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評価フェーズ

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 161-165)

10 実務適用上の検討事項

10.3 評価フェーズ

評価(又は診断)フェーズは、会計上の変更を適用するための5つのフェーズのうちでおそら く最も重要であり、残りの導入プロセスの基礎となる。評価フェーズにおいて、企業はIFRS第 15 号を理解し、同基準書が自社の重要な収益源に及ぼす影響を識別しなければならない。

こうした影響は取引の種類ごとに異なる可能性があるため、企業は自社の重要かつ固有の 収益源を特定し、代表的な契約のサンプルにIFRS第15号を適用してみる必要がある。

重要かつ固有の収益源を特定するために、通常はすべての顧客層に対する自社の製品及 びサービスの提供を調査することになる。企業は、現在適用している収益認識に関する基準 書及び解釈指針書を検討することによって、こうした収益源を特定することができよう。企業 はまた、地域、契約の種類又は販売チャネルなどの追加的要素が、重要かつ固有な収益源 の識別に影響を及ぼすかどうかを検討する場合もあろう。たとえば、製品A、B及びCを販売 している企業が、ヨーロッパでは顧客に直接販売しているが、アジアでは販売代理店を使用 していたとする。こうした状況では、単純に製品の種類の数に基づき 3 つの収益源を分析す るのではなく、6つの収益源を分析すべきか否かを検討することになるだろう。

10.3.2 評価フェーズの活動

重要な収益源を特定したら、企業は各収益源の代表的な契約にIFRS第15号を当てはめて みる。企業はさらに、システム、プロセス、法人所得税及びチェンジ・マネージメントに及ぼす 影響も検討しなければならない。業務の流れごとに行われる手続の例には、次のものがあ る。

会計及び

ディスクロージャー 税務 ビジネスプロセス 及びシステム

チェンジ・マネージメント 及びコミュニケーション

• IFRS第15号の規 定を理解し、経理 財 務 部 門 向 け の 研修を行い、自社 に及ぶ可能性のあ る影響を評価する

• IFRS第15号が税 務 部 門 に 及 ぼ す 影響を理解する

• ( 現 在 及 び 将 来 の)収益に関連す るプロセス及びシ ステムの全体像を 理解する

• 自社における情報 管 理 体 制 及 び 情 報 管 理 手 法 を 理 解する

代表的な販売契約

にIFRS第15号を 適 用 す る こ と で 、 同基準書と現行基 準書との差異を特 定する

IFRS第15号を適 用した結果、新た に生じる繰延税金 項目を特定する

会計及びディスク

ロージャーならび に税務に係る業務 の流れから生じる 可能性のあるすべ ての会計上の差異 を一覧にする

情報伝達の手順に

関する留意事項を まとめる

会計及び

ディスクロージャー 税務 ビジネスプロセス 及びシステム

チェンジ・マネージメント 及びコミュニケーション

• IFRS第15号で追 加された開示規定 を特定する

• 移転価格を含む、

現行の税務に関す る会計方針(すな わち、税務申告書 で採用している方 針)のうちIFRS第 15号により影響を 受ける分野を特定 する

• 影響度調査を通じ て、IFRS第15号 により最も影響を 受けるプロセス/

機能の領域(プロ セス、システム及 び人材)を判断す る

• 社内にIFRS第15 号に関する知識を 浸透させるための 全体的な研修ロー ドマップを策定する

• プロジェクトの次フ ェーズで取り扱う、

さらなる調査や評 価が必要な会計上 及 び 開 示 上 の 領 域を特定する

• IFRS第15号が税 務コンプライアンス やプランニングに 及 ぼ す 影 響 の 性 質を特定する

• 現 行 及 び 計 画 中 のシステム及びプ ロセスに関する取 組 み を 特 定 し 、 IFRS第15号の導 入による影響を評 価する

10.3.3 重要な判断及び見積り

評価フェーズの活動を実施する際に、企業はIFRS第15号に基づく場合に求められる主要な 判断及び見積りを特定しなければならない。こうした経営者による判断及び見積りは、同基 準書を適用する上で重要な要素である。現行のIFRS と同様に、新たな収益認識モデルはさ まざまな原則に基づいており、多くの見積りや判断が求められる。以下は、IFRS第15号にお いて重要な判断が求められる領域の例である。

• 契約の識別

• 回収可能性(セクション3.1.5)

• 契約の結合(セクション3.2)

• 契約の変更(セクション3.3)

• 履行義務の識別 — 区別できる財又はサービスの決定(セクション4.2)

• 取引価格の算定

• 変動対価の見積り(制限の適用を含む)(セクション5.1及び5.2)

• 重要な金融要素に関する決定(セクション5.3)

• 独立販売価格の見積り(セクション6.1)

• 一定期間にわたり充足される履行義務か、又は一時点で充足される履行義務かの決定

(セクション7)

• ライセンスが知的財産の使用権を付与するものなのか、又はアクセス権を付与するもの なのかの決定(セクション8.4)

評価フェーズより後の導入プロセスにおいては、こうした判断が自社全体を通じて首尾一貫し て行われることを担保するために、当該判断を行うためのプロセスを関連する統制手続も併 せて設計、導入しなければならない。

10.3.4 評価フェーズから得られる考察

IFRS第15号で求められる重要な判断及び見積りを識別することに加え、評価フェーズでは 他にも有意な考察が得られるはずである。これらの考察は、残りの 4 つのフェーズを実施す る上での基礎となる。評価フェーズの終盤には、IFRS第15号の下での重要な収益の種類及 び同基準書の導入アプローチについて、次のような質問に答えられるようになっているはず である。

完全遡及適用アプローチ又は修正遡及適用アプローチのうちいずれの移行方法を適 用するか?

セクション1.2で説明したとおり、IFRS第15号は2つの移行方法を認めている。どちらの方 法が自社にとって適切かを決定する前に、経営者は、自社の収益源に及ぼす重要な影響を 識別し、同業他社が選択すると思われる方法を評価するとともに、関係者の視点も考慮すべ きである。

• 同業他社及びその業界に属する他の企業はいずれの方法を適用するのか?

• その業界及びビジネスモデルの移行方法について、アナリストはどのように考えている か?

• 現行の会計方針から IFRS 第 15 号への移行によって、重要な金額の収益が「喪失」

(IFRS第15号の適用開始日時点における繰延収益の残高が、最終的に修正再表示さ れる過年度に反映されるか、又は同基準書の適用開始による累積的なキャッチアップ調 整の一部として反映されるため、財務諸表において一度も当期の収益として報告される ことがない)することになるか?

• 完全遡及適用アプローチを適用する場合

• 自社は表示対象となる最も古い期間の期首時点において移行に伴う調整額を算 定することができ、かつ、その時点から当該期間の情報を開示するための財務情 報の収集を開始しているか?

• 自社は税務申告書及び子会社の法定財務諸表に与える影響を理解しているか?

• 修正遡及適用アプローチを適用する場合

• 自社は、移行初年度に必要となる開示を提供できるように、IFRS第15号と現行の IFRSの両方に基づく帳簿記録を保持することができるか?

• 移行初年度に、IFRS第15号に基づき財務諸表の本体において表示される財務情 報と、現行の IFRS に基づき注記に表示される金額との間に重要な差異が生じる か?

重要な業績指標のうちどれが影響を受けるか?

売上総利益率、純利益、EBITDA、1株当たり利益などの指標が影響を受けるであろう。重要 な収益源への影響を理解したら、次に企業はこれらの指標を検討して、何らかの変更を加え る必要があるか否かを判断しなくてはならない。たとえば、収益に基づく報酬プラン(たとえば、

販売手数料、ボーナスプログラム)、財務制限条項及び財務計画、ならびに目標数値などに 対する変更が考えられるが、これらに限定されるわけではない。

• どの業績指標が収益と関連するか?自社は、収益に基づく報酬パッケージ又はその他 のビジネス分野を変更することを検討しているか?

• 収益の変動は事業において締結される契約の条項に影響を及ぼすか?

会計システム及びプロセスに必要となる変更を決定しているか?

企業は、自社のITシステム、データモデル及び関連するERP、ならびにレガシーシステムの アプリケーションによって、IFRS第15号で要求される情報を収集、追跡、編集、及びレポー ティングすることができるかどうかを検討する必要がある。たとえば、変動対価及び重要な金 融要素に関する判断及び見積り、独立販売価格の算定、取引価格の履行義務への配分、な らびに一定期間にわたり充足される履行義務の進捗度の測定などが挙げられるが、これら は、自動化された新しいソリューションが必要となる可能性がある変更の一部にすぎない。

さらに、自社のシステムは、以下のような拡充された定量的及び定性的な開示規定に対処す るために、情報を収集及び集約する能力を備えていなければならない。

• 収益情報の分解

• 残存する履行義務に配分された取引価格

• 一定期間にわたり充足される履行義務について、インプット法を用いた収益の測定 この分析を実施する際に、企業は現在行っている以上に財務データ及び顧客との契約の詳 細に関して情報を収集する必要があると判断する場合もあろう。これは、業務が分散化され ていて、複数の拠点から情報を収集する必要がある企業にとって、困難となる場合がある。

ビジネスの手法を変更する予定はあるか?

企業によっては、すでに熟練した価格設定実務が整備されており、これに基づき複数要素契 約に含まれる構成要素に対価を配分しているところもある。しかし、そうした状況であっても、

企業は独立販売価格の見積方法に加え、価格設定に係る実務を変更すべきかどうかを評価 する必要がある。

• IFRS第15号によって商慣行に変更が生じるか(たとえば、独立販売価格の見積りに影 響する可能性がある契約条件又は価格設定方針の変更)?

• IFRS第15号の下での収益認識に影響を及ぼす契約条件を変更するか(たとえば、現在 までの履行に対する適切な支払いを受け取ることができるように解約条項を修正する)?

• 予定されている変更は、営業部門がビジネスを行う方法に影響を及ぼすか?

IFRS15号は自社の会計方針にどのような影響を及ぼすか?

IFRS第15号における概念の多くは現行のIFRSと大きく異なるため、企業はIFRS第15号 に準拠するために必要となる既存の方針に対する変更を特定する必要がある。さらに企業は、

同基準書により要求される判断及び見積りに基づき、収益に関する新たな会計処理が事業 全体を通じて首尾一貫して適用されるように、明確な方針を策定することが必要となる可能 性が高い。これは収益に関連する方針にとどまらず、他の方針(たとえば、その他の利得及 び損失、手数料、契約履行コストに関する方針)も影響を受ける可能性がある。

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 161-165)