2章−2◆意識障害のためセルフケアが困難な患者(人工呼吸管理なし)
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その他
◇担当医や看護師が期待して いること
① 口腔環境の改善(肺炎 など感染予防)
② ケア後に呼吸が安定す る(軟口蓋・咽頭後壁と 奥舌とが粘稠な痰や剥離 上皮により固着し、気道 が閉塞傾向にある場合な ど)
③ 歯 科 専 門 職 の 介 入 に よって、看護師が実施す る日常ケアを容易にし、
口腔環境を良好に維持し やすい
④ 摂食・嚥下機能訓練の 前処置
◇家族に喜ばれること
① ケア時に患者の表情が穏やかになる
② 覚醒し、発語が多くなることもある
❸ カルテ・看護師・主治医から予め確認しておくべき情報
1)予後・今後の見通し:回復が期待できるか否か
2)意識レベル:JCS あるいは GCS、開口に応じるか、不穏・せん妄の有無
3)循環・呼吸管理:体位変換時の血圧変動、酸素療法の有無(マスク、鼻カヌラな ど)、SpO2の変動(予備力があるか;酸素療法中断時の変動)
4)栄養管理:静脈・経管栄養からの投与熱量、経口摂取への移行の見込み
5)全身状態(バイタルサイン)の安定度:可能な体位、口腔ケアにかけられる時間 6)感染防御能低下の有無:栄養状態(血清アルブミン濃度)、糖尿病や肝硬変の合
併、ステロイドや抗がん剤の使用など
7)各種臨床検査データ(出血傾向、感染症など)
COLUMN ①
「JCSⅡ-30、SpO2変動あり、発 語 不 可」と いうコメントがついた患者の口腔ケアを依頼さ れた。軟口蓋から咽頭、奥舌に付着(固着)し ていた多量の分泌物・剥離上皮を除去したとこ ろ SpO2が上昇、安定した。さらに「すっきり した」としゃべった。
カピカピ痰が付着 咽頭より粘稠痰を吸引
口腔ケア後
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8)口腔ケアに治療的意義はあるか:痰、食片などの咽頭貯留による酸素飽和度の低下 や、誤嚥による肺炎があれば、治療的意義も大きい
9)大きな目標:肺炎や菌血症など口腔内細菌由来の感染を予防、口腔に関連する廃用 症候群の予防
❹ 口腔ケアのポイント
1)意識障害があっても積極的にコミュニケーションを図る
① 物品は、口腔内に挿入する前に必ず視界に入れてから説明をする。その際、患者の 焦点が物品へ合う、表情の変化、術者の話にうなずくなどの小さなサインを見逃さな い。
② 意識レベルが低くコミュニケーションが難しい場合でも、大きく、ゆっくり、はっ きりした声で常に話しかける。ケアの内容を「○○を△回しますよ」と予告し、進行 状況を「1回、2回、3回、……△回」と数えながらケアしていく(「8)ブラッシ ング」の項で詳細を記載)。
③ 訪床時のあいさつ、ケアの開始と終了、退室を必ず伝える。
2)誤嚥を予防する
① ケア中の姿勢を工夫することで、洗浄液などが気管へ流入することを予防する。
② 仰臥位のままでもケアは可能であるが、頸部を前屈あるいは回旋させることで、物 理的に気管への流入を予防する。
③ 意識レベルに変動がある患者では、覚醒レベルが少しでも良好な時を選ぶ。
④ 気管切開患者の場合は、口腔内吸引を済ませてから、気管内吸引をする(看護師に 依頼)。口腔ケア中のむせは、誤嚥している可能性も否定できないが、体位変換など によるチューブの刺激や気管内での痰の移動、意識レベルの変動などによる影響の可 能性もある。
⑤ 経管栄養の確認:注入の時間帯を確認し、注入終了後1〜2時間あけて口腔ケアを するのが理想である。ただし持続注入などで避けられない場合は、ケア開始前に一時 的に注入を中断し、ケアの刺激による胃食道の逆流を予防する。また、逆流を防止す るため、体位は上半身を30度以上ギャッチアップする。
⑥ 特に初回は、咽頭反射を誘発するようなケアを避けることが望ましい。
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❺ 口腔ケア時の注意点
1)モニターの確認
SpO2はベッドサイドでモニターされていることが望ましい。HR(心拍数)、PR(脈拍 数)、BP(血圧)についても、モニターされていれば、訪床時(ケア開始直前)の数値を 大まかでも良いので把握しておく。
2)輸液ルート・ドレーン・カテーテル・モニターコード類の確認
体位変換やベッドの上下動などでコネクターが外れるなどのトラブルがないように注意 しておく。各種アラーム音の意味を知っておくと、慌てずにすむ。
❻ 口腔ケアの実際
1)情報の確認
主治医、看護師、カルテから得られた情報を実際に確認する。たとえコミュニケーショ ンが難しくても、ベッドサイドで患者に話しかけながら、収集した情報とのギャップを埋 めていく。初回は必ず、担当医あるいは看護師の立ち会いを依頼する。
準備などをしながら、ケアを始める前に以下のものを確認しておく。
① 作業環境
ライトの点灯方法、ナースコールのボタン、離床センサーの電源、ベッドの高さ・
角度、オーバーテーブルの位置、口腔ケア用品(特に吸引関連)の揃い具合と保管場 所・方法など
② 全身状態
顔色、呼吸、発汗など
③ 開口に応じそうか
意識レベル、声かけに対する反応、不穏など
手や肩、頬などに触れた時の反応(安心、麻痺、拒否など)
④ 口腔外の簡易アセスメント
◇口角切れ(気管チューブによる褥瘡性潰瘍も含む)や口唇の乾燥や亀裂による軟膏 塗布の必要性
◇強い口臭がないか
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2)必要物品の準備
☆基本セット
白色ワセリン、ペンライト/ヘッドランプ(LED ライト)、歯科用ミラー、スポン ジブラシ、吸引セット(吸引器と排唾管)、歯ブラシ、洗浄用シリンジ(10ml または 20ml)に接続したサクションカテーテル(5〜10cm)、水およびコップ2個(洗浄用
とブラシすすぎ用)
★状況に応じて用意するもの/便利なもの
洗口液・含嗽剤:唾液の粘性亢進や口渇を訴える場合に、ハチアズレや2%重曹水な ど。洗口が困難な場合の歯磨剤の代用として、デンタルリンスあるいは塩化ベンザ ルコニウム水(0.025%以下)、ネオステリングリーン
保湿ジェル:開口状態で乾燥しやすい場合や舌苔の付着量が多い場合は、バイオエク ストラアクアマウスジェルやオーラルバランスなど
補助清掃用具:粘稠な唾液や痰が付着している場合に、吸引器に接続可能なビバゼッ トンや吸引スワブ、吸引くるリーナブラシなど。開口保持を要する場合に、ゆび ガードやバイトブロック。歯頸部や隣接面など細かな部分を清掃する場合は、歯間 ブラシやワンタフトブラシ。細かな部分の洗浄時には、歯科用水銃針など
3)体位の調整と術者のケア位置を確保
① ケア前の情報に基づき可能な体位において安全かつ安楽な状態で安定させる。
② 仰臥位であれば頸部を少し前屈、あるいは回旋した姿勢をとる(図1)。
③ 座位あるいはそれに近い体位が可能であれば、患者と術者の目線の高さを可能な限 り合わせられるようにベッドの高さを上げる。臀部、膝窩、足底を安楽枕やタオルな どで安定させる(図2)。
④ 側臥位でケアする場合は、患側を上にするのが原則(セルフケアが可能な場合に 2章−2◆意識障害のためセルフケアが困難な患者(人工呼吸管理なし)
安定させるポイント 頸部前屈
起座位 半座位
頸部回旋
図1 図2
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は、健側を上にして、ブラシなどを操作しやすく、という考え方もある)。体位交換 のスケジュールにあわせて、訪床する時間帯を考慮する。
⑤ 頸部が後屈した状態で拘縮している場合は、側臥位で、誤嚥に注意しながら確実に 吸引を行えるようにする。
4)口唇粘膜を保護するために湿潤(白色ワセリン)
口唇が乾燥し、上唇が上顎の歯の面に貼り付いていることが少なくない。このような場 合や口唇が易出血性の場合は、粘膜剥離や出血・亀裂を予防する目的に白色ワセリンを塗 布しておく。
5)口腔内アセスメント:ペンライト/ヘッドランプ、歯科用ミラー 口腔内全域を観察し、問題点を抽出する。
唾液貯留、乾燥、汚染、炎症、歯の崩壊などの部 位と状態
6)ケア内容の確認と決定
得られた最新の情報および口腔アセスメントから 下記を考慮しながら口腔ケア実施手順と優先順位を 考える。
① ケアにかけられる時間はどのくらいか?
② マッサージや脱感作の必要性は?
③ 洗浄・吸引は可能か?
④ 舌苔のケア方法
⑤ 保湿ジェルの必要性、など
7)口腔内の湿潤と粘膜清拭:スポンジブラシ、吸引セット
① 水あるいは洗口液を浸して軽く絞ったスポンジブラシを用いて口腔内を湿潤させて いく。口唇に沿って2〜3回動かし、スーッと滑らすように口腔前庭へ進めていく。
片側ずつ上下4ブロックに分ける。このケア中に患者の呼吸のリズムを感じ取るよう にする。
② スポンジブラシを回転させると、喀痰や食片などが除去しやすい。
③ ティッシュペーパーでの口腔内清拭は避ける。
④ 筋緊張でスポンジブラシが挿入できない場合は、口腔周囲筋をマッサージし脱感作 する。指を口唇と平行に動かしながら口腔前庭へ滑り込ませ、指と歯面の隙間へスポ ンジブラシを挿入する。
COLUMN ②
患者の全身状態に応じた口腔 ケア計画をたてる
患者の全身状態に応じた 口腔ケア計画をたてること が、口腔ケアによる負担を 最小限にすることにつなが ります。ただし、口腔アセ スメントに時間をかけすぎ ないよう短時間かつ的確な アセスメントができるよう に熟練していくことが大切 です。
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