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低               高              興味・関心への適応性

心に応じた学習形態はとれるが,種々の資料を関連づけて思考すること が困難になってくるという問題点が生じる。以上のように,教師主導型 の授業と子ども主体型の授業では,メディア活用の傾向には相反した要 素が存在する(図3)。

教師主導型

子ども主体型

単線的 系統的

並列的 独立的

         低       高

によって,より高度な学習が可能になってくるのである。しかし,社会 科の授業におけるメディアの活用には,このような相互作用は保障され ているとは言い難い。上述したように,学習形態の側面と子どもへの興 味・関心の適応性から非常に大きな相反する要素が存在するからである。

そして,これは現在のメディアの限界性によるものであろう。このよう な問題性を改善する意味から,多様なメディアを自由に構成できるハイ パーメディアの存在の意義は大きい。

 では,「ハイパーメディアで学ぶ」観点に基づく汎用性の高い社会科 ハイパーメディア教材において,主体的学習を保障する設計理論にはど のようなものが考えられるのか。社会科におけるメディア活用の傾向と 関連させて述べる。

 まず,子ども主体の学習形態に視点をおくと次のように考えられる。

子どもが自由に活用できる並列的・独立的なメディアの構成とし,なお 種々の資料をある程度関連づけて思考でき,映像資料等の双方向的活用 が可能なリンクの方法(データベース構造)が考えられる。

 次に,教師主導の学習形態に視点をおけば以下のように考えられる。

学習課題を教材に位置づけ知識を確実に伝達できる単線的・系統的なメ ディアの構成とし,なお子どもがある程度自由に活用でき,能力や興味

・関心に応じた双方向的活用が可能なリンクの方法(チュートリアル構 造)があろう。

 そして,子ども主体と教師主導の学習形態のどちらにも属さず,双方 のメディア活用の問題性を埋める視点からは次のように考える。学習者 が自由に課題を設定し探求を進めることが可能で,しかも,種々の資料 を関連づけて思考し,双方向的活用が可能なリンクの方法(ハイパーテ キスト構造)があろう。

      一38一

 さらに,これらの3つのリンクの方法を多様に組み合わせることで,

学習者が多様な構成形態によるメディアを双方向的に活用しながら課題 を把握し,解決を図ることが可能になるリンクの方法(マルチシステム 構造)があろう。

 以上の4つの考え方に基づき,社会科ハイパーメディア教材の具体的 設計理論について述べる。

2.データベース構造の設計理論

 データベース構造は,子ども主体型の学習形態に視点をおき,子ども が自由に活用できる並列的・独立的なメディアの構成とし,なお種々の 資料をある程度関連づけて思考でき,映像資料等の双方向的活用が可能 な教材の設計理論である。この構造は,多様なメディアにより種々の資 料が並列的・独立的に構成されるが,教材の知識内容に沿って階層性を 持たせた構造となっている。

 資料集や教科書などの教材では,学習者は必要な情報を選択するため に,索引をさがしたりページをめくったりする作業を行わねばならない。

つまり,紙による情報の媒介のため学習者が瞬時に必要な情報を活用で きにくい側面がみられた。さらに,ビデオなどの映像情報はVTRの台        

数などのハードウェア面での制約があり,ビデオ教材はその目標に沿っ てシーケンシャルに構成されているため,学習者にとって必要な情報を 瞬時に引き出すことが困難となっている。

 しかし,ハイパーメディアでは,ビデオ,写真,音声,地図,グラフ,

図表,文字等の情報をコンピュータで扱うことができる。よって,これ らの多様な情報をコンピュータで扱うことにより,学習者が必要な情報 を自由に選択できるという双方向的活用ができる教材の開発が可能にな

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ってくる。特に,ビデオや音声など学習者がより認識を深めやすい情報 を組み込むことができる点は有利であろう。

 具体的には前述の知識ベースをもとに知識内容ごとに資料を分類し,

さらに分類した資料を知識モジュールをもとに整理しておく。そして,

これらの資料を階層的に配置すればよい。そのことで,学習者は瞬時に 興味・関心に応じた資料を選択できると同時に,知識内容に応じた階層 性から複数の資料を比較・検討することが可能になるのである。つまり この構造は,コンピュータによる種々のメディアのデータベースという べきものである(図4)。

 データベース構造の教材を十分に活用するためには,学習者に強い意 欲や目的意識が必要となろう。学習者の目的意識が薄ければ,どのよう な資料を選択しても,各資料を関連させて思考することができないから である。よって,データベース構造の活用には,学習目標の設定や学習 意欲の喚起などと:密接に結び付いていることが重要な条件となろう。

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