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HIV 感染症の臨床経過 37

38 HIV 感染症の臨床経過

3 治療法

る。白苔表面に潰瘍形成を認めることもある。

  胃  :偽膜形成や多発性小潰瘍を認め、生検にてカンジダ菌を証明。

呼 吸 器:口腔内常在菌のため、喀痰にての検出のみでは不十分で、TBLB なども時に必要。

腎、尿路系:膀胱鏡下生検や、腎生検、膿汁吸引が必要な場合がある。

中枢神経系:髄液検査にてカンジダの証明。

敗 血 症:血液培養で診断するが、50% は陰性である。

眼 内 炎:眼底検査で、硝子体に綿球様変化。

⑵ カンジダ抗原検査:院内で可能(カンジテック)。

⑶ β-D グルカン:院内で可能(カンジダ感染に特異的ではなく、他の真菌感染症やニューモ シスチス肺炎等でも上昇する)。

 フルコナゾール耐性の C.albicans や non-albicans Candida 属(C.glabrata, C.krusei など)が 問題になりつつあり、注意が必要である。

⑴ 口腔/食道炎などの表在性感染症(口腔内では 7 ~ 14 日間投与、食道では 14 ~ 21 日間投与)

1 フルコナゾール 100㎎ /1×内服または静注(400㎎まで増量あり)。

2 アムホテリシン B シロップ 400㎎(4㎖)を含んだ滅菌水含嗽液(1 日 3 ~ 4 回)のうがい(保 険適応外)。

3 クロトリマゾール・トローチ 10㎎ 5T/5×:HIV 感染における口腔カンジダ症(軽症・

中等症)にのみ保険適応。

4 イトラコナゾール内用液 20㎖(200㎎)/1×:口腔・咽頭・食道にも直接作用し、主とし て消化管から吸収。薬剤性胃腸障害で服用継続が困難な場合もある。

 口腔咽頭カンジダ症は、抗真菌薬投与により速やかに改善するが、再発率は高い。

 サイトメガロウイルス食道炎やヘルペスウイルス食道炎などは、食道カンジダ症と似た症状を 呈することがあり、合併していた場合に、カンジダの白苔により潰瘍病変などがマスクされてし まうことがある。食道カンジダ症に対する抗真菌薬投与により症状が改善しない場合は、他の原 因による食道炎や耐性カンジダを疑って、内視鏡検査や培養検査の提出を考慮する必要がある。

⑵ 呼吸器感染症/カンジダ血症などの深部感染症

1 アムホテリシン B リポソーム製剤 2.5㎎ /㎏ /day 点滴静注(5㎎ /㎏ /day まで増量あり): アムホテリシン B と同等の有効性を有し、アムホテリシン B より腎機能障害・低カリウム 血症・発熱などが少ない。

2 フルコナゾール 100 ~ 400㎎ /1×内服またはホスフルコナゾール 100㎎ /day 点滴静注 1 日 1 回(400㎎ /day まで増量あり。Loading dose として初日と 2 日目は維持用量の倍量を 投与):時に不整脈。

3 ボリコナゾール 300 ~ 400㎎ /2×食間内服(Loading dose として初日は 600㎎ /2× 食間 内服)または 3 ~ 4㎎ /㎏ 点滴静注 1 日 2 回(Loading dose として初日は 6㎎ /㎏ 点滴静注 1 日 2 回):時に副作用で羞明・霧視・視覚障害。

4 ミカファンギン 50 ~ 300㎎ /1× 点滴静注

AIDS 関連症候群(ARC)の診断と治療 ~カンジダ症~

HIV 感染症の臨床経過 39

4 予 防

深在性カンジダ症または難治性カンジダ症に対してイトラコナゾールやボリコナゾールを長期間

(4週間以上)投与している患者では、薬物血中濃度モニタリングが有用である。特にイトラコ ナゾールでは患者間の血中濃度の変動が大きい。イトラコナゾールの血中濃度の測定は必ず定常 状態到達後(投与開始から 2 週間以上)に行うべきである。血中濃度を測定することで、十分吸 収されているかどうかを確認するとともに、用量変更の影響や相互作用を有する併用薬の影響を 調べ、アドヒアランスも評価すべきである。また、定期的な肝機能のモニタリングも行われるべ きである。

 一次予防として、フルコナゾールは進行期患者における粘膜カンジダ症の発症リスクを減らす という報告がある。しかし、粘膜カンジダ症で致死的になることは極めて稀であり、治療に対す る反応もよく、また薬剤耐性化や菌種交代の危険性もあるため、ルーチンの予防投与は推奨され ない。同様の理由から、粘膜カンジダ症に対する二次予防も推奨されていないが、反復性あるい は重症カンジダ症の場合に、フルコナゾールの二次予防内服(口腔内カンジダ症では 100㎎ /1×

内服を連日または週 3 回、食道カンジダ症では 100 ~ 200mg/1×内服を連日)を行うこともある。

長期のアゾール内服の場合や CD4 陽性リンパ球が 50/μℓ未満の進行期患者では特に、耐性化に 注意を払う必要がある。

■参考文献■

1 治療学 HIV 感染症(2001.1)

2 日本臨床 HIV/AIDS 研究の進歩(2002.4)

3 2005-2006 Medical management of HIV infection

4 HIV 感染症とその合併症:診断と治療のハンドブック.HIV 研究班 (2005.3)

5 The Sanford guide to HIV/AIDS therapy 2006-2007(2006.7)

6 日本化学療法学会 一般医療従事者のための深在性真菌症に対する抗真菌薬使用ガイドライ ン(2009.1)

7 Clin Infect Dis 48:503-535,2009(2009.3)

8 カンジダ症 プライマリ・ケア医が出会う HIV/AIDS 75-81(2010.10)

9 Guidelines for the Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in HIV-Infected Adults and Adolescents(2013.7)

(血液内科 吉田 美穂 2013.07)

AIDS 関連症候群(ARC)の診断と治療 ~カンジダ症~

40 HIV 感染症の臨床経過

1 概 説