1)末梢血液検査値と歯科治療
観血的歯科治療における検査値と治療適応は以下を参考にする(表2)。治療内容や局 所への対応の仕方により、検査値が非常に厳しい状態でも治療が可能な場合もある。観血 的治療よりも口腔ケアの方が一般に侵襲は小さいため、基準は緩和されている(表3)
2章−3◆がん化学療法/造血幹細胞移植患者
図3 カンジダ性口内炎(Grade3)
(口内炎にカンジダによる感染が みられる)
図4 アスペルギルス症(Grade4)
(まれではあるがアスペルギルス症 が生じることもある)
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が、汚染度が強い場合には慎重に対応すべきであろう。内科主治医や看護師と連携して治 療を行う。
2)口腔合併症は一様ではない
歯周炎や根尖性歯周炎の急性増悪のように、歯性感染に起因するものもあれば、ウイル スや真菌が関与するものもある。それぞれの症状に応じて検査、診断を行ったうえで対応 する。
❻ 口腔ケアの実際
1)実施時期別の口腔ケア
◇化学療法前スクリーニング 口腔内病変の有無のチェック
理学的所見だけでなく、X線診査を行い、特に慢性歯性感染巣の有無をチェックす る(表4)。
表2 観血的歯科治療における末梢血液検査基準
慎重に処置 相対的禁忌 絶対禁忌
白血球数 > 3,000/μℓ 1,000〜 3,000/μℓ < 1,000/μℓ 顆粒球数 > 2,000/μℓ 500〜 2,000/μℓ < 500/μℓ 血小板数 >50,000/μℓ 20,000〜50,000/μℓ <20,000/μℓ
表3 口腔ケアにおける末梢血液検査基準
通常のケア 慎重にケア 相対的禁忌 白血球数 > 3,000/μℓ 1,000〜 3,000/μℓ < 1,000/μℓ 顆粒球数 > 2,000/μℓ 500〜 2,000/μℓ < 500/μℓ 血小板数 >50,000/μℓ 20,000〜50,000/μℓ <20,000/μℓ
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2)患者への指導
《目 的》
・セルフケア技術の向上
・デンタル IQ の向上
・闘病意欲の向上
《ポイント》
・保湿と清潔
《指導内容》
◇保 湿
口腔ケアの励行 刺激性唾液の流出を促し、口腔乾燥を軽減する。
歯磨剤の使用中止 一般に、研磨剤や発泡剤の添加されているペースト状歯磨 剤は口腔乾燥の誘因となるため使用を中止する〔☞1章−
◇3 28ページ参照〕。
バイオティーントゥースペーストなどの歯磨剤かデンタル リンス(アルコールフリー)の使用を勧める。
保湿剤の使用 オーラルバランスなどの保湿ジェルを使用する。
特に就寝中は唾液量が減少するので就寝前の使用を勧め る。
表4 化学療法における口腔ケア
化学療法前ケア 口腔粘膜炎の発生は抗がん剤投与後約1週間目に出現するため、投与前にス ケーリング・患者指導を実施し口腔内環境を整える。
・4mm以上の歯周ポケットや排膿・出血がみられるポケットは可能な範囲で(全身状況を考え ながら)ポケット内を超音波スケーラー(スプラソン P-MAX の BDR チップなど)を使用し てバイオフィルムを破壊し、ポケット内環境の改善を図る。
・プラークコントロールの妨げとなる歯石を可能な限り除去する。
化学療法中ケア スケーリングなどの観血処置ケアは避け、患者自身によるケアの継続が行える よう援助をしていく。
化学療法中であっても、歯肉の状態が不良で出血の危険性がありセルフケアが できないような場合は、歯科衛生士が歯肉を傷つけないように探針などを使用 してプラーク除去を行う。
リコール 抗がん剤投与のサイクルをカルテで確認し、1回目の化学療法が終了し、2回 目の投与の前に再度スケーリング・PMTC・患者指導を実施する。
・化学療法による口腔有害事象の発現状況について確認し、次回以降の化学療法時のケアの参考 とする。口腔粘膜炎は同じ箇所に発現することが多い。
・セルフケアの習熟度、実施状況を確認する。
2章−3◆がん化学療法/造血幹細胞移植患者
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◇清 潔
正しい口腔清掃技術の伝達 ナイロン毛の柔らかい歯ブラシを使用する。
ブラッシング圧やブラシの動かし方を指導する。
食後のブラッシングを定着させる。
補助清掃用具や薬剤の使用説明 個々の口腔内状態に合わせ必要な補助清掃用 具を選択し指導する。
◇機械的な損傷を与えない。
歯ブラシの硬さ・開き具合・古さの チェック。
ブラッシング圧が強すぎないか。
歯間ブラシの挿入方向が悪くないか。
爪楊枝を使用していないかなど、口腔 内に傷を作らないように指導する。
◇食事について
唾液を出すためにもできるだけ経口摂 取する。
硬い食品(おせんべいやポテトチップ スなど)を食べない。
柑橘類の果物やジュースなど口腔粘膜 に刺激のある食品は避ける。
◇義歯の管理
細菌の温床となる義歯はブラッシング と義歯洗浄剤使用で清潔にする。
粘膜を傷つける可能性のある適合の悪 い義歯ははずしておく。
◇含嗽について
・2時間ごとに行う。
・生理食塩水または水による含嗽でよいが、含嗽剤を使用するならアルコール の配合されていないものを使用する。
・1〜3分間(最短でも30秒)口に含み頬・舌を動かしてぶくぶくうがいす る。
COLUMN ①
自覚(臨床)症状のない根尖病巣 や歯周炎に対する対応
明らかな嚢胞性病変や打診痛 のある根尖性歯周炎は抜歯ある いは根管治療を行うことになる だろう。しかしながら、X線所 見で歯根膜空隙の拡大がある が、打診痛などの臨床症状のな いものへの対応に苦慮すること がある。経験上、これらの多く は Nadir 期でも症状の発現をみ ない場合が多い。慎重に考慮し た上で、患者、主治医等に情報 提供を行い経過観察するのも一 選択肢である。化学療法中に何 らかの症状発現をみた際は抗菌 薬で対応し、寛解期に治療す る。
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3)看護師による口腔ケア
入院下で化学療法を受ける場合は、看 護師により1日1回口腔内観察を行う。
◇粘膜の状態
◇口腔乾燥
◇疼痛の有無
◇患者指導
◇ブラッシング・含嗽の時期と回 数
◇歯ブラシ・歯磨剤の確認
4)事 例(図5、図6)
◇歯科衛生士による専門的な口腔 ケアが必要な場合
<事例1>若年者(小児)の歯肉炎
<事例2>成人の歯周炎
COLUMN ②
4mm 以上の深いポケットを有する歯周 炎への対応
化学療法前や移植前期の口腔管理で評 価と対応に苦慮するのは辺縁性歯周炎の 治療である。ポケット4mm 以上のもの は抜歯という考えもあるが、その基準を 用いると、無症状の歯を多数抜歯せざる をえないことになりかねない。筆者は、
BOP で出血をみるもの、ポケット6mm 以上は抜歯、それ以下では集中的口腔衛 生指導を行った上でその適否を決定して いる。
2章−3◆がん化学療法/造血幹細胞移植患者
図5 小児の急性白血病症例であるが、歯肉 縁にべっとりとプラークが付き、出血の リスクが極めて高い。このようなケース で歯ブラシの使用をすると容易に出血を 生じ、止血困難をきたす。頻回のうがい と、綿球によるプラークのぬぐい取りな ど、歯科衛生士による専門的口腔ケアの 介入が求められる。
図6 本患者 (急性白血病)は進行した歯周 炎があり歯周ポケットは6mm あったが、
ケアを積極的に実施した(ブラッシング4 回/日、含嗽8〜10回/日)結果、粘膜の 炎症が消失、化学療法中も全く症状発現を 認めなかった(着色はポビドンヨードのス テイン)。
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