9 表示及び開示
9.3 具体的な開示規定
開示の大半は顧客との契約に関するものである。これらの開示には、収益の分解、契約資産 及び契約負債の残高に関する情報、並びに企業の履行義務に関する情報が含まれる。
収益の分解
IFRS第15号の最初の開示規定では、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び 不確実性が経済的要因によってどのように影響を受けるのかを説明する区分に収益を分解 することが求められる。これは、IFRS に基づく作成者にとって、期中財務諸表及び年次財務 諸表の双方で要求される唯一の開示規定である。
IFRS第15号では、収益をどのように分解すべきかについて明確に規定されていないものの、
適用ガイダンスでは次のような区分が示されている。
IFRS 第 15 号からの抜粋
B89 適切となり得る区分の例として、次のものがあるが、これらに限定されない。
(a) 財又はサービスの種類(たとえば、主要な製品ライン)
(b) 地理的区分(たとえば、国又は地域)
(c) 市場又は顧客の種類(たとえば、政府と政府以外の顧客)
(d) 契約の種類(たとえば、固定価格と実費精算契約)
(e) 契約期間(たとえば、短期契約と長期契約)
(f) 財又はサービスの移転時期(たとえば、一時点で顧客に移転される財又はサー ビスから生じる収益と、一定期間にわたり移転される財又はサービスから生じ る収益)
(g) 販売チャネル(たとえば、顧客に直接販売される製品と仲介業者を通じて販売 される製品)
適用ガイダンスでは、各企業に最適となる区分の仕方は事実及び状況によって異なるが、企 業は、何が最も適切で有用な区分となるかを判断する際には、他の公表文書(たとえば、プレ スリリース、その他報告書)において収益がどのように分解されているかを考慮すべきである ことが示唆されている。
両審議会は、分解の基礎として収益の具体的な特徴を定めないこととした。これは、両審議 会が、企業が自身の事業にとって最も有意な企業固有及び(又は)業界固有の要因に基づき、
当該決定を行うべきであると考えたからである。両審議会は、収益を分解する上で、企業が 複数の種類の区分を用いることが必要になる場合があると考えている。
両審議会は、他の基準書により要求されている開示を重複して行う必要がない点も明確にし ている。たとえば、IFRS第8号「事業セグメント」に従いセグメント情報の一部として収益を分 解して開示している企業は、それらのセグメントに関連する開示が、収益及びキャッシュ・フロ ーの性質、金額、時期及び不確実性が経済的要因によりどのように影響されるかを説明する ために十分であり、IFRS と整合する基準で表示されている場合には、収益の分解情報につ いて別途開示する必要はない。しかし、収益の分解情報を個別に開示する場合、IFRS第15 号は、収益の分解情報とセグメント情報との間のつながりを説明することを求めている。財務 諸表の利用者は、収益の構成だけでなく、収益がセグメント情報で開示されている他の情報 とどのように関連しているかを理解するために、この情報が非常に重要であると考えている。
企業は、表形式又は記述的説明によりこの情報を提供することができる。
他のIFRSに従って損益計算書上で個別に表示されている場合を除き、顧客との契約から生 じた売上債権又は契約資産に関してIFRS第9号又はIAS第39号に従って認識された減 損損失を開示することが要求される。これらの減損損失は、他の契約に係る減損損失とは区 別して開示しなければならない。しかし、その損失をさらに分解することは求められない。
両審議会は、収益の分解に関して下記のような設例を示している。
IFRS 第 15 号からの抜粋
設例41 - 収益の分解 - 定量的開示(IFRS第15号IE210項からIE211項)
ある企業は、IFRS第8号「事業セグメント」に従い、消費者製品、輸送、エネルギーのセグ メントを報告している。企業は、投資家向け資料を作成するにあたり、収益を主要な市場地 域、主要な製品ライン、及び収益の認識時期(すなわち、一時点で移転される製品又は一 定期間にわたり移転されるサービス)に分解する。
企業は、投資家向け資料で使用した区分は、顧客との契約から生じる収益を、収益及びキ ャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性が経済的要因によりどのように影響され るのかを描写する区分に分解するというIFRS第15号第114項に定められる収益の分 割に関する開示規定の目的を満たすために使用できると判断する。下記の表では、主要 な市場地域、主要な製品ライン、及び収益の認識時期に区分した開示を示している。当該 開示例には、IFRS第15号第115項に従い、分解した収益が消費者製品、輸送及びエネ ルギーのセグメントとどのようにつながっているかを示した調整表も含まれている。
セグメント 消費者製品 輸送 エネルギー 合計
CU CU CU CU
主要な市場地域
北米 990 2,250 5,250 8,490
欧州 300 750 1,000 2,050
アジア 700 260 - 960
1,990 3,260 6,250 11,500
主要な製品/サービス・ライン
事務用品 600 - - 600
器具 990 - - 990
衣類 400 - - 400
オートバイ - 500 - 500
自動車 - 2,760 - 2,760
ソーラーパネル - - 1,000 1,000
発電所 - - 5,250 5,250
1,990 3,260 6,250 11,500
収益の認識時期
一時点で移転される製品 1,990 3,260 1,000 6,250 一定期間にわたり移転さ
れるサービス - - 5,250 5,250
1,990 3,260 6,250 11,500
契約残高
両審議会は、財務諸表の利用者が、特定の報告期間における収益認識額と全ての契約資 産及び契約負債の残高合計における変動との関連性を理解することが必要であると結論付 けた。その結果、両審議会は、顧客との契約に関して下記の開示規定を含めることとした。
IFRS 第 15 号からの抜粋
116. 企業は次のすべてを開示しなければならない。
(a) 別個に表示又は開示していない場合、顧客との契約から生じた売上債権、契 約資産及び契約負債の期首及び期末残高
(b) 当報告期間に認識された収益のうち、期首時点で契約負債の残高に含まれて いた金額
(c) 過年度に充足(又は部分的に充足)された履行義務から生じた、当報告期間に 認識された収益(たとえば、取引価格の変更)
117. 企業は、履行義務の充足時期(第119項(a)を参照)と通常の支払時期(第119項
(b)を参照)がどのように対応するか、及びそれらの要因が契約資産及び契約負債 の残高に及ぼす影響について説明しなければならない。当該説明には定性的情報 を用いることができる。
118. 企業は、当報告期間中に契約資産及び契約負債の残高に生じた重要な変動につ
いて説明しなければならない。当該説明には定性的及び定量的情報が含まれなけ ればならない。契約資産及び契約負債に関する残高の変動の例として次のものが 挙げられる。
(a) 企業結合による変動
(b) 対応する契約資産又は契約負債に影響を及ぼす収益の累積的なキャッチアッ プ調整。これには、進捗度の測定値の変更、取引価格の見積りの変更(変動 対価の見積りに制限が課せられるか否かの判断に関する変更を含む)、又は 契約の変更から生じる調整を含む。
(c) 契約資産の減損
(d) 対価に対する権利が無条件になる(すなわち、契約資産が売上債権に振替え られる)期間の変更
(e) 履行義務が充足される(すなわち、契約負債から生じる収益の認識に関する)
期間の変更
上記の規定は、多くの企業にとって新たに対応が必要なものとなる可能性が高い。下記の設 例はこれらの規定に準拠した開示例である。
設例 9-1 ― 契約残高の開示
A社は、貸借対照表上で売上債権を個別に表示している。契約資産及び契約負債に関し て要求される他の開示に準拠するため、A社は財務諸表の注記に下記の情報を含める。
20X8年 20X7年 20X6年 契約資産 CU 1,500 CU 2,250 CU 1,800 契約負債 CU (200) CU (850) CU (500)
20X8年 20X7年 20X6年 以下により当期に認識された収益:
期首時点で契約負債に含まれていた 金額
CU 650 CU 200 CU100
過去の期間に充足された履行義務 CU 200 CU 125 CU 200
当社は、契約に定められた請求スケジュールに基づき顧客から支払いを受領している。
契約資産は請求予定日よりも前に行われた履行に関して発生したコストに関係する一 方、契約負債は契約に基づく履行に先立ち受領した支払いに関するものである。契約資 産及び契約負債は契約に基づく当社の履行により変動する。また、顧客との契約の早期 解約により契約資産に減損が生じ、20X8年には契約資産がCU400減少した。
履行義務
財務諸表の利用者が顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時 期及び不確実性について分析する際の一助となるように、両審議会は、残存する履行義務 について個別開示を求めることを決定した。企業は、残存する履行義務に配分された取引価 格と、当該金額の予想認識時期に関する説明を開示することが求められる。