II. 夏期行動
2. 夏期観測
2.3 モニタリング観測
2.3.2 地殻圏変動のモニタリング
2.3.2.1 露岩 GPS 観測(AMG09-56-01) 大山 亮
【計画概要・目的】
リュツォ・ホルム湾沿岸露岩域およびリーセルラルセン山地において雪氷、海洋圏変動に伴う地殻変動を監視 する。露岩域に埋め込まれたボルトにGPSアンテナを設置し、GPS受信機で24時間程度連続したデータを取得する。
また、無人観測システムが稼働しているサイトにおいてはシステムの保守、データ回収を行う。
【実施経過】
以下のリュツォ・ホルム湾沿岸露岩域のGPS観測点において、露岩に埋め込まれたボルト点にGPSアンテナを設 置し、2周波精密GPS受信装置を用いて24時間以上の連続データを取得した。
<24時間観測点および期間(使用GPS受信機)>
1)とっつき岬: 2015年1月6日~1月13日(GNSS社製GPS受信機:GEM-1)
2)スカーレン大池: 2015年1月21日~1月22日(GNSS社製GPS受信機:GEM-1)
アムンゼン湾リーセルラルセン山地においてもボルト点におけるGPS観測を実施する予定であったが、「しら せ」側の航海計画変更により中止となった。以下の観測点においては無人観測システムが設置されているため、
このシステムの保守およびデータ回収を実施した。
<無人観測点および期間(使用GPS受信機)>
1)ラングホブデ雪鳥沢: 2014年12月27日(GNSS社製GPS受信機:GEM-1)
2)パッダ: 2015年1月14日(GNSS社製GPS受信機:GEM-1)
3)スカルブスネスきざはし浜: 2015年1月25日(GNSS社製GPS受信機:GEM-1)
4)ルンドボークスヘッダ: 2015年1月30日(JAVAD社製GPS受信機※) ※今回の整備でGPS受信機をJAVAD社製からGNSS社製に交換した。
【問題点・課題】
ルンドボークスヘッダの無人観測システムを換装するために新しいシステムを持ち込んだが、受信機への電力 供給に不具合があり正常に作動しなかった。不具合は観測制御装置または受信機までのケーブル部分であると推 測できたが、現場で対応ができないため、新システムへの換装は断念した。次回の整備時に再度、新システムへ の換装を試みる。また今回、現地に残置してあるキャパシタ電池を持ち帰る予定であったが、移動が小型ヘリ(AS 機)であったため持ち帰りができず、そのまま残置した。パッダの無人観測システムは7月の極夜期間に観測制 御装置への電源供給が途絶えたことにより観測が停止していた。
2.3.2.2 沿岸露岩域における広帯域地震計によるモニタリング観測(AMG10-56-01) 大山 亮
【計画概要・目的】
リュツォ・ホルム湾周辺の沿岸露岩域や大陸氷床上に、広帯域地震計の無人観測点を設置し、遠地地震や局
所地震・氷震の走時・波形データを記録する。昭和基地データと合わせた震源決定や発震機構の推定、並びに 南極プレート周辺の地殻~マントル構造や、グローバルな地球深部構造の研究に利用する。さらに氷床・海氷・
海洋の消長に伴う固体地球の振動特性、温暖化モニタリングにも貢献する。観測データは、グローバル地域的 群列計画(GARNET)、南極科学委員会(SCAR)の関連プログラム(CERCE)、IPY での国際共同計画(POLENET, GAMSEIS)
等へも提供される。
【実施経過】
以下の観測点で連続観測している広帯域地震計の保守整備を実施した。作業内容としては、観測システムの 状態確認・補修作業、バッテリー(シール型鉛蓄電池、太陽電池)の状態確認・補修作業、データ記録メディ アの交換である。加えて今回はロガー(LS-8800)のファームウェアをアップデートした。
<各観測点での作業実施日>
1) ラングホブデ雪鳥沢:2014 年 12 月 28 日 2) S17:2015 年 1 月 8 日
3) スカーレン大池:2015 年 1 月 21 日 4) ルンドボークスヘッダ:2015 年 1 月 30 日
【問題点・課題】
大陸氷床上(S17)観測サイトは、昨年 55 次の夏季期間に訪問できなかったことから 2 年ぶりの保守作業で あった。システムは計測を続けており、ロガーには 2 年間分のデータが蓄積されていた。しかし、回収したデ ータの中には壊れて読みだすことができないファイルが存在した。これに関しては使用していた SD カードと同 じ品番の製品が低温下で書込み不良となる事例が報告されている。また、保温箱は上蓋の高さまで雪に埋もれ ており、ソーラーパネルは半分近くが埋もれていた。スコップやシノ棒を使い雪氷を砕いてパネルを掘り出し たが、毎年同様の作業が必要になるものと思われる。更に保温箱内には大量に氷が張っており、この氷は上部 のスライドロック部分から侵入した融雪水が内部で凍ったものと推測する。氷はできる限り除去したが、保温 箱の底の方の氷は取り除けていない。対策として上蓋スライドロック部分にはアルミテープを張りつけた。
2.3.2.3 船上地圏地球物理観測(AMG11-56-01) 大山 亮
【計画概要・目的】
「しらせ」航路上において、船上固体地球物理観測(海上重力・地磁気三成分測定)および地層探査装置に よる海底地質調査を実施する。また、水晶振動式圧力計(以下、海底圧力計)を深さ約 4,500m の海底に設置し、
海底の圧力変化を連続測定するとことで海水位変動を観測する。海底圧力計に関しては、54 次設置分の回収、
55 次設置分の生存確認、56 次新規設置および位置決めを実施する。
a) 船上重力測定
【実施経過】
「しらせ」第 5 観測室に設置されている船上重力計(Micro-G LaCoste:S-149)を 2014 年 11 月 30 日のフ リーマントル出港前から 2015 年 3 月 9 日のフリーマントル入港後まで連続して稼働させ、航路上の相対重力 値を観測した。観測中は適宜巡回を行い、システムの稼働状況を確認した。重力結合のため、フリーマントル 停泊中に重力基準点および「しらせ」停泊岸壁において携帯重力計(SCINTREX CG-3M)による重力計測を実 施した。
<重力基準点計測日時および場所>
計測日:出港前/2014 年 11 月 27 日、入港後/2015 年 3 月 9 日
重力基準点:フリーマントル ポートオーソリティー前(重力値:979,402.99 mGal)
【問題点・課題】
2015年2月15日の氷海域停船中に制御PCのメモリ不足により、ソフトウエアがフリーズしているのを発見した。
また、同時にスプリングダイアルが暴走し、STカウンタが振り切れている状態であった。システムの再起動を行 うもSTカウンタは作動せず、制御PCのスプリングテンションも故障前の数値には戻らなかった。再起動後しばら くはビームが下端に落ちている状態であったが、数日かけて次第に浮き上がり、バランスをとるようになった。
但し、ビームがバランスした後もしばらくは重力値に実際の重力値変動とは異なる短期の値変動が見られた。再 起動より10日が経過した頃から重力値の短期変動は小さくなり、正常な稼働状態となった。STカウンタが故障し
ているため、日本帰港後にメーカーによる整備点検が必要である。
b) 船上地磁気三成分測定
【実施経過】
「しらせ」第1観測室に設置されている船上三成分磁力計(SFG-2006:センサ部はメインマストに設置)をフ リーマントル出港から入港まで連続して稼働させ、航路上の地磁気三成分を観測した。観測中は適宜巡回を行い、
システムの稼働状況を確認した。また、船体磁場の除去に用いる補正係数算出のため、以下に示す8海域で「8の 字航走」を実施した。「8の字航走」は、船速10ノット程度、片回頭365°以上、片回頭の所要時間は約10分、合 計で約20分をかけて実施した。
<日時(UTC)および海域>
1) 2014年12月1日 10:44~11:01 37-30S、111-41E 2) 2014年12月6日 09:14~09:31 60-00S、109-48E 3) 2014年12月10日 12:40~12:58 58-15S、074-56E 4) 2014年12月12日 16:39~16:57 61-22S、056-02E 5) 2015年2月18日 11:44~12:00 66-31S、040-02E 6) 2015年2月20日 19:42~20:00 62-35S、064-56E 7) 2015年2月25日 04:34~04:53 57-43S、092-00E 8) 2015年3月4日 03:00~03:17 40-31S、110-44E
【問題点・課題】
4Hzで収録されているデータのうち、1Hz目(*.00秒のデータ)のX,Y,Z各磁力値が大きく飛ぶことがある。具 体的には磁力の各桁の数値が9から0への繰り上がり、そして0から9への繰り下がり時に異常な値を出力すること がある。この現象は2009年の機器設置直後から見られるが、不具合発生回数は年々上昇しているようである。原 因としては、船上局内のAD変換部の不具合であると推測する。また、この他にも1Hz目のX,Y,Z各磁力値が1秒間 遅れて出力される不具合があることも確認した。これに関してはバッファからの吐き出しに問題があると推測す る。本不具合はJARE54(2012年)次以降で発生が認められる。以上、収録データに含まれる2つの不具合に関し て改善を望む。
c) マルチビーム音響測深装置・地層探査装置
【実施経過】
マルチビーム音響測深装置は前次隊帰路の座礁事故以来故障しており使用できなかったため、地層探査装置に よる海底地質データの取得のみを行った。
【問題点・課題】
12月1日の運用開始直後に受信側の基板(『PCB 2010 XCEIVER 品番:A00107-1』)が故障した。復旧に予備の 基板を使用したため、新たな予備基板の購入を希望する。また、マルチビーム音響測深装置の早期復旧を望む。
d) 航海情報収録・配信装置
【実施経過】
「しらせ」第3観測室において、フリーマントル出港から入港までの間、情報収集収録サーバーを連続運用し、
「しらせ」から提供される船体情報をもとに、船上重力計、船上地磁気三成分磁力計、XCTD等へ航海情報を配信 した。合わせて、船上重力計(1秒毎)、船上地磁気三成分磁力計(1秒毎)、表層海水モニタリング装置(1秒 毎)、直下水深、航海情報(5秒毎)を収集、保存した。尚、今回はマルチビーム音響測深装置の使用不可に伴 い、地層探査装置で計測した水深値を情報収集収録サーバーで収録した。また、第1観測室、第4観測室、ネット ワーク室および隊長公室へ航海情報の表示端末を配置し、情報の提供を行った。
【問題点・課題】
何らかの不具合で各観測装置から情報収集収録サーバーへの出力が途絶え、その後復旧した際には入力監視ウ ィンドウにて「警告解除」ボタンを押さない限りは警告が消えず、且つ、収録も再開しない。サーバーが入力を 再開した場合には自動的にデータ収録を再開するようにサーバー内のプログラムを改修して頂きたい。航海基本 情報として気象(気温、相対湿度、海面気圧等)、海象(波高、水温、流向、流速等)データの充実が望まれる。