6 章 施 工
6.2 施工計画
要する場合など三者だけでは問題解決が難しい場合には,三者会議において専門評価機関を交えて検討する ことが必要な場合も考えられる.
設計段階においてコンクリートのひび割れ照査が行われる場合があるが,温度ひび割れや乾燥収縮ひび割 れには設計時点では特定できない細かな施工条件が大きく影響する.したがって設計段階でひび割れ照査が 必要と認められた場合には,施工条件が特定できる段階で再度応力解析などを行い,発注者,設計者,施工 者の三者会議においてひび割れ制御対策等を検討する必要がある.
(5)について 工事仕様書の標準使用基準に示されたコンクリート配合は,これまでの経験から一般的な構 造物を対象に定められたものである.しかし最近の構造物は耐震性能確保への要求から非常に多くの鉄筋が 配置され,また景観面の要請から複雑な形状を有するものが多く設計されている.そのような構造物を従来 の構造物と同様な条件であると考え,安易に使用するコンクリート配合をこの基準から選択すると施工が極 めて難しくなる場合があり,充填不良等の初期欠陥が生じるなど耐久性の優れた構造物の構築に支障を来す ことも考えられる.したがって,工事発注時に選択された配合も,施工計画を立案する段階では構造条件や 施工条件,環境条件などをよく勘案して選択された配合の見直しを行うことが必要である.その場合,この ガイドラインで示した要求性能を満足するようにしなければならない.
【参考文献】
施) 土木学会 2007 年制定 コンクリート標準示方書 施工編
6.2 施工計画
6.2.1 一 般
設計図書に示されたコンクリート構造物を構築するために,施工者は適切な施工計画を立案し,発注者 の承認を得なければならない.
【解 説】 適切な施工計画を立案し,その施工計画に従って施工を確実に行うことは,設計で定めた諸性
能を有するコンクリート構造物を構築するために必要不可欠である施).このため,施工者は土木学会 2007 年制定コンクリート標準示方書[施工編:本編]2章およびこのガイドライン6.2.1〜6.2.4
を参照に,具体 的な施工計画を立案しなければならない.特に東北地方は,冬季の気温が低く,また地方によっては相当な積雪がある.さらに日本海側における飛 来塩分や山間部における多量の融雪剤の使用,材料面でも骨材の品質変動も大きいことが指摘されており,
耐久性に優れたコンクリート構造物を構築して行くにあたってはかなり厳しい条件である.これらの地域的 な条件のため,施工時に初期欠陥が発生するとコンクリート構造物の耐久性を著しく損なうおそれがあり,
施工計画を立案するに当たっては,これらの東北地方の特徴を十分考慮する必要がある.
また,施工計画の立案にあたっては,発注者,設計者の意見を取り入れる必要があり,「総則」に述べた 三者会議をとおして十分な意見交換を行って施工計画を立案することが望ましい.
6.2.2 施工計画における検討項目および施工方法の選定
(1) 施工計画では,構造物の構造条件,現場の施工条件および環境条件を考慮するとともに,作業の安全 性や環境負荷に対しても配慮し,全体計画,施工方法,コンクリートの施工性能,配合,品質管理,
検査および環境・安全について計画を立てなければならない.
(2) 具体的な施工方法の立案において,このガイドラインの
6.4.1〜6.4.10
に示した施工方法を標準的な 施工方法とする.(3)対象構造物に適すると考えられる,標準的な材料や施工方法以外の方法を採用する場合には,実験な どにより構造物中のコンクリートの品質に及ぼす影響を確認しなければならない.
【解 説】
(1)について 東北地方では冬期の気象条件が極めて厳しく,そのような条件下で施工した場合,入念な施工を行ってもなお十分な構造物の品質を確保できないことも往々にしてある.したがって可能な限 りこのような時期にコンクリートの施工とならないよう,工事に関係する発注者,設計者,施工者それぞれ の立場で検討・計画しなければならない.施工計画の立案にあたって検討する項目の例として,土木学会標 準示方書で示された一覧表に修正を加えたものを解説 表 6.2.1に示す.
解説 表 6.2.1 施工計画の検討項目の例
施)
項 目 内 容
1.全体計画 施工区画割り,施工時期
2.コンクリートの運搬・
受入れ計画
生コン車の配車・運行計画,場内運行路,試験・検査場所,コンクリートの配合検査(スランプ,
空気量,単位水量,水セメント比など)
3.現場内運搬計画 現場内運搬方法,コンクリートの供給能力,ポンプ車の予備など
4.打込み計画 施工体制(組織図),打込み順序,1 層の打上がり高さ,打重ね時間間隔,時間当たりの打込み量,
作業足場,安全性など
5.締固め計画 振動機の種類,台数,要員数,予備の振動機,交代要員など
6.仕上げ計画 仕上げ作業開始時期および終了時期,仕上げ精度,要員数,仕上げ器具など 7.養生計画 養生開始時期,養生方法,養生期間,養生機械装置,終了時期確認方法など 8.打継ぎ計画 打継ぎ面の処理方法,処理機械,打継ぎ時期など
9.鉄筋工の計画 鉄筋の種類,加工方法,かぶり確保の方法,組立て方法,継手方法,組立て鉄筋,段取り筋など 10.型枠および支保工 型枠・支保工の設計,型枠材料,支保工材料,側圧管理方法,型枠・支保工取外し時期など 11.環境保全計画 自然環境への影響評価,各種排水の処理,騒音・振動・粉塵対策
12.安全衛生計画 工事担当者の安全確保,第三者の安全確保
13.その他 トラブル時の対応方法
設計においては,標準的な施工方法を前提に構造諸元や種々の材料特性が定められている.しかし,工事 の要件,施工時の気象条件や環境条件などが実際の条件に即して具体化された場合,標準的な施工方法以外 の方法を採用することがより適切な場合がある.したがって,対象工事の条件を考慮して適切な施工方法を 柔軟に決めることが肝要である.
(2)および(3)について このガイドラインの
6.4.1〜6.4.10
に示された施工方法を採用した場合,これま で長い実績から構造物中のコンクリートの品質は保証されていると考えてよい.それ以外の施工方法を採用 する場合には,十分保証されていないことも考えられるため,品質への影響を確認することが必要である.そのような材料,施工法には高流動コンクリートや低発熱セメント等が挙げられる.これらについては,土 木学会から設計施工指針が示されており,それらの指針や信頼できる技術資料に基づいて施工計画を立案す る.
6.2.3 コンクリートの施工性能の設定および配合の選定
(1) 設定した施工方法に即して,ワーカビリティーや強度発現特性などの施工性能を適切に設定しなけれ ばならない.
(2) 要求される施工性能を満足する配合は,原則として JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」
に定められたレディーミクストコンクリートの種類の中から選定するものとする.
(3) 施工方法に必要とされる施工性能を満足する配合を選定することができない場合には,施工方法を見 直さなければならない.
【解 説】 (1)について 施工作業の各段階で必要とされるコンクリートの施工性能としては,充てん性,
ポンプ圧送性,凝結特性などのワーカビリティーおよび強度発現特性がある施).これらのうち特にワーカビ リティーは経時的な変化があるので,要求される性能が必要とされる時点で確保できるように定めることが 重要である.フレッシュコンクリートの性質の経時的な変化は環境温度によって大きく影響され,気温が高 いと変化が早く逆に気温の低い場合には凝結などが著しく遅れる場合があるので,暑中や寒中の時期に施工 する場合には特に注意が必要である.
スランプは土木学会標準示方書に示されるように,打込み時に必要とする最少スランプを選定し,現場内 運搬時およびプラントから現場までの運搬時のスランプロス,品質のバラツキを考慮して製造時のスランプ を定めなければならない(解説 図 6.3.1参照).
施工中の強度発現が必要となるのは,型枠・支保工の取外し時期や PC 鋼材の緊張時期が設定される場合な どである.施工時のコンクリート強度はセメントの種類や配合の他打込み時のコンクリート温度や環境温度,
養生条件などによって大きく影響を受ける.特に寒中で高炉セメントを用いる場合など,強度発現が相当遅 れることがあるのでこれらの条件をよく考慮して施工時期を決めることが肝要である.
(2)について このガイドラインの解説 表 4.1.1, 4.1.2には構造物毎にそれぞれの条件に応じた配合が 標準配合基準として示されており,その要求品質を満足する配合を JIS A 5308 に示されたコンクリートの種 類から選定する.
JIS A 5308 では骨材の最大寸法,スランプ,強度等の組み合わせの中から所定の配合を指定することとし