第二章 環境保護事業
第二節 四川省の環境保護産業の特徴
1992 年の全世界の環境保護産業のGDP は2,500 億ドルでしたが、2008 年には14,800 億ドルに達し、
年間の平均成長率は 11.8%となって、今最も発展の可能性を秘めた産業と言えるでしょう。アメリカ、
ドイツ、日本などの先進国は全世界の環境保護産業の主導権を握り、2008 年にはそれらの国々で市場 全体の 70%を占めています。その重点は汚染防止、固体廃棄物処理処置、資源の総合利用、観測計測 機器などの分野における技術開発と設備製造、環境貿易及び金融サービスです。ドイツの著名なコン サルタント会社であるローラン社の研究によると、2030 年にはドイツの環境保護産業の GDP は 1 兆ド ルに達し、自動車産業と機械製造産業を超え、ドイツの最大の産業になると予測しています。
中国の環境保護産業の成立は先進国に比べて 20 年も遅れ、技術、製品、GDP などの面で大きな差が あります。GDP を例に取ると、2008 年の中国の環境保護産業の GDP が 7,900 億元で、全世界の 7.6%
にすぎないのが現状です。しかしその成長は早く、ここ数年来、平均 18%の成長率を記録しています。
一部の技術と製品は世界で先進的なレベルに迫り、または、すでに追いついています。
2.環境保護産業での協力が日中間のハイライトに
中国と日本はともにエネルギー消費大国で、省エネと環境保護の分野での交流と協力は双方の利益 に適合しています。日本から中国への円借款が終了してから、この分野での協力が特にクローズアッ プされています。2004 年からは、日本の経済産業省と中国の国家発展改革委員会との間で循環経済に ついて交流と協力を展開しています。
今では日本の技術が中国の電力、自動車、電機、トランス、鉄鋼、建築などの分野で活用されてい ます。
3.四川省の環境保護産業の現状
四川省の環境保護産業は初歩的な段階ではありますが、徐々に発展の土台を築きつつあります。
2008 年、四川省には環境保護産業の企業数は 800 社を突破し、売り上げが 1,000 万元を超える企業は 150 社に達し、同産業内の全従業員数は 50,000 人で、同産業の GDP が 170 億元になると推測されてい ます。全国の環境保護産業 GDP の 3%占めています。
特に資源総合利用分野では都市汚水 130 万トン/日の処理能力を有し、高速鉄道の騒音防止壁の製造 が中国のトップレベルにあり、自動車排気ガス浄化器が中国環境保護製品の認定を受け、東風自動車 グループ、長安鈴木社、奇瑞自動車など 7 社の 90 車種に装備されています。
そして、科学技術開発能力が高いレベルにあります。特に成都市には多くの大学と研究所が集まり、
化学、軽工業、冶金、原子力、電子、電力、紡績の国営設計事務所(計画経済の名残ですが、設計市 場を独占に近い形で占有しています)には環境保護の技術部門を設けています。四川大学の国家級脱 硫技術開発センターは既に多くの研究成果を発表し、一部は生産に応用されています。
表 2-2-1 四川省各地の汚染物質排出状況その 1
化学酸素需要量 二酸化硫黄
市州
2008 年 同 比 昨 年 累 計 比 2008 年排 同 比 昨 年 累 計 比 四川 749100 -2.84% -4.33% 114.78 -2.62% -11.59%
成都市 138979 -6.79% -12.81% 15.973 -3.32% 2.83%
自貢市 26970 -0.99% -1.99% 3.965 -5.92% -5.11%
攀枝花市 17338 1.20% 10.57% 10.689 -5.76% 4.23%
瀘州市 41227 5.27% 18.37% 5.777 21.10% 127.83%
徳陽市 23677 -7.18% -16.96% 2.371 -2.20% -7.94%
綿陽市 33179 -7.77% -6.63% 5.86 -1.61% -24.71%
広元市 23803 -2.09% -5.06% 3.855 -0.89% 4.02%
遂寧市 23502 0.25% -9.74% 1.013 5.19% 11.45%
内江市 21692 2.07% -5.92% 11.075 -13.53% -29.97%
楽山市 49139 -1.01% -0.80% 8.727 3.54% 1.92%
南充市 45839 -6.68% -1.28% 2.085 2.26% 0.01%
眉山市 60229 -0.48% -8.94% 2.755 -2.95% -1.80%
宜賓市 65860 -0.67% 0.18% 11.593 -10.95% -32.35%
広安市 25388 -2.09% -6.90% 6.241 48.04% -49.84%
逹州市 46386 -4.91% -2.38% 12.982 -12.15% -7.24%
雅安市 12636 2.76% 7.99% 0.695 7.75% 25.60%
巴中市 17801 -2.24% -2.90% 1.422 6.51% -4.52%
資陽市 28971 -1.53% 8.38% 2.794 -1.19% 1.43%
アバ州 8752 -1.96% -1.28% 0.426 -2.73% 5.45%
カンゼ州 8270 -1.06% 13.31% 0.357 10.87% 20.54%
凉山州 29459 -3.22% -7.66% 4.125 -0.75% 1.03%
四川省環境保護局提供
また、四川省では積極的に工場を郊外への移転が進められています。市街区域の工場は経営が苦し く生産設備が古いところが多いことから、市街区域の敷地を売却することにより、郊外でより大きな 工場が建設できるだけでなく、設備の更新投資もできることから一挙に近代化し、競争力が増してい ます。
表 2-2-2 四川省各地の汚染物質排出状況その 2
アンモニア窒素 市州
2008 年排出量 同比昨年増幅 累計比 2005 年増幅
四川 63025 -0.94% -5.16%
成都市 16336 -1.80% -9.41%
自貢市 3038 -0.10% 3.34%
攀枝花市 1269 0.45% -7.11%
瀘州市 3488 2.11% 10.51%
徳陽市 1659 -2.37% 5.96%
綿陽市 2649 -2.55% 0.54%
広元市 2974 -0.64% -14.45%
遂寧市 2771 0.14% -3.33%
内江市 2405 0.21% -1.14%
楽山市 2206 -0.32% -12.14%
南充市 3739 -2.19% 0.43%
眉山市 5539 -0.14% -2.84%
宜賓市 2790 -0.32% 12.73%
広安市 1945 -0.65% -32.10%
逹州市 2681 -1.57% -8.42%
雅安市 687 0.96% -18.66%
巴中市 1665 -0.72% -4.93%
資陽市 2195 -0.42% 2.15%
アバ州 649 -0.66% 0.66%
カンゼ州 872 -1.13% 2.37%
凉山州 1467 -0.88% -4.84%
四川省環境保護局提供
西部大開発の重要な内容としては「退耕還林」(山地に分布する 25 度の斜面の畑の耕作をやめ、
果物や生態林に戻すこと)と「退牧還草」(過度に放牧していた草原については、放牧をやめて、草 原に戻すこと)があり、四川省では長江上流の生態林建設と保護が重要なプロジェクトになっていま す。四川省政府と企業の努力により、主な汚染物質の排出量は年を追って減少しています。
成都は四川盆地の底にあり、地理的な原因から、日照が少なく、曇りの日が多いことから、汚染が ひどいと思われがちですが、実際には、一週間も滞在すれば大気環境が想像よりも悪くないことに気 付くでしょう。昔から、「蜀犬日に吠える」という言葉がありますが、この言葉には二つの意味があ ります。一つが、曇りの日が多いことから、たまに顔を覗かせる太陽に犬が怪しんで吠えることです。
もう一つが、四川省では人々が谷間に住んでおり、太陽は昼間の短い時間しか谷間を照らさないから、
犬が怪しんで吠えることです。憂うつになる人がいても、汚染とは関係ありません。
成都をはじめとする四川省の都市には、農村からの多くの若者が集まっています。彼らは学校を卒 業してから、都市の生活にあこがれて都市で就職をしますが、実は彼らの多くが農村で野良仕事をし たことがなく、恐らく今後も都会に住み続けるでしょう。これらの要因から、人口増加による環境へ
の圧力が増大しています。政府としては、環境関連政策を制定し、関連する産業を育成・発展させ、
都市の持続的発展を確保しなければなりません。
4.既存の問題
急速な経済発展がもたらした環境面における歴史的な「つけ」が幾重にも蓄積し、汚染処理が複雑 さを呈しており、環境保護の情勢は厳しさを増しています。加えて、長い間、法律の整備がされてい なかったことから、環境保護の技術が遅れ、また経済的実力も依然として低い水準にあることから、
環境問題がさらに悪化する可能性もあります。
さらに、環境保護産業の構造は必ずしも合理的ではありません。成都を例に取ると、産業を先導す るような大企業が形成されておらず、413 社の企業のうち 80%が中小企業です。413 社の内訳は、資 源回収企業が 102 社、環境サービス企業が 231 社、環境保護製品生産企業が 80 社です。環境保護製品 は一般的なもので、プラントとしての機能が欠けています。資源回収では金属、紙の回収が多く、農 作物のわらや動物の糞尿を処理する企業が少ないです。環境サービス企業も設計と施工に限り、融資、
システム集積、技術トレーニング、施設運営を含んだ一貫したサービスはまだ提供できません。
中国では、環境保護産業は政府の支援のもとで推し進められますが、四川省では国内のほかの都市 に比べて、資金、人材、サービス面でのサポートが足りません。産学研の連携の強化が求められます。
5.環境保護産業発展の市場分析
2006 年から 2010 年までは中国の経済構造の重要な戦略的調整期であり、同時に生態建設と環境保 護も重要な政策として打ち出されています。中央政府は汚水処理工場の建設のために 3,300 億元を投 資しており、2009 年に環境保護インフラ建設費を増加したことにより、環境保護産業はかつてない大 きな発展のチャンスと市場空間が生まれました。国内の 600 社の石炭発電所が脱硫装置を導入するだ けで 600~1,000 億元規模の需要が生まれ、同様に自動車排気ガスの浄化器でも 120 億元の産業が形成 されており、水汚染防止分野の市場にはさらに大きな産業の形成が期待されています。中国の家電や 電子機器の更新ピークの到来につれて、廃棄物の処理にも大きな市場が現れると予測されています。
社会新農村建設が深化するにしたがって、生態建設、循環経済と低炭素経済が重点分野として浮上す るのは間違いなく、汚水処理、ゴミ処理、土壌と炭鉱の修復、省エネなどの分野も大きな可能性を秘 めています。
四川省は 2008 年 5 月 12 日の汶川大地震により、長江上流の生態建設の任務が重くのしかかってお り、未だ道遠しの状態です。震災復興の計画では環境保護への配慮が充分なされており、当該産業の 振興と事業の大々的な実施が期待されます。
環境が四川省の発展、人民の生存にとって非常に重要です。四川省にとっては環境が生産力であり、
競争力でもあります。
6.四川省の発展理念と目標
四川省では「市場を活用して、科学技術発展をサポートし、企業を主体とする」方針を打ちたて、
市場経済に適応する環境保護産業の市場システムを樹立することにより、環境保護産業を四川省経済 の新しい成長を牽引する産業にする戦略的目標を立てています。
成都市は四川省の環境保護産業発展のフロントランナーで、2012 年には特色ある製品と競争力のあ る企業群を育成し、環境保護産業の GDP を 260 億元にして、年間成長率 45%を目指すという野心的な 計画を発表しています。
大気汚染の防止、水汚染の防止、資源の総合利用、環境サービス、環境保護材料などが発展の中心 です。