II. 夏期行動
Ⅲ. 昭和基地越冬経過
1.2 各月の概要
1.2.3 観測・設営作業
【2 月】基本観測、研究観測および公開利用研究を順調に実施した。モニタリング観測の一環として、VLBI 観 測を 4~5 日と 10~12 日に他部門の支援を得て予定通り実施した。中旬以降、夜間が暗くなったことに伴い、オ ーロラ光学観測のための灯火管制を 26 日から行なっている。22 日から 24 日まで続いた A 級ブリザードによって、
光学観測棟の天窓の離脱、大型大気レーダー観測用アンテナの破損が生じたが、いずれも予備品を用いて補修し たため、観測に大きな影響を与えることはなかった。設営部門では「しらせ」支援員が帰還した翌日 8 日から夏
期隊員宿舎の閉鎖作業を実施し、19 日までに終了した。また、発電機の電源切り替え、装輪車の整備、燃料移送、
建物の改修・補修、「しらせ」との定時交信、食材管理、廃棄物の集積・処理などの作業を実施した。月末に続い たブリザードでは、施設や機材の点検に多くの時間と労力を費やした。2 日、4 日および 6 日には教員南極派遣プ ログラムによる南極授業を実施した。また、その経験を生かして、18 日に紋別市と行った今次初の南極教室では 同様のスタッフ体制で対応することができた。
【3 月】越冬開始後 2 ヶ月が経過して観測の手順や作業も慣熟し、基本観測、研究観測および公開利用研究と もに概ね順調に実施している。重点研究観測では、16 日から 24 日には、専用の小型発電機を運用して、越冬交 代後初めての 55 群での大型大気レーダーのキャンペーン観測を実施した。設営部門では、発電機の電源切り替え、
装輪車・装軌車の整備、燃料移送、建物・設備の改修・補修、基地通信の運用と設備点検、大型アンテナおよび LAN・インテルサット衛星の運用と設備点検、制御電力見える化の調整、食材・調理器具の管理、汚水と廃棄物の 集積・処理、庶務・情報発信などの通常業務を順調に実施したほか、大型大気レーダー専用の小型発電機の温度 監視、排ガスボイラーの運転・調整、健康診断、野外安全講習など、今月新たに開始・実施する業務もあった。
アウトリーチ活動としては、7 日に稚内市との電話中継、21 日に九州大学とのビデオ通話システムを用いた中継 で、南極教室を実施した。なお、先月に続き、ブリザードや降雪に伴い、施設や機材点検や除雪作業に多くの時 間と労力を費やした。今後の除雪作業の軽減を図るために、倉庫棟、130kl 水槽、衛星受信棟、清浄大気観測室 などでのスノーコントロールの対策・試験を実施している。また、安全を最優先としながら、設営系、観測系の 隊員を問わず多くの隊員にマンツーマンの重機講習を行い、今後、一部の隊員に除雪作業の負荷が集中しないよ うに準備を進めている。
【4 月】基本観測、研究観測ともに順調に実施した。5 日から約 1 ヶ月間にわたり、専用の小型発電機を運用し て、重点研究観測部門の大型大気レーダー55 群キャンペーン観測を開始している。地圏モニタリング部門と多目 的アンテナ部門は、30 日から 24 時間の VLBI 観測を実施した。また、宙空圏モニタリング部門では、25 日に、完 成した西オングルルートを使用して、西オングル・テレメトリー小屋の機材保守点検を日帰りで実施した。公開 利用研究「南極における紫外線の生物組織に及ぼす影響」の紫外線曝露サンプルが、29 日のブリザード後点検に、
一部破損・飛散していることが確認されたため、針金等でサンプルの固定部分を補強した。設営部門では、発電 機の電源切り替え、大型大気レーダー専用の小型発電機の温度監視、装輪車・装軌車の整備、燃料移送、建物・
設備の改修・補修、基地通信の運用と設備点検、大型アンテナおよび LAN・インテルサット衛星通信の運用と設 備点検、制御電力見える化の調整、食材・調理器具の管理、汚水と廃棄物の集積・処理、健康診断、野外安全講 習、庶務・情報発信などの通常業務を実施した。なお、1 日の電源切り替え時に、瞬間的な周波数の低下が生じ た。この原因は、発電機の燃料レバーの固着であることがわかり、今後、同様の事態が生じない対策を施したう えで、7 日に電源切り替えを無事終了した。これによる観測・施設への大きな影響は認められなかった。また、
ブリザード後に衛星受信等周辺の除雪作業に用いてきた重機の運用について、観測に与える影響をこれまで十分 に調査・確認していなかったため、地磁気観測、ミリ波観測、大気観測の各部門担当者から観測の状況と要望を 取りまとめ、今後はデータに影響が生じない形で運用することを確認した。
【5 月】12 日に発生した全停電事故によって、いくつかの観測データの欠測が生じ、気水圏モニタリング部門 の一部の機材に不具合が生じたが、これらを除けば、基本観測、研究観測ともに概ね順調に実施した。4 月 5 日 から開始していた重点研究観測部門の大型大気レーダー55 群キャンペーン観測は、16 日に無事終了した。海氷上 のルート工作の進展により、地圏モニタリング部門では、西の浦、北の浦、向岩ルート上において海氷 GPS 観測 装置の設置を行った。また、30 日に日本の小笠原諸島沖で発生した深発地震による自由振動などの観測を実施し た。宙空圏モニタリング部門では、宿泊を伴う 2 回の西オングル・テレメトリー小屋旅行で、機材保守点検と故 障機材の修理を行った。設営部門では、発電機の電源切り替え、大型大気レーダー専用小型発電機の温度監視、
装輪車・装軌車の整備、燃料移送、建物・設備の改修・補修、基地通信の運用、大型アンテナおよび LAN・イン テルサット衛星通信の運用と設備点検、制御電力見える化の調整、食材・調理器具の管理、汚水と廃棄物の集積・
処理、レスキュー訓練講習、庶務・情報発信などの通常業務を実施した。この他、機械部門による橇の引き出し、
新汚水処理棟立ち上げのためのケーブル配線作業、野外観測支援部門による、とっつき岬、岩島、向岩、オング ルガルテンまでのルート工作等の作業も進展した。通信部門では、アンテナ島における破損したアンテナケーブ ルの補修工事を実施した。
【6 月】基本観測、重点研究観測、研究観測ともに概ね順調に実施した。宙空圏モニタリング部門では、西オ
ングル・テレメトリー小屋のバッテリー切れのため、6 日に日帰り旅行で充電を行った。設営部門では、発電機 の電源切り替え、大型大気レーダー専用小型発電機の温度監視、装輪車・装軌車の整備、燃料移送、建物・設備 の改修・補修、基地通信の運用、大型アンテナおよび LAN・インテルサット衛星通信の運用と設備点検、制御電 力見える化の調整、食材・調理器具の管理、汚水と廃棄物の集積・処理、レスキュー訓練講習、健康診断、庶務・
情報発信などの通常業務を実施した。この他、建築部門による娯楽室の補修、先月に引き続く、機械部門による 橇の引き出し、新汚水処理棟立ち上げのための作業を継続した。
【7 月】基本観測、重点研究観測、研究観測ともに概ね順調に実施した。小型専用発電機を用いた重点研究観 測部門の大型大気レーダー55 群観測は、14 日〜17 日に実施する予定であったが、悪天のため 16 日で 12 群観測 に切替えた。また、ブリザードによって雪に埋没した大型大気レーダーのアンテナ復旧作業にも努めた。宙空圏 モニタリング部門では、西オングル・テレメトリー小屋のバッテリー充電のため、15 日の日帰り旅行および 21 日から 1 泊 2 日の旅行を行った。11 日には、国立極地研究所で開催された南極医学医療ワークショップで、テレ ビ会議システムを用いて、医学研究「心拍変動を用いた自律神経系の評価」について成果を発表した。設営部門 では、通常業務を順調に進めたほか、野外観測や除雪作業に関係する、雪上車の整備、2 トン橇の補修、突発的 な重機の不具合への修理対応が精力的に行われた。また、野外観測支援と機械雪上車部門を中心とする S16 への 旅行を、24 日から 2 泊 3 日で実施し、越冬交代後初めて S16 に到達した。この旅行で、S16 に残置してある、ほ とんどの雪上車は大きく雪に埋まっていないことを確認し、この旅行の帰路に S16 からとっつき岬まで SM100 型 雪上車を 1 台移送した。全般に、隊員数が少ない中、基地施設の維持に加えて作業が増加してきたため、休日作 業や平日の残業を行う隊員も多くなっていたが、観測・設営の部門の枠を超えた総力体制で日々対応した。
【8 月】基本観測、重点研究観測、研究観測ともに概ね順調に実施した。特記する事項としては、小型専用発 電機を用いた重点研究観測部門の大型大気レーダー55 群観測が、26 日〜28 日に実施された。また、先月に引き 続き、ブリザードによって雪に埋没した大型大気レーダーのアンテナの保守・復旧作業が進められた。気象定常 観測では、オゾンホールが形成される時期に入り、オゾンゾンデ観測を 6 回実施した。宙空圏モニタリング部門 では、57 次夏作業のための現地調査を行うため、31 日に西オングル・テレメトリー小屋への日帰り旅行を実施し た。気水圏変動モニタリングでは、6 日にエアロゾルゾンデ観測、7 日から 9 日にとっつき岬から S17 までの雪尺 測定と積雪サンプリングを行った。なお、28 日から 29 日にかけて発生した A 級ブリザードによって、気水圏変 動のモニタリング観測に使用している観測棟大気採取タワーが倒壊したが、翌日 30 日には復旧し、通常の観測を 再開している。地殻圏変動のモニタリング観測では、30 日に向岩の露岩 GPS 観測装置の回収を行った。設営部門 では、発電機の電源切替、大型大気レーダー専用小型発電機の温度監視、装輪車・装軌車の整備、燃料移送、建 物・施設の改修・補修、基地通信の運用、大型アンテナおよび LAN・インテルサット衛星通信の運用と設備点検、
制御電力見える化の調整、調理、食材・調理器具の管理、汚水と廃棄物の集積・処理、基地と雪上車の通信設備 の更新・保守点検、庶務・情報発信など各部門とも通常業務を概ね順調に実施した。機械部門では、6 日に 20kw 風力発電が故障したため停止した。野外観測支援部門では、とっつき岬ルートの海氷クラックの迂回ルート検討 のほか、S16 までの大陸上ルートの整備、ラングホブデ方面とルンパ等方面の海氷上ルート工作を展開した。7 日から 10 日にかけては S16 旅行を行い、機械部門を中心として多くの橇と雪上車の掘り出しを行うとともに、
SM100 型大型雪上車 2 台をとっつき岬に移送した。その後、24 日から 28 日に、とっつき岬に移送した 4 台の SM100 型大型雪上車の整備作業をほぼ完了した。建築土木部門では、先月から含めて合計 13 台の 2 トン橇の修理を完了 し、57 次隊夏期の内陸観測への準備を整えた。
【9 月】基本観測、重点研究観測、研究観測ともに概ね順調に実施した。重点研究観測部門の大型大気レーダ ー観測は、最後の全群による全観測機能調整を 16 日〜18 日に終え、10 月からのフルシステム連続 MST 観測に向 けて 28 日から小型専用発電機の運用を開始した。同じく重点研究観測のペンギンルッカリー遺物から見た氷床変 動と環境変動の復元に関する野外調査を 26 日からラングホブデ周辺で開始した。気象定常観測では、S17 の気象 ロボットの整備とバッテリー交換を行った。地殻圏変動のモニタリング観測では、10 日に、S18, S19, S20 で氷 床流動調査のための GPS 装置を設置した。また、15 日~18 日、ラングホブデの絶対重力点とやつで沢重力測定点 で相対重力測定を実施し、17 日には、ラングホブデ雪鳥沢無人 GPS 観測装置の保守を行った。25 日に弁天島の露 岩 GPS 観測装置の設置を行った。設営部門では、発電機の電源切替、大型大気レーダー専用小型発電機の温度監 視、装輪車・装軌車の整備、燃料移送、建物・施設・橇・カブースの改修・補修、基地通信の運用、大型アンテ ナおよび LAN・インテルサット衛星通信の運用と設備点検、制御電力見える化機器の保守・点検、調理、食材・