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初診時の支援

18- 3

1 初診時の問診

 看護の問診は、情報収集の目的だけではなく、面談を通し、患者との信頼関係を形成してい く場でもある。初診時の医療者や医療機関の第一印象が、その後の患者と医療者間の信頼関係 に影響し、患者の療養経過を左右すると言われている。初診時の対応で信頼関係を損なうと、

それ以降の受診中断や生活支援が進まなくなる可能性があることを認識した支援が求められ る。「少なくとも、次の受診につながる」「今後の療養生活についてある程度の見通しが立てら れる」支援が初診時には重要である。また、初診時に全ての情報収集を行うのではなく、患者 の身体、心理状況を踏まえて必要な情報からアセスメントし、患者の全体像を把握する。

※<初診時流れ><各場面で支援のポイント><看護情報シート アセスメントガイド>を参 照する。

HIV 感染症患者の看護 ~初診時の支援~

174 HIV 感染症の臨床経過

表 1 看護情報シート、アセスメントガイド【現病歴】

項目 目的、方法

病気の説明と理解 ・病気の説明、理解状況、病気の受け止めを確認する 抗体検査回数、献血歴、

感染経路、海外渡航歴、

初期感染時期、

現在までの経過

・感染リスクの認識と行動をアセスメントする

・感染経路により罹患する可能性のある疾患や症状に繋がる

現在の症状

認知機能低下の有無

・日和見感染症や性感染症などの合併疾患をセスメントする

・HAND も視野に入れアセスメントする 病気を告知した人・

キーパーソンの有無

・病気を伝えて支援が受けられているか、伝えていないが必要な支 援が受けられているか、相談者の存在をアセスメントする

・誰にも話せないと思っている場合は、なぜそう思うのか理由を聞 き対応を患者と検討する・医療者が相談役割を持つ存在と理解さ れているかアセスメントする

セクシャリティ 性行動

セックスパートナーの 有無

・セクシャリティや性行動を把握し二次感染予防への支援手がかり をえる。

・セックスパートナーとの感染リスク行動をアセスメントする。

・パートナーの抗体検査受検の必要性の理解と実施結果を確認する

HIV 感染症患者の看護 ~初診時の支援~

2 診療環境とプライバシーの保護への配慮

・診察や説明、面談をする場所は、プライバシーが保て、患者が十分に感情を表出できる個室 が望ましい。個室での対応はスタッフへの危機回避対策を整備し、椅子やドアの位置、ハサ ミなどの鋭利なものの保管にも注意し、緊急対応要請が可能な体制を整えておく。

・患者から知り得た情報がチーム内で共有が必要と判断された場合、患者に「情報を伝える目 的、誰(どこに)に、どの程度、どの様に内容を伝えるか」について了解を得た上で、情報 をチーム内で共有する。

3 初診から定期受診継続への支援

・定期受診は、患者が自分の免疫状態を把握し、治療のタイミングを逃さず、健康状態を維持 していくために重要である。治療している場合は副作用や関連疾患発症の有無、治療効果を 把握することで自身の健康管理やセルフケア継続への支援につなげていく。

・自覚症状がない、免疫状態が安定しているなどの理由で受診中断する患者もおり、初診から 定期受診継続への可否をアセスメントし、通院が継続支援を実践する。

・受診や予約外受診での調整については事前に情報提供を行い、行動できているか確認する。

HIV 感染症の臨床経過 175 表 2 看護情報シート、アセスメントガイド【既往歴】

表 3 看護情報シート、アセスメントガイド【HIV 感染症での受診歴】

表 4 看護情報シート、アセスメントガイド【基本情報】

項目 目的、方法

梅毒等の STD 帯状疱疹等、痔疾患 肝炎

・性感染症の既往を把握することで、健康認識、受診行動、感染リ スク行為をアセスメントする。

てんかん、喘息、

精神疾患

・薬剤相互作用の考慮が必要である。

・精神疾患による受診、服薬中断のリスクをアセスメントする 高血圧、心疾患、

糖尿病、痛風、腎臓病、

・治療状況や今後の治療の必要性と合併症管理をアセスメントす る。

・薬剤相互作用の考慮が必要である。

入院歴、手術歴 家族歴、常用薬、

薬剤アレルギー、

ペットの有無

・患者の健康管理に対する関心度や認識をアセスメントする

・過去の受診行動の経過から定期受診の可否をアセスメントする

・健康管理の必要性を意識づける機会にする

薬物使用歴 IDU

合法薬物の使用

・精神疾患の症状との見極めが必要である

・注射による感染リスクの有無をアセスメントする

・性行為時の薬物使用によるアンセーファーセックスの状況を把握 し、行動変容への支援の手がかりを得る

項目 目的、方法

受診頻度

抗 HIV 薬の服薬歴

・自分の病気・治療に関する関心度や理解度を確認する

・服薬状況、工夫点、副作用の有無、薬剤変更状況などから、服薬 継続支援をアセスメントする

日和見感染症の有無 予防内服、治療の有無

・日和見感染症の知識、治療や予防の実施状況を確認し、支援の必 要性をアセスメントする

項目 目的、方法

職業、健康保険、

身体障害者手帳の有無 その他の社会資源

・就労による受診や服薬への影響をアセスメントする

・服薬治療の開始や継続による、医療費負担についてアセスメント する

家族構成 歯科受診状況

・患者の療養継続に必要な支援やサポートについてアセスメントす

・健康管理の意識の確認と今後のセルフケアに繋げていく

HIV 感染症患者の看護 ~初診時の支援~

176 HIV 感染症の臨床経過

 患者が HIV/AIDS に関する正確な知識を習得し、療養生活に必要なセルフケアを的確に実践 できるよう支援する。セルフケア支援は、患者個々の理解の程度や生活環境の変化、病状や治療 の変化に応じて繰り返し実施することが重要ある。

① ヒトの免疫システム

② HIV 感染症と AIDS の違い

③ 病気の経過

④ 検査データの見方

⑤ 抗 HIV 療法

⑥ 定期受診の必要性

⑦ 服薬管理

⑧ 合併症の予防・治療(日和見感染症・長 期合併症など)

⑨ 感染予防

⑩ 日常生活の注意点

⑪ 社会資源・制度利用

⑫ 専門職利用

⑬ 緊急時・相談時の連絡先・連絡方法

⑴ 日常生活への支援

 健康を維持し免疫力を保ち、自分や他者への感染に注意した生活を送る事が出来るよう日常 生活の注意点について説明し実践できるよう支援する。健康な状態を維持していくためには、

一般的な規則正しい生活が基本であることを理解する必要がある。患者自身が行動することが 重要であり、理解することと実践できることは必ずしも同じではない為、各自の行動に沿った 具体的な支援が必要である。

1 受診行動

①定期受診

• 自分の免疫状態を把握し、治療のタイミングを逃さないことが重要である。治療中の 患者は、副作用や関連疾患発症の有無、治療効果の把握が健康管理の動機づけに繋がる。

• 受診時に、患者が療養に必要な情報を得る機会とし、患者の生活状況を定期的に把握 し支援を行う。

• 定期受診の可否をアセスメントして受診継続の必要性を本人が理解し行動できるよう 支援する。受診や予約外受診に関する理解と行動確認を行う。

②他科外来・他施設の受診

• 眼科受診の継続は、サイトメガロウイルス網膜炎等の早期発見治療のため必要となる。

(免疫データにより受診頻度を決める)

• 婦人科受診は、子宮頸癌等の早期発見のために1年1回は実施する。(免疫や細胞診の データにより受診頻度を決める)

• 主治医から紹介(紹介状)をうけ、患者が安心して必要な診療が受けられるよう受診 調整する。他科受診の方法や流れについて説明する。

• 初診で他科受診時は、特にプライバシーへの配慮など必要に応じて受診科へ依頼する。

③緊急・体調変化時の対応

• 体調変化や緊急時は、医療者に連絡相談できるよう支援する。連絡先・連絡方法を知り、

行動できているか確認する。

• 通院医療機関以外に受診する場合や救急車利用時は、「HIV 感染で通院していること」

「通院医療機関との連携が図れること」を、医療者や救急隊員に伝えることで適切な対 応が可能となることを説明する。

HIV 感染症患者の看護 ~セルフケア支援~