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❸ 病院と地域が一体となったチーム医療

ドキュメント内 口腔ケアマニュアル 済/とびら (ページ 173-176)

〜急性期から在宅までの「口腔ケアのチェーン」

高齢化の進んだ地域の急性期病院では、肺炎患者が入院患者の多くを占める。その多く は後期高齢者であり、誤嚥性肺炎で入退院を繰り返すいわゆるリピーターである。たいて いは基礎疾患として高血圧や糖尿病を持っている。これだけ医療の高度化した国で、何回 も同じ病気で入院を繰り返すのはどのような問題点があるのだろうか。

図1に挙げた感染(誤嚥性肺炎)の成立に必要な3つの輪(口腔内細菌、誤嚥、宿主の 抵抗力)に対する戦略のどれかが欠落しているのではないかと考えられる。つまり、肺炎 に対して薬物治療が行われ、炎症反応が消失しても肺炎を発症するに至った原因や要因、

環境が取り除かれないまま退院していくことを物語っている。

1)チェーン型連携(図2)

在宅や高齢者施設で療養する方の多く は、脳血管障害や神経筋疾患など何らかの 形で病院を経由している。もともと急性期 の病院に入院し、急性期治療を経て回復 期、慢性期の施設あるいは居宅へと転出し ていった人たちである。前述したように急 性期病院では ICU などベッドサイドで口 腔ケアが行われていても、退院後次の施設 や居宅で口腔ケアが行われなかったり、

チェックがされていなかったりすると、そ れまで行われてきた口腔ケアの効果 はとたんに消失してしまう。

このような有病高齢者の肺炎や口 腔合併症を防ぐためには、病院から 施設、在宅と療養する場所が変わっ ても途切れずに、しかも質の高い口 腔ケアが継続して提供されるシステ ムを構築する必要がある。従来の病 院と診療所間の医師のみによる「ピ ンポン型」の紹介システム(図3)

4章−3チーム医療と口腔ケア

図2 口腔ケアのチェーン

要介護者(職種別連携)

一般的な連携

病 院 病 院

チェーン型

Dr、DH、Ns、リハ、薬剤、栄養 在 宅 診療所 施 設

介護・看護・リハ かかりつけ医

かかりつけ医 保健所 ピンポン型

図3 要介護高齢者の連携パターン

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ではなく、患者の居場所に合わせて次々とつながっていく「チェーン型」の連携システム が必要となる(図2)。

2)チーム医療

平成20年度から施行される「後期高齢者医療制度」では、途切れない連携のことを

「シームレス(な医療)」と表し、地域連携パスを用いることを推奨している。実際には 縫い目(シーム)はあってもよいが、ほころびのない連携が必要なのであるが。

入院前から退院後もかかりつけ歯科医がオーラルマネジメントを行うという千葉県柏市 での病診連携システムや県西部浜松医療センターの「PEG 造設患者の口腔ケア地域連 携」パス(入院中のケアだけでなく、PEG の手術が決定した時点で入院前口腔ケアをか かりつけ歯科医で行い退院後も継続していく代表的なチェーン型連携パス)などは先駆的 な試みである。病院だけでなく地域全体でチームを編成することの重要性と口腔ケアの必 要性がようやく理解されてきたようである。

このチェーン型連携は口腔ケアに限ったことではなく、図1に示す3つの戦略(口腔管 理、リハビリテーション、栄養管理)すべてにあてはまることである。急性期から在宅に 至るそれぞれの居場所でチーム医療が行われ、それぞれの職種間で連携の輪が途切れずに つながっていくことが重要である(図3)。

3)病期・病態別の口腔ケア

急性期を担当する病院では患者の救命や原疾患そのものの治療が第一義となるため、口 腔管理は後回しになる可能性がある。しかし、患者の QOL を考えるとき合併する疾患へ の配慮やその後の生活に向けてのリハビリ、ケアの第一歩として重要な意味を持つと考え られ、最近では急性期病院といえども早期から口腔ケアを導入する傾向にある。その目的 は患者本人、家族に口腔管理の銃余生を認識させモチベーションを向上させることにあ る。もちろん廃用予防など多くの付帯的な目的はあるが、急性期病院でのゴールはあくま でも肺炎の治癒にとどまるのである。急性期病院の役割は、ケアの輪が途切れないように 地域につないでいくことである。

同様に、回復期病床や療養病床での口腔ケアの目的やゴールは当然異なる。癌終末期の 緩和ケアにおける口腔管理は死に向けての QOL を意識したものになり、脳血管障害慢性 期の患者とは異なった対応になるべきであろう。

究極のチーム医療とは、病院という単一の組織の中で編成されるものではなく、地域と 病院が一体となったチームを組むことである。今後、後期高齢者の増加とともにその必要 性は高まっていくものと思われる。

誤嚥性肺炎を例に取れば、急性期病院では救命治療と口腔ケア、栄養管理、社会復帰に 向けてのリハビリなど多職種によるインテンシブなチーム医療が行われる。

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次いで、病院から退院した 後もこの集中的なチーム医療 が途切れずに続いていくよう に、地域連携パスあるいは次 の施設に向けて情報を発信す るシステム、つまりチェーン 型の連携の第一歩を踏み出 す。これは口腔ケア、栄養管 理、リハビリそれぞれの職種 別、そ し て 疾 患 別 に 行 わ れ る。

受け手の施設(あるいは在 宅)では同様なチーム医療を 行うが、急性期を脱した後の

回復期、緩和ケアを目的とした終末期などそれぞれの病期・病態に応じた目標とゴールが 設定される(図4)。

現在の高度に発達した医療制度は、脳卒中の発症から終末期までのすべての治療・ケア を同一の施設だけでまかなうことは残念ながら許さない。患者は自分の意思に関係なく、

急性期病院から在宅に至るまで病期によって次々と居場所を変えることになる。したがっ て、居場所が変わっても、途切れることなく同じレベルの良質なケアが提供できるシステ ムを構築することは医療人としての義務であると考える。

(足立了平)

4章−3チーム医療と口腔ケア

図4 誤嚥性肺炎予防:連携の3本柱例

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ドキュメント内 口腔ケアマニュアル 済/とびら (ページ 173-176)