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顧客に支払った又は支払うことになる対価

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 76-80)

5 取引価格の算定

5.5 顧客に支払った又は支払うことになる対価

多くの企業は顧客に対して支払を行っている。支払った又は支払うことになる対価は、企業 が事業を行うにあたり必要となる財又はサービスを顧客から購入したことを表す場合もあれ ば、企業が自社の財又はサービスを顧客に購入してもらう、又は継続的に購入してもらうた めに提供するインセンティブを表す場合もある。

46 IAS18号第12 47 IFRIC18号第13

IFRS第15号には、顧客に支払った又は支払うことになる対価に関して、以下の規定が定め られている。

IFRS15 号からの抜粋

70. 顧客に支払われる対価には、企業が顧客(又は当該顧客から企業の財もしくはサ ービスを購入する第三者)に支払う又は支払うと見込む現金の金額が含まれる。顧 客(又は当該顧客から企業の財もしくはサービスを購入する他の当事者)に支払わ れる対価には、企業に対する債務に充当できるクレジット又はその他の項目(たと えば、クーポンやバウチャー)も含まれる。企業は、顧客に支払われる対価を取引 価格(したがって、収益)の減額として会計処理しなければならない。ただし、顧客へ の支払が、顧客が企業に移転する区別できる財又はサービス(第 26 項から第 30 項を参照)の対価である場合は除く。顧客に支払われる対価に変動性のある金額 が含まれる場合、企業は第 50 項から第 58 項に従い取引価格を見積らなければな らない(変動対価の見積りを制限すべきか否かの評価を含む)。

71. 顧客に支払われる対価が、顧客から購入した区別できる財又はサービに対する支 払である場合には、企業は、当該財又はサービスの購入を仕入先からの他の購入 と同じ方法で会計処理しなければならない。顧客に支払われる対価が、企業が顧 客から受け取る区別できる財又はサービスの公正価値を超える場合、企業はその 超過額を取引価格の減額として会計処理しなければならない。企業が、顧客から受 け取る財又はサービスの公正価値を合理的に見積れない場合には、顧客に支払 われる対価の全額を取引価格の減額として会計処理しなければならない。

72. 顧客に支払われる対価を取引価格の減額として会計処理する場合には、企業は、

次のいずれか遅い方の事象が発生した時点で(又は発生するにつれて)、収益を減 額しなければならない。

(a) 企業が関連する財又はサービスの顧客への移転について収益を認識する。

(b) 企業が対価を支払う、又は(支払が将来の事象を条件としている場合であって も)支払うことを約定する。当該約定は企業の商慣行により黙示的な場合があ る。

IFRS第15号は、対価を受け取る買手が企業の直接の顧客であるか又は間接的な顧客であ るかに関係なく、顧客に支払われる対価を会計処理することを求めている。これには、流通ネ ットワークのさまざまな時点で企業の製品を購入するあらゆる買手に支払われる対価が含ま れる。当該規定は、財の販売により収益を創出する企業と同様に、サービスの提供により収 益を創出する企業にも適用される。

顧客に支払った又は支払うことになる対価は、一般的に値引き、クーポン、無料の商品やサ ービス及び資本性金融商品などの形態を取る。また、企業から直接購入する再販業者又は 代理店の顧客に対して支払いを行う企業もある(たとえば、朝食用のシリアルの製造業者が、

直接の顧客は消費者に販売する食料品店であるにもかかわらず、消費者にクーポンを提供 する)。また、対価を支払う約定が商慣行による黙示的な場合もある。適切な会計処理を決 定するために、企業はまず、顧客に支払った又は支払うことになる対価が区別できる財又は サービスに対する支払いなのか、取引価格の減額なのか、又はその両方なのかを判断しな ければならない。

企業の顧客への支払いを取引価格の減額以外のものとして取り扱うためには、顧客が提供 する財又はサービスは区別できなければならない(セクション4.2を参照)。

顧客に支払った又は支払うことになる対価が、顧客に提供した財もしくはサービスに係る値 引き又は返金である場合、当該取引価格(よって最終的には収益)の減額は、企業が約定し た財又はサービスを顧客に移転した時点、又は企業が顧客に当該対価の支払いを約定した 時点のいずれか遅い時点で認識する。これは、支払いが将来の事象を条件としている場合 であっても同じである。たとえば、クーポンによる値引きの対象となる財がすでに小売業者の 棚に陳列されている場合、値引きはクーポンの発行時に認識される。一方、小売業者にいま だ販売されていない新製品に使えるクーポンを発行した場合、値引きは当該製品を小売業者 に販売した時点で認識される。

顧客に支払った又は支払うことになる対価には、提供した財もしくはサービスに係る値引き又 は返金の形での変動対価が含まれる場合がある。そのような場合、企業は、当該値引き又 は返金による影響を算定するために、期待値法又は最頻値法のいずれかを用いて権利を得 ると見込む金額を見積るとともに、当該見積りに対して制限に係る規定を適用する(詳細はセ クション5.1を参照)。

しかし、顧客に支払われる対価の認識時期に関する規定は、黙示的な価格譲歩について検 討することを求める規定と整合していないように思われる。すなわち、IFRS第15号の変動対 価の定義は幅広く、クーポンや企業に対する債務に充当できる他の形式のクレジットなどの 金額も含まれる。IFRS第15号は、契約の開始時点及び企業の履行に応じて、変動対価に 該当し得るすべての対価を検討し、取引価格に反映させることを求めている。すなわち、企業 が過去にこの種の対価を顧客に提供していた場合、変動対価の見積りに関する規定に基づ けば、企業がそうした対価をいまだ顧客に提供していないとしても、契約の開始時点で当該 金額を考慮する必要があるように思われる。

一方、「顧客に支払われる対価」に関する規定では、そうした金額を以下のいずれか遅い時 点まで収益の減額として認識しないとされているため、不整合が生じている。

• 関連する売上を認識した時点

• 企業がそうした対価を提供すると約定した時点

当該規定からは、これまでそうした種類の制度を提供していたとしても、企業はそうした制度 の提供を見込む必要はなく、そうした制度の影響は顧客に支払いを行った又は約定した場合 にのみ認識することになると思われる。この不整合が解消されるように、新たなガイダンスの 提供が望まれる。

顧客に支払われる対価はさまざまな形式を取る。そのため、企業はそうした金額の適切な処 理を決定するために、各取引を慎重に評価しなければならない。顧客に支払われる対価の 一般的な例として、以下の項目が挙げられる。

• 棚代 ― 消費者製品の製造企業が、店舗で自社の製品を優先的に陳列してもらうため に、小売業者に手数料を支払うことは一般的である。陳列棚は、物理的な場合もあれば

(すなわち、店舗がある建物の中)、仮想上のものである場合もある(すなわち、インター ネットにおける小売業者のオンライン・カタログ上のスペース)。一般的にそうした手数料 は、製造企業にとって区別できる財又はサービスではないため、取引価格の減額として 処理される。

• 共同で広告宣伝を行う契約 ― 一部の契約では、売手の製品を宣伝するために再販業 者に生じたコストの一部を、売手が再販業者に補填することに同意する場合がある。売 手からの支払いが区別できる財又はサービスを公正価値で引き渡すことに対する対価で あるのか否かの判断にあたり、当該契約の事実及び状況を慎重に分析する必要があ る。

• 価格保護 ― 小売業者が売手の製品に対して受け取る販売価格の下落に関して、売手 が特定の期間にわたり一定の金額を上限として小売業者に補填することに同意する場 合がある。通常、そうした手数料は、製造企業にとって区別できる財又はサービスではな いため、取引価格の減額として処理される。

• クーポン及びリベート ― 売手の間接的な顧客が、小売業者又は売手に指定の用紙を 返送することにより、購入した製品又はサービスの購入価格の一部について返金を受け られる場合がある。一般的にそうした手数料は、製造業者にとって区別できる財又はサ ービスではないため、取引価格の減額として処理される。

• 契約締結に向けた前払い(Pay-to-play)契約 ― 一部の契約では、売手は新規契約を 獲得するために顧客に前払金を支払うことがある。ほとんどの場合、これらの支払いは 顧客から受領する区別できる財又はサービスに関係するものではないため、取引価格の 減額として処理される。

• 財又はサービスの購入 ― 企業はしばしば顧客と供給契約を締結し、顧客から区別でき る財又はサービスを購入することがある。たとえば、ソフトウェア企業が、自社のソフトウ ェア製品の顧客の 1 社から事務用品を購入する場合がある。そのような状況において、

企業は、顧客への支払いが単に受領した財又はサービスに対するものなのか、又は支 払いの一部が実質的に企業が顧客に移転する財又はサービスの取引価格を減額するも のなのかを慎重に判断しなければならない。

IFRS第15号に定められる顧客に支払われる対価の会計処理は、IFRSに基づく現行実務と 概ね整合している。しかし、顧客に支払われる対価を収益の減額以外のものとして取り扱う ために、財又はサービスが「区別できる」か否かの判断を求める規定は新たに導入されたも のである。こうした取扱いはIAS第18号の設例の多くで示唆されているものの、現行のIFRS では明示的に定められていない。そのため、一部の企業は、顧客に支払った又は支払われ ることになる対価の取扱いを再評価することが必要になるであろう。

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 76-80)