6 章 施 工
写真 6. 4.1 打設前の型枠や鉄筋の清掃状況
6.4.2 養 生
(1) コンクリートの養生においては,完成した構造物における強度,耐久性その他の要求される品質が確 保されるよう,施工環境条件に応じて打込み後の一定期間コンクリートの水和反応に必要な温度およ び湿度に保ち,有害な作用の影響を受けないようにしなければならない.
(2) 凍害を受けるおそれのある場合および外部から塩化物が浸透するおそれのある場合には,コンクリー トの養生を十分行うとともに,膜養生を併用することが望ましい.
(3) コンクリートは養生期間中に予想される振動,衝撃,荷重,海水などの有害な作用から保護しなけれ ばならない施).
【解 説】 (1)について 養生は,打込みが終了したコンクリートが水和反応により十分に強度を発現し,
所要の耐久性,水密性,鋼材を保護する性能等の品質を確保し,有害なひび割れが発生しないようにするた めに,打込み後のある期間,コンクリートを適切な温度のもとで湿潤状態に保ち,かつ有害な作用を受けな いようにコンクリートを保護することである.
寒中や暑中など特別な場合以外の一般的な条件下における養生では,セメントの水和反応が十分進むよう 湿気を与えることが最も大切であり,単に養生といえばコンクリートに十分な水分を供給することを意味す る場合が多い.セメントが水に接すると水和して水和物を生成し硬化する.しかし水の供給が停止すると,
コンクリート表面から急速に乾燥してセメントペースト中の水がなくなり水和はほぼ停止する.この結果,
コンクリートの強度増進も停止し水密性が著しく低下する.水和反応は硬化の初期に最も活発であり,その 時期に十分な水分を供給できるよう湿潤状態に保つことによって,セメントの水和反応が進行し,強度や耐
解説 図 6.4.6 再振動の時期
h)久性などのコンクリートの品質を確保することができる.
湿潤養生の開始時期は,コンクリート表面を荒らさないで作業ができる程度に硬化した状態になった時点 が適当である.湿潤養生としては,コンクリートの露出面を養生用マット,布等をぬらしたもので覆う方法 や散水,湛水等により直接コンクリート表面を湿潤状態に保つ方法などがある.型枠のせき板で覆われてい る面は一般に水分の逸散が少ないと考えられるが,合板などの木材をせき板に用いる場合は気象条件によっ てはせき板が乾燥するので,せき板に散水するなどの対策が必要である.
湿潤養生の必要期間は構造物の種類,セメントの種類,施工条件,環境条件などを考慮して定めることが 基本となるが,標準的な日数として土木学会コンクリート標準示方書には解説 表 6.4.3が示されている.
解説 表 6.4.3 湿潤養生期間の標準
施)日平均気温
普通ポルトランドセメント 混合セメント B 種 早強ポルトランドセメント
15℃以上 5 日 7 日 3 日
10℃以上 7 日 9 日 4 日
5℃以上 9 日 12 日 5 日
一般的なコンクリート工事においては,この湿潤養生期間と型枠存置期間との違いをしっかりと認識して おく必要がある.型枠を取り外した時点で養生期間が終了したと判断しているケースが多く認められるが,
コンクリート構造物の長期的な耐久性の向上や脱型直後に発生するひび割れの抑制には,型枠存置期間とは 関係なく,必要とされる期間にわたって湿潤状態を保つことが極めて重要である.したがって型枠存置期間 を湿潤養生日数と同じにできない場合,すなわち湿潤養生日数に満たない期間で型枠を取り外す場合には,
構造物全体をシートで覆ったり膜養生を行うなど,その後も湿潤状態を保つことが必要である.
(2)について コンクリート構造物の耐久性にとって最も重要な要素は,表面部分のコンクリートの品質で ある.したがって凍害を受けるおそれのある場合あるいは外部から塩化物が浸透するおそれのある場合には特 に長期の養生が必要となる.すなわち,十分な湿潤養生を行ったのちにも膜養生等を行って十分な品質を確保 しなければならない.寒中施工の場合には,6.4.6の項に従わなければならない.
【参 考】 初期養生の重要性について
材齢の初期において,コンクリート表面から乾燥すると,内部のコンクリートからも水が表面に移動し,
この水が外に出てしまう結果となり,水和反応に必要な水が表面に近いほど不足することになる.断面の厚 い部材においては,コンクリートの表面から与える水が内部まで浸透することはないので,養生水は表面部 分のコンクリートの乾燥を防止することが目的である.したがって,乾燥が進むことが予測される場合には,
水を補給または維持する行為が必要となる.
参考 図 6.4.1
は,湿潤養生期間とコンクリートの強度の関係を 示したものである.施工現場の工程上の都合から早期に湿潤養生をやめると,その後の強度の伸びは低下し,長期強度は終始湿潤養生したコンクリートとは大きな差が生じることになる.また,十分な水分の供給は,
コンクリートの組織を緻密にし,その結果水密性を向上させる.これはコンクリート内部への劣化因子の侵 入を遅らせることにつながり,長期強度だけでなく耐久性をも向上させることになる.
参考 図 6.4.2
に湿潤 養生期間とコンクリートの水密性の関係を示した.
参考 図 6.4.1 湿潤養生期間とコンクリートの強度発現
d)
参考 図 6.4.2 湿潤養生期間とコンクリートの水密性
i)(3)について まだ十分に硬化していないコンクリートは,衝撃や過大な荷重,振動などによって,ひび割 れなどの損傷を受けやすいので,その上に材料等を置いたり重量物を落下させたりしないようにすることが 必要である.有害な作用には,このほかにも打込み作業中の降雨,養生用水の水質,給熱養生用ヒータの過 熱,海水,箱抜き内に溜まった水の凍結による膨張などがあげられる.若材齢のコンクリートの性質をよく 理解したうえで,これらの有害な作用が生じないようにするか,もしそれが避けられないとすれば,コンク リートがその影響を受けないように保護する必要がある.施)