第 1 章 序論
1.7 方法論の検討
1.7.1 インタビュー調査についての検討
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何を思い浮かべますか.」との質問に変えている.また,教師へのリサーチ・クエスチ ョンとして「『授業秩序』を維持している状態は,どの様な状態ですか.」といった質問 表現によって行っている.こうしたインタビューを通して,授業評価の振り返りから,
対象者自身の中にある視点や基準を引き出すことを試みている.
インタビューを通し,面接者としての著者自身が,自分の経験や内面を客観的に見つ め直し,予期していなかった新たな考察を得ることも期待できる.インタビューを行う 中で,評価項目とは結び付かない内容が評価の視点である可能性も考えられる.また,
自分自身の経験が評価項目に対する固定観念として形成されていることに気が付くこ とも考えられる.
インタビュー調査においては,面接対象者の意識や動機などを記述すための仮説生成 的な質問にも応用できる可能性がある.「評価項目の内容が違う表現で書かれていた場 合,視点が変化すると考えますか.」の様な質問が,その可能性に対応している.
また,一斉授業の形式を個別授業の形式に切り替える様な,授業の展開を変化させた 場合にどの様なことを感じるのかといったデータの収集も可能となる.
この様に,面接者と面接対象者の直接の対面により,双方向のコミュニケーションが 生まれることが,インタビュー調査の特徴として挙げられる.この双方向のコミュニケ ーションによって,対象者の意識,経験といった質問紙調査では得られない意識や経験 についての深いデータが得られる.なお,岩永(1992)は,この深いデータが,面接対象 者が少数であっても得られることを指摘している.
鈴木(2002)は,「インタビュー調査は,データを分析し,一般化したり,個別に解釈 して物事の本質を明らかにすることで,人間の心理や行動についての現実を把握するこ とを目指している.」と述べている.また,それだけではなく,「個人の主観というミク ロな世界を通して,複雑な人間の心理や社会事象についてのより普遍的な仮説や理論を 生成し検証することをも目的としている.」とも指摘している.生徒や教師が持つ授業 の視点を明らかにし,どの様に自己評価しているのかを扱う本研究は,これらの指摘に 沿ったものであると考え,インタビュー調査を用いている.
一方,インタビュー調査には,多数の対象者からのデータが得難い,面接者の面接方 法によって得られるデータが変わる可能性があるといった問題点が存在している.渡 辺・山内(1998)は,こうした問題点を克服するために,質問項目についての検討,予備 調査などが必要であると指摘している.また,面接者自身に対して十分な経験が求めら
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なお,本研究において,質問項目については,複数による検討を行い,予備調査も実 施している.面接者は著者であり,経験として1993年から2年間,面接調査法の訓練 ならびに実地調査を行っている.その後,勤務および研究活動などを通し,18 年間に 渡る面接調査の経験を有している.
1.7.1.2 集団面接法
生徒を対象に行ったインタビュー調査では,面接者1人に対し対象者3人の集団面接 法を採用している.鈴木(2002)は,集団面接法の利点を,ディスカッションを通して面 接対象者間に相互作用が生まれ,それがディスカッションを活性化する刺激剤となるこ と,および,面接者が発言の様子を直接観察できることであるとしている.
一方,鈴木(2002)は次の3点を注意点として挙げている.
(1) 一人あるいは少数の面接対象者がグループを支配する状況を避けること.
(2) ディスカッションへの参加を渋る面接対象者が話に加わるように促すこと.
(3) 質問が十分にカバーできるように面接対象者全員に回答してもらうこと.
本研究において,面接者たる著者は,面接対象者たる生徒が受講する授業の担当者で もある.この環境に起因するバイアスを可能な限り最小限にする必要がある.そのため,
1対1での面接よりも,自分と同じ立場の面接対象者が複数いることにより,圧迫感が 軽減されると考え,集団面接法を採用している.また,上記の3点に注意し,インタビ ューを行っている.
1.7.1.3 個人面接法
教師が授業においてどの様な視点を重要視しているのかについては,面接者1人対面 接対象者1人の個人面接法を採用している.鈴木(2002)は,個人面接法の利点を,面接 対象者に警戒心を持たせないため,本音を聞き出し易いことであるとしている.また,
対象者の反応や雰囲気に適合した形で比較的自由に展開することができる(山本,林
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生徒を対象としたインタビュー調査と比較すると,教師を対象としたインタビュー調 査はバイアスが少なく,本音を聞き出しやすいことが考えられる.面接者たる著者が,
面接対象者たる生徒が受講する授業の担当者でもあることに対し,著者と教師は互いに 評価する立場には無く,同僚としての関係であるためである.なお,この同僚としての 関係に,バイアスとなる様な否定的な要因は含まれていないことを申し添える.
また,教師へのインタビューから,指導方法や生徒への接し方など,こちらの想定し ていなかった回答を得られることも考えられ,より多くのデータが得られることが期待 できる.
以上のことから,教師を対象としたインタビュー調査では,個人面接法を採用してい る.
1.7.1.4 半構造的,深層的,自由回答的インタビュー
半構造化インタビューは,構造化インタビューと非構造化インタビューの間に位置し,
両方の技法を活用する方法である.何を質問すれば良いかはある程度わかっているので あるが,どの様な回答が戻ってくるか不明な場合に使用するのに適している(鈴木2002).
質問は普通細かく決められているが,面接者は得られた回答を踏まえ,より自由に探 り21を入れるように尋ねることができる(ティム2005).そのため,自由回答による質的 データを求めることにも適している(鈴木2002).
本研究では,生徒による授業評価において,生徒や教師が,どの様な視点で評価項目 や評価尺度を捉えているのかを明らかにすることを目指している.インタビューの内容 はそれらに沿った質問となり,回答に対し「どの様に感じているか.」といった探索的 質問などによりデータを獲ることが必要になる.そのため,半構造化,自由回答的イン タビューが適していると考えている.
面接対象者の内面の深くにある動機や欲求などを探る必要があるため,深層的インタ ビューに分類される.
21 面接対象者からの回答を促進するために用いる質問.
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