第二章 成都経済区――震災復興重点地域 5 都市
第四節 資陽市――工業都市を目指して
萇弘という人物は一般の中国人には知られていませんが、資陽の人に聞けば誇りをもって紹介して くれるでしょう。萇弘は、2,400 年前の春秋時代末期に資陽の地に生まれ、博学多才で天文と音楽に 精通した、東周時代の歴史記録を司る官吏でした。紀元前 521 年、孔子が数ヶ月にわたって萇弘に師 事し、天文、音楽について教えを請い、政見と知識の交流をしたと伝えられています。
萇弘は 3 代の周の王を補佐し、周王朝の支配の確立に大きく貢献しました。しかし、紀元前 492 年 に陥れられ、「殺されても悲しみ
はないが、周王朝の統一ができな かったことが心残りだ」と、言い 残して、切腹の刑に処せられまし た。河南省の人が彼の死を悼み、
彼の血を箱に入れたところ、3 年 後に緑の玉に変わったと言われて います。これが「碧血丹心」とい う言葉の始まりです。
図 2-4-1 資陽市の四川省における位置 孔子が最も尊敬される中国では、
萇弘はすっかり孔子の陰に隠れま したが、孔子の先生としても、し かるべき尊敬を受けても良いでし ょう。
2.基本情況
資陽が県として誕生したのは前漢の武帝の建元 6 年(紀元前 135 年)でした。資水(今の沱江)の 北にあるため、資陽という地名になりました。2000 年 12 月には市になりました。
資陽市は人類の誕生地でもあります。1951 年、今から 3 万 5 千年前の旧石器時代に生活していた「資 陽人」の頭蓋骨の化石が発見されています。
2005 年 12 月 22 日、資陽市雁江区で後漢時代の銅馬車が発掘されています。この「中国後漢第一車」
は馬の高さが 0.81 メートル、馬車の長さが 2.05 メートル、幅 1.25 メートル、重さ 150 キロです。
中国人民解放軍の主要な指導者の陳毅将軍は、資陽市の輩出した優れた人物の一人です。1919 年に フランス留学して 1922 年に中国共産党に入党し、1927 年に南昌蜂起に参加し、中国人民解放軍の創 立に参与しました。土地革命戦争、抗日戦争、解放戦争を経て、新中国になってから、上海市長、外 交部長、国務院副総理、政治協商会議副主席などを歴任しました。1955 年に中華人民共和国元帥の職 を授けられましたが、1972 年、「四人組」の迫害を受け、病苦の末に亡くなりました。
3.経済的実力
資陽市は市として独立してまだ 10 年に満たない若い都市ですが、社会経済の発展には著しいもの があります。2008 年、金融危機の影響を受けながら、前年比 14.2%の成長率を実現しています。また、
契約外資利用は 1,028 万ドルになり、同 256.2%も増えています。
表 2-4-1 資陽市の基本情況
市(州)政府所在地 資陽
URL http://www.ziyang.gov.cn/
http://www.scinvest.cn/html/default.htm
招商局又は商務局 四川省招商引資局
公開電話 028-66469930
市街区域 資陽市街区域
市街区域面積 1633 平方キロメートル
所轄県(市) 簡陽市、安岳県、楽至県
面積 0.8 万平方キロメートル
自然条件(降水量、平均気温、日照 時数)
年間降雨量 877.6mm、年間平均気温 17.3℃、年間日照時間 951.0 時間。
人口 497.2 万人
民族 漢族、満州族、回族、朝鮮族、モンゴル族、ダフール族、ト
ゥー族 など 46 民族
主要資源 土地資源、森林資源、水利資源、環境資源
資源産業 安岳レモン、臨江寺の豆瓣、簡陽の羊肉スープ、
観光資源
安岳石刻、資陽半月山大佛、河東大物、簡陽石景山「人頭石」、
「張飛営」、楽至陳毅古居、報国寺などの観光地、簡陽三岔 湖、簡陽龍泉湖
環境評価 良
環境保護関連産業 ゴミ処理、排気廃水処理、新型エネルギーの開発
アウトソーシング産業 IT
空路
水路
高速道路 高速道路あり、成都へは 1 時間で到達できる 交通
道路 成都重慶経済区連絡線上の重要拠点です。
(2009 年四川省統計年鑑、中国統計出版社 8 月)
人口 500 万人中、農業人口が 420 万人にも上ります。418 万ムーの農地を有するものの、一人当た りに換算すると 1 ムーにも満たない、典型的な「丘陵部に広がる農業都市」です。地下に鉱物資源が 無く地上にも資源が少ない資陽市は、神話のような工業発展を成し遂げました。
資陽市の工業は自動車関連産業を中心に展開されています。「成都・資陽工業開発区」には、四川 凱力威科技社の 210 万セットのタイヤ製造基地をはじめ、8 企業が入居しています。その昔農業機械 の修理工場だった南駿自動車は、今や年間 5.7 万台のトラックやバスを生産する四川省でも著名な企 業に成長しました。資陽市には南車車両工場があり、中国の鉄道運輸の急速な発展に伴って、中国最 大の車両製造企業になっています。
今、資陽市は車製造、食品加工、医薬、紡績、建材の 5 つの基幹産業を確立しており、2008 に 180.1 億元の GDP を実現し、規模以上工業の 83.5%を占めています。
表 2-4-2 資陽市の基本情況
総額 467.63 億元
第一次産業 132.76 億元 第二次産業 214.85 億元 第三次産業 120.01 億元 GDP
一人当たりの GDP 11068 元
国営 23232 元
平均給料
民営 17667 元
住民一人当たり可処分所得 12619 元
住民一人当たり消費支出 9511 元
農民一人当たり純収入 4441.3 元
農民一人当たり生活消費支出 2834.2 元
年金加入者数 58.10 万人
年金収入総額 16.11 億元
就職者数 200.51 万人
(2009 年四川省統計年鑑、中国統計出版社 8 月)
資陽市は四川省の農業基地で、年間食糧生産量を 220 万トン以上に保っています。山羊の飼育と魚 介類の養殖は四川省一で、レモンの生産量は全国一です。市の 47%の面積は森林に覆われ、水利施設 のダムは 377 ヶ所もあって、良好な生態環境に恵まれています。今後、大型の食品加工企業を育て、
農民の所得アップを促進することが大きな課題です。
4.交通運輸
資陽市は重慶、成都、眉山、内江、遂寧、徳陽の 6 市と接しています。高速道路の成都―重慶線が 市内を通り、物流の動脈と言えましょう。建設中の内江―遂寧線も、計画中の第二成都―重慶線も市 内を通ることになっています。国道 321 号線(広州―成都)、319 号線(アモイー成都)、318 号線(上 海―ラサ)も市内を通っていて、総延長 3,000 キロメートルの道路網を形成しています。
鉄道の成都-重慶線も資陽市を通っており、主に貨物の輸送を担っています。新設の成都-重慶旅 客専用線により、資陽市の交通はさらに便利になると期待されています。
5.都市建設
表 2-4-3 資陽市のインフラ情況
道路キロ数(キロ) 139
道路面積(万平方メートル) 252
橋梁数(個所) 36
街灯(千個) 8
バス保有台数 139
タクシー保有台数(台) 235
公衆便所数(個所) 27
政府清掃道路面積(万平方メートル) 274
水道普及率(%) 88.96
都市ガス普及率(%) 81.73
一人当たり道路面積(平方メートル) 9.40
公園数(個所) 4
公園緑化面積(ヘクタール) 168
一人当たり公園緑地面積(平方メートル) 6.26
市街区域の緑化率(%) 28.80
下水排出量(万立方米) 1475
下水道の長さ(キロ) 208
下水処理率(%) 80.00
ごみ処理率(%) 95.15
(2009 年四川省統計年鑑、中国統計出版社 8 月)
2009 年、市は、都市インフラの整備に 15 億元を投資し、300 万平方メートルの市街地域道路の新 築・増築を実施して、市街区域の面積を 28.3 平方キロメートルに拡張しました。工業が発展するにつ れ、外部からの投資が増加して人材も集まり、農村の余剰人口を工業や都市へ移転することに成功し ました。不動産産業も発展し、市内のいたるところに新しいオフィスビル、マンション、公共施設、
商業施設が立ち並んでいます。
6.未来展望
資陽市の「工業神話」はこれからも続くでしょう。国家鉄道車両の製造及び輸出基地、西部地方の 自動車及び部品製造基地、有機食品の加工配送基地、世界的に有名な観光の目的地となることを目指
しています。近年、資陽市の市外局番は成都と同じ 028 に統一されるなど、成都との経済統合も確実 に進められています。
現代的な交通システムネットワークを打ちたて、投資環境のグレードアップに努め、工業開発団地 の整備を速め、地元の工業経済をさらに発展させ、成都と重慶からの工業移転を受けて成都重慶経済 圏に溶け込み、活力に富む資陽市を作ろうと、政府も市民も意気込んでいます。