1)抗血小板剤
★特徴および作用機序
血小板の凝集は、血管外傷に対する一次止血および動脈血管内皮の硬化性病変におけ る血栓形成に重要な役割を果たしている。動脈系の血栓性疾患である、虚血性心疾患(狭 心症、心筋梗塞)、脳血管障害(一過性脳虚血発作、脳梗塞)の予防には主として抗血 小板薬が使用される。
★代表的な薬剤名
バファリン錠、バイアスピリン腸溶錠(一般名:アスピリン)
表1 使用頻度が高くケア時に注意を要する薬剤
注目するポイント 分 類 商 品 名
全身状態の把握 抗菌剤(抗真菌剤を含む)
消炎鎮痛剤
口腔用薬剤の使用の有無 含嗽剤、口腔用軟膏
出血傾向の有無 抗凝固剤 ワーファリン
抗血小板剤 バイアスピリンなど
易感染性 ステロイド剤 プレドニン、リンデロンなど
各種抗がん剤
薬剤性歯肉肥大の鑑別
カルシウム拮抗剤 アムロジン、ノ ル バ ス ク、ア ダ ラートなど
抗てんかん剤 アレビアチン
顎骨壊死 ビスフォスフォネート剤 ゾメタ、アレディアなど 真菌感染症、舌炎など 喘息治療用吸入ステロイド フルタイド、キュバールなど 口渇を生じる薬剤 抗コリン剤 ブスコパンなど
抗うつ剤など トフラニール、アナフラニールなど
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血小板内のシクロオキシゲナーゼ(COX-1)を不可逆的に阻害して血小板のトロン ボキサン A2(TXA2)の産生を抑制することにより、血小板凝集を抑制し、血小板血 栓の形成を阻止する。
アスピリン経口投与後、アスピリンの血中濃度半減期は短いにもかかわらず、TXA2
産生抑制作用や血小板凝集抑制作用は血小板の寿命期間(7〜10日)継続する。これ はアスピリンのアセチル基によるシクロオキシゲナーゼ阻害作用は不可逆的であり、
かつ血小板はシクロオキシゲナーゼの合成能を有しないためと考えられている。
パナルジン錠(一般名:塩酸チクロピジン)
血小板のアデニレートシクラーゼ活性を増強して血小板内 cAMP 産生を高め血小 板凝集能・放出能を抑制する。抗血小板作用は非可逆的であるので、その作用が消失 するには7〜10日間かかると考えられている。
2)抗凝固剤
★特徴および作用機序
血液凝固には、血漿中に不活性な状態で存在する凝固因子蛋白の活性化が関与してい る。静脈系の血栓症(静脈血栓、心筋梗塞、肺塞栓、脳塞栓など)の治療と予防には凝 固因子の活性化を阻害する抗凝固剤と血栓溶解剤が主として用いられる。
★代表的な薬剤名
ワーファリン錠(一般名:ワルファリンカリウム)
ビタミンK作用に拮抗し、肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子(プロトロ ンビン(第Ⅱ、第Ⅶ,第Ⅸ,第Ⅹ因子)の生合成を抑制して抗凝血効果および抗血栓 効果を示す。
ワーワァリンの作用発現にはこれらの凝固因子の枯渇が必要であるため、最大作用 発現までには投与開始後2日前後を有する。
その他の抗血液凝固薬の一覧を表2に示す。
資料編−1◆口腔ケアのために知っておくべき薬剤
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抗血液凝固薬服用中患者の口腔ケアに際しての注意点
口腔ケア時に問題となるのは、口腔清拭やブラッシング時の歯肉・粘膜からの出血、お よび抜歯である。歯肉に慢性炎症があるとブラッシングの刺激により容易に出血するが、
通常は自然に止血する。これら薬剤を服用している場合、止血困難となることがあるが、
歯ブラシを歯肉に当てないようにすると、炎症は増悪しさらに出血しやすくなる。
そのためケア時の出血を軽減するためには、第一に適切なケア用品、方法を選択しなく てはならない。歯ブラシは、初めはナイロンの軟らかいものを使用し、歯肉溝内に毛先を 挿入し、小刻みに動かして磨くなどの繊細な配慮を必要とする。炎症が治まり、出血が減 少すれば歯ブラシは普通の硬さのものを使用する。
さらにケア時に重要なポイントとして歯肉・粘膜の出血の原因として白血病、血友病、
紫斑病などの血液疾患、口腔腫瘍があり、鑑別診断が重要となる。止血が困難である、歯 肉に潰瘍が見られるなど、歯周病以外の異常所見が確認されたら、ただちに口腔外科医に
表2 口腔ケアを行う際に注意を要する抗血液凝固剤
薬剤名 一般名・組成 作用機序等
抗 血 小 板 剤
パナルジン 塩酸チクロピジン アデニレートシクラーゼ阻害 アスピリン製剤(ア
スピリン末、バイア スピリン、バファリン
アスピリン シクロオキシゲナーゼ阻害
エパデール イコサペント酸エチル アラキドン酸遊離阻害によるトロ ンボキサンA2合成阻害
プレタール シロスタゾール ホスホジエステラーゼ阻害。投与 中止後48時間で血小板凝集能回復 パルクス,リプル アルプロスタジル プロスタグランディンE1製剤 プロレナール リマプロストアルファデクス アデニレートシクラーゼ活性増強 ドルナー,プロサイ
リン
ベラプロストナトリウム PGl2誘導体、消失半減期1時間
アンプラーグ 塩酸サルポグレラート 可逆的な血小板セロトニン 5-HT2 受容体阻害。投与中止後12時間で 血小板凝集能回復
ペルサンチン ジピリダモール ホスホジエステラーゼ阻害等。消 失半減期は24時間程度
抗 凝固 剤
ワーファリン ワルファリンカリウム 凝固因子合成阻害(ビタミンKと の拮抗)
血 栓 溶解 剤
ウロキナーゼ ウロキナーゼ 消失半減期は分単位
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連絡をとる必要がある。
また抗血液凝固薬服用患者の多くは脳血管障害の既往を認め、片麻痺や意識障害によ り、自己でのブラッシングが困難な場合は、積極的に介護者による口腔ケアが必要にな る。麻痺がある患者に対する口腔ケアに関しては他稿を参照して頂きたい。