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非同次問題

ドキュメント内 偏微分方程式入門 2013 (ページ 95-99)

第 2 章 熱方程式 57

2.9 非同次問題

熱伝導方程式の初期値境界値問題の解の公式

f(x) = X n=1

cnsinnπx = u(x, t) = X n=1

cnen2π2tsinnπx

において、−n2π2 が固有値で、sinnπx がそれに属する固有関数であることを思い出すと、1 階定数係数線形常微分方程式の初期値問題と熱伝導方程式の初期値境界値問題とで、話の成り 立ちがまったく同じであることに気が付くであろう。言葉で表すと

初期値を固有関数の線形結合の形に書いておけば、

各成分に eλntn は固有値) をかけることで時間発展問題の解が得られる。

固有値問題の読書案内

この講義の最重要テーマであるFourier の方法の要とも言える微分方程式の固有値問題であるが、行 列の固有値問題と関係ある(類似が成り立つ)と指摘するだけで、あまり深くは突っ込めなかった。一 つには無限次元空間の要素を表現するのに位相などの問題が生じて、難しくなるからである (短いス ペースでうまく解説するだけの力は筆者にない)。作用素の固有値問題について勉強したい場合は、基 本的な常微分作用素については藤田 [61]がお勧めである(3年生くらいのレベルで十分読みこなせる) より一般の線形作用素の固有値問題については、志賀 [31]がとっつき易いかもしれない。解析系の学 生は、関数解析のしっかりした44成書、藤田・黒田・伊藤 [59] などを見るのもよい。こちらはズバリ

「楕円型偏微分作用素に関する固有関数展開」という章がある。ただし、この本は読みこなすのにある 程度の覚悟が必要だから、今のところは「そういうものがある」と覚えておくだけで十分であろう。そ れでも挑戦しようという人は、むしろ現代の古典として名高いクーラン・ヒルベルト [25]に挑戦する のが良いかもしれない。なお、小谷・俣野 [28]も面白い本である。

方程式(非同次HE)は、物理的には、針金の内部で熱量(位置 xで単位時間あたりF(x))が 発生している状況を表している。

注意 2.9.1 (言葉使いの確認) ここで同次、非同次と言っているのは、初期条件を除いた、微 分方程式と境界条件のみを問題にしている45。上の問題は線形方程式 (未知関数uについての 1 次式になっている) ではあるが、u について純粋の 1 次式ではなく、定数項というか 0 次 の項 (F(x)とか A,B など)が入っているので、非同次方程式である。これに対して (H-IBP)

の (HE), (DBC) のようにu について0次の項は一切なくて、1次の項ばかりの方程式は同次

方程式と呼ばれる。

まとめ (確認のための繰り返し)

• 線形方程式とは 1 次方程式のこと、そのうち純粋の 1 次式 (定数項は0) ばかりからな るものを同次方程式、0でない定数項があるものを非同次方程式と呼ぶ。

• 前節までに扱った初期値境界値問題 (H-IBP) は、微分方程式 (HE) と境界条件(DBC) が同次方程式(u について1次の項しか出てこない —付録 B.2.8を参照) であった。そ れゆえ

重ね合わせの原理46: {un}n がみな解ならば、線形結合 X

n

cnun も解 が成り立ち、Fourierの方法が活躍した。

• これに対して (非同次 H-IBP) では、線形問題ではあるが、微分方程式、境界条件が非 同次になっているため、重ね合わせの原理は成立せず、Fourierの方法は (直接は)利用 できない。

2.9.2 特解発見の方法

: 題の「特解発見の方法」という語は、一般には通用しない。ここだけの用語。

非同次方程式の解法については、線形代数や、常微分方程式論にも現れたはずである。その 際、特解を発見して、後は

非同次方程式の一般解= 非同次方程式の特解 +同次方程式の一般解

という原理 (定理B.2.18)を適用するという解法を学んだはずである。ここでは、これを便宜 上、特解発見の方法と呼ぶことにする。

2.9.2 (常微分方程式) 微分方程式y′′−y2y = 4xの特解としては、y=ax+b(a,bは定数) と置いて代入してy=2x+1が見つかる。それゆえ一般解はy(x) = (−2x+1)+C1e2x+C2ex (C1, C2 は任意定数)。

45初期条件を除いて考えるのは、常微分方程式の場合と同様である。

46英語では“principle of superposition”という。

特解としては、なるべく簡単なものを探すべきだが、ここではt によらないもの、すなわち x のみの関数 v =v(x) で、(非同次HE) と (非同次DBC) を満たすものを見出そう。その条 件は

0 =v′′(x) +F(x) (x(0,1)), (非同次ODE)

v(0) =A, v(1) =B (非同次BC)

となる。このような関数を(非同次HE) と(非同次DBC) の定常解(steady solution) と呼ぶ。

F ∈C[0,1]ならば、これを満たす v は確かに存在する。実際、

(2.9.1) v(x) = A+ (B−A)x+ Z 1

0

G(x, y)F(y)dy, G(x, y) :=

(y(1−x) 0≤y≤x≤1 x(1−y) 0≤x < y≤1 が解となる(Gは(同次境界条件下の)境界値問題のGreen関数と呼ばれるものである。v1(x) :=

Z 1 0

G(x, y)F(y)dy が A = B = 0 の場合の解になっていること、v2(x) := A+ (B −A)xF 0の場合の解になっていることを注意しておく)。以下は簡単なF 0の場合だけ考えて みよう。

2.9.3 (境界条件だけが非同次の場合) F 0 の場合 (言い替えると微分方程式は同次で、

非同次なのは境界条件だけの場合)は、以下のように簡単に v が求まる。まず v′′(x) = 0より v は定数関数であることが分かる。ゆえに v は 1 次関数。そこで v(x) =ax+b とおき、境 界条件に代入すると a =B −A,b =A. ゆえに

v(x) = (B−A)x+A.

以下では、とにかく v が得られたものとしよう。すると、w(x, t) :=u(x, t)−v(x) とおく と、wf−v を初期条件とする (H-IBP) を満たす、すなわち

wt(x, t) = wxx(x, t) (x(0,1), t >0), w(0, t) = w(1, t) = 0 (t >0),

w(x,0) =f(x)−v(x) (x[0,1]).

これから

w(x, t) = X n=1

bnen2π2tsinnπx, bn= 2 Z 1

0

(f(x)−v(x)) sinnπx dx (n N)w が求まる。

後は、もちろん

u(x, t) = v(x) +w(x, t)u が得られる。

2.9.3 定数変化法

前項の問題における非同次項のF が、時間t にも依存するように一般化された非同次初期 値境界値問題を考えよう。

(時間依存項を持つ非同次 H-IBP)

次の(時間依存非同次HE), (同次DBC), (IC) を満たす u=u(x, t) を求めよ:

ut(x, t) =uxx(x, t) +F(x, t) (x(0,1), t >0), (時間依存非同次HE)

u(0, t) = 0, u(1, t) = 0 (t >0), (同次DBC)

u(x,0) =f(x) (x[0,1]).

(IC)

ただし f: [0,1]R, F: [0,1]×[0,)R は与えられた連続関数である。

この場合、少し考えれば分かるが、前小節のような特解発見の方法は (特別の場合を除き) うまく行かない。

ところで、定数係数の線形非同次常微分方程式 dx

dt =Ax+F(t), x(0) =x0

は定数変化法で解け、解は次のように得られるのであった:

x(t) =etAx0 + Z t

0

e(ts)AF(s)ds.

上の (時間依存項を持つ非同次 H-IBP)も、形式的には定数変化法で計算して、次の解の公 式47 が得られる (計算の詳細は略する)。

u(x, t) = Z 1

0

G(x, y, t)f(y)dy+ Z t

0

ds Z 1

0

G(x, y, t−s)F(y, s)dy.

(ただし U は Green 関数である。)

あるいは、本質的には同じことだが、同次方程式の解が X

n=1

cnen2π2tsinnπx の形に書けたことを背景に、

u(x, t) = X n=1

cn(t)en2π2tsinnπx (あるいは u(x, t) = X n=1

cn(t) sinnπx)

とおいて (係数 cn が時間に依存するようにしたことに注意)、これを各方程式に代入して、

{cn(t)}n=1 についての方程式を導いて解き、u を決定する、という方法もある。もちろん結 果は級数の形になる。(ただし、この場合は、定数変化法と言うよりも、固有関数展開法とか Galerkin 法と呼ぶ人が多いようである。)

47この形の公式もDuhamelの公式と呼ぶことがある。また、このようにして解が得られることを、Duhamel の原理が成り立つ、ともいう。(Duhamelの原理は、A に相当する部分が時間に依存する場合にも(適当な修正 の下に)成り立つ、というか、そちらの方が普通で、こちらは、その特別の場合であると言った方が正確なのか も知れない。)

ドキュメント内 偏微分方程式入門 2013 (ページ 95-99)