第二章 成都経済区――震災復興重点地域 5 都市
第三節 綿陽市――テレビ市場で 30%のシェアを誇る長虹社
綿陽市は四川盆地の西北部の涪江の上流にあり、山地が 61%、丘陵が 20.4%、平地がわずか 18.6%
で、谷や山間平地に広がっています。綿陽市は四川省の第二の大都市で、西部では都市規模や GDP で 第 4 位を争う実力を持っています。国務院によって「科学城」(科学の都市)の名誉を授けられてい ます。
図 2-3-1 綿陽市の四川省における位置 綿陽市に本拠を置く長虹社
は軍需の電子設備で有名なだけ でなく、テレビ、クーラー、洗 濯機、携帯電話などの家電製品 で、多いときに 30%のシェアを 誇っていました。同じく綿陽市 にある九州電器社はアンテナや デジタルテレビのアダプタなど でトップシェアを誇っています。
また、科学城にある多くの研究 施設は、中国の宇宙、衛星、航 空、原子力などの国家プロジェ クトの研究開発を担当しており、
科学城を担う中心的な存在です。
綿陽市所属の北川チャン族自治県は龍門山断裂帯にあり、汶川大地震の震源地から 50 キロしか離 れておらず、県の市街地が山崩れの土砂で一部覆われるなど、地震による遭難者を最も多く出した県 になりました。建物のほとんどが倒壊しただけでなく、山崩れでできた最大の堰止め湖も綿陽市街地 域をはじめ広範な地域の人々の生命と財産を脅かしました。道路も寸断され、人も少ない山奥に、ロ シアが救済用に繰り出した大型ヘリコプターによって大型機械が運び込まれ、解放軍の懸命な努力で、
初めて堰止め湖の危険を除去できました。綿陽空港は震災区の中心部にあるため、多くの人や救済物 質がここを経由して震災区へと運ばれていきました。綿陽市のボランティアが九州体育館に逃れてき た震災区の人々に対して心温まる援助を施した様子は、テレビを通じて世界へ報道され、多くの人に 感動を与えました。綿陽市の名も、綿陽市民のボランティア精神とともに全国の国民の心に刻まれま した。
また、市内に多くの少数民族が生活していることも綿陽市の大きな特徴です。チャン族、回族、チ
ベット族など40の少数民族が20万人も暮らしています。特に北川県は全国唯一のチャン族自治県で、
治水の大禹の故郷だと言われています。チャン族は中国で悠久の歴史を誇る民族で、漢民族の先祖の 一つでもあると伝えられています。
表 2-3-1 綿陽市の基本情況
市(州)政府所在地 綿陽市
URL
http://www.mianyang.gov.cn/
http://www.scinvest.cn/html/default.htm
招商局又は商務局 四川省招商引資局
公開電話 028-66469930
市街区域 涪城区、遊仙区
市街区域面積 1570 平方キロ
所轄県(市)
江油市、三台県、塩亭県、安県、梓潼県、平武県、北川チャン族 自治県
面積 2.0 万平方公里
自然条件(降水量、平均気温、日照 時数)
年間降雨量 835.5mm、年間平均気温 16.8℃、年間日照時間 1216.8 時間。
人口 540.7 万人
民族 漢民族以外に、チャン族、回族、チベット族など 40 民族。
主要資源 鉱物資源、農業資源、水利資源。
支柱産業 家電、電子機器製造業
観光資源
李白の故郷、李白記念館、剣門の関、翠雲廊国家級森林公園、七 曲山大廟、北川地震遺跡、大禹の故郷など。
環境評価 良
環境保護関連産業 廃水処理、排気処理、ごみ処理、環境保全用資材。
アウトソーシング産業 IT、flash、アニメのアウトソーシング及び人材派遣。
空路 空港あり
水路 少々
高速道路 成都―綿陽高速道路、綿陽―広元高速道路、綿陽―遂寧高速道路
(建設中)
交通
道路 成都から北への重要拠点で、北の門戸です。
(2009 年四川省統計年鑑、中国統計出版社 8 月)
今回の大地震で県の市街区域が全壊し、国務院の許可を得て、地震遺跡博物館になりますが、チャ ン族の民族文化、民族習慣を保存することも震災復興の重要な課題です。新しい県政府所在地は山東 省の援助で建設が進められています。
2.綿陽市の総合的な実力
2008 年、綿陽市は中国都市総合実力ランキングでは第 69 位に、中国西部地区都市総合実力ランキ ングでは第 5 位に輝きました。綿陽市は 1985 年まで三線建設の重点地区で、多くの軍需工場が集まっ ていました。改革開放後、いかに「軍需から民用品へ」の転換を実現し、工業化と都市化を推し進め つつ、いかに科学技術で綿陽市を強くするかは大きなテーマでした。今では、軍需、電子機器、家電、
特殊鉄鋼、発電、建材、機械製造、食品を包括した工業体系を形成し、全国に名を馳せた長虹社や九 州社はその傑出した代表であるといえるでしょう。
綿陽市は中国国防工業の重要な科学研究および生産基地で、17 万人の各種科学技術者が懸命に働い ています。多くの分野で中国一もしくは世界一のレベルに達しています。市内には中国エンジニアリ ング物理研究院、中国ジェット推進研究開発センター、中国ガスタービン研究所など 18 の研究機関、
民営ハイテク企業 300 社が集まり、西南科技大学を代表とする 28 の大学と職業学校があります。50 社の基幹企業が巨大な生産能力を持っています。
表 2-3-2 綿陽市の経済状況
総額 743.16 億元
第一次産業 158.09 億元 第二次産業 331.59 億元 第三次産業 253.49 億元 GDP
一人当たりの GDP 15012 元
国営 26045 元
平均給料
民営 17650 元
住民一人当たり可処分所得 12200 元
住民一人当たり消費支出 9959 元
農民一人当たり純収入 4752.4 元
農民一人当たり生活消費支出 3923.9 元
年金加入者数 90.93 万人
年金収入総額 25.26 億元
就職者数 283.75 万人
(2009 年四川省統計年鑑、中国統計出版社 8 月)
科学城としては国家級ハイテク産業開発区、科学教育創業パーク、西南科技大学経済技術開発区、
現代農業科技モデルパーク、南郊工業団地などの開発区が設けられ、技術開発、ソフトウェア開発、
留学生創業などの育成に勤めています。
毎年 10 月 16 日は綿陽科学技術デーに定められています。
こうした科学技術力と生産能力に惹かれて多くの金融機関が入ってきています。中国銀行、中国工 商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行の四大国有銀行のほかに、交通銀行、浦東発展銀行、招商銀行、
中国郵貯銀行、中信銀行、興業銀行が軒並み支店を開設しています。地元の綿陽市商業銀行も競争に 加わり、金融面から科学城を支えています。
綿陽市には 3,000 本近くの川があり、豊かな水資源に恵まれています。堆積平野や丘陵地帯は農業 の発展に適しています。耕地面積は 611.15 万ムー(1 ムーは 666 平米)あり、そのうち、水田が 259.57 万ムーで、田畑が 352.08 万ムーあります。二毛作が行われ、四川省の食糧、養豚、野菜の基地となっ ています。
綿陽市は省都の成都から 98 キロ離れており、四川省西北部の鉄道、高速道路、一般道路、水路、
空路を持ち合わせた重要な拠点です。
鉄道は全国各地へ通じ、つい最近までは鉄道が四川省外へ行く唯一の手段で、成都に近くて始発の 列車が少なかったため、出稼ぎに行く農民工で常に溢れていました。現時点では綿陽市を通るのは成 都―宝鶏線しかありませんが、現在施工中の鉄道は成都―綿陽―楽山旅客専用線、成都―蘭州線があ り、今後 5 年間に、綿陽―重慶旅客専用線、綿陽―遂寧―内江―宜賓旅客専用線、綿陽―北川―茂県 線が計画されており、さらに 10 年以内には綿陽―九寨溝旅客専用線が検討されています。このように、
6 本の鉄道による交通ネットワークの構築が計画されています。
震災で綿陽駅が損壊したため、現在、12 億元を投資して未来の発展に適した新しい駅を急ピッチで 建設しています。
綿陽市内の自動車道路は 6,160 キロに達し、市内は 1 時間以内の交通圏を形成しています。成都―
綿陽、綿陽―広元、綿陽―遂寧の 3 本の高速道路が放射状に広がっているほか、綿陽―九寨溝、黄竜 バイパス線などが計画されています。
綿陽の空港は 2001 年に建設されたものの、成都空港に近いことが災いして航空会社が集まらず、
便数も少なかったため、重複投資の典型として、中央テレビが取り上げました。毎日 2、3 便しかない のでは、膨大な空港の運営コストを賄うことができません。その上、乗り入れの空港会社に地元政府 が補助金支出を強いられていますから、赤字が累積していました。震災で大きな注目を集まったこと や、料金を下げて成都の観光客をひきつけ、路線を増やして新しい顧客を開拓するなどの経営努力に より赤字を減らしています。現在、四川省第 2 の空港になっており、北京、上海、広州、新圳、アモ イなどの航路を持っています。
水路はダムなどの活用により、大きな運送力を形成しています。
綿陽で大きな運送市場は各県への連絡バスです。バスターミナルは毎日 20,000 人の利用者があり、
ターミナル面積は 12,000 平米、広場は 4,000 平米、駐車場は 20,000 平米に達しています。