• 検索結果がありません。

第 3 章 生徒による授業評価の回答基準についてのケース・スタディ 101

3.2 調査概要

3.2.1 調査対象について

調査の対象校,対象者は第2章と同一である.対象校は,S市内の私立高等学校普通 科(女子)である.学校設定科目である「数学演習」を選択した9名の生徒のうち,順序 尺度による評価項目に対して2つ以上の選択肢について回答した7名を対象とした.内訳 は,成績上位(1組)クラス所属3名・中位(2組)クラス所属3名・下位(3組)クラス所属1名 である.

なお,対象校における授業アンケートの評価(表2.1)は,「先生の授業は分かりやすい ですか.」という評価項目に対し,次の4つの選択肢から1つを選んで回答する形式で行 われている.

「1.とても分かりにくい」

「2.分かりにくい」

「3.分かりやすい」

「4.非常にわかりやすい」

105

生徒による授業評価を導入した当初は,「どちらでもない」を加えた5つの選択肢が設 定されていた.しかし,尺度の中間項目に回答が集中しやすいという中心化傾向の問題 や,どの様に受け止めて良いのかが分かり難いとの意見が多く,削除された経緯がある.

本研究では,インタビュー調査の対象となった生徒の授業観,進路希望,成績などが 潜在的基準に反映されると考える.そのため,事前にそれぞれの生徒の授業観,進路希 望,成績などの背景を把握し整理しておく.

(1) 対象者A・3組

私立大学への進学希望.数学が好きであり,様々な教科を満遍なく学びたいと考え選 択した.大学入試で数学は必要なかった.授業は,「予想以上に難しく,黒板を写すこ とで精一杯だった.」と振り返っていた.「まとめの説明を聞いても理解でき無いことが 多く,解くことができれば楽しかった.」と述べていた.緊張感よりもみんなで発言で きる楽しさを授業に望んでいた.生徒による授業評価の必要性には言及しなかった.関 連した内容では,「担当者への好き嫌いで評価している生徒もいるかもしれない.」との 発言があった.なお,この生徒は希望する私立大学に合格し進学している.

(2) 対象者D・2組

私立大学への進学希望.大学入試には数学が必要であると思っていた.しかし,途中 で入試科目には無いことが分かった.「数学は嫌いではないのだが,授業の内容は理解 できないことが多かった.」と振り返っていた.難易度のレベルやペースが自分達に合 い,質問などがいつでもできることを良い授業の条件としていた.生徒による授業評価 に必要性を感じている.実際に評価を行なう際は,「判断に迷うことが多かった.」と振 り返っていた.なお,この生徒は希望する私立大学に合格し進学している.

(3) 対象者E・2組

私立大学への進学希望.数学は,推薦入試で不合格となり,大学入試センター試験を 受験する場合を考えて選択した.推薦入試で希望する私立大学に合格したため入試科目 としての数学は不要となった.「数学はとても苦手.理解できないと寝てしまうことが 多かった.」と振り返っていた.板書中心よりプリント学習の授業,皆で話し合いなが ら学べる授業を望んでいた.生徒による授業評価には,必要性を感じている.「進級す

106

るにつれて真剣に評価をするようになった.」と振り返っていた.その理由として,教 員と生徒の信頼性の深まりを挙げていた.なお,この生徒は希望する私立大学に合格し 進学している.

(4) 対象者F・2組

公立大学ヘの進学希望.理系であり入試で数学が必要であったため選択した.数学を 選択したことで,第一志望を諦めたくないという気持ちを維持でき,選択して良かった と感じていた.授業には楽しさよりも緊張感や集中できる雰囲気を求めていた.自分で 問題を解くことができ,いつでも質問できる授業を良い授業と位置付けていた.「理解 度を確認しながら授業を展開して欲しい.」と要望していた.生徒による授業評価の必 要性には言及しなかった.しかし,生徒による授業評価に設けられている自由記述欄に ついて,「無記名が良いが,単に悪口だけの生徒もいるかもしれないので,記名と無記 名のどちらが良いのか判断できない.」と述べていた.なお,この生徒は希望する私立 大学に合格し進学している.

(5) 対象者G・1組

国立大学への進学希望.理系に進むため,受験教科として数学は必要である.中学校 までは数学が好きだった.しかし,高校では解くことのできない問題が多くなり,好き な教科とは言えなくなった.授業に対して,「分かり易くするための工夫があり,かつ,

レベルは高くなくてもよいがセンター試験対策なども行って欲しい.」と要望していた.

授業に臨む姿勢として,自分のペースで問題を解くことを大切にしている.「生徒が必 ずしも真剣に評価しているとは限らない.」という理由から生徒による授業評価に対し ては,必要性を感じていなかった.なお,この生徒は希望する国立大学に合格し進学し ている.

107 (6) 対象者H・1組

公立大学への進学希望.受験教科として数学が必要なために選択した.授業には満足 している.センター試験で高得点を取るための授業展開を求めていた.演習問題などの 途中式などは省略してでも,難度の高いレベルを授業に期待していた.授業は,自分で 問題を先に解き,後から解説を受け確認するスタイルで臨んでいた.生徒による授業評 価の必要性には言及しなかった.しかし,評価尺度については「『評価できない』,『良 くも悪くもない』との印象を反映させるため,評価尺度の中に『どちらでもない』を加 えて欲しい.」との要望していた.なお,この生徒は希望する公立大学に合格し進学し ている.

(7) 対象者I・1組

公立大学への進学希望.数学が入試科目であるため「数学演習」を選択した.数学は 小学生の頃に分からなくなり,それ以来,好きではない.「数学演習」は,「既習内容で ある数学Ⅰ,数学A,数学Ⅱ,数学Bの発展的な内容を扱うのであるから,難度を高く 設定してほしい.」と希望していた.分からない問題は,「自分で努力し理解するように しなければ身に付かない.」と考えていた.「授業に参加する生徒に理解度の差があるた め,習熟度別にクラスを編成した方が良い.」と感じていた.なお,この生徒は希望す る公立大学に合格し進学している.