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積分方程式への帰着, Potential 論

ドキュメント内 偏微分方程式入門 2013 (ページ 178-181)

第 3 章 Laplace 方程式、 Poisson 方程式 137

3.6 解の存在証明

3.6.7 積分方程式への帰着, Potential 論

Carl Gottfried Neumann (1832–1925) は Dirichlet, Neumann 問題を境界上の積分方程式に 帰着した。例えば Jordan 閉曲線 Γで囲まれた領域 Ω におけるDirichlet 問題

4u= 0 (in Ω) (3.6.1)

u=ψ (on Γ) (3.6.2)

について説明する。Γ を p(t) (t [a, b]) とパラメーター曲線で表わし、点 p(t) における内 向き単位法線ベクトルを nt とする。f: [a, b] Rf(a) = f(b) を満たす連続関数とし、

Dirichlet 問題の解 uを (いわゆる二重層ポテンシャル) (double layer potential) u(x) =

Z b a

f(t)

∂ntlog|x−p(t)|dt (xR2) の形で求める。

u の内部からの極限と、外部からの極限は等しくなく (特に uR2 で連続ではない)、そ の差は 2πf(t) である。さらにΓ 上の点における法線方向の微分は内向きと外向きで等しい。

このことから、f は次の積分方程式を満たす。

(3.6.3) g(s) =f(s) +

Z b

a

k(s, t)f(t)dt, ただし

g(s) := 1 π lim

xx(s) x

u(x), k(s, t) :=−1 π

∂ntlog|p(t)−p(s)| である。

パラメーターt を Γ 上の固定点からの距離として、p(t) = (x(t), y(t)) とすると、

k(s, t) = (y(s)−y(t))x(t)(x(s)−x(t))y(t) (x(s)−x(t))2+ (y(s)−y(t))2

となるので、Γが C2 級であればk =k(s, t) は連続になり、特にk(t, t)p(t) におけるΓの 曲率になる。

Fredholm (E. I. Fredholm, 1866–1927) は (3.6.3) を有限次元の線型方程式 gi =fi+λh

Xn j=1

kijfj で近似して考えた。ただし λ∈C は補助パラメーターで、

fi =fi), gi =gi), kij =k(ξi, ξj), h= b−a

n , ξi =a+ih である。

ここで

K := (kij), δn(λ) := det(I+λhK), δn(λ;i, j) = I+λhK の余因子

とおくと、いわゆる Cramer の公式によって fi =gi+ 1

δn(λ) Xn

j=1

n(λ;j, i)−δn(λ)δij)gj.

n→ ∞ の極限を考えると

nlim→∞δn(λ) =δ(λ), lim

n→∞

δn(λ;j, i)−δn(λ)δij

h =−λδ(λ;s, t), ただし

δ(λ) := 1 + X n=1

λn n!

Z b

a

· · · Z b

a

K t1 t2 · · · tn

t1 t2 · · · tn

!

dt1· · ·dtn, δ(λ;s, t) :=k(s, t) +

X n=1

λn n!

Z b

a

· · · Z b

a

K s t1 t2 · · · tn t t1 t2 · · · tn

!

dt1· · ·dtn, K s1 s2 · · · sn

t1 t2 · · · tn

!

:= det(k(si, tj)).

δ(λ)λ の整関数26であるが、Fredholm 行列式と呼ばれている。δ(λ)6= 0 の場合は f(s) =g(s)− λ

δ(λ) Z b

a

δ(λ;s, t)g(t)dt

と解ける。δ(λ) = 0 の場合はさらに詳しい解析が必要であるが、Fredholm は次の定理を得た (1903)。

Fredholm の交代定理 (the Fredholm alternative)

積分方程式

g(s) =f(s) +λ Z b

a

k(s, t)f(t)dt

がすべての連続関数g に対して唯一の解f を持つための必要十分条件は、g = 0 のときの 解がf = 0 のみであることである。これはδ(λ)6= 0 と同値である。

Hilbertは Fredholm のこの仕事が発表されてから、この結果を数列空間2(N) において見

直した(1900 年に Fredholm の論文の内容を聴いてから検討を始め、その結果は 1904 年から

1910 年の間に発表された27)。そこには現代の関数解析において重要な考え方の原型がいくつ も現れているが、まだ 2(N) と L2[a, b] の同等性や、ℓ2(N) の完備性などは意識されていな かった28。—

この節の記述は小谷・俣野 [28] を参考にした。積分方程式への帰着の部分は、溝畑[73]な どがコンパクトながら読みやすいかも知れない(ポテンシャルの詳しい解説ということなら、

ペトロフスキー[68] や Kellog [83] を勧める)。積分方程式の固有値問題の解説は志賀 [31] に

26複素平面全体で正則な関数のことを整関数(entire function)と呼ぶのであった。

27「線形積分方程式の一般論の基礎」(1912) にまとめられているそうである。

28ちなみに、現在の関数解析で学ぶような Hilbert 空間の定義はJohn von Neumann (1903–1957) に始まる (ノイマン[56]を参照せよ)。

詳しい。もっともこの辺りの議論は、現在ではすっかり整理されていて、エッセンスは関数解 析の標準的なメニューと言えるので、ある程度詳しい関数解析の教科書には大抵載っている (例えば藤田・黒田・伊藤 [60])。寺沢[48] にはクラシックな形のままのFredholm の議論が書 いてあって、そういう意味では貴重である。

余談 3.6.2 (歴史についてゴタゴタ書いたことの言い訳) 最近

回り道のように見えても、結局は問題の発生したところまで

さかのぼる

遡 る 方が理解が早い

と痛感している。もう少し具体的に言うと

数学の理論の発達には紆余曲折があって、歴史に沿ってそれらを全部勉強しようとするの は不経済だし、ともすると凡人にはかえって迷子になる危険が大きい。けれども、完全に 出来上がってしまったものだけを学ぼうとするのも別の弊害がある。その後の理論を引っ 張ったような大問題については、はしょった説明でもいいからしておく方がよい。

偏微分方程式論は、どこから話し出せば良いか当惑するくらい内容豊富である。それに初めて触れ る学生相手の授業では、何をどのように講義すべきか、というのは悩ましい問題である。筆者自身の現 時点での結論は

クラシックなことを将来の発展を見越した形で話すのがよい

である。筆者が学部 3 年生の頃を思い返すと、関数解析の勉強に大変な時間をつぎ込んでいた。それ は関数解析を面白いと思ったからではあるが、当時は抽象的な面白さにあこがれていたところが大き く、時々出て来る具体例の理解に結構手こずっていた(実は面倒くさいと思っていた) 覚えがある。今 となっては信じられないのだが、

変分法 (変分問題のEuler 方程式とは何かとか、Dirichletの原理とか)

• Fourier の方法による熱伝導方程式の解法

• Fredholm による、ポテンシャルを用いた Laplace方程式の解法

などについて、ほとんど何も知らないままに関数解析(とそれに基づく偏微分方程式論)を勉強してい たのだから呆れたものであった。一つだけ言い訳けをすれば、半分はカリキュラムにも責任があったと 思う。後になって、一つ一つこれらのものを学んでからようやく、「何だそうだったのか」という感想 を持った。同時にそれらの知識を少しでも持っていれば、もう少し抽象論も勉強しやすかったのにと恨 めしく思った29

そういうわけで、このノートには、詳しく説明もせずに(ある意味では無責任ともいえる)、こんな ことがある、あんなことがある、とかなり

じょうぜつ

饒 舌 に書いてある。初めて勉強する人には、ノイズに近い と感じられるかもしれないが、今後の勉強のためになると思ってあえてこうしてみた。(私は、3年生 の頃の自分に読ませたいノートを書いたつもりである。)

余談 3.6.3 (調和関数に関するさらなる学習) この章では、Laplace 方程式は Poisson 方程式 の特殊な場合(同次方程式バージョン) という立場で解説したが、Laplace 方程式, 調和関数は 特別で詳しく研究されている。細かいことが知りたくなった場合は、Axler-Bourdon-Wade [80]

が参考になる。ポテンシャルによる扱いについては、古典である Kellog [83]以外に、Folland [81]が便利である。

29数学科の中で、学生間に縦のつながりがあれば、あるいは何の問題もないことなのかもしれないが、残念な がら現状はそうなっていない。

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