1.四川省に日本企業が少なかった理由
中国は「世界の工場」になっていますが、多くの日本企業がまさに中国を工場としてとらえていま す。工場であり、輸出が前提である以上、海から近い方が好条件であったことから、進出先は沿海地 方に集中しています。沿海地方は、日本に近いだけでなく、上海、大連、青島、ハルビン、瀋陽など は日本と歴史的なつながりがあって、親近感があることも要因でしょう。
実は、中国は「世界の工場」であると同時に、現在では巨大な消費市場でもあります。特に金融危 機以降は自動車の販売台数が 1,300 万台を突破して、世界最大の市場に変身しています。欧米企業が
真っ先に巨大市場として中国をとらえ、自動車や携帯電話などの分野で大きな成功を収めています。
特に携帯電話では、日本企業は撤退を余議なくされました。最近、中国の携帯市場が世界一の規模 になったため、日系企業が 3G 技術を通じて中国市場での巻き返しを計画する動きが出ていますが、市 場にはまだ現れていません。
市場としての認識が薄いだけに、メーカーの進出のみが目立ち、サービス企業は出遅れています。
イトーヨーカドーは大きな成功を収めているものの、フランスのカルフールや台湾の好又多やマレー シアのパークソンに比べると、品質は良いものの、量的にははるかに及びません。
2.欧米の企業が日本企業より多い理由
成都には、有名なインテルをはじめ、エアロテック社(米)、AIG(米)、3M(米)、富士ゼロック ス(米)、モトローラ(米)、フィリップス(オランダ)、BASF(独)、シ―メンズ(独)、ラファン キー(仏)、アルカット(仏)、アルストン(仏)、ミチェリンタイヤ(仏)、エリクソン(スウェ ーデン)、ボルボ(スウェーデン)、ノキア(フィンランド)、ABB(スイス)などたくさんの欧米企 業が進出しています。
その理由としては、四川省の軍需工場で培われた産業基盤と技術者の存在や、市場を重要視して製 品の現地販売を目的としていることが挙げられます。中国から遠く離れているため、従業員も現地採 用が原則ですから、日本企業のように日本へ持ち帰る際の輸送コストや往来時間などを考える必要が あまりありません。むしろ、四川省は人的コストも土地も安く、政策的にも多くのメリットがある上、
西部に広がる広大な市場が魅力でしょう。また、チベット高原の東側斜面に位置し、シャングリラや 九寨溝のある四川省は、オリエンタルな神秘さに溢れ、非常に中国らしいと映ったかもしれません。
3.今、なぜ四川省なのか
改革開放以来、中国政府は沿海地方を優先的に発展させる政策を取ってきたため、四川省と沿海地 域との間に大きな経済格差があることは否めません。しかしながら、四川省はその豊かな伝統文化、
恵まれた自然環境、教育を受けた人材、独自の産業基盤を頼りに自力更生型の発展を遂げてきました。
西昌衛星打ち上げ基地を始め、宇宙開発産業群が確立し、航空産業では戦闘機を筆頭に、エンジンの 開発、ボーイングとエアバスとの多くの協力プロジェクトが成都で行われています。IT 産業ではソフ ト開発、チップ製造、アウトソーシング、電子機器の製造が特に盛んです。三峡ダムの発電タービン や原子力タービンは四川省で作られ、豊かな資源とエネルギーを後ろ盾に、新素材、鉄鋼、化学工業 も飛躍的に発展しています。
西部大開発のおかげで以前にネックになっていた交通インフラも改善されました。また、四川省に は 11 の空港があり、30 余りの国際線と 200 の国内線が開通し、2008 年には延べ 1,724 万人の利用者
がありました。高速道路が縦横に張り巡らされ、重慶、西安、貴陽などを含む西南部の市場の一体化 が着実に進んでいます。高速鉄道は中国の花形産業ですが、成都-重慶間高速鉄道は 2010 年 3 月に着 工され、全長 309 キロ、最高時速 350 キロ、総投資額 390 億元で、2014 年に開通予定となっています。
また、昆明、西安、蘭州、貴州、ラサとの連結も計画されています。
8,800 万人の人口や、社会商品小売額が 5,758.7 億元に上り、なおも年 20%増加し続ける状況など、
西部全体に強い浸透力と放射力を持つ巨大な市場は四川省ならでは魅力です。
インターネットが発達している今、四川省は豊かな人材を駆使し、インターネットで納品できる BPO 事業の発展に力を入れています。
4.他省との比較
成都平野を中心に農業が発達し、気候が温暖で、生活しやすい環境に恵まれている四川省は、省内 だけでなく中国西南部や中国全土の人をひきつける力があります。それは、成都が大都会に発展した 大きな理由です。人が集まれば、大きな市場が形成されます。それは成都が全国一の商業激戦区にな った所以です。
四川省は中国の中央に位置し、交通の発達によって中国各地と結ばれています。沿海地方は地価、
人件費が高騰してきているため、投資効率という視点から見れば、四川省は魅力があります。
産業基盤が形成されていますから、工業製品のニーズが高く、市場として理想的です。原料調達と エネルギー供給が保障されます。資源依存の製造業であれば、コストダウンにも効果的です。
沿海地方では人材の奪い合いが起こっていますが、四川省では会社に忠誠的で優秀な人材を安定的 に確保しやすい、というのが成都の外資系企業の共通の感想です。大学も多く、特に日本科では毎年 1,000 人以上もの卒業生を輩出します。
四川省は中国においても発展途上省であり、日本の企業が日本国内、または沿海地域でのかつての 成功を再現するのに最も適しているはずです。シナリオ通りの目的を実現するのに理想的な地域であ るといえます。
四川省は、沿海地域に比べ、土地コスト、人件費、資源の確保、エネルギーの供給、拡大を続ける 内需の市場、外注協力メーカーの充実などの面でメリットがあります。なかでも、ほかの中西部の省 と比較して、整備された産業基盤、十分に確保可能な技術者と熟練労働者の存在、桁違いの市場規模 が魅力でしょう。
5.四川省の未来展望
四川省は、インフラ整備、資源の有効利用、宇宙航空開発、新素材開発、生態環境建設、都市と農 村との統合、成都重慶経済エリア形成など、国家プロジェクトである西部大開発においては重点的な
役割を果たしています。
10 年前に始まった西部大開発は三つの段階に分けられます。2001 年から 2010 年までは基礎を固め る第一段階で、重点は産業構造の調整、インフラ整備、生態環境の建設、科学技術と教育の強化、市 場メカニズムの確立、投資環境の改善などです。2010 年から 2030 年までは加速的発展の第二段階で すが、第一段階の成果を踏まえて独自産業を育成し、経済の産業化、市場化、生態化を実施して、経 済成長の躍進を実現します。
2009 年 1 月 27 日に四川省第十一回人民代表大会第三次会議が開かれ、2009 年度に GDP14.5%増の 14,151.3 億元に、2010 年度の目標が 10%増であることが発表されました。
西部大開発の第一段階の締めくくりであると同時に第二段階の始まりでもある 2010 年には、四川省 はインフラ建設を中心とした多くのプロジェクトを展開しています。
12 本の高速道路建設が着工され、その総延長は 3,020 キロに達します。
鉄道では成都-都江堰間の旅客専用路線が 5 月 1 日に開通予定で、成都-綿陽-楽山間および成都
-蒲江間の旅客専用路線の建設が始まります。地下鉄と旅客専用路線が乗り入れる新しい成都駅の建 設も始まります。
成都双流空港の第二滑走路が完成し、運用が始まります。
濾州や宜賓の港湾改造工事も完了し、水運能力の向上が期待されます。
瀑布溝発電所が発電を開始し、渓洛渡、向家埧などの中型水力発電所建設も順調に進み、上海や宝 鶏への送電工事も急ピッチで行われています。
家電、携帯、コンピュータ、自動車、バイクなどの農民購入補助を引き続き実施し、内需拡大を促 進します。
民営企業とハイテク企業の加速的発展にも尽力します。
これらインフラ建設と内需拡大措置によって、日系企業がもっとも心配している奥地の物流問題が 著しく改善され、中国西部の中心としての四川省の地位も一層強固なものとなるでしょう。
2031 年から 2050 年までは、全面的に近代化を実現する第三段階です。既に発展を遂げた一部地域 がさらに実力を増し、国内外の近代化した経済体系に溶け込んで発展し続けるとともに、山地地方と 比較的発展の遅い農業・牧蓄業地域の発展が促進され、西部住民の生産生活レベルが総合的に高まり、
格差が全面的に縮まることが期待されます。
日本企業は、四川省の発展を長期的視野に入れ、今のうちに何らかのかかわりを持つことが得策と 思われます。
6.成都重慶経済区
四川省の経済発展の未来を展望するのには成都重慶経済区については触れなければなりません。今 は重慶市と四川省と成都市では積極的に推進していますが、まだ国家レベルのプロジェクトには指定