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6 顎間固定患者

ドキュメント内 口腔ケアマニュアル 済/とびら (ページ 91-98)

対 象

顎骨骨折、顎矯正手術、顎骨再建手術などのため顎間固定を必要とする患者

どのような口腔ケアが必要か

よくある依頼内容

① ケアの方法を教えてほしい

・顎内固定用シーネおよび顎間固定用ワイヤー・ゴム周辺の清掃方法

・縫合部の消毒・清拭

・洗口

② 唇・頬粘膜の褥瘡性潰瘍のペインコントロール

③ 悪心・嘔吐時の対策

ピットフォール

① 栄養不良による体重減少(10%を超えないよう努める)

② 外傷による歯の亀裂・破折が見落とされている

③ 気道の閉塞:口底部の出血や舌根沈下

④ 頭蓋骨骨折における硬膜外血腫・髄液漏など

⑤ 多発性外傷(特に骨盤や大腿骨など骨折を伴う)時における脂肪塞栓のリスク

カルテ・看護師・主治医から予め確認しておくべき情報

セルフケアがどの程度可能かによって対応が異なる。

外傷による上肢や頸部の運動制限

口唇や頬粘膜における創傷の有無

口腔の安静度

1)顎間固定(手術)前

① 開口量

② 腫脹・疼痛の程度

③ 歯の動揺・破折の有無

④ 軟組織外傷の有無と程度、処置状況

2)顎間固定(手術)後

① 悪心・嘔吐の有無

② 耳管機能(滲出性中耳炎の有無)

③ 縫合部の確認

④ 褥瘡性潰瘍の有無

⑤ 顎間固定の方法・期間

口腔ケアのポイント

顎間固定の苦痛を少なくする。

早期経口摂取再開へ配慮する。

手術後の創部感染予防と開口制限に対応するために、「手術前」に細菌性バイオフィ ルムである歯垢を徹底的に除去(プラークフリー)し、歯垢の再付着を抑える。

① セルフケアが中心であるが、歯科医師・歯科衛生士によるサポートケアも必要。

② 上肢や頸部の運動制限など、セルフケアが困難な場合は看護師による支援も不可欠。

口腔ケア時の注意点

① 顎間固定の状態では吸引が難しい。

② 嘔吐すると非常に危険であるので、体調や食事(経管栄養の注入)直後を避けるな どを配慮するとともに、顎間固定を解除できる準備(金冠ハサミなど)を整えておく。

③ 患 者 の 協 力 が 得 や す い 顎 矯 正 手 術 前 の PMTC(Professional Mechanical Tooth 図1 シューハルトシーネ

歯頸部が不潔になりやすい

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Cleaning)は容易であるが、顎骨骨折患者では開口制限や創部痛などがあるため、で きるだけ苦痛のないように PMTC を実施する。

④ シーネ(三内式、シューハルト(図1)、MM など)を使用している場合は、歯頸 部が不潔になりやすいので、念入りにケアする。

口腔ケアの実際

クリニカルパスに組み込まれた「手術直前の PMTC」を以下に示す(図2)。ベッドサ イドではなく、外来歯科ユニットで PMTC を実施している。

1)手 順:手術前

① あいさつ後、患者の体調などを聞く。

② ルート確保してある場合は、誤抜針しない ようにユニットに誘導する。

③ PMTC の内容や流れについて簡単に説明 する。

2章−6顎間固定患者

歯科用ミラーとピンセット 図2 使用物品一覧

ハンドスケーラー、研磨用ペースト、ラバーカップ、ポリッシングブ ラシ、円錐型のラバーチップ、歯ブラシ、歯間ブラシ、1歯ブラシ、フ ロス、フッ素入りジェル状歯磨剤(ジェルコートF)、クロルヘキシジ ン入り洗口液(コンクールF)

上記のほか、超音波スケーラー、コントラハンドピース

舌、口蓋側に着色、歯石が付着して いることが多い。矯正装置の部分も歯 垢が付着しやすいので観察する。

ワンポイント

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④ クロルヘキシジン入り洗口液で、約15秒間、ぶくぶくうがい(洗口)をする。

⑤ 術者が行いやすい角度にユニットを調整する。

⑥ 術者はディスポーザブルグローブ、マスク、防護メガネ(スタンダードプリコー ション)をしてから、ミラーを使って口腔内を観察する。

⑦ 患者の顔にタオルをかける。歯石が付着している場合は除去する。多数歯に着色や 歯石が認められる場合は超音波スケーラーを使用する。超音波スケーラーの先が届き にくい部位(歯間部、矯正装置とワイヤーの間隙)はハンドスケーラーで対応する。

⑧ 口腔内に水や唾液が貯留したら、患者の希望で、適宜洗口可。

⑨ 歯面研磨を行う(図3)。

歯間部は円錐型のラバーチップを用いて、小豆大の半量の研磨用ペーストをラバー チップに取り、歯面に塗り、近遠心にそれぞれ沿わせて押しつけるように動かす。

舌・頬側はラバーカップを用いてラバーカップの辺縁の広がりを利用して歯肉縁下や 近遠心隅角部まで研磨する。最後臼歯の遠心や歯頸部(矯正装置側も含める)は円錐 型ラバーチップを用いて辺縁に沿わせるように研磨する。臼歯部はポリッシングブラ シの毛先を裂溝に当てながら研磨する。終了後はぶくぶくと洗口してもらう。

♣工夫していること

歯面研磨の時に、下顎、特に舌側から開始するとペーストの味が口腔内に広がり唾 液が出やすくなることと、ペーストのジャリジャリ感が舌に残り、不快感があると考 え、上顎から研磨する。

⑩ 洗口後、矯正装置(ブラケットや臼歯部のバンド)周囲に研磨用ペーストの残留が ないよう、口腔内観察後、ジェル状歯磨剤を併用してブラッシングする。歯ブラシが 歯肉に強く当たると痛むため、ブラッシング圧に注意する(図4)。

円錐形のラバーチップ ラバーカップ ポリシングブラシ

図3 歯面研磨

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⑪ 補助清掃用具による清掃(図5)

矯正装置(特にブラケットと臼歯部のバンド)の部分は1歯ブラシの三角の先を利 用し、ブラケット部分はブラケットの周囲を数回往復させるような動きで、歯頸部は 歯頸線に沿って数回往復させ、清掃する。歯間部はワイヤーを避けながらフロスを使 用し、歯間ブラシが使用できる空隙がある場合は歯間ブラシで清掃する。

終了後、タオルをとる。

⑫ クロルヘキシジン入り洗口液で念入りに洗口する。

2章−6顎間固定患者

歯ブラシで舌・口蓋側を一本ずつ掻き出すようにシャカシャカと磨き、唇・頬側は矯正 装置の上部(歯冠側)と下部(歯肉側)と二回に分けて細かく小刻みに動かしながら磨 く。

ワンポイント

歯冠側から 歯肉側から

図4 ブラッシング

1歯ブラシ フロス

歯間ブラシ 図5 補助清掃用具

1歯ブラシ/歯間ブラシ/フロス

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⑬ ミラーを使用して磨き残しがないか、矯正装置が破損していないかを確認する。

顎骨骨折の場合で、開口量が少ない、痛みなどの症状が強い時には、患者の状況を考 慮しやや不完全な状態で終了することもある。ブラケットや MM シーネ装着前の歯 面研磨のついでに、PMTC をすることが多い。

重症でセルフケアができない場合は、手術前に歯科衛生士がブラッシング、補助清掃 用具による清掃を行う(⑩と⑪を参照)。さらに洗口もできない場合は、20ml シリン ジを用いてクロルヘキシジン入り洗口液で口腔内を洗浄し、術後も看護師と歯科衛生 士による口腔ケアを行い保清する。

2)手術翌日から退院まで(約1週間)の口腔ケア

顎間固定前に歯科衛生士が口腔ケアを行う。

① ぶくぶくうがいができなくても、クロルヘキシジン入り洗口液を口腔内に含み吐き 出す。

② なるべく創部に触れないようにミラーを挿入し、口腔内を観察する。

③ 術後は腫脹のため開口量が少なく、舌・口蓋側臼歯部は見にくいことが多い。歯ブ ラシにジェル状歯磨剤をつけて、舌・口蓋側をコチョコチョと動かしながら弱い力で ブラッシングする。矯正装置や術野の近くは1歯ブラシで清掃する。

④ クロルヘキシジン入り洗口液を口腔内に含み吐き出す。

⑤ 歯科医師が顎間固定を行う。

上記を入院中(約1週間)継続し、退院時に歯科医師から、エラスティックゴムのか け方の指導などを受けた後、歯科衛生士がブラッシング指導を行う。

退院時にはエラスティックゴム2本の顎間固定になるため、流動食から固形物の摂取 が可能となる。

矯正装置による褥瘡性潰瘍がある場合は、矯正装置にユーティリティーワックスを付 けて保護し、軟膏を塗布する。

3)ブラッシング指導内容

① 手術前に歯垢や歯石が付着していた場所を伝え、ブラッシング方法を確認する。

② 顎骨骨折で固定装置が装着された、ブラッシングに不慣れなため、鏡を見ながらブ ラッシングすることや1歯ブラシの使用方法を確認する。

③ 利き手を骨折している患者や高齢者の場合は家族に協力をお願いする。

④ 利き手骨折後、必要であればリハビリが開始された時に腕の動きに合わせた歯ブラ シの改良を作業療法士に依頼する。どの程度歯ブラシを歯に当てることができるか確

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認し、磨けていない部分に対して、主に看護師や家族が仕上げ磨きを行い、歯科衛生 士は口腔内状況によって関わる回数が違うが(重度歯周病などの口腔内疾患がある場 合は関わる回数が多い)週1〜2回の口腔内観察、仕上げ磨きなどを行う。

(塚本敦美/岸本裕充)

2章−6顎間固定患者

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ドキュメント内 口腔ケアマニュアル 済/とびら (ページ 91-98)