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ってくる。特に,ビデオや音声など学習者がより認識を深めやすい情報 を組み込むことができる点は有利であろう。

 具体的には前述の知識ベースをもとに知識内容ごとに資料を分類し,

さらに分類した資料を知識モジュールをもとに整理しておく。そして,

これらの資料を階層的に配置すればよい。そのことで,学習者は瞬時に 興味・関心に応じた資料を選択できると同時に,知識内容に応じた階層 性から複数の資料を比較・検討することが可能になるのである。つまり この構造は,コンピュータによる種々のメディアのデータベースという べきものである(図4)。

 データベース構造の教材を十分に活用するためには,学習者に強い意 欲や目的意識が必要となろう。学習者の目的意識が薄ければ,どのよう な資料を選択しても,各資料を関連させて思考することができないから である。よって,データベース構造の活用には,学習目標の設定や学習 意欲の喚起などと:密接に結び付いていることが重要な条件となろう。

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3.チュートリアル構造の設計理論

 チュートリアル構造は,教師主導の学習形態に視点をおき,学習課題 を教材に位置づけ知識を確実に伝達できるメディアの構成とし,なおか っ子どもがある程度自由に活用でき,能力や興味・関心に応じた双方向 的活用が可能なハイパーメディア教材の設計理論である。この構造は,

学習内容に沿って資料の提示順序に意味を持たせた,単線的・系統的な 構造になっている。しかし,順次提示する資料の中で関連する資料をリ ンクさせておくことで,学習者への興味や関心にある程度自由に対応で きるようになる。

 教師主導型の授業では学習課題が明確に位置づき,そのメディアの活 用は教授側から学習者側へと学習課題に沿って一方向に提示される。こ の活用形態は,知識伝達には有効であるが子どもの興味・関心や能力に 適応することは困難であった。しかし,ハイパーメディア教材では双方 向に学習を展開でき,子どもの能力に適応したメディアの活用が可能に なる。しかも,教材の構造が単線的・系統的になっており,必要に応じ 関連する資料をリンクさせる構造となっている。よって,学習者はある 程度自由に資料を探索でき,学習内容に沿った順次知識を獲得できると いう特性を備えている。

 具体的には,知識ベースに基づいて分割した知識モジュールをセンタ ーノードとし,それを順序性に従って配列する。そして,必要に応じて 各センターノードに1次ノード,さらに2次ノードへとテキストやボタ ンを介してリンクすることで,学習者の興味・関心に適応することがで きるのである(図5)。

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センターノードー   一   一   一   一   }   _   一   噌   r   一   一   一   一   一   一   h   一   一   早

ハ真,映像

n図,グラフなど

1次ノードー  一  一  一  副  一  一  一  r  一  一  一  一  一  一  一  脚  }  鼎  幣

ハ真,映像

n図,グラフなど

2次ノード_  _  一  一  一  一     一  一  一  一  一  一  一   

ハ真,映像

n図,グラフ

図5:チュートリアル構造

4.ハイパーテキスト構造の設計理論

 ハイパーテキスト構造は子ども主体と教師主導の学習形態のどちらに も属さず,双方のメディア活用の溝を埋めるという視点に基づいている。

つまり,学習者が自由に課題を設定し探求を進めることが可能で,しか も,複数の資料を関連づけて思考し,双方向的活用が可能なハイパーメ ディア教材の設計理論なのである。

 子ども主体型の授業では,メディアの活用が並列的・独立的であり,

子どもの興味関心に応じた学習形態をとれるが,質の高い知識の獲得は 困難になる。教師主導型の授業では,メディアの活用が単線的・系統的 であり,学習課題に沿った知識の獲得が可能であるが,子どもの興味関

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心に応じた学習形態はとりづらくなる。2つのスタイルの授業には,メ ディア活用の傾向において大きく相反する要素が存在する。社会科ハイ パーメディア教材の設計理論として,並列的・独立的な構成で,ある程 度種々の資料の関連性を図れるデータベース構造と,単線的・系統的な 構成で,ある程度学習者の興味関心に対応できるチュートリアル構造の 2つの理論を示した。しかし,この2つの設計理論では,両者のメディ ア活用の隔たりを埋めるには不十分である。そこで,学習者自身が問い や答を導きだし学習へ主体的に関与させるために,単線的・系統的でも なく並列的・独立的でもない教材の設計理論が必要となる。つまり,ハ イパーテキスト構造は,データベース構造とチュートリアル構造の両者 の特性をあわせ持った構造なのである。ハイパーテキスト構造はネルソ ンの提唱したハイパーテキストを根拠とするが,教材の設計の過程で導 きだした知識ベースと知識モジュールという枠の中において緩やかな構 造性を有する。よって,ハイパーテキストの課題として指摘されている 知識の迷い子になることはない。

 具体的には,学習者の多様な興味・関心に対応できるよう,十分かっ 多様な形態の資料を組み込み,学習課題と答を明示しないことが必要に なる。さらに資料の構成にあたっては,学習者が問いや答を主体的に導 き出すことが可能であるように,複線的,相互作用的にネット状にリン クする。これらの条件を満たすための教材の構造は以下のようになる。

地図やグラフなどの抽象的資料をセンターノード(中心資料)とし,セ ンターノードを中心に同心円的により具体的な1次ノードへとリンクす る。そして1次ノードのテキストを介して2次ノードへとリンクさせる。

さらに必要があれば1次ノードや2次ノードを相互にリンクさせる。ハ イパーテキスト構造は,その構造の形態から次の4つに類型できる。

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4−1 基本型1の構造

 この構造は,ハイパーテキスト構造の中でも最もシンプルなものであ る。センターノードから具体的な知識である1次ノードへとリンクする が,その方向は一定であり1次ノード同士の関連性はなく常にセンター ノードへ戻る構成となっている。よって,リンクするノードが少ないた めに,簡略な知識内容の教材に対して有効である(図6)。

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   ①<一 センターノード ←一→①

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※①は1次ノード

図6:ハイパーテキスト的構造 基本型1

4−2 基本型2の構造

 この構造は,基本型1よりもやや複雑になっている。つまり,センタ ーノードと1次ノードのリンクに加え,1次ノードに対するより具体的 な知識として2次ノードをリンクさせている。常にセンターノードへ戻 る構成は基本型1と同様であるが,リンクするノードが多くなっている ため,多様な知識内容を含む教材に対して有効である(図7)。