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重要な金融要素

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 70-75)

5 取引価格の算定

5.3 重要な金融要素

取引によっては、支払時期が顧客への財又はサービスの移転時期と一致しないことがある

(たとえば、対価が前払いされる場合、又はサービスの提供後に支払われる場合)。顧客が 後払いをする場合、実質的に企業は顧客に購入資金を提供していることになる。反対に、顧 客が前払いをする場合、実質的に企業は顧客から資金を調達していることになる。IFRS 第 15号では、契約における重要な金融要素について、次のように述べられている。

IFRS15 号からの抜粋

60 顧客又は企業が、(明示的又は黙示的に)合意した支払時期により、財又はサービ スの顧客への移転に係る資金調達に関して重要な財務的便益を得ている場合、企 業は、取引価格を算定するにあたり、貨幣の時間的価値の影響について約定対価 の金額を調整しなければならない。こうした状況では、契約は重要な金融要素を含 んでいる。重要な金融要素は、金融取引に関する約定が契約に明記されている か、又は契約当事者が合意した支払条件に含意されているかに関係なく、存在す る可能性がある。

IFRS15 号からの抜粋(続き)

61. 重要な金融要素について約定対価の金額を調整する際の目的は、約定した財又 はサービスが顧客に移転された時点で(又は移転されるにつれて)それらに対して 現金で支払を行っていたとしたら、顧客が支払っていたであろう金額(すなわち、現 金販売価格)を反映する金額で収益を認識することにある。金融要素が契約に含ま れているか否か、及び金融要素は契約にとって重要であるか否かを評価するにあ たって、企業は次の両方をはじめとする、すべての関連する事実及び状況を考慮し なければならない。

(a) 約定した財又はサービスについて、約定対価の金額と現金販売価格との差額 (b) 次の両者による影響の組合せ

(i) 企業が約定した財又はサービスを顧客に移転する時点と、顧客が当該財 又はサービスに対して支払を行う時点との間の見込まれる期間の長さ

(ii) 関連する市場における実勢金利

62. 第 61 項に基づく評価にかかわらず、次のいずれかの要因が存在する場合には、

顧客との契約には重要な金融要素は含まれていない。

(a) 顧客が財又はサービスについて前払いをしており、それら財又はサービスの移 転時期は顧客の裁量によって決まる。

(b) 約定対価の金額の大部分に変動性があり、当該対価の金額又は時期が、実 質的に顧客又は企業の支配が及ばない将来の事象の発生の有無に基づき変 動する(たとえば、対価が売上ベースのロイヤルティである場合)。

(c) (第 61 項で述べられている)財又はサービスの約定対価と現金販売価格との 差額が、顧客又は企業のいずれかの資金調達以外の理由により生じており、

かつ当該差額がその発生理由に照らして合理的である。たとえば、そうした支 払条件は、契約の相手方が契約に定められる義務のすべて又は一部を適切 に履行しない場合に、企業又は顧客を保護するものである場合がある。

63. 実務上の便法として、契約の開始時点で、約定した財又はサービスを顧客に移転 する時点と顧客が当該財又はサービスに対して支払を行う時点との間が 1年以内 であると見込まれる場合、企業は重要な金融要素の影響について約定対価の金額 を調整する必要はない。

企業は、顧客による支払いと企業による財又はサービスの移転の間の期間が1 年より長い 場合を除き、契約に重要な金融要素が含まれるか否かを評価する必要はない。IFRS 第 15 号では、企業がこの評価を契約レベルで行うのか、又は履行義務レベルで行うのかが明確 にされていない。また、複数の履行義務が含まれる契約において金融要素をどのように取り 扱うのかも明瞭ではない。金融要素の影響を資金調達に係る履行義務にのみ配分するのか 否かに関して疑問が残る。すなわち、金融要素が含まれるか否かを契約レベルで判断し、次 に金融要素に係る金額を履行義務レベルに配分するのかどうかは明らかではない。

また、契約にとって金融要素が重要であるとみなされない限り、企業は金融要素について取 引価格を調整することは求められない。なお、重要性の評価は個々の契約レベルで行われ る。両審議会は、金融要素の影響が個々の契約にとって重要ではないものの、類似する契 約のポートフォリオ全体にとって重要となる場合に、金融要素に係る会計処理を求めることは 企業に過度の負担を強いることになると判断した。

財又はサービスの移転から契約対価の受領までの期間が1年を超える場合、重要な金融要 素が存在するか否かを評価する際に、相当な判断が求められる可能性が高い。企業は、自 らの結論を裏付ける分析を十分に詳しく文書化する必要がある。

契約にとって金融要素が重要であると判断した場合、約定対価の金額を割り引くことで取引 価格を算定する。企業は、顧客と別個の金融取引を締結したならば使用するであろう割引率 と同じ利率を適用する。割引率は、契約における借手の信用特性を反映したものでなければ ならない。そのため、リスクフリーレートや、契約に明示されているが別個の金融取引におけ る金利と一致しない金利を使用することは認められない。契約開始時点の市場条件を反映し た割引率を算定するにあたり、IFRS第15号では明示されていないものの、金融取引の予想 期間も加味しなければならないと考えられる。企業は、契約開始後に状況や金利に変化が生 じたとしても割引率を見直さない。

IFRS第15号には、これらの概念を説明するために下記の設例が設けられている。

IFRS15 号からの抜粋

設例26 ― 重要な金融要素と返品権(IFRS第15IE135項からIE140項)

企業は顧客に製品をCU121で販売し、その代金は引渡しから24カ月後に支払われる。

顧客は契約の開始時点で製品に対する支配を獲得する。契約では、90 日以内であれば 製品を返品することが認められている。当該製品は新製品であるため、企業は関連する 過去の返品データやその他の利用可能な市場に基づく証拠を有していない。

製品の現金販売価格はCU100である。当該金額は、支払時期を除き、契約開始時点と 同一の条件で当該製品を販売した場合に、顧客が引渡時点で支払うであろう金額であ る。製品の原価はCU80である。

企業は、製品の支配が顧客に移転した時点で収益を認識しない。というのは、返品権が 存在するが、関連する過去の証拠が入手不能なため、IFRS第15号第56項から第58 項に従い、企業が収益認識累計額に大幅な戻入れが生じない可能性が非常に高いと結 論付けることができないからである。したがって、収益は返品権が失効する3カ月後に認 識される。

IFRS15 号からの抜粋(続き)

IFRS第15号第60項から第62項に基づくと、契約には重要な金融要素が含まれる。

これは、約定対価CU121と、製品が顧客に移転された日時点の現金販売価格CU100 との差額を見れば明らかである。

契約には黙示的な 10%の金利が含まれている(すなわち、24 カ月間にわたり約定対価 CU121を現金販売価格CU100に割り引く利率)。企業は当該利率を評価し、契約開始 時における企業と顧客との間での別個の金融取引に反映されるであろう利率と同じであ ると結論づける。下記の仕訳では、この契約をIFRS第15号B20項からB27項に従っ て会計処理する方法を説明している。

(a) 製品の顧客への移転時点(IFRS第15号B21項に基づく):

返品される製品を回収する権利に係る資産 CU80(a)

棚卸資産 CU80

(a) この設例では、資産を回収する際の見積コストは考慮していない。

(b) 3 カ月の返品可能期間中は、契約資産又は売上債権が認識されていないた

め、IFRS第15号第65項に従って利息は認識されない。

(c) 返品権の失効時点(製品が返品されなかった場合):

売上債権 CU100(a)

収益 CU100

売上原価 CU80

返品される製品に係る資産 CU80

(a) 認識された売上債権はIFRS第9号に従って測定される。この設例では、契約開始 時点の売上債権の公正価値と、返品権の失効時点で認識される売上債権の公正 価値に大きな違いがないことを前提としている。また、この設例では売上債権に係 る減損は考慮していない。

企業が顧客から現金の支払いを受けるまで、IFRS 第 9 号に従って金利収益が認識され る。IFRS 第9号に従って実効金利を決定するにあたり、企業は残りの契約期間を考慮す る。

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 70-75)