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ドキュメント内 偏微分方程式入門 2013 (ページ 139-144)

第 3 章 Laplace 方程式、 Poisson 方程式 137

3.2 例

以下、簡単な例に引き続き、数学と物理において、Poisson 方程式やLaplace 方程式の現れ る例を紹介する1。無理に内容を覚える必要はないが、Poisson 方程式や Laplace 方程式がい かに重要か、雰囲気だけでも納得してもらいたい。

3.2.1 1 変数関数

n= 1 すなわち 1 変数の場合は簡単である。まず 4= d2

dx2 に注意しよう。これから Poisson 方程式は

−u′′=f

に他ならず、uf の原始関数の原始関数であることが分かる (従って、Dirichlet 境界値問 題は積分を用いて簡単に解くことができる。なお (2.9.1) も参照せよ。)。また、Laplace方程 式は

u′′ = 0

となるので、1変数の調和関数とは 1次関数に他ならないことが分かる。

3.2.2 r = | x | のみの関数である調和関数

C2 級の関数 f: (0,)R を用いて

u(x) = f(r), r=|x| (xRn\ {0}) と表される関数 u について、

∂u

∂xj =f(r)rxj =f(r)· xj

r = f(r) r xj,

2u

∂x2j = rf′′(r)1·f(r)

r2 ·rxj·xj +f(r)

r ·1 = rf′′(r)−f(r) r2 · x2j

r +f(r) r . ゆえに

4u= rf′′(r)−f(r) r2 · r2

r +nf(r)

r =f′′(r) + n−1 r f(r).

そこで4u= 0 となるには

f′′(r) + n−1

r f(r) = 0

1以前だったら、理系の学生は教養課程で、電磁気学や流体力学をみっちり勉強させられたはずで、数学の講 義でわざわざ詳しく言及する必要はなかったはずなのだが、最近はそうもいかないようである。普通の数学の本 にはあまり書いてないことかもしれないが、全く知らなくても構わないことだとは言えないと思う。

でなければならない。これを移項して整理すると f′′(r)

f(r) = 1−n r となるから積分して

logf(r) = (1−n) logr+C (C は任意定数).

ゆえに

f(r) =Cr1n (C は任意定数).

もう一度積分して

f(r) = (

C1r2n+C2 (n 6= 2)

C1logr+C2 (n = 2) (C1, C2 は任意定数).

こうして

u(x) =



 C1

|x|n2 +C2 (n 6= 2) C1log|x|+C2 (n = 2)

(C1, C2 は任意定数).

3.2.3 複素関数論から

(複素関数論の復習になってしまうが、重要なので一通り説明する) 正則関数の実部、虚部 は調和関数である。実際、Ωが複素平面 C の領域で、f: ΩC が正則な関数であるとする とき、

f(x+iy) =u(x, y) +iv(x, y), u(x, y), v(x, y)∈R

によって実数値関数 uv を定めるとき(ただしi は虚数単位を表す)、次の(1), (2) が成り 立つことは良く知られている。

(1) u,v は次の Cauchy-Riemann 方程式(Cauchy-Riemann equations) を満たす: (3.2.1) ux =vy, uy =−vx.

(2) u,vC 級である。

これから

4u=4v = 0 であることが以下のようにして分かる。

4u=uxx+uyy =

∂xux+

∂yuy =

∂xvy +

∂y(−vx) =vyx−vxy = 0, 4v =vxx+vyy =

∂xvx+

∂yvy =

∂x(−uy) +

∂yux =−uyx+uxy = 0.

3.2.4 熱伝導現象の定常状態

要点: 前章で述べた「定常解への収束原理」は多次元空間においても成立する。Poisson 方 程式、Laplace 方程式は、熱伝導方程式の定常問題である。

Rn の領域 Ωにおける熱方程式の初期値境界値問題

wt(x, t) =4w(x) ((x, t)×(0,)), w(x, t) =ψ(x) ((x, t)Γ×(0,)), w(x,0) =φ(x) (xΩ).

の解 w=w(x, t) は、t→ ∞ のとき、ある関数u=u(x) に収束する:

tlim→∞w(x, t) =u(x) (xΩ).

ここでu は以下の二つの条件から定まることが知られている: 0 =4u(x) (xΩ), u(x) =ψ(x) (xΓ).

つまり

Laplace 方程式は、定常版の熱方程式である

以上の議論で、最初の熱方程式の代わりに

wt(x, t) =4w(x, t) +f(x) という方程式を考えた場合は、

tlim→∞w(x, t) = u(x), ただし

0 =4u(x) +f(x) (xΩ), u(x) =ψ(x) (xΓ).

すなわち w は Poisson 方程式の解に収束する。

3.2.5 静電ポテンシャル

電磁気学の基礎方程式であるMaxwellの方程式(1.1.1) (p.18)で、電場と磁場が時間によっ て変化しない場合を考えると、電場と磁場に相互作用はなく、特に電場E⃗ についての方程式は

divE⃗ = ρ ε0, (3.2.2)

rotE⃗ =0.

(3.2.3)

ここで ρ は電荷密度、ε0 は真空の誘電率2と呼ばれる正定数である。

(3.2.3) より、E⃗ はポテンシャルを持つ3。それを−ϕ と書こう:

E⃗ =gradϕ.

この ϕ を電位または静電ポテンシャルと呼ぶ。

この式を(3.2.2) に代入すると

div(gradϕ) = ρ ε0, すなわち

(3.2.4) − 4ϕ =f, f := ρ

ε0.

つまり静電ポテンシャルは Poisson 方程式の解である。特に電荷がない(ρ= 0 となっている) ところでは、静電ポテンシャルは Laplace 方程式 = 0 を満たす。

静電場と同様のことが重力場についても成り立つ。すなわち重力ポテンシャル(重力の位置 エネルギー)は、Poisson 方程式を満たす。

3.2.6 3 次元の流れの場

3次元の速度場⃗v =⃗v(x, y, z) =



u(x, y, z) v(x, y, z) w(x, y, z)

について、

ω:= rot⃗v =∇ ×⃗v =



wy −vz uz−wx

vx−uy



う ず ど

渦度(vorticity) と呼ぶ。渦度が至るところ0 である流れを渦無しであるという:

流れが渦無し ⇐⇒ rot⃗v = 0.

静電ポテンシャルの場合と同様に、ベクトル解析で良く知られた定理から、(少なくとも局 所的には4)⃗v のポテンシャル φ が存在する:

v = gradφ.

2ちなみにε0= 107

4πc2 8.85×1012F/m,c=真空中の光速度= 299,792,458 m/s. なお、クーロンの法則 に現われる比例定数 kとは、k= 1

4πε0 という関係にある(だからk=c2/107)。

3「単連結領域でrotf= 0を満たすベクトル場fはポテンシャルを持つ。すなわち、f= gradU を満たす 関数U が存在する。」—ベクトル解析の常識。

4ここの議論では、⃗v の定義域を書いていないが、例えば単連結な領域であれば、領域全体でポテンシャルが 存在する。そうでない場合は、注目している点aの単連結な近傍、例えばε近傍B(a;ε)においてポテンシャル が存在する。

速度場にポテンシャルが存在する流れのことをポテンシャル流 (potential flow) と呼び、

そのポテンシャルを速度ポテンシャルという。

一方、非圧縮流ならば、

div⃗v = 0 が成り立つ。

ゆえに、渦無しの非圧縮流については

div gradφ = div⃗v = 0, すなわち

= 0 が成り立つ。つまり

渦無しの非圧縮流はポテンシャル流で、速度ポテンシャルは調和関数である 注意 3.2.1 (2次元の場合) 2 次元の速度場⃗v =⃗v(x, y) = u(x, y)

v(x, y)

!

についても、渦度を

ω= rot⃗v := det

∂x u

∂y v

!

= ∂v

∂x ∂u

∂y

と定義すれば、同様の議論が成立する5。さらに、2 次元の非圧縮流については div⃗v = 0 rot −v

u

!

= 0

!

から、

gradψ = −v u

!

すなわち 





∂ψ

∂y =u,

−∂ψ

∂x =v

を満たす関数 ψ が存在することが分かる。このψ をベクトル場⃗v の流れ関数 (stream func-tion) と呼ぶ6。このとき

=

∂xψx+

∂yψy =

∂xv+

∂y(−u) = rot⃗v =⃗ω.

5v(x, y, z) = (u(x, y, z), v(x, y, z), w(x, y, z)) 2 次元流であるとは、(i)w0 (ii)u v z に依存しな い、が成り立つことを言う。このとき rotv=

0,0,∂v∂x∂u∂y

が成り立つ。

6流れ関数の等高線がいわゆる流線(stream line)である。「流線形」という言葉は聞いたことがあるだろう。

ゆえに渦無しの非圧縮流の流れ関数も調和関数である。実はこの場合、ψφ の共役調和関 数なので7

f(x+iy) :=φ(x, y) +iψ(x, y) (i は虚数単位) とおくと、f は正則関数になる。この f を複素速度ポテンシャルと呼ぶ。

ある意味で、2次元の渦無しの非圧縮流の理論は、1 変数複素関数論そのものであると言え る。このあたりのことは今井 [8] で明快に説明されている8。この本は複素関数論の副読本と して大いに勧められる (個々の正則関数に「流れのイメージ」を持つことが出来る)。

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