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 以上のように本教材は,ハイパーテキスト構造とチュートリアル構造 によるマルチシステムの理論によって構成した。貿易摩擦の事実認識を 深める部分は,日米の自動車生産台数の推移のグラフから学習者が両国 の立場を比較検討しながら,貿易摩擦の発生までの経過を自由に探索で きるようになっている。また,貿易摩擦の解決と現状の部分では,学習 者が輸出の自主規制,海外生産,自動車産業の現状の順に,時間の経過 に沿って学習できるようになっている。

2. 「自動車と環境」の開発

 環境問題は現在,地球規模の課題としてとらえられている。自動車に 関係する環境問題は,酸性雨,大気汚染,エネルギー問題の3つに集約 できよう。酸性雨は,自動車の排気ガスが要因のひとつとして考え.

ている。そして,そこには触媒技術の企業間格差の問題が内在し,それ が日米とヨーロッパの酸性雨被害の差であると考えられている。大気汚 染では,先進諸国では1970年代の公害問題の教訓から多くの規制が 生まれ,現状を維持することができた。しかし発展途上国では,経済状 態の悪化,人口爆発と都市への人口集中,厳しい規制を行うための予算 不足などの問題から,現在も深刻な大気汚染に悩む国が存在する。つま り,大気汚染の問題は南北問題と密接に関わっているのである。エネル ギー問題では,先進諸国が電気自動車を中心に積極的な取り組みを行っ ているが,まだ始まったばかりである。以上のように自動車に関係する 環境問題には,多くの複雑な事情が絡みその解決の方向をいっそう困難

にしているのである。

 このような問題性をふまえた上で教材を構成することが重要となる。

本教材では,世界の各地域における自動車に関係する環境問題の事実把

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握とそれぞれの地域で行われている環境問題への取り組みの2つに教材 を分割し,両者をハイパーテキスト構造の理論によって構成した。環境 問題は南北問題,排ガス規制の問題など各国の事情によってその課題と 取り組みは大きく変わってくる。よって,自由にこれらの諸問題をとら え,解決への取り組みを探索する構成とすることで,学習者の多様な興 味・関心に対応することが可能になってくる。このことから,教材を2 つに分割しそれぞれをハイパーテキスト構造とした。

2−1 「自動車と環境」の知識モジュール

 「自動車と環境」の知識ベースは,環境との関わり,環境問題の解決 の2つの要素で構成した。そして本教材では,自動車に関係する世界の 環境問題の事情をとらえる教材と,世界各国で行われている環境問題へ の取り組みの2つの教材に分割している。

 まず,自動車と環境問題の世界の事情をとらえさせる教材の知識モジ ュールは,「日本」「アメリカ」「ヨーロッパ」「メキシコ」「ブラジ ル」 「これからの地球の環境」の6っに分割した。そして,教材に位置 づける知識を,大気汚染,酸性雨,ごみ問題,地球の温暖化の4つの項 目とし,知識モジュールを作成した(表19−1)。

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表19−1:教材「自動車と環境」

       世界の事情)

        教材「自動車と環境」

〈自動輩と環境の世界の事情〉

の知識モジュール(自動車と環境の の知識モジュール

知識内容と活用メディア

知識モジュール

大気 汚染

酸  性  雨 ご  み  問  題 地 球 の 温暖 化

ヒートアイランド雲(写) 廃車置き場(写}

東京の大気汚染(写} 1年間の廃車の分量(文】

1 日本での問題 川崎市の大気汚染(写) 自動恵の解体(V)

ディーゼルエンジンの 自動車のリサイクル率〔グ)

排気ガス問題(文)

1970年代の都市の ロサンゼルスのラッシュ〔写)

2 アメリカでの問題 大気汚染(.V〕 エネルギーを大量消費する

スモッグにおおわれる アメリカと地球の温矧ヒ(文)

ロサンゼルス(写)

酸性雨で枯れた ドイツの森(写}

3 ヨーロッパでの問穎 酸性雨で枯れた葉.(写)

触媒コンバータ(写)

酸性雨の原因(文)

メキシコ市のラッシュ(写)

メキシコ市の大気汚染(V)

汚染の少ない日曜日の 4 メキシコでの問題 メキシコ市(V)

メキシコ市を走る自動車(V)

人ロ増加による大気汚染(文}

喘息の子供(写}

子供の病気の増加(文)

5 ブラジルでの問題 サンパウロ市の大気汚染(写)

人ロ増加による大気汚染(文}

6 これからの地球の 増え続ける世界の自勤庫(ク}

2020年の地球の自動車台数〔文)

X(}内は活用メディアを表す。(写}は写真、(V}.はビデオ、(地)は地図、(グ}はグラフ、(文)は文字資料。

また,世界各国で行われている自動車に関係する環境問題への取り組 みの教材の.知識モジュールも,前述の教材と同様に構成した。この教材 は,.世界の環境問題の事情に対する解答として位置つくからである(表

19−2)o

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表19−2:教材「自動車と環境」の知識モジュール(自動車と環境の

         世界の取り組み)

     教材「自動車と環境」

〈自動車と環境の世界の取り組み〉 の知識モジュール

知識内容と活用メディ

知識モジュール 大気汚染 酸  性  雨 地 球 の 温 暖 化

ソーラーカー(写)

公害の少ない車の開発(文,

1 日本での解決の方策 電気自勤軍(写)

躍気自勤車の性能〔文)

電気自動車を導入している 都道府県(地)

川崎市の大気汚染(写)

ディーゼルエンジンの 腓ガス娯制{文}

2 アメリカでの ロサンゼルスのラッシュ(写〕

解決の方策 代替フロンガスの開発(文)

触媒コンバータ(写)

排ガス幾制の強化(文)

3 ヨーロッパでの 酸性甫の被害(写)

解決の方策 英国の電気自勤車の導入(文〕

環填問題への僕応の 高まり(文)

4 メキシコでの メキシコ市のラッシュ(写〕

解決の方策 多額の借金をかかえ具体的な 解決の方策のない国(文)

5 ブラジルでの サンパウロ市の大気汚染(写)

解決の方策 多額の借金をかかえ具体的な 解決の方策のない国(文}

6 これからの地球の 増え続ける世界の顔弓車(グ)

人類の課題(文)

※(}内は活用メディアを表す。(写〕は写真.{V}はビデオ.〔地}は地図、.(ク1はグラフ.(文)は文字資料。

2−2

「自動.車と環境」のノードとリンク

自動車と環境の世界の事情をとらえる教材で,学習者が世界の諸地域 の問題を自由に探索することが可能な構成にする必要がある。よって,

この部分はハイパーテキスト構造の基本型2の理論で構成した。具体的 には,知識モジュールとした5つの地域を示した世界地図をセンターノ ードにし,その諸地域の問題を地図上に配置したボタンから自由に探索

していく構成とした(表20−1).。