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契約コスト

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 130-136)

8 測定及び認識に関するその他の論点

8.3 契約コスト

IFRS第15号は、獲得した契約と交渉中の契約の両方に関して、財又はサービスを提供する 契約を獲得し、履行する際に発生するコストの会計処理を定めている。

8.3.1 契約獲得コスト

IFRS第15号では、契約を獲得するための増分コスト(すなわち、契約を獲得していなければ 発生していなかったであろうコスト)は、回収が見込まれる場合、資産計上される。増分コスト の回収には、直接的に回収される場合(すなわち、契約に基づく返還を通じた回収)と、間接 的に回収される場合(すなわち、契約から得られるマージンを通じた回収)がある。IFRS 第 15号では、実務上の便宜として、資産化された契約獲得コストの償却期間が 1年以内であ るならば、それらのコストを直ちに費用として認識することが容認されている。我々は、IFRS 第15号には明示されていないものの、企業はこのアプローチを会計方針として選択すること が認められ、そのような選択を行う場合には、すべての短期の契約獲得コストに一貫して適 用しなければならないと考えている。

IFRS第15号では、資産化が要求される可能性のある増分コストの例として販売手数料が挙 げられている。たとえば、一定期間中に獲得した販売に直接関係する販売手数料は、資産化 が要求される増分コストである可能性が高い。反対に、他の定量的又は定性的指標(たとえ ば、利益、1株当たり利益(EPS)、業績評価)に基づくボーナスやその他の報酬は、契約の獲 得に直接関係しないため、資産化の要件を満たさない可能性が高い。増分コストの別の例と して、弁護士が交渉の成功時にのみ支払いを受けることに合意する場合の条件付の弁護士 費用が挙げられる。IFRS第15号に基づき、どのコストを資産化すべきかを決定するには判 断が求められる。

IFRS第15号では、契約を獲得するための増分コストに関して、下記の設例が示されている。

IFRS15 号からの抜粋

設例36 ― 契約獲得の増分コスト(IFRS第15IE189項からIE191項)

コンサルティング・サービスを提供する企業が、新規顧客にサービスを提供する契約を競 争入札で獲得する。企業には契約を獲得するために下記のコストが発生した。

CU デュー・ディリジェンスのための外部弁護士費用 15,000 提案書提出の際の交通費 25,000 営業社員に支払われる手数料 10,000

発生総コスト 50,000

IFRS第15号第91項に基づき、企業は、将来のコンサルティング・サービスに係る報酬を 通じて営業社員に支払う手数料に係る契約獲得の増分コストを回収できると見込んでいる ため、当該契約獲得コスト CU10,000 に関して資産を認識する。企業は、年間の売上目 標、企業全体の利益、及び個人の業績評価に基づき、営業管理者にも任意で年次ボーナ スを支払う。IFRS第15号第91項に基づき、企業は営業管理者に支払われるボーナスを 資産計上しない。これは、当該ボーナスが契約獲得に係る増分コストではないからであ る。ボーナスの支払金額は、企業の利益や個人の業績といった他の要因に基づき、企業 の裁量で決定される。ボーナスは識別可能な契約に直接関係するものではない。

企業は、契約を獲得したか否かにかかわらず、外部弁護士費用及び交通費が発生して いた点に留意する。したがって、IFRS第15号第93項に従い、それらのコストが他の基 準書の適用範囲に含まれる場合を除き(その場合には、当該基準書の関連する規定が 適用される)、それらのコストを発生時に費用処理する。

弊社のコメント

IFRS第15号は、現在契約獲得コストを費用処理している企業に大きな変化をもたらし、

今後はこれらのコストを資産化することが求められる。また、現在契約獲得コストを資産 化している企業についても、特に資産化されているコストが増分コストではなく、IFRS 第 15号に基づく資産化要件を満たさない場合、それらの企業の実務にも影響を及ぼすこと になるだろう。

8.3.2 契約履行コスト

IFRS第15号では、契約を履行するためのコストは、(1)資産を生じさせるコスト、及び(2)発生 時に費用処理されるコストの2 種類に区分される。同基準書は、そうしたコストの適切な会計 処理を決定するにあたり、まず他の適切な基準書を検討すべきであることを明確にしている。

IFRS15 号からの抜粋

95. 顧客との契約を履行する際に発生したコストが、他の基準書(たとえば、IAS第2号

「棚卸資産」、IAS第16号「有形固定資産」又はIAS第38号「無形資産」)の適用 範囲に含まれない場合には、企業は契約を履行するために発生したコストが次の すべての要件を満たす場合に限り、それらのコストから生じた資産を認識しなけれ ばならない。

(a) 当該コストが、契約又は企業が具体的に特定できる予想される契約に直接関 連している(たとえば、既存契約の更新に基づき提供されるサービスに関連す るコストや、いまだ承認されていない特定の契約に基づき移転される資産の設 計コスト)。

(b) 当該コストが、将来履行義務を充足する(又は継続的に充足する)際に使用さ れる企業の資源を創出するか又は増価する。

(c) 当該コストが回収されると見込まれる。

96. 顧客との契約を履行する際に発生したコストが他の基準書の適用範囲に含まれる場 合、企業はそれらのコストを当該他の基準書に従い会計処理しなければならない。

IFRS第15号は、関連する販売契約が顧客との間でいまだ成立していない場合であっても、

契約履行コストの資産化を認めている。しかし、同基準書では、あらゆる将来の潜在的な契 約に関連するコストの資産化は認めておらず、そうしたコストは具体的に特定可能な予想さ れる契約に関連するものでなければならない。

IFRS第15号では、資産化のための最初の要件を満たす可能性があるコスト(すなわち、契 約に直接関係するコスト)について、次のような説明と設例が示されている。

IFRS15 号からの抜粋

97. 契約(又は特定の予想される契約)に直接関連するコストには、次の項目が含まれる。

(a) 直接労務費(たとえば、約定したサービスを直接的に提供する従業員の給料及 び賃金)

(b) 直接材料費(たとえば、約定したサービスを提供する際に使用される消耗品)

(c) 契約又は契約活動に直接関連するコストの配分額(たとえば、契約管理及び監 督に係るコスト、保険料並びに契約を履行する際に使用される器具備品の減価 償却費)

(d) 契約に基づき顧客に明示的に請求可能なコスト

(e) 企業が契約を締結したことのみを理由として発生したその他のコスト(たとえ ば、外注先への支払)

コストが資産化の要件を満たすか否かを判断するにあたり、企業は、個別の事実及び状況を 考慮しなければならない。将来履行義務を充足する際に使用される企業の資源を創出又は 増価するコストの例として、契約期間にわたり便益を提供する(又は継続的に便益を提供す る)将来の履行に関連する無形の設計やエンジニアリングに係るコストが挙げられる。

コストが「回収されると見込まれる」という要件を満たすためには、返還されることが契約上明記 されているか、又は契約価格に反映されておりマージンを通じて回収できなければならない。

IFRS15 号からの抜粋

設例37 ― 資産を生じさせるコスト(IFRS第15IE192項からIE196項)

企業は、顧客の情報技術データ・センターを 5 年間管理する契約を締結する。当該契約 は、その後1年ごとに更新することができる。平均契約期間は7年である。企業は、契約の 締結時に従業員に CU10,000 の販売手数料を支払う。企業は、サービスの提供前に、社 内使用目的で顧客のシステムと接続する技術プラットフォームを設計、構築する。当該プラ ットフォームは顧客に移転されないが、顧客にサービスを提供するために使用される。

契約獲得の増分コスト

IFRS第15号第91項に基づき、企業は、将来提供するサービスに対する報酬を通じて 販売手数料に係る契約獲得の増分コストを回収できると見込んでいるため、当該増分コ ストCU10,000に関して資産を認識する。当該資産は5年間の契約期間にわたり顧客に 移転されるサービスに関連しており、かつ当該契約はその後 2 年間更新されると見込ま れるため、企業は、IFRS第15号第99項に従い、当該資産を7年間にわたり償却する。

IFRS15 号からの抜粋(続き)

契約履行コスト

技術プラットフォームの構築に要した初期コストは下記のとおりである。

CU

設計サービス 40,000

ハードウェア 120,000

ソフトウェア 90,000

データ・センターの移動及びテスト 100,000

総コスト 350,000

当初のセットアップ・コストは、主として契約を履行するための活動に関連するものである が、顧客に財又はサービスを移転するものではない。企業は当初のセットアップ・コストを 以下のように会計処理する。

(a) ハードウェアのコスト―IAS第16号「有形固定資産」に従って会計処理 (b) ソフトウェアのコスト―IAS第38号「無形資産」に従って会計処理

(c) データ・センターの設計、移動及びテストに係るコスト―契約履行コストとして資 産計上できるか否かを決定するために、IFRS第15号第95項に従って評価す る。その結果認識される資産は、企業がデータ・センターに関連してサービスを 提供すると予想する7年間(すなわち、契約期間5年及び予想更新期間2年)

にわたり規則的に償却される。

技術プラットフォームを構築するための初期コストに加え、企業は、顧客へのサービス提 供の主たる責任者として2名の社員を任命する。当該2名の従業員に係るコストは、顧客 にサービスを提供する過程で発生するものの、企業は、当該コストが企業の資源を創出 又は増価するものではないと判断する(IFRS第15号第95項(b)を参照)。したがって、

当該コストはIFRS第15号第95項の要件を満たさないため、同基準書に基づき資産計 上することはできない。企業は、第98項に従い、当該2名の従業員に係る給与を発生時 に費用処理する。

IFRS第15号では、契約を履行する際に発生したコストが、上記の要件に基づき資産を生じ させると判断されない場合、当該コストを発生時に費用処理することが求められる。同基準書 には、下記のように、一般的に発生時に費用処理すべきコストの例が示されている。

IFRS15 号からの抜粋

98. 企業は、次のコストを発生時に費用計上しなければならない。

(a) 一般管理費(当該コストが契約に基づき顧客に明示的に請求可能な場合は除 く。その場合には、企業は当該コストを第 97 項に従って評価しなければならな い)

(b) 契約価格に反映されていない、仕損材料費、労務費又は契約を履行するため のその他の資源

(c) 契約における充足された履行義務(又は部分的に充足された履行義務)に関連 するコスト(すなわち、過去の履行に関連するコスト)

(d) 企業が、いまだ充足していない履行義務に関連するのか、又は充足した履行義 務(もしくは部分的に充足した履行義務)に関連するのかを区別できないコスト

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 130-136)