6 章 施 工
6.3 施工上要求されるコンクリートの品質
6.3.3 ワーカビリティー
6.3.3.1 充てん性
(1)充てん性は,振動締固めを加えた場合の流動性と材料分離抵抗性との相互作用によって得られる性能 とし,両者のバランスを考慮して定める必要がある.
(2) 充てん性は,構造物の種類,部材の種類および大きさ,鋼材量や鋼材の最小あき等の配筋条件ととも に,場内運搬の方法や締固め作業方法を考慮して,作業のできる範囲内で適切に定めなければならな い.
(3) コンクリートを円滑かつ密実に型枠内に打ち込むための流動性は,打込みの最小スランプを確保する ことによって得られるものとする施).打込みの最小スランプの設定にあたっては,施工できる範囲内 でできるだけスランプが小さくなるように,事前に,打込み位置や箇所,締固め作業高さや内部バイ ブレータの挿入間隔,1 回当りの打込み高さや打上り速度等の施工方法について十分に検討しなけれ ばならない.
【解 説】
(1)について コンクリートに要求される充てん性とは,振動締固めを通じて,コンクリートが 材料分離することなく鉄筋間を円滑に通過し,かぶり部や隅角部あるいは PC 定着部等に密実に充てんできる 性能である.充てん性は,振動締固め時の流動性と材料分離抵抗性との相互作用によって定まることが経験 的に知られている.したがって,充てん性の良否は流動性と材料分離抵抗性の相互のバランスによって定ま るものと考えることができる.流動性と材料分離抵抗性は,単位水量と単位セメント量あるいは単位粉体量との関係はもとより,使用す るセメントや粉体の種類,細・粗骨材の粒度や粒形,細骨材率さらには混和剤の種類の違い等によっても影 響を受ける.また,材料分離抵抗性は一般に塑性粘度と降伏値等のレオロジー定数によって数値化できる性 能であるが,このガイドラインでは,実務面での利便性を考慮して,流動性をスランプで表わし,材料分離 抵抗性は主として細骨材率を適切に定めることで確保することとした.
(2)および(3)について 作業の条件に応じて必要とされる充てん性は異なるため,所要のスランプとそれ
解説 図 6.3.1 各施工段階の設定スランプとスランプ経時変化の関係
施)製造から打込みまでの時間・空間的移動
荷卸し
打込み
荷卸し箇所の 目標スランプ
打込みの 最小スランプ
現場内での運搬に伴う スランプの低下 荷卸し箇所のスランプの許容差
設定 スランプ
練上り 練上りの
目標スランプ 現場までの運搬に伴う
スランプの低下
荷卸し箇所のスランプの 正規分布曲線
に対応した細骨材率および単位粉体量は,種々の施工条件を考慮して定める必要がある.スランプはコンク リートの製造から打込みまでの時間経過や運搬等によって解説 図 6.3.1に示すように変化するが,コンクリ ートの密実な充てんを確実に得るためには,打込み時において必要なスランプを確実に確保しておく必要が ある.そのため,このガイドラインでは,充てん性を確保するための流動性について,打込み時の最小スラ ンプを基準にすることとした.
所定の打込みの最小スランプを満足するためには,運搬方法,練上りから打込み終了までの時間,気温等 を考慮して,練上りのスランプおよび荷卸しのスランプを定める必要がある.具体的には,練上りのスラン プは荷卸し時に所定のスランプとなるように,現場までの運搬におけるスランプの低下を考慮して設定する.
また,荷卸し時のスランプは,打込み時に所定のスランプが確保されるように,現場内でのスランプの低下
(経時変化と現場内での運搬にともなう低下)を考慮して定める.なお,経時や現場内での運搬にともなう スランプの低下は諸条件によって異なるため,施工条件を事前によく検討してスランプの低下を適切に見込 むことが重要である.施)
上記のように,打込み,荷卸しや練上りでは所定のスランプの大きさが相違するため,打込み箇所で所要 の充てん性を確保するためには,練上り時あるいは荷卸し時において打込み箇所のスランプよりも大きなス ランプで品質管理することになる.しかし,例えばスランプの大きさによって最適な細骨材率が異なるよう に,厳密には,打込み,荷卸し,練上りのいずれの時点を想定して配合設計を行うかによって,適切な配合 も異なる.施)
このガイドラインでは,打込み箇所において最適な充てん性となるように配合設計を行うことを基本とす る.ただし,場外運搬や時間経過にともなうスランプの低下が大きい場合や特にポンプ圧送で場内運搬する 場合のスランプの低下が大きく見込まれる場合で,所定の打込みの最小スランプに対して練上りや荷卸しの 目標スランプが相当に大きくなることが予想される場合には,製造時や現場までの運搬にともなう材料分離,
さらには場内運搬における管内閉塞等のポンプ圧送性の低下を生じないように適切な配合を定める必要があ る.このような場合には,製造管理や品質管理,荷卸し箇所の受入れ検査で支障が生じないよう,練上りあ るいは荷卸しの目標スランプにおいて良好なワーカビリティーを有するコンクリートとなるように配合を定 めるのがよい.なお,レディーミクストコンクリートを用いる場合には,打込みの最小スランプを満足する
荷卸しの目標スランプを定め,従来と同様にこの荷卸しの目標スランプを指定スランプとするのがよい.
打込みの最小スランプは,構造条件として部材の種類や寸法や補強材(鉄筋,鋼材)の配置等を考慮し,
打込み方法(落下高さ,打込みの 1 層の高さ)や締固め方法(振動機の種類,挿入間隔,挿入深さ,振動時 間,締固め作業高さ)に基づき,これらの条件を考慮して設定するものとする.
解説 表 6.3.1
に示す標準的 な運搬・打込み・締固めが行われる場合を前提として,土木学会 2007 年制定コンクリート標準示方書[施工編]では解説 表 6.3.2〜6.3.6を示している.また,場内運搬としてポンプ圧送を行う場合には,圧送にともな うスランプの低下を考慮して,
解説 表 6.3.7
に示す圧送条件,最小スランプ,環境条件等の諸条件に応じた スランプの低下量を見込むのがよいとしている.なお,これらの表には締め固め作業高さが 3m を超える場合 も示してあるが,可能であれば打込み箇所のすぐ近くで締固め作業を行うのが望ましく,作業高さが 3m 以上 となる場合は施工計画の見直しを行うか別途適切な方法で確認して用いるのがよい.
解説 表 6.3.1 このガイドラインで対象とする標準的な運搬・打込み・締固め条件
作業区分 項 目 標 準
現場までの運搬方法 トラックアジテータ車
運 搬
現場内での運搬方法 コンクリートポンプ
自由落下高さ(吐出口から打込み面までの高さ) 1.5m以内
一層当りの打込み高さ 40〜50cm
外気温 25℃以下の場合 2.5 時間 打込み
許容打重ね
時間間隔 外気温 25℃を超える場合 2.0 時間
締固め方法 内部振動機
挿入間隔 50cm 程度
挿入深さ 下層のコンクリートに 10cm 程度
締固め
一箇所当りの振動時間 5〜15 秒
解説 表 6.3.2 スラブ部材における打込みの最小スランプの目安(cm)
施)
締固め作業高さ 鋼材量1)
(kg/m3)
鋼材の最小あき1) (mm)
コンクリートの
投入間隔2) 0.5m未満 0.5m以上〜1.5m未満 3m以下 任意の箇所から
投入可能 5 7 −
2〜3m − − 10
100〜150 100〜150
3〜4m − − 12
1)鋼材量は 100〜150kg/m3,鉄筋の最小あきは 100〜150mm を標準とする.
2)コンクリートの落下高さは1.5m以下を標準とする.
解説 表 6.3.3 柱部材における打込みの最小スランプの目安(cm)
施)締固め作業高さ かぶり近傍の
有効換算鋼材量1) 鋼材の最小あき
3m 未満 3m 以上〜5m 未満 5m 以上
50mm 以上 5 7 12
700kg/m3未満
50mm 未満 7 9 15
50mm 以上 7 9 15
700kg/m3以上
50mm 未満 9 12 15
1)かぶり近傍の有効換算鋼材量は,下図に示す領域内の単位容積あたりの鋼材量を表す.
解説 表 6.3.4 はり部材における打込みの最小スランプの目安(cm)
施)締固め作業高さ1)
鋼材の最小あき
0.5m 未満 0.5m 以上〜1.5m 未満 1.5m 以上
150mm 以上 5 6 8
100mm 以上〜150mm 未満 6 8 10
80mm 以上〜100mm 未満 8 10 12
60mm 以上〜 80mm 未満 10 12 14
60mm 未満 12 14 16
1)締固め作業高さ別の対象部材例
・0.5m 未満:小ばり等,0.5m 以上 1.5m 未満:標準的なはり部材,1.5m 以うえでプビーム等.
・φ40mm 程度の棒状バイブレータを挿入でき,十分に締め固められると判断できるか否かに基づいて打込みの最小スラ ンプを選定する.
(ⅰ)十分な締固めが可能であると判断される場合は打込みの最小スランプを 14cm とする.
(ⅱ)十分な締固めが不可能であると判断される場合は,高流動コンクリートを使用する.
・スランプが 21cm を超えるような場合,所要の材料分離抵抗性を確保し密実に充てんするために,高流動コンクリート を使用するのがよい.
単 位 高 さ (1m)
:1段配筋の有効換算鋼材量算出対象領域 :複数段配筋の有効換算鋼材量算出対象領域
主鉄筋の中心までの幅
帯鉄筋 主鉄筋
中間帯鉄筋