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50 HIV 感染症の臨床経過

HIV 感染症の臨床経過 51 AIDS 関連症候群(ARC)の診断と治療 ~非結核性抗酸菌症~

2 治 療

 HIV 感染者における非結核性抗酸菌症のほとんどは、各種の抗結核薬に抵抗性がある MAC であり、その治療法は現在も種々試みられている。感受性検査の結果から、ストレプトマイシン

(SM)、カナマイシン(KM)、エタンブトール(EB)、イソニアジド(INH)、エチオナマイド(TH)、

サイクロセリン(CS)、リファンピシン(RFP)の中から 4 剤を選び併用する。また一般の抗菌 薬の中では、アミカシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、スパルフロキサシン、シプ ロキサシンなどに感受性を示す。プロテアーゼ阻害剤使用中であれば、リファンピシンをリファ ブチン(RFB)に変更する必要がある(結核の項参照)。また、RFP は抗 HIV 薬のラルテグラ ビルの血中濃度を低下させる可能性があるため、併用の際にはラルテグラビルの増量を考慮する 必要がある。

・MAC 感染症に対し

処方例① リファジン(RFP) 1日量 450㎎、分 1、朝食前内服 クラリス(CAM) 1日量 800㎎、分 2、内服

エブトール(EB) 1日量 15㎎ /㎏、分 1、内服(結核症より投与期間 が長期に及ぶので視力障害の発生により注意する)

硫酸ストレプトマイシン 1日量 15㎎ /㎏以下を(年齢による)3)、筋注(週 2 回または週 3 回)

 治療期間は菌陰性化後 1 年以上。

 米国では AIDS 患者の MAC 菌血症に対し、以下の治療法の有効性が報告されている。

処方例② リファブチン(RFB) 1日量 300㎎、分 1、内服

エブトール(EB) 1日量 15㎎ /kg、分 1 または分 2、内服 クラリス(CAM) 1日量 1000㎎、分 2、内服

 RFB 特有の副作用であるブドウ膜炎に注意する(結核の項参照)

RFB は CAM と併用した場合、血中濃度が 1.5 倍以上に上昇し、ブドウ膜炎の頻度も高くなる。

従って、CAM 併用時の RFB 初期投与量は1日量 150㎎とし、6 ヶ月以上の経過で副作用がな い場合は 300 mg まで増量する。

・播種性 MAC 症の予防:CD4 陽性細胞が 50/μℓになった時点で開始する。

処方例① ジスロマック(AZM) 週1回 1200㎎、分1、内服 処方例② クラリス(CAM) 1日 1000㎎分2、内服  本邦では、①のみ予防投与として保険適応である。

 M.kansasii症は非結核性抗酸菌症の中で抗結核薬による化学療法が最も有効な感染症である。

 処方例 リファジン(RFP) 1日量 450㎎、分1、朝食前内服(蛋白合成阻害剤 内服患者では、リファブチン 300㎎、またはクラリ ス 800㎎ / 日)

エブトール(EB) 1日量 15㎎ /kg、分 1 ~ 2、内服 イソニアジド(INH) 1日量 400㎎、分 1

 治療期間は 18 ヶ月(ただし、少なくとも培養陰性が 12 ヶ月続くこと)。

52 HIV 感染症の臨床経過AIDS 関連症候群(ARC)の診断と治療 ~非結核性抗酸菌症~

■参考文献■

1 N Engl J Med 1996;335:384-91

2 非定型抗酸菌症の治療と予後、結核(第 2 版)、久世文彦、泉 孝英 編、258-262 ページ、

医学書院、1992 年、東京

3 結核・非結核性抗酸菌症診療ガイドライン、米国胸部疾患学会、医学書院、2002.

4 結核 Up to Date、毛利昌史ほか編、南江堂、1999 年、東京

5 DHHS.Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-1-Infected Adults and Adolescents. February 12,2013

(内科Ⅰ 今野 哲 2013.09)

HIV 感染症の臨床経過 53 AIDS 関連症候群(ARC)の診断と治療 ~ニューモシスチス肺炎~

 従来カリニ肺炎と呼ばれていた疾患は、正式にはニューモシスチス肺炎(Pneumocystis Pneumonia:PCP)と呼称されることになった。これは、病原体の名前が Pneumocystis carinii から Pneumocystis jiroveci と名称が変更になったことに伴うものである AIDS 患者における PCP は、幼小児期の不顕性感染の再燃の形で発症し、経過中約 70 ~ 80%の患者に見られ、最も 多い合併症のひとつである。CD4 陽性 T 細胞が 200 個 /μℓ以下になると発症することが多い。