCS(Glasgow Come Scale)〔☞資 料 編−◇3 204ページ参照〕
② 意思の疎通は可能か
③ 従命(開口指示、開口保持)は可能か
3)全身状態の安定度
① ギャッチアップは何度まで可能か
② 口腔ケアの施行が可能か
③ (誤嚥性)肺炎の有無と程度:急性期、治療期、指導・訓練期
4)ADL
① 自立、一部介助、全介助
② 口腔ケアは自立しているか、要介助か(「BDR 指標」を参照)
5)呼吸・気道管理
① 呼吸状態
② 気管切開の有無、予定
③ SpO2(摂食中の低下の有無も確認)
6)栄養状態
① 体重(の変化)、身長
② 検査値(総タンパク、アルブミン、プレアルブミン)
③ 喫食状況
7)栄養補給ルート(併用あり)と投与(摂取)量
① 絶食
② TPN(完全静脈栄養)
2章−7◆機能的嚥下障害(脳血管障害後など)
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③ 経管:投与量、形態、逆流の有無
⑴ 持続、間欠的
⑵ 経鼻、経口、胃ろう(PEG)
④ 経口摂取:食形態、姿勢、所要時間
8)合併症の有無と程度
9)治療方針、ゴール、退院後の連携
❹ 口腔ケアのポイント
口腔内細菌を減少させることにより、誤嚥性肺炎の予防あるいはリスクの低減を目指 す。また、廃用による顎関節の拘縮などを予防することを意識する。
① 口腔の自浄作用が低下しているため「機械的清掃」と「化学的清掃」に加え、「機 能訓練」を行う。
② 器官としての口腔の廃用予防を意識する。
③ ケア中の誤嚥を回避する。
④ 状態が悪いときには無理をしない。
以下のポイントをはずさないようにしたい(「(❻口腔ケアの実際」を参照)。
⑴ 患者の自立度に応じたケア(介助)を行う。
⑵ 病期によって口腔ケアの目的や、誰が主体となってケアを提供するかを設定する。
⑶ 障害によってケア方法を工夫する。
❺ 口腔ケア時の注意点
1)水や薬液の誤嚥に注意する
嚥下障害のある患者では、水分を口腔内にとどめておくことは困難であり、水分を誤嚥 しやすい。したがって、洗口・含嗽あるいは洗浄は、一度に入れる水の量や姿勢の調整が 必要となる。また、含嗽や洗浄時には無呼吸に近い状態になりやすいので、こまめに休憩 を取ることも大事。
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2)口腔に汚れがたまりやすい
口腔を使わないと、食物との摩擦や唾液による自浄作用が低下し、口腔内には代謝産物 や細菌が堆積しやすくなる。この状態を放置しているとますます口腔内は不潔となり、口 臭や誤嚥性肺炎などを引き起こすことになる。つまり食べていなくても口腔ケアは必要な のである。
3)ペースト状歯磨剤、洗口液・含嗽剤に含まれるアルコール
ペースト状歯磨剤は、発泡作用による刺激があり、誤飲・誤嚥の誘発因子となりうる。
また、洗口液・含嗽剤に含まれるアルコールは口腔粘膜への刺激があり、乾燥を助長する ため、粘膜に炎症がある場合や口腔乾燥が著明な場合には使用を控える。
❻ 口腔ケアの実際
1)患者の自立度に応じた介助ケアを行う
① 患者自身が行える場合
椅子に座り顎をひいて、頭部前屈姿勢をとる。まず、ごく少量の水を含んで静かに 洗口をする。汚水が口腔から流れ出てきてもいいように、少し開口した状態でブラッ シングする。その後、少量の含嗽剤あるいは洗口液(イソジンガーグル、含嗽用ハチ アズレ、コンクール F など)での洗口を繰り返す。少量の水で行うこと、口内での 水の移動は静かに、ブクブク洗口することが大切である。口に含む水の量が多いと口 腔内での水の移動が小さく効果が低くなる。
前屈姿勢はケアが終わるまで保持する。含嗽には顎をあげて上を向かなくても水が 飲めるように、底の浅い容器、あるいは鼻が当たる部分を切り取ったコップなどを使 用すると口に水を含みやすい。
② 介助が必要な場合
体位は、可能なら座位にして頭部前屈姿勢をとる。座位が不可能な場合には誤嚥を 起こしにくい姿勢をとることが重要である。リクライニングポジション(0〜60度の ギャッチアップ……セミファーラー〜ファーラー位)が推奨されるが、なおかつ健側 を下にした側臥位の姿勢をとると誤嚥しにくいといわれている。
最初、ごく少量の水で洗口させるが、むせる場合は洗口させずに吸引器で唾液や汚 水を回収する(排唾管や歯科用吸引管を使用すると便利)。なければ注射器にネラト ンカテーテルを接続させて吸引するが、効率は悪い。
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2)病期に応じたケアを行う 脳卒中患者を例にとって解説する。
① 急性期
脳卒中の発症直後だけでなく、重症筋無力症や ALS の急性増悪時期も当てはま る。この時期は、患者自身によるケアは期待できない。また、唾液による口腔内の自 浄作用も期待できないため、口腔ケアの目的は、口腔清掃と顎関節の拘縮予防(廃用 予防)が主体となる(挿管されている場合のケアは別項目を参照)。
⑴ 口腔清掃
絶食を余儀なくされていることが多く、見た目の汚れ(食物残渣や歯垢の付着)
が少ないこともある。しかし、「誤嚥性肺炎を予防するために口腔内細菌を減少さ せる」という観点から考えると、ま
ず清掃しなければならない部位とし て口蓋と舌が挙げられる。
◇口蓋粘膜
上皮は常に新生と剥離を繰り返 している。正常な状態であれば口 蓋粘膜の剥離した上皮は唾液とと もに飲み込まれてしまうが、口腔 機能の低下や口腔乾燥に伴い剥離 上皮がはがれずに残存し、オブ ラート状に付着していることがあ る(図1)。
図1 口蓋に残存付着した剥離上皮
(口腔乾燥も著明)
図3 左方麻痺患者の舌苔(左 側舌背は口蓋に接触してい ないと考えられる)
図2 嚥下障害患者の舌苔(舌後方は口 蓋に接触していないと思われる)
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◇舌苔
舌苔は、食物残渣、白血球、微生物、剥離上皮などによって構成されている。
この中にはカンジダやグラム陰性桿菌なども含まれており、誤嚥性肺炎の起炎菌 となりうることが知られている。舌の運動障害が認められる場合、口蓋粘膜と接 触しない部分には舌苔が分厚く堆積し、菌の培地(リザーバー)となりやすい(図 2、図3)。
⑵ 廃用予防
咀嚼筋群(咬筋、側頭筋、翼突筋など)の廃用予防のために、義歯があれば装着 させて他動的にでも開閉口運動を行うことは効果的である。また、口腔ケアにより 定期的に開口させることは顎関節の拘縮予防に役立つ。
⑶ その他の効果
口腔清掃は、嚥下訓練における間接訓練のひとつとして位置づけることもでき る。通常、口腔内にブラッシングなどの圧刺激や冷温刺激が加わると口腔内のいろ いろなセンサー(受容体)を介して脳に多くの情報が入力される。「末梢を刺激し て中枢を賦活する」というリハビリの考え方からも理にかなった訓練の一つと考え られる。急性期から施行可能な嚥下訓練はあまり多くないため、口腔ケアは重要な 訓練の一つとなる。
② 回復期
亜急性期〜慢性期。意識は覚醒し、直接訓練から経口摂取の開始、あるいは経管栄 養との併用などが計画される。口腔内に食物残渣が滞留し、口腔ケアがうまく行われ ないと、誤嚥性肺炎などの合併症が増加する可能性がある。したがって歯科専門職が 積極的に介入すべき時期である。口腔
の諸器官の廃用を予防するために、顎 関節の可動域を向上させる訓練や口 唇、頬など口腔周囲筋や舌、咀嚼筋な どの強化訓練も必要になる。
ST、PT、OT など嚥下訓練に関わ るスタッフと連携をとりながら、清掃 方法や清掃時の姿勢保持、洗口する時 の水量、時間など、患者の障害の程度 に合わせたオーダーメイドの口腔ケア プランを決定する。また、介護者への
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図4 義歯の口蓋に舌接触形態を付与した例
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指導も重要である。
⑴ 義 歯
摂食嚥下訓練は義歯を装着して行うことが望ましい。まったく装着経験のない患 者に新調することは違和感が大きく、かえって訓練の妨げになることがあるが、最 近まで使用していた義歯があるならば必ず装着する。適合が悪い時は、ティッシュ コンディショニング(粘膜調整)やリベースで対応する。
舌の運動麻痺がある場合にはパラトグラム(用語解説参照)を用いて舌接触形態 を付与(図4)することも重要である。義歯を装着せずに嚥下訓練を行い、新たに 嚥下方法を獲得した後に義歯を入れるとむしろ誤嚥しやすくなることがある。
⑵ 不良補綴物
不良補綴物や大きなう蝕は口腔内の清掃において大きな障害になる。口腔ケアの 効果を高めるためにも、とりあえず冠除去や仮封を行う。
⑶ メディカルディバイス
経鼻チューブなどのメディカルディバイスや義歯には、微生物が付着しやすく、
バイオフィルムを形成し、肺炎の原因になりやすい。抗菌性のある含嗽剤や義歯洗 浄剤などを併用することも考慮する。
★用語解説★ パラトグラム
嚥下運動の準備期、口腔期において、舌はきわめて重要な役割を受け持つ。麻痺 による運動障害があると食塊の送り込みや咽頭への流し込みが不充分になる。この ような場合、舌が接触しやすいように上顎義歯の口蓋部分にレジンを盛って義歯床 を分厚くすると嚥下しやすくなる。義歯と舌の接触の具合は、印象材(アルギン酸 など)の粉末をワセリンを塗った義歯の口蓋面に噴霧し、空嚥下させるとよくわか る。粉末が除去されたところは接触していることになり、残っているところは非接 触部分である。これをパラトグラムとよんでいる。
図5 パラトグラム
臼歯部を低くすることにより舌の接触が可能になった
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