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 以下のマニュアルは、HIV 診療を安全に行うためのものです。万が一針刺し事故が起こった 場合、感染予防のための予防薬服用がスムーズに行われるよう作製したものです。作製に当って は、米国の CDC から報告されたガイドライン(2005 年 9 月改訂版)と、国立国際医療センター 病院にて作製されたもの(2007 年 7 月改訂版)、および厚生労働科学研究班による抗 HIV 治療 ガイドライン(2013 年 3 月改訂版)を参考に一部改変しました。

その 1

まず最初に、下記のステップ 1、ステップ 2 に従い曝露状況の評価をしてください。

HIV 感染症の臨床経過 189 ステップ 1【曝露のタイプについての評価】

A.経皮的な曝露

⑴ 軽度:非中空針による浅い傷など

⑵ 重度:中空針による針刺し

肉眼で血液付着が確認できる針・器具による針刺し・切創

血管に刺入された針による針刺し(例えばカテラン針や、サーフロのような太さの もの)

深い針刺しなど(例えば、IVH の穿刺針や、透析時のバスキャスのような太いもの)

B.粘膜や傷のある皮膚への曝露

⑴ 少量:2 ~ 3 滴の血液・体液など

⑵ 大量:大量の血液・体液飛散など

ステップ 2【感染源の感染状況の評価】

A.感染源が HIV 陽性

⑴ クラス 1:無症候性 HIV 感染症あるいは血中ウイルス量低値(< 1500copies/㎖)

⑵ クラス 2:症候性 HIV 感染症、AIDS、HIV 初期感染、血中ウイルス量高値

B.HIV の状況不明の感染源(HIV 感染の検査が不可能な死亡した患者の血液・体液などによる 曝露)

C.感染源不明(廃棄箱の中にあった針による事故などで誰の検体かわからないときなど)

D.感染源の HIV 陰性が確認されている

その 2

以上のステップ 1、ステップ 2 より曝露状況と予防投薬について 以下に従って評価してください。

 曝露のタイプで

 A.経皮的な曝露       表 1  B.粘膜や傷のある皮膚への曝露        表 2

HIV 曝露時の対応と安全対策 ~針刺し・切創及び皮膚・粘膜曝露時の対応~

表 1 経皮的な HIV 曝露後予防についての推奨

曝露のタイプ

感 染 源 の 感 染 状 況 HIV 陽性

クラス 1

HIV 陽性 クラス 2

HIV 感染状況

不明の感染源 感染源不明 HIV 陰性

軽度 基本投与

を推奨

拡大投与 を推奨

予防投与なし

(*注)

予防投与なし

(*注) 予防投与なし

重度 拡大投与

を推奨

拡大投与 を推奨

予防投与なし

(*注)

予防投与なし

(*注) 予防投与なし

190 HIV 感染症の臨床経過

表 2 粘膜曝露や傷のある皮膚への HIV 曝露後予防についての推奨

曝露のタイプ

感 染 源 の 感 染 状 況 HIV 陽性

クラス 1

HIV 陽性 クラス 2

HIV 感染状況

不明の感染源 感染源不明 HIV 陰性

少量 基本投与

を考慮

基本投与 を推奨

予防投与なし

(*注)

予防投与なし

(*注) 予防投与なし

多量 基本投与

を推奨

拡大投与 を推奨

予防投与なし

(*注)

予防投与なし

(*注) 予防投与なし

(*注)

 HIV 陽性患者由来と考えられる場合には基本投与 2 剤による予防投与を考慮する。「予防投与 を考慮」という指示は、予防投与が任意であり、曝露を受けた人と扱う医師との間においてなさ れた自己決定に基づくものであることを示す。もし予防投与が行われ、その後に HIV 陰性とわ かった場合には、予防投与は中断されるべきである。

その 3

 内服予防が必要と判断されるか、判断に迷う場合には委員会が指定する下記担当医師 に連絡し、内服予防を行うか否か、行う場合の薬剤について(表 3)相談する。

* 委員会が指定する担当医師と連絡先

表 3 予防投与開始時の選択薬

氏 名 役 職 診療科等 医 局 連絡先

藤 本 勝 也 助 教 血液内科 ☎ 7214 PHS 82323 遠 藤 知 之 助 教 血液内科 ☎ 7214 PHS 82331 近 藤   健 講 師 血液内科 ☎ 7214 PHS 87045 夜間などで、上記医師が不在時は 12-2NS(内線 5795、5796)に血液内科当番医師を問い合わせ たうえで連絡する。

【基本投与】TDF/FTC(or TDF+3TC)または、AZT/3TC(or AZT+FTC)の 2 剤併用       代替として ABC/3TC の2剤併用

【拡大投与】上記の基本投与 2 剤に DRV+RTV を加えた 4 剤併用

      代替として LPV/RTV、ATV+RTV、RAL のいずれかを加えた 3 ~ 4 剤併用

【推奨されない薬剤】NVP、DLV、ddI+d4T

HIV 曝露時の対応と安全対策 ~針刺し・切創及び皮膚・粘膜曝露時の対応~

HIV 感染症の臨床経過 191

・感染源となった患者の HIV が、薬剤耐性を獲得していると判明している場合は、上記の限り ではなく、感受性のある薬物の投与を考慮する。

・曝露を受けた人が慢性 B 型肝炎または HBV キャリアの場合は、FTC および 3TC の投与は避 けた方がよい(針刺し後フローチャート説明参照)。

略名 一般名 商品名 分類

AZT ジドブジン レトロビル NRTI

3TC ラミブジン エピビル NRTI

FTC エムトリシタビン エムトリバ NRTI

TDF テノホビル ビリアード NRTI

TDF/FTC テノホビル + エムトリシタビン ツルバダ NRTI

d4T サニルブジン ゼリット NRTI

ddI ジダノシン ヴァイデックス NRTI

ABC アバカビル ザイアジェン NRTI

ABC/3TC アバカビル + ラミブジン エプジコム NRTI LPV/RTV ロピナビル + リトナビル カレトラ PI

ATV アタザナビル レイアタッツ PI

RTV リトナビル ノービア PI

FPV ホスアンプレナビル レクシヴァ PI

DRV ダルナビル プリジスタ PI

SQV サキナビル インビラーゼ、フォートベイス PI

EFV エファビレンツ ストックリン NNRTI

NVP ネビラピン ビラミューン NNRTI

ETR エトラビリン インテレンス NNRTI

RAL ラルテグラビル アイセントレス INSTI

NRTI 核酸系逆転写酵素阻害剤 NNRTI 非核酸系逆転写酵素阻害剤 PI プロテアーゼ阻害剤 INSTI インテグラーゼ阻害剤

HIV 曝露時の対応と安全対策 ~針刺し・切創及び皮膚・粘膜曝露時の対応~

その 4

 HIV 抗体陽性もしくは強く陽性が疑われる患者を扱った針を自分に刺してしまい、担 当医師と連絡が取れない場合には、以下の針刺し事故後フローチャートに則り行動する。