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契約における約定した財及びサービスの識別

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 37-41)

3. 顧客との契約の識別

4.1 契約における約定した財及びサービスの識別

4. 契約における履行義務の識別

IFRS第15号を適用するに際し、企業は契約に含まれる約定した財及びサービスを識別し、

それらの財及びサービスのうちいずれが区別できる独立した履行義務(すなわち、同基準書 を適用する上での会計単位)に該当するのかを判断しなければならない。これらの概念のそ れぞれについて、以下で解説する。

IFRS15 号からの抜粋(続き)

区別できる財又はサービス

26. 約定した財又はサービスには、契約の内容により、以下のものが含まれ得るが、こ れらに限定されるわけではない。

(a) 企業が生産する財の販売(たとえば、製造業者の棚卸資産)

(b) 企業が購入した財の再販売(たとえば、小売業者の商品)

(c) 企業が購入した財又はサービスに対する権利の再販売(たとえば、B34項から B38項に定められる、本人として活動する企業が再販売するチケット)

(d) 顧客のための契約上合意された作業の履行

(e) 財又はサービスをいつでも提供できるように待機するというサービスの提供(た とえば、利用可能となった時点及びその場合にのみ提供されるソフトウェア製 品の不特定のアップデート)、又は顧客が使用することを決めたときに、財又は サービスを利用できるようにするサービスの提供

(f) 他の当事者が顧客に財又はサービスを移転するのを手配するサービスの提供

(たとえば、B34項からB38項に規定されているように、他の当事者の代理人 として行動する)

(g) 顧客がその顧客に再販売又は提供できるように、将来提供される財又はサー ビスに対する権利を付与する(たとえば、小売業者に製品を販売する企業が、

小売業者から製品を購入する個人に追加の財やサービスを移転することを約 定する)

(h) 顧客の代わりに、資産を建設、製造又は開発する (i) ライセンスの付与(B52項からB63項を参照)

(j) 追加の財又はサービスを購入する選択権の付与(当該選択権が、B39 項から B43項に規定される重要な権利を顧客に与える場合)

IFRS第15号によれば、企業は契約の開始時点ですべての約定した財又はサービスを識別 し、これらの約定した財又はサービス(あるいは、財又はサービスの組合せ)のうちいずれが 独立した履行義務を表すのかを判断しなければならない。現行のIFRSでは、複数の財又は サービスが含まれる契約について、具体的に取り扱われておらず、その代わり取引の識別に 焦点が当てられている。これには、取引の実質を反映するように、個別の要素を識別すること も含まれる23。その結果、IFRS に準拠して財務諸表を作成している多くの企業が、この領域

に関してUS GAAPを参照している。現行のUS GAAPでは、契約に含まれる「引渡物」を識別

しなければならないが、当該用語は定義されていない。対照的に、IFRS第15号は、契約で 約定された財又はサービスに該当し得る項目の種類を示している。さらにIFRS第15号は、

約定した財及びサービスを引き渡す義務を履行するために企業が遂行しなければならない 活動(たとえば、内部管理活動)などの一定の活動は、約定した財又はサービスに該当しな いと明確に定めている。

23 IAS18号第13

両審議会は、多くの場合、約定されたすべての財又はサービスは契約に明示されていると述 べている。しかし、企業の商慣行によっては財又はサービスを提供する約定が黙示的な場合も ある。IFRS第15号は、契約における約定を識別するにあたり、企業が財又はサービスを提供 するだろうという妥当な期待を顧客が抱いているか否かを検討するよう求めている。すなわち、

履行義務の概念には、契約書に明示されていない要因(たとえば、過去の商慣行や業界の常 識)に基づく推定的な履行義務も含まれる。両審議会はまた、契約に含まれる黙示的な約定は 法的に強制可能である必要はないと述べている24。もし顧客が妥当な期待を抱いているので あれば、顧客はこれらの約定を交渉により合意された交換取引の一部とみなしている。両審議 会は、IFRS第15号の結論の根拠で、そうした黙示的な財又はサービスの例として、電気通信 会社が提供する「無償」の携帯端末、自動車メーカーが提供する「無償」の保守点検サービス、

及びスーパー、航空会社やホテルが提供するカスタマー・ロイヤリティ・ポイントを挙げている25。 企業はこれらの財又はサービスを販売インセンティブ、あるいは付随的な財又はサービスと捉 えているかもしれない。しかし、両審議会は、顧客はそれらの財又はサービスに対して支払い を行っており、企業が収益を認識する上で、それらの財又はサービスに対価を配分すべきであ る(すなわち、履行義務として識別する)と結論付けた。

同基準書の結論の根拠で説明されているように、両審議会は、契約の結果、将来に財又は サービスを提供する約定を含む、顧客に約定されたすべての財又はサービスは履行義務を 生じさせると決定した26。顧客が、自身の顧客に再販売又は提供することができる財又はサ ービスを将来受け取る権利を有していることがある。そうした権利は、当事者が契約に合意し た時点で存在している場合、顧客に対する約定となる。この種の約定はさまざまな業種の流 通ネットワークに見られ、自動車業界では一般的である。

弊社のコメント

どのような種類の項目が契約に含まれる財及びサービスに該当し得るのか(つまり、約定 した財及びサービスを提供するために企業内で行なわれる活動に当たらないもの)に関 するガイダンスが盛り込まれたことは、現行のIFRSからの改善点である。当該ガイダンス はIFRS第15号を適用する上で役立つであろう。

IFRS第15号は、さまざまなシナリオにおいて履行義務の識別に関する規定をどのように適 用すべきかを説明するために、以下のような設例を提供している。

IFRS15 号からの抜粋

設例12 - 契約における明示的及び黙示的な約定(IFRS第15IE59項-IE65項) ある製造会社は流通業者(すなわち、企業の顧客)に製品を販売し、当該流通業者が当 該製品を最終消費者に転売する。

ケースA - サービスの提供に関する明示的な約定

企業は、流通業者との契約において、当該流通業者から製品を購入した当事者(すなわ ち、最終消費者)に対して追加の対価なし(すなわち「無償」)で保守点検サービスを提供 することを約定する。企業は、流通業者に保守点検サービスの履行を委託し、企業の代 わりに当該サービスを提供する対価として合意された金額を流通業者に支払う。最終消 費者が保守点検サービスを利用しない場合、企業が流通業者に対して支払義務を負うこ とはない。

24 IFRS15BC87 25 IFRS15BC88 26 IFRS15BC92

IFRS15 号からの抜粋(続き)

保守点検サービスに関する約定は将来に財又はサービスを移転する約定であり、企業と 流通業者との間で交渉された交換取引の一部であるため、企業は保守点検サービスを 提供するという約定は履行義務に該当すると判断する(IFRS 第 15 号第 26 項(g)を参 照)。企業は、自社、流通業者又は第三者のいずれがサービスを提供するかにかかわら ず、当該約定は履行義務を表すと結論付ける。したがって、企業は取引価格の一部を保 守点検サービスを提供する約定に配分する。

ケースB - サービスの提供に関する黙示的な約定

企業はこれまで、流通業者から製品を購入した最終消費者に対して追加の対価なし(す なわち「無償」)で保守点検サービスを提供している。企業は流通業者との交渉過程で保 守点検サービスの提供について明示的に約定しておらず、企業と流通業者との間で締結 された最終的な契約にも当該サービスに関する条件は定められていない。

しかし企業は、契約の開始時点で、商慣行により、流通業者との交換取引の一環として保 守点検サービスを提供することを黙示的に約定していると判断する。すなわち、当該サー ビスを無償で提供するという企業のこれまでの実務慣行が、IFRS第15号第24項に従 い、顧客(すなわち、流通業者及び最終消費者)に妥当な期待を抱かせていることにな る。このため、保守点検サービスに係る約定は取引価格の一部を配分すべき履行義務と して識別される。

ケースC - 履行義務に該当しないサービス

企業は、流通業者との契約において、保守点検サービスを提供することを約定していな い。さらに、企業は通常保守点検サービスを提供しておらず、よって契約の締結時点で、

企業の商慣行、公表されている方針及び具体的な声明のいずれによっても、財又はサー ビスを顧客に提供するという黙示的な約定は生じていない。企業は製品の支配を流通業 者に移転しており、契約は完了している。しかし企業は、最終消費者への販売がなされる 前に、流通業者から製品を購入する当事者に対して無償で保守点検サービスを提供する という申し出を行う。

保守点検サービスに関する約定は、契約の開始時点で企業と流通業者との間で締結さ れた契約に含まれていない。すなわち、IFRS第15号第24項に従い、企業は保守点検 サービスを流通業者又は最終消費者に提供することを明示的又は黙示的に約定してい ない。したがって、保守点検サービスを提供する約定は履行義務として識別されない。そ の代わり、保守点検サービスを提供する義務はIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶 発資産」に従って会計処理される。

ドキュメント内 IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益 (ページ 37-41)