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❺ 歯科治療あるいは口腔ケア時の注意点

ドキュメント内 口腔ケアマニュアル 済/とびら (ページ 67-72)

1)末梢血液検査値と歯科治療

観血的歯科治療における検査値と治療適応は以下を参考にする(表2)。治療内容や局 所への対応の仕方により、検査値が非常に厳しい状態でも治療が可能な場合もある。観血 的治療よりも口腔ケアの方が一般に侵襲は小さいため、基準は緩和されている(表3)

2章−3がん化学療法/造血幹細胞移植患者

図3 カンジダ性口内炎(Grade3)

(口内炎にカンジダによる感染が みられる)

図4 アスペルギルス症(Grade4)

(まれではあるがアスペルギルス症 が生じることもある)

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が、汚染度が強い場合には慎重に対応すべきであろう。内科主治医や看護師と連携して治 療を行う。

2)口腔合併症は一様ではない

歯周炎や根尖性歯周炎の急性増悪のように、歯性感染に起因するものもあれば、ウイル スや真菌が関与するものもある。それぞれの症状に応じて検査、診断を行ったうえで対応 する。

口腔ケアの実際

1)実施時期別の口腔ケア

化学療法前スクリーニング 口腔内病変の有無のチェック

理学的所見だけでなく、X線診査を行い、特に慢性歯性感染巣の有無をチェックす る(表4)。

表2 観血的歯科治療における末梢血液検査基準

慎重に処置 相対的禁忌 絶対禁忌

白血球数 > 3,000/μ 1,000〜 3,000/μ < 1,000/μ 顆粒球数 > 2,000/μ 500〜 2,000/μ 500/μ 血小板数 >50,000/μ 20,000〜50,000/μ <20,000/μ

表3 口腔ケアにおける末梢血液検査基準

通常のケア 慎重にケア 相対的禁忌 白血球数 > 3,000/μ 1,000〜 3,000/μ < 1,000/μ 顆粒球数 > 2,000/μ 500〜 2,000/μ 500/μ 血小板数 >50,000/μ 20,000〜50,000/μ <20,000/μ

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2)患者への指導

《目 的》

・セルフケア技術の向上

・デンタル IQ の向上

・闘病意欲の向上

《ポイント》

・保湿と清潔

《指導内容》

保 湿

口腔ケアの励行 刺激性唾液の流出を促し、口腔乾燥を軽減する。

歯磨剤の使用中止 一般に、研磨剤や発泡剤の添加されているペースト状歯磨 剤は口腔乾燥の誘因となるため使用を中止する〔☞1章−

28ページ参照〕

バイオティーントゥースペーストなどの歯磨剤かデンタル リンス(アルコールフリー)の使用を勧める。

保湿剤の使用 オーラルバランスなどの保湿ジェルを使用する。

特に就寝中は唾液量が減少するので就寝前の使用を勧め る。

表4 化学療法における口腔ケア

化学療法前ケア 口腔粘膜炎の発生は抗がん剤投与後約1週間目に出現するため、投与前にス ケーリング・患者指導を実施し口腔内環境を整える。

・4mm以上の歯周ポケットや排膿・出血がみられるポケットは可能な範囲で(全身状況を考え ながら)ポケット内を超音波スケーラー(スプラソン P-MAX の BDR チップなど)を使用し てバイオフィルムを破壊し、ポケット内環境の改善を図る。

・プラークコントロールの妨げとなる歯石を可能な限り除去する。

化学療法中ケア スケーリングなどの観血処置ケアは避け、患者自身によるケアの継続が行える よう援助をしていく。

化学療法中であっても、歯肉の状態が不良で出血の危険性がありセルフケアが できないような場合は、歯科衛生士が歯肉を傷つけないように探針などを使用 してプラーク除去を行う。

リコール 抗がん剤投与のサイクルをカルテで確認し、1回目の化学療法が終了し、2回 目の投与の前に再度スケーリング・PMTC・患者指導を実施する。

・化学療法による口腔有害事象の発現状況について確認し、次回以降の化学療法時のケアの参考 とする。口腔粘膜炎は同じ箇所に発現することが多い。

・セルフケアの習熟度、実施状況を確認する。

2章−3がん化学療法/造血幹細胞移植患者

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清 潔

正しい口腔清掃技術の伝達 ナイロン毛の柔らかい歯ブラシを使用する。

ブラッシング圧やブラシの動かし方を指導する。

食後のブラッシングを定着させる。

補助清掃用具や薬剤の使用説明 個々の口腔内状態に合わせ必要な補助清掃用 具を選択し指導する。

機械的な損傷を与えない。

歯ブラシの硬さ・開き具合・古さの チェック。

ブラッシング圧が強すぎないか。

歯間ブラシの挿入方向が悪くないか。

爪楊枝を使用していないかなど、口腔 内に傷を作らないように指導する。

食事について

唾液を出すためにもできるだけ経口摂 取する。

硬い食品(おせんべいやポテトチップ スなど)を食べない。

柑橘類の果物やジュースなど口腔粘膜 に刺激のある食品は避ける。

義歯の管理

細菌の温床となる義歯はブラッシング と義歯洗浄剤使用で清潔にする。

粘膜を傷つける可能性のある適合の悪 い義歯ははずしておく。

含嗽について

・2時間ごとに行う。

・生理食塩水または水による含嗽でよいが、含嗽剤を使用するならアルコール の配合されていないものを使用する。

・1〜3分間(最短でも30秒)口に含み頬・舌を動かしてぶくぶくうがいす る。

COLUMN ①

自覚(臨床)症状のない根尖病巣 や歯周炎に対する対応

明らかな嚢胞性病変や打診痛 のある根尖性歯周炎は抜歯ある いは根管治療を行うことになる だろう。しかしながら、X線所 見で歯根膜空隙の拡大がある が、打診痛などの臨床症状のな いものへの対応に苦慮すること がある。経験上、これらの多く は Nadir 期でも症状の発現をみ ない場合が多い。慎重に考慮し た上で、患者、主治医等に情報 提供を行い経過観察するのも一 選択肢である。化学療法中に何 らかの症状発現をみた際は抗菌 薬で対応し、寛解期に治療す る。

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3)看護師による口腔ケア

入院下で化学療法を受ける場合は、看 護師により1日1回口腔内観察を行う。

粘膜の状態

口腔乾燥

疼痛の有無

患者指導

ブラッシング・含嗽の時期と回 数

歯ブラシ・歯磨剤の確認

4)事 例(図5、図6)

歯科衛生士による専門的な口腔 ケアが必要な場合

<事例1>若年者(小児)の歯肉炎

<事例2>成人の歯周炎

COLUMN ②

4mm 以上の深いポケットを有する歯周 炎への対応

化学療法前や移植前期の口腔管理で評 価と対応に苦慮するのは辺縁性歯周炎の 治療である。ポケット4mm 以上のもの は抜歯という考えもあるが、その基準を 用いると、無症状の歯を多数抜歯せざる をえないことになりかねない。筆者は、

BOP で出血をみるもの、ポケット6mm 以上は抜歯、それ以下では集中的口腔衛 生指導を行った上でその適否を決定して いる。

2章−3がん化学療法/造血幹細胞移植患者

図5 小児の急性白血病症例であるが、歯肉 縁にべっとりとプラークが付き、出血の リスクが極めて高い。このようなケース で歯ブラシの使用をすると容易に出血を 生じ、止血困難をきたす。頻回のうがい と、綿球によるプラークのぬぐい取りな ど、歯科衛生士による専門的口腔ケアの 介入が求められる。

図6 本患者 (急性白血病)は進行した歯周 炎があり歯周ポケットは6mm あったが、

ケアを積極的に実施した(ブラッシング4 回/日、含嗽8〜10回/日)結果、粘膜の 炎症が消失、化学療法中も全く症状発現を 認めなかった(着色はポビドンヨードのス テイン)。

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ドキュメント内 口腔ケアマニュアル 済/とびら (ページ 67-72)