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第 1 ステップ : 変数分離解を探せ

ドキュメント内 偏微分方程式入門 2013 (ページ 72-76)

第 2 章 熱方程式 57

2.6 Fourier の方法で解を求める (1) 解の形式的な導出

2.6.1 第 1 ステップ : 変数分離解を探せ

まず(IC) は無視して、(HE), (DBC) の変数分離解、すなわちu(x, t) = ζ(x)η(t) の形をし

た (HE), (DBC) の解を求めることを目標にする。

計算に入る前に、定数関数 0 は条件を満たすことを注意しておく。これは自明解であるか ら、以下ではそれ以外のものを求めることにしよう26

u(x, t) =ζ(x)η(t) を (DBC) に代入すると

ζ(0)η(t) = ζ(1)η(t) = 0 (∀t >0).

21NHK放送50周年記念番組をまとめた「未来への遺産1,学研(1974)から引用した。数学者でもあった、

というような書き方でちょっと愉快である。なお、様々な数学者のエピソードを集めてあるベル[69] (これは楽 しい読み物である)にもFourierの話が載っている。

22波動方程式の場合には、変数分離解は固有振動を表すので、意味が分かりやすい。

23そもそも sincosのような解析関数は、これ以上ないというくらい滑らかな関数であるのに、それらを項 に持つ級数で、微分不可能な関数はおろか、不連続な関数まで表示できるというのは、実に大胆な主張である。

巾級数が解析関数しか表現できないのとは対照的である。

24後になって分かったように、Fourier級数が収束しない連続関数も存在するので、関数の範囲の制限や収束 の意味づけについて考える必要がある。しかし、当時は関数概念すら現在のようには定まっていなかった時代だ から、Fourierがきちんと定理を述べるのは不可能であったと言えよう。

25大抵の人は、Carleson-Huntの概収束定理(1966, 1968)「p >1なる実数pに対してf Lp ならば、f

Fourier級数はほとんど至るところf に収束する」でカタがついたと思っている。もっとも、現代の数学は、ま

Fourierの主張 (思想?) を汲み取っていない(もっと奥が深いのだ)、という人もいるようである。

26以下の計算のあちらこちらで定数関数0が出て来る。これは確かに解であるが、一々それを相手にすると面 倒なので、最初に注意しておいた。

これから

(2.6.1) ζ(0) =ζ(1) = 0

が得られる。実際、もしもそうでなければ

η(t) = 0 (∀t >0)

となり、u(x, t) = ζ(x)η(t)≡ 0 が得られるが、これは定数関数0 以外のものを求めるという

目標に反する。

次にu(x, t) =ζ(x)η(t) を (HE) に代入すると

ζ(x)η(t) =ζ′′(x)η(t).

これから

η(t)

η(t) = ζ′′(x) ζ(x).

この式の値は、左辺を見れば x によらず、右辺を見ればt によらない、したがって、xにも t にもよらない定数であることが分かる。それを λ とおく:

(2.6.2) η(t)

η(t) = ζ′′(x) ζ(x) =λ.

これから

ζ′′(x) = λζ(x), (2.6.3)

η(t) = λη(t) (2.6.4)

が得られる。(2.6.3) は定数係数線形常微分方程式であるから、特性根の方法で解ける。特性 根を s と書くことにすれば、(2.6.3) の特性方程式は

s2 =λ であるから、特性根は s=±√

λ.

(i) λ= 0 の場合、特性根は s= 0 (重根) となり、(2.6.3)の一般解は ζ(x) = Ax+B (A, B は任意定数).

定数 A, B を (2.6.1) が成り立つように定めるとA=B = 0. これから ζ(x)≡0となり、

不適である。

(ii) λ6= 0 の場合、(2.6.3) の一般解は ζ(x) = Ae

λx+Be

λx (A, B は任意定数).

定数A, B を (2.6.1) が成り立つように定める。

ζ(0) =ζ(1) = 0⇔A+B = 0 and Ae

λ

+Be

λ

= 0

⇔B =−A and A(e

λ−e

λ

) = 0.

もしも A = 0 ならば B = 0 となり ζ(x)≡ 0 が導かれ不適である。ゆえに A 6= 0 とす るとeλ−eλ = 0, すなわち

(2.6.5) e2

λ = 1.

したがって (後述のよく知られた補題により)、

∃n∈Z s.t. 2

λ = 2nπi, i=

1.

ゆえに

λ =nπi, λ=−n2π2. 対応する ζ

ζ(x) = A(enπix−enπix) = 2iAsinnπx.

ここで A は任意定数であるので、n−n が同じ ζ, λ を与えること、それから λ 6= 0 に注意すると(0 や負の整数は捨ててしまって)、n は N 全体を動くとして構わない。

一方η については、

η(t) = Ceλt (C は任意定数).

こうして (HE), (DBC) の変数分離解として

u(x, t) =ζ(x)η(t) = cnun(x, t), un(x, t) :=en2π2tsinnπx (cn は任意定数,n N) が得られた(cn= 2iAC であるが、A,C とも任意定数だったので、cnも任意定数である)。こ の結果に任意定数が入っているのは、(HE), (DBC)が線形同次方程式だからであり27、この定 数は他の条件がないと定まらない。

(2.6.5) を解くのに使った補題を説明しておこう。

補題 2.6.1 C上の方程式 ez = 1 の解は z = 2nπi (nZ). ただし i は虚数単位である。

注意 2.6.2 この補題2.6.1 は,複素対数の定義をするための次の命題の特別の場合とも考えら

れる。

∀z C, ∀r >0,∀θ R に対して,

expz =re ⇔ ∃n Z s.t. z = logr+i(θ+ 2nπi).

(ただし logr は実関数としての対数関数を表すとする。すなわち ex =r を満たす unique な x∈R のことを logr と書く。)

証明 z =x+iy (x, y∈R) とすると、

ez =exeiy =ex(cosy+isiny)

27線形同次という言葉の意味は(線形代数などで学んでいるはずであるが念のため)後述する。

であるが、|ez|=ex であることに注意すると、

ez = 1⇔ex = 1 and cosy+isiny= 1

⇔x= 0 and ∃n∈Z s.t. y= 2nπ

⇔ ∃n Z s.t. z = 2nπi.

注意 2.6.3 ((2.6.2) の分母= 0 が気になる人へ) 上の議論で、

(2.6.6) η(t)ζ(x) =η(t)ζ′′(x) ((x, t)(0,1)×(0,)) を

η(t)

η(t) = ζ′′(x) ζ(x)

と変形して議論しているが (こうするのが普通のテキストの相場である)、分母が 0 になると ころではどうするか、ちょっと気になるところである28。実は次の命題が成立するので、すっ きり解決する29

命題 2.6.4 (たすき掛けが等しければ比例している) 空でない集合 A, B とその上で定義 された複素数値関数ζ1, ζ2: A→C, η1, η2: B C が条件

ζ1(x)η1(t)6≡0,

(2.6.7) ζ2(x)η1(t) =ζ1(x)η2(t) ((x, t)∈A×B) を満たすならば

∃λ∈C s.t. ζ2(x) =λζ1(x) (x∈A) かつ η2(t) =λη1(t) (t ∈B).

証明

恒等的に0 でないという仮定から

∃x0 ∈A ∃t0 ∈B s.t. ζ1(x01(t0)6= 0.

(2.6.7) に x=x0,t =t0を代入して、ζ1(x0)6= 0, η1(t0)6= 0 に注意すると ζ2(x0)

ζ1(x0) = η2(t0) η1(t0).

28時々、期末試験の答案の中で、分母が0 にならないことを「証明してしまって」いる人がいるが、この議論 の後で出て来る結果(ζ(x) =Csinnπx,nN)を見ると、それは成り立たないことが分かる(もちろん「証明」

は間違いである)。

29まあ、あまりうるさいことを言わない方が良いのかもしれない…

この等式の値を λ とおく。(2.6.7) に x=x0 を代入して整理すると η2(t) = ζ2(x0)

ζ1(x0)η1(t) =λη1(t) (t ∈B).

同様に (2.6.7) に t=t0 を代入して整理すると ζ2(x) = η2(t0)

η1(t0)ζ1(x) =λζ1(x) (x∈A).

この命題は、筆者が自力で発見したのだが、後になって、ほぼ同様のことが、ペトロフス キー [68] 第2章 §21 に書いてあるのを発見した。この本には、その他にも、類書には見られ ない、ていねいな議論が載っていて (名著とされているので、こう言っては失礼かもしれない が)非常に感心した。

問 未知関数がベクトル値関数である場合も「割り算」は問題となる。恒等的に 0 ではない 関数 u(x, t) =ζ(x)η(t)が

∂u

∂t =Lu

という微分方程式を満たしている場合はどうなるか調べよ(Lx についての微分作用素, ζ はベクトル値関数, η はスカラー値関数とする)。

ドキュメント内 偏微分方程式入門 2013 (ページ 72-76)